SiC SBD
1. デバイス構造と特徴
SiCでは高速なデバイス構造であるSBD(ショットキーバリアダイオード)構造で600V以上の高耐圧ダイオードを実現可能です(SiではSBDは200V程度まで)。
このため現在主流の高速PN接合ダイオード(FRD:ファーストリカバリーダイオード)から置き換えることによりリカバリ損失を大幅に削減できます。
電源の高効率化や高周波駆動によるコイル等の受動部品の小型化、ノイズ低減に貢献します。力率改善回路(PFC回路)や整流ブリッジを中心に、エアコン、電源、太陽光発電パワーコンディショナー、EV急速充電器などに応用が広がっています。
2. SiC-SBD の順方向特性
SiC-SBDの立ち上がり電圧はSi-FRDと同等で1V弱です。
立ち上がり電圧はショットキー障壁のバリアハイトにより決まり、通常バリアハイトを低く設計すると立ち上がり電圧は低く出来ますが一方で逆バイアス時のリーク電流が増加してしまうというトレード・オフの関係にあります。
ロームの第二世代SBDではプロセスを工夫することにより、リーク電流やリカバリ性能を従来品と同等に保ちながら立ち上がり電圧を約0.15V低減することに成功しています。
温度依存性はSi-FRDと異なり、高温ほど動作抵抗の増加によってVFが増加します。
熱暴走しにくい傾向ですので、安心して並列接続でお使いいただけます。
3. SiC-SBDのリカバリ特性
Siの高速PNダイオード(FRD:ファーストリカバリーダイオード)では順方向から逆方向に切り替わる瞬間に大きな過渡電流が流れてしまい、この期間に逆バイアス状態に移行することで大きな損失を発生していました。
これは順方向通電時にドリフト層内に蓄積した少数キャリアが、消滅するまでの期間(蓄積時間)電気伝導に寄与してしまうために起こります。
順方向電流が大きいほど、また温度が高いほどリカバリ時間やリカバリ電流は大きくなり、多大な損失となります。
一方、SiC-SBDは少数キャリアを電気伝導に使用しない多数キャリアデバイス(ユニポーラデバイス)であるため、原理的に少数キャリアの蓄積が発生しません。接合容量を放電する程度の小さな電流が流れるのみで、Si-FRDと比較して損失を大幅に削減できます。
この過渡電流は、温度や順方向電流にほとんど依存しないため、どんな環境でも安定した高速リカバリを実現できます。
また、リカバリ電流に起因して発生していたノイズ削減も期待できます。