financial-strategy_title_cms

財務戦略

financial-strategy_main_cms

取締役 常務執行役員 CFO 伊野 和英

キャッシュ創出力を向上し、
更なる成長へ向け積極的な投資を
継続することで、
中長期的な
企業価値向上を図る

取締役 常務執行役員 CFO 伊野 和英

本インタビューは、ROHM Group Integrated Report 2023に掲載されたものです。

私は2023年4月にChief Financial Officer(CFO)に就任しました。これまではChief Strategy Officer(CSO)と経理本部長を兼任し、事業戦略の視点から経理を統括してきましたが、現在は、更に財務戦略の視点を加え、全社戦略の立案と遂行に携わっています。今後はキャッシュアロケーションやバランスシートマネジメント等の戦略をより緻密化するとともに、積極的に情報を発信していきます。

中期経営計画2年目を振り返って

2022年度は中期経営計画“MOVING FORWARD to 2025”の2年目の年でした。当年度は一年を通じ、新型コロナウイルス感染症に伴う世界的なサプライチェーンの乱れなどを受けて、自動車市場では一部の半導体や部品不足による生産調整が発生しました。一方で、脱炭素社会に向け、電動化・電装化の促進による車載半導体への需要が引き続き伸長しました。産業機器市場は、各国における工場の脱炭素化の促進や、生産能力増強・自動化・デジタル化投資の拡大などにより、堅調に推移しました。これらの要因に加え、円安進行による増収効果を受けたことで、売上高は前期比12.3%増の5,078億82百万円と過去最高となり、2期連続で最高売上高を更新しました。営業利益においても、前期比29.2%増の923億16百万円、営業利益率は前期比2.4ポイント増の18.2%と、大幅な増収増益を達成しました。海外売上高比率は前期比2.9ポイント増加して43.1%、またロームで重視している経営指標のEBITDAは、前期比30.8%増の1,484億56百万円となりました。

2023年度は、インフレや利上げ、エネルギーコストの上昇など、先行きの不透明感は依然強い状況であり、半導体市場の伸びについても全体としてはやや減速すると見られています。一方で自動車の電動化は当初予測よりも進捗しており、自動車分野での半導体需要は、年率10%以上で増加し、2027年度には2021年度比でおおよそ2倍に増えると見込まれています。電動化の進行による自動車向け半導体市場の拡大により、ロームがターゲットとする市場は今後も堅調に推移すると考えており、パワー・アナログ半導体を軸に、社会のニーズにマッチした商品の開発と安定供給に継続的に取り組むことで、中長期的な成長と事業を通じた社会貢献の拡大を遂げていきます。

企業価値向上に向けた取り組み

ロームが考える企業価値向上とは、将来にわたってフリー・キャッシュ・フロー(FCF)をどれだけ生めるか。すなわち、キャッシュ創出力の向上、キャッシュ・マネジメント、資本コストを意識した経営が企業価値向上の根源と考えています。持続的な事業成長を遂げつつ収益性を改善し、適正な資産構成を実現していく。その結果がROEと売上成長に表れ、併せて適正な株主還元を行っていく。このサイクル実現のため、経営陣がバランスを保ちながら注力すべき具体的な内容が、中期経営計画で目標値と実施事項として示されています。

ロームが考える企業価値ロジックツリー

現中期経営計画では、最終年度の2025年にROE9%以上、営業利益率20%以上とすることを目標指標として設定しています。2022年度のROEは9.2%となり、目標を達成しました。収益性の向上については、製品ミックスの改善、開発効率・投資効率の改善、コスト削減に、グループを挙げて継続して取り組んでいます。

事業ポートフォリオマネジメントでは、社内の事業を20程度に区分しそれぞれの事業における市場の成長性、自社の市場ポジション、事業別ROICを軸にした収益性や自社の経営ビジョンとの整合性の観点から毎年事業評価を行い、中期的な注力・維持・撤退の判断と実行に取り組んでいます。加えてLSIを中心に、それぞれの事業において、民生機器市場から自動車・産業機器市場へのシフトに向けた製品レベルでのポートフォリオ変革を推進してきました。自社の競争力の源泉であるIDM・すり合わせ技術により、お客様の問題解決と安定供給、長期供給を提案することで、高い付加価値を提供する製品のラインアップ拡大を進めています。開発やお客様サポートにリソースを集中し価値訴求の効果が高い製品の売上高比率を上げることで、お客様とのwin-winの関係を築き、収益改善を目指しています。自動車市場では、電装化拡大や電動化の追い風を受け一定の成果が出始めており、現在は産業機器分野拡大にも取り組んでいます。産業機器分野では、お客様がさまざまな産業分野に広く分散している、需要ライフタイムが長い一方、参入には時間がかかるといった特長があり、そのような市場特性への対応に特化した専門部門を組織しました。開発リソースも注力分野に重点的に配置し、新商品の企画売り上げに対する開発工数をKPI化することで、市場要求にマッチした開発の加速に取り組んでいます。

従来の設備投資の効率性には課題を感じており、意思決定におけるプロセスの進化に着手しました。投資判断の基準として用いている回収期間法に加え、NPV・IRR法を導入し、資本コストや事業リスクを意識したハードルレートを設定し、投資案件ごとに将来キャッシュ・フロー予測を明示した上で、収益優位性を総覧して意思決定を行っています。加えて投資実行後のモニタリングを強化し、投資案件ごとに投下資本に対する売上成長への寄与や、キャッシュインの予実を管理することで、今後の判断精度向上につなげる取り組みを実施しています。
コストダウンにおいては、開発、製造、調達部門が一体となって、垂直統合モデルの強みを最大限に生かした取り組みを推進しています。LSI生産の300㎜化、SiCの8インチ化を中心としたウエハの大口径化によるコスト削減に加え、社内外サプライチェーンを挙げての材料の標準化を推し進め、マスメリットを生かした調達コスト削減や材料共通化による在庫コストの削減に取り組んでいます。また、国内で立ち上げた最新鋭の完全自動化ラインの生産寄与や既存の量産ラインへの技術展開による固定費の改善を進めています。

成長投資とキャッシュ・マネジメント

2023年度の投資に関しても、注力するパワーとアナログの領域に8割以上を振り向けています。成長事業への投資を更に加速させるべく、成長投資は5年累計で5,000億円から6,000億円へ増額しました。SiCは2027年度までに売上高2,700億円以上、シェア30%以上に引き上げる目標を掲げていますが、需要が前倒しになっているため、投資計画もこれに合わせて上方修正しました。量産コスト低減を図るため、材料となるSiCウエハについて、ウエハ製造と前工程の両面で大口径化に取り組んでおり、ローム・アポロ株式会社筑後工場では、6インチウエハから8インチウエハへの変換が可能な設備を導入しました。ウエハについては、2023年から8インチウエハの供給を開始しており、急速な需要拡大に対応すべく、急ピッチで設備増設・増産を推し進めています。また、LSIは12インチのBi-CDMOSの生産ラインを増強します。さらに、永続的な企業価値向上に向け、足元の成長事業への投資に加え、将来の事業機会拡大を見据えた資本投資やM&Aについても、当社の特長であるIDM機能強化やパワー・アナログ領域の強化可能性を軸に、検討を常に行っています。

足元の事業の成長に必要な投資資金については、営業キャッシュ・フローで賄うことを基本とし、適正にキャッシュ・マネジメントを行うことで、手元資金を効率的に活用していきます。具体的には、2021年度から2025年度までの5年間の営業キャッシュ・フローとして約6,500億円を見込んでおり、成長投資6,000億円を賄います。また、今後の更なる成長投資の資金の手当てとして、2022年度からキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)の改善を進めており、内部からのキャッシュ創出に取り組んでいます。その上で、事業拡大や技術獲得のためのM&Aや資本提携等の案件が生じた際には、必要に応じた資金調達を機動的に行っていく方針です。

さらに、手元資金を5年間で段階的に圧縮して、2025年度には年間売上高の50%以下とする予定です。

株主還元

連結配当性向30%を目安に、株主還元を実施する方針です。また、自己株式の取得を適時実施していく方針であり、2022年11月には200億円を上限とする自己株式取得を決定しています。
足元の数年間は、事業成長と将来のキャッシュ創出力強化に向けた積極投資のフェーズにありますが、今後の事業成長の進展状況に応じ、投資と株主還元のバランスは適宜見直していきます。企業価値向上に向け、株主還元とともに、更なるキャッシュ創出力拡大のための人的資本への投資や設備投資について今後もバランスを取りながら進めていきたいと考えています。中期経営計画で示している成長と収益拡大、そしてその先にあるグローバルメジャーに向け、パワーデバイス事業とアナログLSI事業を両輪として経営を進めていく方針であり、株主の皆さまには是非、ロームの今後の成長にご期待いただきたいと思っています。

成長投資と株主還元

  • ・ 成長投資5年累計5,000億円を6,000億円へ増額
  • ・ 成長事業への投資を更に加速し、加えて積極的な株主還元を実施する
  • ・ 手元資金を5年間で段階的に圧縮し、2025年度には年間売上高の50%以下とする
資金収支
キャッシュアロケーション(中計2021年度~2025年度 5年累計)

TSR(10年、配当込)

TSR(10年、配当込)

Total Shareholder Return(TSR):株主総利回り。キャピタルゲインと配当を合わせた総合投資収益率

TSRの計算は、ロームは累積配当額と株価変動により、TOPIXは配当込の株価指数により算出(Bloombergデータ等により当社作成)

グラフの値は、2013年3月末日の終値データを100としてTSRによる時価を指数化したもの(保有期間は2023年3月末まで)

common_css

New_company localNavi.js

New_company common.js