充電制御IC充電方法
- 充電制御ICは、「二次電池」を充電するICで、大きく下記のようなことを行っています。
- ・充電電流・電圧・電力の制御
・異常状態の保護
・各パラメータの監視
充電制御ICは電圧、電流、温度の3要素を監視しながら、安全かつ二次電池の寿命を延ばす等の観点で二次電池に合わせた最適な充電制御を行います。
二次電池の主な充電方法
- 定電流充電(CC:Constant Current)
- 定電流充電は、過電流充電を防ぐために電流を一定にして二次電池に充電し続ける⽅法です。
(二次電池の過電圧を防ぐために、低い定電流で充電したり、段階的に電流を変化させる方法もあります) - 定電圧充電(CV:Constant Voltage)
- 定電圧充電は、過充電を防ぐために電圧を一定にして充電を行う⽅法です。
充電電流は初期に大きく、徐々に低下していきます。
(二次電池の過温度上昇を防ぐために、初期に電圧を低くして、徐々に上げていく方式もあります) - 定電力充電(CP:Constant Power)
- 電圧の低い充電初期は大電流で、電圧が徐々に高くなるにつれ充電電流も低くなる一定にした充電方法です。
- 定電流定電圧充電(CCCV:Constant Current , Constant Voltage)
- 定電流定電圧充電は、リチウムイオンバッテリなどの二次電池における代表的な充電方法です。
充電電流を一定にして充電するCC充電と、電圧を一定にして充電を行うCV充電を電池の電圧によって切り替える方式です。
ロームの充電制御ICにも採用されている方法の1つです。
ローム充電ICプロファイル例
充電状態 | 充電制御方法 | バッテリの状態 | |
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①予備充電 | ●充電スタート →小さな電流で充電する |
●電池容量がなくなり電圧が低い ●電池の抵抗成分が大きく大電流で充電できない |
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②CC充電 | ●設定した充電電流値で定電流(CC)充電する | ●電池の電圧が上がり、抵抗成分が下がり、大電流で充電できる | |
③CV充電 | ●設定した充電電圧値で定電圧(CV)充電に切り替えて充電をする | ●設定した充電電圧まで到達したが、内部インピーダンスによってバッテリ内部電圧は低い状態。 バッテリ内部の電圧上昇と共に充電電流は減少していく。 |
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④充電完了 | ●充電電流が設定した終止電流値になると、一定区間充電を継続して、充電を終了する。 | ●内部インピーダンスによるバッテリ電圧の影響を極力小さくして充電を完了 →フル充電 |
ローム充電ICプロファイル例(充電コードを差したままの状況)
充電状態 | 充電制御方法 | バッテリの状態 | |
---|---|---|---|
①再充電 | ●再充電スタート →電池が設定した再充電電圧値まで減ってくると充電を開始する |
●電池を使用したことで電池容量が減り電圧が低くなっている | |
②CC充電 | ●設定した充電電流値で定電流(CC)充電する | ●電池の電圧が上がり、抵抗成分が下がり、大電流で充電できる | |
③CV充電 | ●設定した充電電圧値で定電圧(CV)充電に切り替えて充電をする | ●設定した充電電圧まで到達したが、バッテリの電圧はまだ低い | |
④充電完了 | ●電池の電圧が上昇し、設定した終止電流値になると充電を終了する | ●フル充電 |
二次電池は、充電されていくと電圧が上昇していきます。しかし電圧がかかり過ぎてしまうとダメージとなってしまいます。
CCCV充電は、過電流充電を防ぐCC充電と、過電圧充電を防ぐCV充電を電池の電圧状態により切り替えることで、電池の高寿命化や安全性向上に対応します。
- 定電力定電圧充電(CPCV:Constant Power , Constant Voltage)
- 電池電圧の低い充電初期は、一定の電力で充電を行い、満充電近くになると過電圧充電を防ぐCV充電へと切り替える方法です。
CP充電はCC充電とは異なり、電力に合わせた高い電流での充電が行えるので、より効率的な充電の実現が可能です。 - パルス充電
- 充電電流に微細なパルス(周波数)を与えることで、サルフェーションの生成を防ぐ充電方法です。
鉛蓄電池は使用していると、「サルフェーション」という電解液の一部が電気を通さない結晶化した鉛となってしまい、マイナス電極側にたまります。
こうなると、蓄電能力の低下や内部抵抗の増大など効率が悪くなってしまいます。
このような場合、パルス充電を行うことで、この結晶固体をうまく分解できることから、鉛畜電池の充電には有効です。 - トリクル充電
- 微弱電流で充電し続ける⽅法です。水滴がポタポタとしたたる(Trickle)イメージを模しています。
充電時間は長くなるものの、満充電状態に微弱電流を流し続けても電池に影響を与えないという利点があります。
自然放電が大きい鉛畜電池や、常に使用しない緊急待機用機器の電池などの充電に対して最適です。
二次電池の充電には上記の主な方法を含めた様々な方式、その組み合わせがあります。
充電制御ICはこれら充電電流・電圧・電力を設定制御することで、二次電池に合わせた最適な充電を実現します。