GaNパワーデバイスとは
GaN(Gallium Nitride:窒化ガリウム)は化合物半導体の一種で、このGaNを使用したトランジスタが、GaN HEMT(High Electron Mobility Transistor:高電子移動度トランジスタ)と呼ばれるパワーデバイスです。
現在、半導体材料として主流のSi(Silicon:ケイ素)と比べて、導通損失が少なく(低オン抵抗)、高速スイッチング性能に優れた特長があり、電力変換効率の向上や小型化の市場要求に応えるパワーデバイスです。
SiC(Silicon Carbide:炭化ケイ素)パワーデバイスは、高耐圧領域で高効率動作が可能です。GaN HEMTについては、中耐圧領域における高周波領域での採用が進んでいます。
また、GaN HEMTの性能を引き出すために、GaN HEMTとゲートドライバICを一つのパッケージに同梱したパワーステージICがあり、さらにコントロールICも一つのパッケージに同梱した製品も検討されています。
用途としては、通信基地局やデータセンター用サーバー電源、産業機器モーター、ACアダプター等の様々なアプリケーションに使用されています。
Si/GaN/SiC トランジスタの棲み分け
パワーデバイスは使用する材料(Si/GaN/SiC)、素子構造によって、得意とする電力容量・動作周波数帯が違います。
半導体デバイスの主材料として使用されてきたSiですが、高周波動作や大電力の市場要求があり、GaNやSiCが注目されています。
GaNとSiCは、バンドキャップがSiより大きく、耐圧、熱伝導率、電子移動度の点で優れることから、半導体材料に求められる高温、大電流、高電圧、高周波の環境下での動作が可能です。
また、SiC MOSFETが高電圧領域、大電流下で優れた特性を発揮するのに対して、GaN HEMTは中耐圧領域で優れた絶縁破壊強度や電子移動度を持つことから、低オン抵抗、高速スイッチング(高周波動作)が可能です。
このため、GaN HEMTは、中耐圧領域における高周波領域での採用が進んでいます。
アプリケーションの小型化
GaN HEMTの高速スイッチング性能により、コイルやトランス等の電源回路やモーター回路で使用される大きな部品を、小型サイズのものに置き換えることが可能となるため、電源の小型、軽量化に大きく寄与します。
例えば、GaN HEMTを搭載したACアダプターは、Si MOSFET搭載のものと比べて、小型化が可能になります。