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財務担当役員メッセージ

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執行役員 財務担当 兼 経営戦略本部長 安東 基浩

財務と非財務の戦略の統合を
深化させ、企業価値を向上

執行役員
財務担当 兼 経営戦略本部長
安東 基浩

本インタビューは、ROHM Group Integrated Report 2024に掲載されたものです。

LSIの開発からキャリアをスタートし、パワーデバイス事業本部の責任者を務めた後、経営戦略本部長として、経営企画・経理・財務・IR・広報を担当してきました。パワーとLSIの両事業における経験に財務視点を加え、資本コストと株価を意識した経営戦略・財務戦略を立案し、それを着実に遂行していくことが私の役割だと考えています。

中期経営計画の進捗

中期経営計画“MOVING FORWARD to 2025”の1年目、2年目は過去最高売上高を2期連続で更新し、迎えた3年目の2023年度は、前期比7.9%減の4,677億円、営業利益は前期比53.1%減の433億円にとどまり、営業利益率は前期の18.2%から9.3%に低下しました。また、経営指標として重視しているEBITDAは前期比22.3%減の1,153億円となりました。
2023年度は、半導体市況を示すシリコンサイクルにおける谷間を迎え、成長の踊り場となった厳しい1年となりました。その一方で、中長期的に成長が期待される自動車市場や産業機器市場などに向けて、強みであるパワー・アナログの新製品・新技術の開発を着実に進めるとともに、生産能力の確保においては、SiCパワーデバイスの主力生産拠点として、宮崎県国富町の既設の土地・建物を取得しました。これにより、更地から工場を建設するグリーンフィールド投資と比較して、約2年、量産開始までの期間を短縮することが可能となり、今後の急速な需要拡大に対応していきます。また、本拠点への投資計画は、日本政府から「半導体の安定供給確保のための取組に関する計画」としての認定を受けており、最大で964億円の助成金を見込んでいるため、今後数年にわたる投資負担の軽減が可能となりました。
2024年度の世界経済は、依然として先行きが不透明であるものの、エレクトロニクス市場においては、気候変動対策や脱炭素化社会に向けた省エネルギー化の流れは着実に進んでいくものと思われます。
半導体市況については、2023年度からの調整局面が一定期間は継続すると見ており、売上高4,800億円、営業利益140億円、営業利益率2.9%、EBITDA1,067億円を計画しています。SiCパワーデバイスにおける生産能力増強に向けた先行投資による償却費や研究開発費などの増加により、特に収益性において厳しい計画となっていますが、大きな成長へジャンプアップするためにかがむ局面と捉えています。半導体市況は2024年度の後半からは徐々に回復し、2025年度はシリコンサイクルの好況に入る可能性が高いと見られています。SiCパワーデバイスの飛躍的成長はもちろん、他の全事業を成長軌道に再び乗せることで中計経営計画達成に近づけると考えています。

財務の状況

財務の状況

当社は、2023年10月1日付で普通株式1株につき4株の割合で株式分割を行っております。2022年度以前の「1株当たり配当金」は当該株式分割を考慮して算出しております。

企業価値向上に向けた取り組み

ロームは、キャッシュ創出力の向上、キャッシュ・マネジメント、資本コストを意識した経営を行うことが企業価値向上のために重要であると考えています。持続的な事業成長を遂げつつ収益性を改善し、適正な資産構成を実現することで、その結果が売上高やROEに表れてきます。
2023年度末にはロームのPBRは1倍以下となりましたが、これは約17倍のPERに対して、ROEが低いことによると考えています。2022年度には9.2%あったROEは、2023年度は5.7%に低下しました。ROE改善のための最大の課題は、総資産回転率の改善にあると考えています。設備投資による固定資産増加、東芝への3,000億円の出資、棚卸資産増加により、この2年間で総資産は約4,000億円程度増加した一方、それに見合う売上成長が過渡期のため、総資産回転率が低下しています。既に投資した事業での確実な売上成長と東芝との連携によるシナジーを実現することでROEが向上し、その結果、PBRの改善を図ることができると考えています。将来の収益性の観点でも、2022年度より導入した市場成長性、自社の市場ポジション、事業別ROICを軸にした事業ポートフォリオマネジメントにより毎年事業評価を行うことや、設備投資の意思決定において、従来の回収期間法に加え、NPV・IRR法を導入し、資本コストや事業リスクを意識したハードルレートをもとに、収益優位性を総覧した意思決定を行い、これまでの課題であった投資効率の改善に取り組んでいます。

ロームの財務ロジックツリー

ロームの財務ロジックツリー

無形資産への投資

無形資産への投資

近年では、企業活動の理解を深めるにあたり、財務情報だけでなく非財務情報の開示の重要性が高まっています。この度、ロームの財務ロジックツリーを見直し、財務情報に加え、非財務情報を組み込むことで、それらがどのように株主価値の向上につながるかを統合的に可視化しました。
なかでも、企業の持続的な成長を実現するための戦略的な人的資本への投資は、将来の企業価値向上に直結すると経営陣は強く認識しており、投資原資の適正な確保と配分や、全社的な制度導入の観点から、従来の個別部門主体の延長ではなく、会社全体の課題として取り組みを加速しています。

社内の選択式研修やジョブポスティング制度導入に加え、2024年度からは自社株譲渡による支援を伴うMBA/MOT派遣制度の新設により、キャリアの自律性向上やスキルアップの機会を提供し、従業員と企業の相互の成長を目指す仕組みを具体化しました。また、エンゲージメント向上の一環として従業員持株会への加入奨励活動を推進しています。IR部門が中心となり、社内説明会を定期的に開催し、自社の業績や株価に関する外部からの評価の解説を行っています。自社株を保有し、関連情報に触れることで、経営に興味を持ち、視座を高めるとともに、従業員にも投資家の皆さまの視点を共有し、将来の企業価値向上につなげることを狙いとしています。研究・イノベーション分野では、従来の社内での研究開発活動に加え、社外の研究者を交えてのイノベーションDAY実施、研究公募を通じた大学との共同研究、CVC活動推進などを通じ、社内外で将来の事業を支える人財への投資を行っています。
環境分野においては、ICPの導入、PFC除害装置への計画的な投資、再生可能エネルギー導入の前倒し進捗など、着実に実行しています。

非財務の取り組みを将来の企業価値向上に結び付く重要活動と捉えるにあたり、今後の課題としては、こうした非財務事項への投資成果を定量化し、それらが将来の企業価値にどう結びつくのか示すことだと思っています。ロームの将来性を正しく評価していただくためにも、サステナビリティ部門をはじめとする関連部門と連携しながら、経営トップによるESG説明会などを通じて発信頻度を増やすなど、今後も財務・非財務情報の両輪でステークホルダーの皆さまに分かりやすく発信できるよう努めていきます。

MOT:Management Of Technology(技術経営)の略。技術の研究・開発や継続的なイノベーションを中心とした経営管理の手法を対象とする学問分野。

CVC:Corporate Venture Capitalの略。事業会社が自己資金でファンドを組成し、主に未上場の新興企業(ベンチャー企業)に出資や支援を行う活動組織のこと。

ICP:Internal Carbon Pricingの略。企業が独自に自社のCO2排出量に対して価格付けを行うこと。

PFC:Perfluorocarbon(パーフルオロカーボン)の略。半導体ウエハの製造工程で発生する、炭素原子とフッ素原子から構成される化合物で、フロン類の一種。地球温暖化の原因となる。

成長投資とキャッシュ・マネジメント

設備投資については、中期経営計画期間の5年累計で6,000億円から7,000億円への増額を計画しています。飛躍的な成長が期待されるSiCパワーデバイスの8インチウエハやSiパワーデバイス、アナログICの生産能力増強がその中心となり、今後の成長には必要不可欠な投資として実行していきます。投資原資については、原則として営業キャッシュフロー内で賄うこととしていますが、市況の減速が長引いているため、2025年度までの5年累積営業キャッシュフローが当初計画より減少する見込みであり、手元資金の圧縮と日本政府からの助成金の活用で補う計画です。設備投資は、SiCパワーデバイスの先行投資などにより、過去にない高水準となっていますが、2023年度をピークに減少させていきます。先行投資フェーズから、市況・受注動向を見定めながら投資判断時期を可能な限り引き付けることでリターンの確度を高めていく平時の投資フェーズへ移行し、中期的には、売上高の10~15%程度の水準へと近づけていきます。
2022年度から進めているキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)の改善活動は徐々に成果を発揮できる準備が整ってきており、2024年度から2025年度にかけて内部からのキャッシュ創出を実現し、資金の有効活用へつなげていきます。
2023年度は東芝への出資金として、ブリッジローン3,000億円の負債調達を行い、今年4月に転換社債型新株予約権付社債(CB)で調達した2,000億円を返済の一部へ充当しました。残り1,000億円の残債と、12月に満期を迎える既発CB400億円の額面償還については、手元資金若しくは負債性調達で充当する予定です。ロームのバランスシート(BS)は大きく変化していますが、財務規律としてD/Eレシオ<0.5を設定し、BSマネジメントを行っていきます。

株主還元について

連結配当性向30%を目安に株主還元を実施する方針です。
足元の数年間は、事業成長と将来のキャッシュ創出力強化に向けた積極投資のフェーズにありますが、今後の事業成長の進展状況に応じ、投資と株主還元のバランスは適宜見直していきます。
自己株式取得についても、資本効率の改善を目的に適時実施します。また、保有する自己株式の上限を発行済株式総数の5%を目安とし、これを超える部分については原則として毎期消却することとしています。手元の自己株式につきましては、必要に応じてM&Aに活用するなど、経営の柔軟性を確保するために継続保有していきます。

成長投資と株主還元

  • ●市況悪化による営業CF減を政府助成金により補填し、成長投資6,000億円を7,000億円へ増額
  • ●3,000億円の資金調達により東芝非公開化へ参画。半導体事業における連携強化により企業価値向上を図る
  • ●CBを発行し、東芝非公開化への参画に際して借り入れたブリッジローンの返済資金の一部に充当
  • ●ブリッジローン残債と2024年12月に満期を迎えるCBの額面償還は手元資金または負債性調達(銀行借入、社債)で充当
  • ●株主還元方針は変更なし
  • ●手元資金の活用を加速、当初計画の年間売上高の1/2以下を1/3以下へ修正
資金収支
キャッシュアロケーション

TSR(10年、配当込)

TSR(10年、配当込)

Total Shareholder Return(TSR):株主総利回り。キャピタルゲインと配当を合わせた総合投資収益率

TSRの計算は、ロームは累積配当額と株価変動により、TOPIXは配当込の株価指数により算出(Bloombergデータ等により当社作成)

グラフの値は、2014年3月末日の終値データを100としてTSRによる時価を指数化したもの(保有期間は2024年3月末まで)

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