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トップメッセージ

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パワー・アナログ半導体で社会課題の解決に貢献し、グローバルメジャーとして社会やお客様から選ばれる会社を目指します。

代表取締役社長 社長執行役員
松本 功

本インタビューは、ROHM Group Integrated Report 2024に掲載されたものです。

世界では、持続可能な社会の実現に向けた取り組みが加速し、企業においても環境など、さまざまな社会課題の解決につながる活動が重要視されています。ロームにとって、これらの考え方は決して新しいものでなく、創業時より掲げる「企業目的」に基づき、良い商品の供給やものづくりを通じて、文化の進歩向上に貢献してまいりました。
創業から60余年、企業規模や経営環境は大きく変化しましたが、「企業目的」は不変であり、ロームのDNAとして、脈々と受け継がれています。「脱炭素社会」の実現に向けて半導体の重要性が高まるなか、社会やお客様からの期待におこたえできるよう、中期経営計画に基づき、2030年度に向けた飛躍的な成長を見据え、財務・非財務の両面で、より強固な経営基盤を構築してまいります。

創業の精神を受け継いだ社長としての使命

「企業目的」や「現場重視」など創業者の思いをしっかりと受け継ぎながら、従来のトップダウン型の経営からさまざまなステークホルダーとの対話を重視するサステナビリティ経営への転換を図る。未来に向け成長していくために、ステークホルダーの皆さまとの対話を重視し、共感を得ていくことで、基盤づくりを進めていく。

社長に就任した2020年は、創業者の逝去や、新型コロナウイルスの流行と、社会にとってもロームにとっても転換期といえました。大きな変化が求められるなかで、経営者としては対話を重視し、グループ一体となってサステナブルに成長するための基盤づくりに取り組んでまいりました。
これは私自身が心がけているマネジメントスタイルでもありますが、きっかけとなったのは2001年に立ち上がった「あすかプロジェクト」への出向でした。最先端の技術開発をオールジャパンで進めるため、日本国内の主要半導体メーカーが共同設立した組織で、名だたるメーカーの技術者たちが集っていました。そこでの経験は、リーダーとしての自身のキャリアを見つめ直す良い機会となりました。癖の強い、個性派ぞろいの技術者ばかりの環境では、一方的な指示では誰も動きません。自分の思いを周囲に素直にさらけ出しつつ、相手の考えに耳を傾けることで、人は自然と集まってくるということを学びました。以来私は、人の共感を得られるようなマネジメントをして、社員のモチベーションを上げることを意識するようになりました。

また、創業者の佐藤研一郎氏から教えられたのは、「現場が一番大事」ということでした。私がアメリカのグループ会社に頻繁に長期出張をしていたころ、佐藤氏もまた、よくその工場に顔を出し、社員一人ひとりと対話を重ねていました。その姿を見て私は、直接オペレーターの方と接して、現場をしっかり見ることで、周囲の共感を呼ぶ、説得力のある自らの思いを持つことができる、ということを佐藤氏から学びました。私は、自分自身の経験や、創業者の教えを糧に、現場重視で、社員と対話し、共感を得ていくリーダーとしてロームを率いてまいります。

パワー・アナログ半導体におけるロームの強みを生かし、「グローバルメジャー」へ

自動車生産台数の増加や、電動化・電装化の促進によって、パワー・アナログ半導体を中心に安定した成長が見込まれる。自動車市場と海外市場を中心に大きく伸ばしていき、2030年度「グローバルメジャー」を目指す。

ロームは2021年、中期経営計画として「MOVING FORWARD to 2025」を打ち出しました。中期経営計画の策定は、これまでのロームになかった新たな試みです。そのなかで2030年度の目指す姿として「グローバルメジャー」を掲げました。注力する自動車及び産業機器向けのパワー・アナログ半導体をはじめ、あらゆる商品に対して、社会やお客様が「ロームなら大丈夫」と信頼し安心してくださること。お客様が半導体・電子部品を必要とされるときには、最初に「ローム」を思い浮かべていただけるようなブランド力を持つこと。そして社会に必要な会社として認められること、この3つの意味が込められています。平たくいえば、「世の中で絶対に必要な会社であり続ける」といった定義です。定量的な目標としては、注力しているパワー・アナログ半導体の分野で世界トップ10に入ること、さらに売上高1兆円を掲げています。
そこからバックキャストして、強固な経営基盤を構築するための5カ年計画として策定したものが「MOVING FORWARD to 2025」です。2025年度の財務目標として売上高6,000億円以上、営業利益率20%以上、ROE9%以上を掲げています。振り返りますと、2021年度からの2年間は、コロナ禍の中で、半導体の特別需要、円安の効果もあり、順調に滑り出しましたが、3年目となる2023年度は、市場全体の減速と、お客様の在庫調整の影響を受け、前年比で減収減益となりました。売上高は、注力市場である自動車市場において増加したものの、産業機器市場を含む他市場においては前年を下回る結果となりました。SiCパワーデバイス事業への積極的な投資に伴う固定費負担の大幅な増加により、営業利益率も大きく低下しました。
2024年度の業績についても、ここ2年の設備投資に伴う固定費の増加もあり、非常に厳しい計画を立てています。ただ、これも今が底であると認識しており、この1年で、今一度、収益の改善に取り組んでまいります。その一環として、2024年4月には、取締役の担当職務を変更しました。各事業における責任を明確にし、業務執行をより一層、強力に推進するための時限的な処置です。中期経営計画3年目で売り上げ・利益が踊り場を迎え、厳しい局面を迎えるなか、中期経営計画を達成するため、取締役たちがもっと現場に近寄り、一体となり、成長路線に立て直していくという意思表示です。

一方で、パワー・アナログ半導体で自動車市場と海外市場を中心に大きく伸ばすとの方針は変わっていません。自動車市場では、EV市場の減速が話題になっており、足元の成長率としては鈍化しているものの、自動車生産台数の増加や、電動化・電装化の促進により、注力するパワー・アナログ半導体を中心に、安定的な成長が見込まれます。具体的には、パワーデバイスではSiCパワーデバイスのEV向けトラクションインバータにおけるシェア拡大、LSIではラピステクノロジー(株)の製品を加えた戦略TOP10の売上高比率向上により、中期経営計画の達成を目指します。なかでも、EV向けのSiCパワーデバイスの需要は今後も着実に伸びる見通しであり、こうした需要に安定して対応できる供給体制をいち早く構築することが、今後のパワー・アナログ半導体における国際的な競争力の向上につながると考えています。そのため、2023年度の決算発表では、政府からの助成金も活用し、2021年度から2025年度までの成長投資を6,000億円から7,000億円に増額することを発表しました。売り上げに占める設備投資の割合が高い状況が続いており、負担が大きいものの、SiCパワーデバイスを中心に、注力商品のシェアの獲得に向けて戦略的な投資が必要不可欠だと考えています。
中期経営計画達成のためにも、最終年度の2025年度で業績を回復させるには、この2024年度でしっかり精査し、強固な経営基盤を築くとともに、企業価値の向上に努めてまいります。

2024年4月1日付で、ロームは同社100%子会社のラピステクノロジーの吸収合併を実施。

グローバルメジャーに向けたビジネスモデルの変革

更なる成長のためには、市場の変化や地政学リスクに備えたビジネスモデル変革は不可欠。他社との連携、M&Aも常に視野に入れていく。親和性が高い東芝の半導体事業との業務提携に向け、技術開発、生産、販売、調達、物流など、あらゆる事業活動で連携を強化し、両社の企業価値向上を目指していく。

グローバルメジャーに向けたビジネスモデルの変革

グローバルメジャーを目指すにあたっては、市場の変化や地政学的リスクにも目を向けることが必要です。市場軸でいえば、自動車、産業機器、民生機器といった分野があり、地域別では、日本が主ですが、中国、アジア、欧州、米州で事業を展開しています。特定のお客様、地域に偏りすぎると、何か突発的な問題が起きた場合、会社としての売り上げが急落してしまいます。そうしたことがないよう、バランスの良いビジネス設計をできるよう努めています。例えば、SiCパワーデバイス事業では、特定の地域のお客様に依存するのではなく、130社以上のワールドワイドなお客様からの採用が決まっています。生産拠点の分散も含め、地政学リスクに対してしっかりと対策を講じていきたいと考えています。

また、オーガニック成長を続けることを基本としつつ、他社との連携、M&Aも進めていきます。その一つが、東芝デバイス&ストレージと進めるパワー半導体の製造連携です。共同で申請していた製造連携及び量産投資計画が、日本政府(経済産業省)の「半導体の安定供給確保のための取組に関する計画」として認定され、ロームは最大で964億円の助成金を見込んでいます。
ロームと東芝は、製造連携を進めるパワーデバイスのみならず、アナログICやロジック、マイコン、小信号デバイスといった重なる事業領域が多くあります。注力製品のカテゴリーも近く、親和性が高いため、より大きなシナジーが発揮できると考えています。そこでロームは2023年、東芝の非公開化に参画しました。2024年6月から、東芝デバイス&ストレージの半導体事業において、技術開発、生産、販売、調達、物流など、あらゆる事業活動で連携を強化することで、両社の企業価値向上を目指す協議を開始しています。今後1年をかけて、しっかりと話を進め、より良い連携の形につなげたいと考えています。
本件に関しては、具体的な説明ができていないことで、市場から不安の声が上がっていることは理解しています。できるだけ早く連携の道筋を見出し、その内容について発信できるよう努めますので、なにとぞご理解ください。厳しい市場環境の中ではありますが、成長の実績をしっかりとつくり、ロームの意思を株主やステークホルダーの皆さまにわかりやすく伝えていくことに努めてまいります。

人的資本経営の実現による「会社の品質」を向上

ロームが取り組むべき大きな課題の一つは人的資本経営であり、2023年度から取締役会で本格的に議論を開始。企業の目指す姿に共感し、自律的な成長や多様性を尊重しあえる人財の育成や企業文化を形成することで、グローバルメジャー実現に向けた基盤を整備する。

ステークホルダーの皆さまから信頼される会社になるには、「会社の品質」を向上させることが重要と考え、ONE ROHMでサステナビリティ経営の高度化を推進しています。なかでも、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を含む人的資本経営は大きな課題の一つであると認識しており、2023年度からは取締役会で本格的に議論を開始しました。
取締役会ではまず、人的資本経営ストーリーの全体像について議論しました。会社の目指す姿として基本方針や経営ビジョンを掲げ、長期的にはグローバルメジャーの実現を目標としています。そして、それを実現するために求められる人財像を突き詰めたところ、やはり企業理念や会社の目指す姿に共感し、自律的な成長や多様性を尊重しあえる人財が必要という結論に至りました。ここで課題となるのが、このような人財のグローバルレベルでの獲得や育成、そして意識の変革です。そのため、ロームでは近年さまざまな取り組みを行っており、その一つとして、2024年4月に本社人事部にHuman Resources as Business Partner (HRBP)を組織しました。グループ全体の持続的な発展に寄与するグローバルタレントを、世界を舞台に獲得、育成するなど、各事業・グループ会社の戦略や人的課題に寄り添い、共に解決していく役割を担うだけでなく、自立した成長型のマインドセットを持ったプロフェッショナル人財の育成に寄与し、グローバルメジャー実現に向けた基盤を整備していきます。また、多様性を尊重し、相互に認め合う意識の変革には対話の文化が不可欠であり、そのために立場に関係なく日頃から本音で話せる環境を構築し、風土を醸成していければと考えています。
事業の持続的な成長や中長期的な企業価値の向上につなげることができるよう、今後も取締役会において議論を続けていきます。

人財マネジメント

企業価値の最大化のため、更にガバナンスを強化

厳しい局面を乗り越え中期経営計画を達成するため、社外取締役が取締役会議長に就き、ガバナンス改革を推進する。

企業価値の最大化のため、更にガバナンスを強化

ロームでは、「企業目的」「経営基本方針」などの目的・方針を実現するため、常に最良のコーポレートガバナンスを追求しています。ロームはすべてのステークホルダーに支えられた存在であるとの認識に基づき、企業の運営及び行動が公正性、健全性、透明性に根ざしたものでなければならないと考えています。
ガバナンス改革の取り組みでは、独立社外取締役比率を向上させるとともに、報酬構成や取締役の当社株式保有に対するあり方について協議を継続するなど、着実に成果を出しています。

2024年4月からはこれまで社長が務めてきた取締役会議長を、社外取締役である南雲忠信氏にお願いしています。私が議長のときも、活発な意見は出ていましたが、一方で、社長である私の発言や思いが取締役会議長の発言となることに違和感を覚えるようになりました。横浜ゴム(株)の代表取締役社長や会長を務められた南雲氏は、豊富な知識と経験を有し、グローバル戦略を積極的に推進した実績をお持ちです。南雲氏が議長となり、私も率直に意見を言いやすくなり、これまで以上に活発な議論ができるようになったと思います。

また、社外取締役に就任した小崎亜依子氏は、サステナビリティファイナンスの専門家として事業創出などを支援してきた豊富な経験をお持ちのため、取締役会だけでなくサステナビリティ経営委員会にも入り込んでいただき、財務・非財務が両輪一体となった経営を実現するための助言を期待しています。そして、社員とも積極的にコミュニケーションをとり、多様な社員が挑戦できる土壌づくりをサポートしていただきたいと考えています。
役員報酬については、株主の皆さまとの一層の価値共有を深めることを目的に、2024年6月に取締役の株式報酬に関する方針・制度について見直しを行いました。「グローバルメジャー」を目指すべく、今後も引き続き、企業価値の持続的な向上につながる最適な報酬制度のあり方を探求していきます。

コーポレートガバナンス

50年後、100年後も人々の豊かな暮らしと社会の発展を支え続ける会社となるために

100年後の未来を予測することは難しいが、ロームは良い商品を生み出して社会に役立つ会社になるとの創業以来の思いを、この先も持ち続けていく。

地政学的リスクへの警戒など、世界経済の見通しはさまざまな要因が影響し不透明ですが、エレクトロニクス市場では気候変動対策や脱炭素化社会に向けた省エネ化の一層の促進に加えて、各国における工場の自動化・デジタル化投資などが進むと思われます。特に、我々ロームが重点市場として取り組んできた自動車や産業機器市場では、環境負荷の低減、カーボンニュートラルを達成するため、電動化を中心に技術革新が進んでおり、そのカギを握るのが、パワー半導体や、アナログ半導体です。昨今の大きな動きとしては、AIの普及があります。AI普及によりサーバーの需要が広がることで、大量の電力を使用することが懸念されています。こういった場でも、ロームのパワー・アナログの技術が貢献できるのではないかと思います。

社会やお客様からの期待も大きくなるなか、エレクトロニクス(商品・技術)で社会課題を解決していくことがロームの使命と考え、それを明文化したのがステートメントや経営ビジョンです。2050年ごろまでは、これらに基づき、エレクトロニクスの技術で世の中の課題を解決し、人々の暮らしを豊かにするような商品を生み出して社会に役立つ会社になろうという思いを、持ち続けてまいります。更にその先、例えば100年後となると、もちろん正確に予測することはできません。ただ言えるのは、「良い商品を国の内外へ永続かつ大量に供給し、文化の進歩向上に貢献する」との創業以来の企業目的は引き継がれていくということです。
100年後の「良い商品」がエレクトロニクスではないかもしれませんが、企業目的に基づき、事業活動を行えば、新たな社会に役立つ商品は生み出されていくはずです。そのためにしっかりとした経営基盤をつくってまいります。私が先頭に立ち、「社内一体となって、品質保証活動の徹底化を図り、適正な利潤を確保する。」という経営基本方針のもと、技術と商品を通して環境や社会に貢献していけるよう、邁進してまいります。

ステークホルダーの皆さまには、ご理解とご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

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