デジタルトランジスタの選定
内蔵抵抗選定ツール
電圧、電流、抵抗値などの条件を入力し、計算ボタンを押します。
Ic/IBの計算結果が出力され、推奨、確認要、見直し要が表示されます。
1.条件を入力
2.IC/IBの計算結果
IC/IB≦20:推奨
20<IC/IB≦80:ON状態にはなるが、出力電圧が高くなりますので、特性の確認が必要
(ご不明な場合はお問い合わせください)
IC/IB>80:条件の見直しが必要
IC/IB<0:推奨
IC/IB≧0:条件の見直しが必要
■ツールの使用方法
・デジタルトランジスタ(NPN)
・デジタルトランジスタ(PNP)
デジタルトランジスタに内蔵している抵抗の選び方について説明します。
デジタルトランジスタには、R1とR2を内蔵した製品、R1のみ内蔵した製品、R2のみ内蔵した製品があります。R1とR2の役割は、それぞれの製品で同じです。
R1:抵抗値の選び方
R1は、バイポーラトランジスタを電圧で制御するための抵抗です。
MOSFETの場合、しきい値電圧(Vth)より大きな電圧を印加するとONします。
バイポーラトランジスタの場合、ベース・エミッタ間の電圧(VBE)が、順方向電圧(VF)より大きな電圧になるとONになります。
この時、ベース電流(IB)が急峻に上昇します。 VBEがVFより低い場合は電流がほとんど流れず、VBEがVFより高い場合は大きなIBが流れます。
また、VFのばらつきにより、ベース電圧でON/OFFを制御することは困難です。
抵抗R1を内蔵することにより、入力電圧の変動に対して、入力電流の変動を抑制することができます。
入力電圧とR1の抵抗値により、バイポーラトランジスタの入力電流が決まり、出力電流ICとIBの比(IC/IB)で出力電圧が決定されます。
このように、R1の抵抗値は重要なパラメータです。
入力電圧が低い、または出力電流が大きい場合、小さい抵抗値を選択したほうがON/OFFしやすくなります。
R2:抵抗値の選び方
R1とR2を内蔵した製品の場合、R2はOFFの領域を制御します。
VBEがVFを超えない場合、R2を通じて電流が流れます。
R1のみ内蔵した製品はR1を流れた全電流がIBとなりますが、R2も内蔵した製品の場合、R2に電流IR2が流れ、
R2×IR2がVFを超えるまで、ある程度の入力電圧に対してOFFである区間を設けることができます。
R2の選択のポイントは、入力のONの電圧が小さい場合は大きい抵抗値を、入力のOFFの電圧が大きい場合は低い抵抗値を選択します。
また、ON条件で、R1に流れる一部の電流がR2に流れるため、出力電流が大きい場合、大きい抵抗値のR2を選択したほうがON/OFFしやすくなります。
選定方法
①TRを飽和させるためには、IC/IB≦20での使用を推奨します。
②入力抵抗:R1は±30% E-B間抵抗:R2はR2/R1=±20%
③VBEは0.55V~0.75V ※一般的な値で、保証値ではありません
デジタルトランジスタには以下の関係式が成り立ちます。
■デジタルトランジスタの直流電流増幅率の関係式
GI:デジタルトランジスタとしての直流電流増幅率
GI=IO/Iin
hFE=IC/IB
IO=IC , Iin=IB +IR2, IB=IC/hFE , IR2=VBE/R2
電圧の関係式は VIN=VR1+VBE
■コレクタ電流の関係式は
∴ IC= hFE×((Vin-VBE)/R1 )- (VBE/R2)) ・・・①
※ここで言うhFEはVCE=5V、IC=1mA時の値で飽和状態ではない。
スイッチとして使用する場合は、飽和領域での使用をお奨めします。以下の計算を、仮にIC/IB=20/1とします。
∴ IC= 20×((Vin-VBE)/R1 )- (VBE/R2 ))・・・②
式①のhFEを20/1に置換える。
さらに、バラツキを考慮して算出するには
式②にR1は最大+30% R2は最小-20% VBEは最大0.75Vのワーストケースを代入して算出する。デジトラのICが使用セット上の最大出力電流Iomaxより大きくなるように、下式よりデジトラの抵抗R1, R2を選択する。
∴ Iomax≦20((Vin-0.75)/(1.3×R1)-0.75/(1.04×R2))
デジタルトランジスタの用語について
- VI (on)Min.:入力電圧(INPUT ON VOLTAGE)
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OUT端子、GND端子間に順方向電圧 (VO) を加え、規定の出力電流 (IO) を流しうるに必要な最小入力電圧、つまりデジタルトランジスタがONである領域の最小入力電圧値をいいます。
したがって、ON状態からOFF状態にしようとすれば、この最小入力電圧値よりもさらに下げる必要がありますので、良品の値はこれ以下になります。
VI(on)のMin.3.0Vは、「最小3.0VがONの入力信号とする」ことを示しています。 - VI(off)Max.:入力電圧 (INPUT OFF VOLTAGE)
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OUT端子、GND端子間に規定の電源電圧 (VCC)、出力電流 (IO) を加えた状態でIN端子、GND端子間に得られる最大入力電圧、つまりデジタルトランジスタがOFF状態を保つことができる領域の最大入力電圧値をいいます。
したがって、OFF状態からON状態にしようとすれば、この最大入力電圧値よりもさらに上げる必要がありますので、良品の値はこれ以上になります。
VI(off)のMax0.5Vは、「最大0.5Vまで、OFFの入力信号とする」ことを示しています。
保証で最大0.5Vなので、バラツキを考慮して、実力は必ず0.5V以上となります。
例えば、VI(off) Max0.5Vと記載している場合、実力を示すグラフでは1.5V程度になります。 - VO(on):出力電圧 (OUTPUT VOLTAGE)
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絶対最大定格を超えない任意の入力条件のもとでの出力端子電圧です。GND接地増幅回路で入力電流を十分流した時、出力電圧が減少してIN、OUT接合も順バイアスとなった状態。規定のVO、IOにおいてIIを整数(通常10~20)分の1にして測定します。
- II(Max.):入力電流(INPUT CURRENT)
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IN端子、GND端子間に順方向電圧 (VI) を加え、IN端子に連続的に流しうる電流の最大入力許容値です。
- GI:GND接地直流電流増幅率(DC CURRENT GAIN)
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規定のVO、IOにおけるIO/IIの比です。
- R1:入力抵抗(INPUT RESISTANCE)
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IN端子、トランジスタベース間に内蔵されている抵抗です。R1の許容範囲は±30%としています。また、温度によっても変化致します。
- R2/R1:抵抗比率(RESISTANCE RATIO)
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内蔵されている入力抵抗に対するトランジスタのベース・エミッタ間抵抗の比率です。