定格電圧とは
抵抗器を使用する際の注意点
抵抗器を使用するに当たり、定格電力だけではなく電圧に関しても注意しなければならない項目があります。
ここでは、それに関連する定格電圧と素子最高電圧の二つの用語とその定義について、関係性も含めて説明していきます。
またさらに関連する用語として、臨界抵抗値と最高過負荷電圧に関しても説明していきます。
定格電圧
定格電圧とは定格周囲温度または端子温度において連続して印加できる直流電圧又は交流電圧の最大値です。
抵抗器の場合、定格電力が同一のシリーズでも、印加できる電圧は抵抗値によって異なり、定格電力と抵抗値から、以下の式(1)によって算出出来ます。
この定格電圧式(1)は、オームの法則(2)と電力の算出式(3)から導くことが出来る式で、抵抗値に比例します。
では、抵抗値が高くなればなった分だけ、素子に印加できる電圧が無限に高くなっていくかと言われれば、決してそうではありません。
素子最高電圧
素子最高電圧とは、特定抵抗値以上の高い領域の抵抗値にだけ適用される値であり、連続して印加できる電圧の限界値のことを言います。
- ・定格電圧と素子最高電圧との関係
- 定格電圧は(1)式で計算しますが、高い抵抗値の場合ではこの式で算出される電圧値が大きくなり過ぎることによって連続して印加した場合に素子が破壊してしまう場合があります。
そのため、(1)式で計算される値と素子最高電圧を比較し、いずれか小さい方の値を定格電圧と定義しています。
そのため、各製品のシリーズやサイズによって、素子最高電圧が規定されています。
【定義される定格電圧】
(例)
定格電力が1W, 抵抗値が100kΩ, 素子最高電圧が200Vの製品の場合、
- ・定格電圧=√(定格電力×抵抗値)=√(1.0×100000) ≒316V
- と算出されます。
ところが素子最高電圧が200Vとなっている為、200Vより高い電圧を印加することは出来ません。したがって、この製品の定格電圧は200Vとして使用します。【まとめ】
■パターン⓵
√(定格電力×抵抗値)の計算値 < 素子最高電圧の値
→√(定格電力×抵抗値)の計算値を定格電圧として用いる。
■パターン②
√(定格電力×抵抗値)の計算値 > 素子最高電圧の値
→素子最高電圧の値を定格電圧として用いる。
<POINT>
上記式から算出した値と、素子最高電圧の値を比べ、いずれか小さい方をその製品の定格電圧として使用して下さい。
臨界抵抗値
臨界抵抗値とは、 上記の「素子最高電圧」で記述した特定抵抗値のことです。
【臨界抵抗値 素子最高電圧が200Vの場合】
最高過負荷電圧
最高過負荷電圧とは、過負荷試験(JIS C 5201-1 4.13)でのみ使用する値で、過負荷試験において印加可能な電圧の最大値のことです。
こちらも素子最高電圧と同様に高抵抗領域で適用される値で、定格電圧×製品毎の保証倍率で算出される過負荷電圧の値が高抵抗の場合は大きくなり、過電圧による破壊が生じます。
この為最高過負荷電圧として、過負荷試験にて使用できる上限の電圧を設定しています。
次ページは、端子温度ディレーティングを用いた高電力保証について説明します。