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2030年、社会に信頼され、
必要とされる
グローバルメジャーへ
代表取締役社長 社長執行役員
松本 功
本インタビューは、ROHM Group Integrated Report 2023に掲載されたものです。
ロームは、中期経営計画において、2030年のロームのあるべき姿として「グローバルメジャー」を掲げていますが、これには大きく3つの意味を込めています。まず、注力する自動車及び産業機器向けのパワー・アナログ半導体をはじめ、あらゆる商品に対して、社会やお客様が「ロームなら大丈夫」と信頼し安心してくださること。 また、お客様が半導体・電子部品を必要とされる状況になった際、最初に「ローム」を思い浮かべていただけるようなブランド力を持つこと。そして、何よりも重要と考えているのが、社会に必要な会社として認められることです。
定量的な目標としては、パワー・アナログ半導体の分野で世界トップ10に入ることと、売上高1兆円を掲げています。社会情勢は不透明感が増していますが、引き続き、中期経営計画を着実に実行し、外部環境に左右されない強固な経営基盤を築くとともにグループ一体経営を加速させ、「ONE ROHM」で真の成長と企業価値向上に努めてまいります。
パワー・アナログにおいて発揮されるロームの強み
パワー・アナログ市場は、自動車と産業機器の電装化・電動化により今後も成長が期待される。ロームは、創業以来掲げる「企業目的」に基づき、品質第一のものづくりと、高度なすり合わせ技術、垂直統合の生産体制を強みに、付加価値の高い商品を提供することで、社会課題の解決に貢献。
2022年の半導体市場は約78兆円といわれており、このうちロームがターゲットとするパワー・アナログの市場規模は、 3分の1程度の26兆円に過ぎません。しかしながら、自動車と産業機器市場を中心とした電装化・電動化の進展により、 パワー・アナログの需要は今後も伸び続ける見通しです。
マイコンやメモリ等のデジタル半導体は、微細化などへの投資が競争の源泉であり、ファウンドリ等を活用した水平分業が業界の主流となっています。一方で、パワーやアナログ半導体では、ニーズに合わせて、自社の製造プロセスの特長を生かしつつ、最適な設計をすることが競争力の源泉となります。ロームでは、「回路設計」「レイアウト」「製造プロセス」が一体となり、それぞれの技術やノウハウを高いレベルですり合わせることによりお客様や市場のニーズに合った付加価値の高い製品を提供しています。そして製品の開発を支えているのが材料段階から完成品までの生産工程をグループ内で 完結させる垂直統合生産体制(IDM)です。
設計面における付加価値向上や一貫した品質保証を実現 するだけでなく、安定供給体制の構築にも寄与しています。これは、創業当初より掲げる「企業目的」が礎になっている もので、「品質を第一とし、いかなる困難があろうとも、良い商品を供給し、文化の進歩向上に貢献する」ことは、ロームのDNAとして脈々と受け継がれています。
その真価を発揮したといえるのが、2011年に起きたタイ洪水です。現地工場が浸水し生産が完全に停止してしまったのですが、タイで生産していた製品は自動車メーカーに多く採用されていたため、ロームの半導体が供給できないことによって、自動車の生産が中断しかねない危機的な状況でした。しかし、ロームではすべての製造工程において高いノウハウを有しており、グループ内から各製造工程に専門性を持つエンジニアが救援に駆け付けたことで、わずか1カ月で生産再開を果たすことができました。また、代替生産の対応も素早く実施し、当初予想よりも大幅に早く、2カ月半ほどで製品供給の全量再開を成し遂げたのです。
タイ洪水は非常事態で、私も急遽フィリピンで代替生産の指揮を執りましたが、多くのお客様より励ましのお声をいただき、ロームが日本の産業を支えているという責任を実感すると同時に、ロームが創業以来積み重ねてきた高度な製造技術と、さらにグループが一丸となったときの力の大きさを再認識した出来事でもありました。
ロームが60年以上にわたって追求してきた「品質第一」のものづくり。これを支えるのがIDMのビジネスモデルであり、今後も自社の一貫生産体制にこだわりながらお客様に付加価値の高い製品を供給し、社会課題の解決に貢献することで、グローバルメジャーを目指します。
グローバルメジャーの実現に向けて成長分野に積極的に投資を実施
更なる成長のために積極的な設備投資を進め、2025年度までの成長投資額を6,000億円に増額。SiCパワーデバイスを中心に、急速に市場が拡大する分野に対して生産ラインを増強するとともに、M&A等も積極的に行うことで成長機会を着実に捉える体制を構築。
2022年度は、2021~2025年度までを実施期間とする「中期経営計画“MOVING FORWARD to 2025”」2年目でした。
売上高は自動車、産業機器の伸長により前年比12.3%増の5,078億円と過去最高を更新し、営業利益・経常利益・純利益は前年比2桁の増益率となるなど、好業績で終えることができました。しかし、この好業績の大きな要因は、半導体市場全体の好況に加え、想定を超える円安の影響によるものであり、まだまだ伸ばさなければならないという思いがあります。
特に2021年度以降は、売り上げに占める設備投資の割合が高い状況が続いていますが、負担は大きいものの、シェア獲得のためにも今は必要な時期であるとの認識のもと、大規模な設備投資を継続しており、2025年度までの成長投資を5,000億円から6,000億円に増額しました。投資の主な内訳は生産能力向上と土地・建物の取得であり、その中心はSiCパワーデバイスの8インチ対応や、LSIにおける12インチBi-CDMOS生産ラインの増強です。
SiCパワーデバイス事業においては、自動車の電動化に伴い急激に市場が拡大しており、旺盛な需要に対して安定供給体制をスピーディーに整えることが肝要です。そのため、SiC投資を前倒しし、2027年までの7年累計で5,100億円の投資を予定しており、今年の7月にSiCの4th FABとしてソーラーフロンティア株式会社の旧国富工場の資産取得について合意いたしました。一方で、LSI事業では、幅広いニーズに合う特定用途向け汎用製品(ASSP)の開発を強化しており、付加価値の高い戦略商品群を拡充するためにも生産ラインの増強を計画しています。
さらに、将来の事業機会拡大を見据えた資本投資やM&Aも進めており、2023年7月に株式会社東芝の非公開化への参画を発表いたしました。出資の資金(総額3,000億円)の調達については、借入にて行う方針であり、6,000億円の成長投資とは別枠で実施予定です。ロームのM&Aの方針としては、自社の事業ポートフォリオを拡充させるような案件を検討し、既存事業との関連性のない新規事業の取得は行いません。中期経営計画のビジョンを実現させるために、長期的にシナジーを生み出せるM&Aの機会があれば、積極的に検討したいと考えています。
私が2020年に社長に就任して以来、さまざまな経営改革を実施してきましたが、この数年間で着実にキャッシュを生み出す力も増えており、中期経営計画の5年間における営業キャッシュフローは6,500億円まで拡大する見込みです。投資効率向上にも取り組みつつ、積極的な設備投資を自己資金内で行えるようキャッシュ創出力も伸ばし、中期経営計画の達成に向け、一つ一つ着実に必要な布石を打っていきます。
サステナビリティ経営の更なる高度化を通じ「会社の品質」を向上
ステークホルダーから信頼され、選ばれる会社となるには、「製品の品質」に加え、「会社の品質」を向上させることが必要。「経営ビジョン」や「ステートメント」のもと、ガバナンス強化など、サステナビリティ経営の高度化を進める。
ロームでは、ステークホルダーの皆さまから信頼され、選ばれる会社となるには、「製品の品質」に加え、「会社の品質」を向上させることも重要と考え、サステナビリティ経営の高度化を推進しています。この一環として、2022年4月より、経営側に「サステナビリティ経営委員会」、執行側に「EHSS統括委員会」を設置し、経営と執行の役割を明確に分離することで、意思決定の迅速化と監督機能の強化を図っています。2022年度は、サステナビリティ経営委員会を月に1度開催し、TCFDやガバナンス強化策、人的資本にまつわる指標などのサステナビリティ課題について議論を深めました。
ガバナンスの強化に向けては、2023年度に新任の社外取締役を3人迎え入れました。うち1人が実務に携わる社外取締役で、人的資本経営及びグローバル経営に関して幅広い見識を持っており、経験に基づいた助言を期待しています。評論家的な立場からの批評ではなく、これからのロームのあり方を一緒に考えていくことを期待して、選任いたしました。監査等委員の2人には、ガバナンス改革の一環として、グループ一体経営における監査や情報管理のあり方について、知見を生かしてご助言していただきたいと考えています。
ロームは、2020年に経営ビジョンを策定し、「パワーとアナログにフォーカスし、お客様の“省エネ”・“小型化”に寄与することで、社会課題を解決する」ことを明文化しました。これにより、ロームが進むべき方向性を明確にするとともに、グループ全社員の意識を高め、企業として一層の社会貢献を果たしていく決意を明確にしました。また、経営ビジョンとともに定めたステートメントでは、“Electronics for the Future”の言葉を掲げ、「エレクトロニクスの技術で、社会が抱えるさまざまな課題を解決」することを目標にしています。この「さまざまな課題」の中で、最も緊急に対応が必要かつ重大なものは、やはり環境課題です。脱炭素、省エネルギーのキーデバイスとして、パワー・アナログ半導体の重要性が増しており、全世界の電力消費量の大半を占めるといわれる「モータ」や「電源」の効率改善は、我々の使命であると考えています。気候変動や環境に対する意識の高まりにより、世界的に自動車の電動化の流れが加速し、それに伴って使用されるデバイスの省エネ・小型化ニーズも増えているため、このニーズを満たすパワー・アナログ製品が、世の中のニーズにマッチしている時代になっているといえます。
また、ローム自身の事業活動における脱炭素化推進策として、「環境ビジョン2050」を策定しました。同ビジョンに基づき、「気候変動」「資源循環」「自然共生」の3つのテーマを柱に、カーボンニュートラル(CO2排出量実質ゼロ)及びゼロエミッションの実現と、さまざまな環境保全活動・環境投資を積極的に行っています。この一環として、2022年4月には、事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーとすることを目指す国際企業イニシアティブ「RE100(100% Renewable Electricity)」に加盟しました。「国内外の全ての事業活動で使用する電力を2050年度までに100%再生可能エネルギー電源由来とする」ことを目指しており、再生可能エネルギーの導入量を段階的に引き上げています。
ロームは引き続き、製品開発を通じた社会課題の解決とともに、事業活動における環境負荷低減にも取り組み、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
一人ひとりが個性を生かしたキャリアパスを描き、夢を持てるような体制へ
現在ロームが取り組むべき大きな課題の一つは「人的資本経営」。ロームの目指す姿に対して、社員一人ひとりが共感し、自主性を持って夢に向かっていくことができるような体制の構築を進める。
ロームの商品が人々の暮らしを豊かにし、未来像を描くために必要不可欠と認識される存在になっていなくては、グローバルメジャーとはいえません。中期経営計画策定の際にベースとして考えたのは、2025年度までに足腰をしっかり鍛えておくことでした。ONE ROHMとしてグループ全体で経営基盤を強化するために必要な施策を策定し、実行していくことが中期経営計画の土台となっています。具体的には、製造現場や管理部門などのあらゆる部門で、グローバルメジャーになるということはどういうことか、そのために何をしなければならないかを各自が考え、行動するということです。組織や財務など、すべての面において、グループ社員一人ひとりが、グローバルメジャーになっている姿とはどのようなものかをイメージし、夢を持って取り組んでいる体制を構築したいと考えています。
そのために、「人的資本経営」は、大きな課題の一つであると認識しています。これまでもグローバル人財獲得競争に勝つために、さまざまな人事施策を講じてきましたが、経営戦略に結び付いた人財戦略はまだ不十分であると自覚しています。2030年度に目指すロームの姿から、バックキャストでどのような人財を育成する必要があるのか、そのために女性管理職比率がどのように影響してくるのか等、今後しっかりとその全体像をつくり上げて、掲げていく必要があります。
その上で大事なことは、一人ひとり個性があり、自分のなりたい姿も違うため、「ロームにいたらこんなキャリアパスが実現できる」と社員一人ひとりが将来を描ける環境を作ることです。そのために、自律的なキャリア形成及び能力開発を促進する仕組みを設けており、2019年度に創設した「スペシャリスト職制度」もその考えに基づいています。
また、個性を生かすためには、ダイバーシティ推進も必要です。外国籍者や女性はもちろん、まずは、多様な意見を聞くことを大切にしていきたいと考えています。特に、意思決定の場面においては、同質性に依存するのではなく、多様な考えを取り入れることこそが、優位性のある決定に必要であると認識しております。
こういった自身の考えを伝えるために、社員には普段からオンライン等を活用しそうした思いを伝えているほか、座談会で社員と直接話す機会を設けています。座談会で直接話すことで、お互いの理解を深め合うことができるので、今後も継続していきたいと考えています。
50年、100年後の未来も「豊かな暮らし」に貢献する会社でありたい
ロームはどのような世の中になっても、製品と技術を通して、人々の豊かな暮らしに貢献する会社であり続けたい。
脱炭素社会という未来の姿に向けて、半導体需要は拡大し続けています。また、再生可能エネルギー発電にもSiCパワーデバイスは欠かせないものであり、循環型社会の実現に向けて、パワーやアナログの需要は今後も伸び続けていくと考えられます。
この先、どのような社会が到来するかを正確に予想することはできません。自然と共生する人間の原点のような暮らしに戻っていくのかもしれませんし、空飛ぶ自動車が行き交う社会になっているかもしれません。世の中が変わっていけば、当然解決すべき課題も変わります。ステートメントの中にある“Electronics for the Future”という言葉は、2050年頃まではエレクトロニクスという解決手段によって、世の中の社会課題に対応していこうという考えに基づいています。しかし、100年後の未来では「for the Future」は変わらなくても、「Electronics」は変わっていることは十分あり得ると思っています。
しかし、「良い商品を国の内外へ永続かつ大量に供給し、文化の進歩向上に貢献すること」という創業以来の企業目的は、どのような社会になっていても変わることはありませんし、ロームはものづくりを通して社会に貢献できる会社として存在していたいと思います。そのために、常に時代を先取りしつつ、新しい技術の開発に取り組み、高品質な製品の安定供給に努めていきます。
今、ロームは2000年代から取り組んできた構造変革が実を結び、成長軌道に乗りつつあると感じています。今後も変化する世の中に必要とされ続ける会社であるために、技術と製品を通して環境及び社会に貢献していけるよう、邁進していきます。
ステークホルダーの皆さまには、ご理解とご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。