製造における取り組み
高品質な製品を安定的に供給する
次世代生産ラインを構築
取締役 専務執行役員
品質、生産、汎用デバイス事業、モジュール事業担当
ローム・アポロ(株) 代表取締役社長
東 克己
本インタビューは、ROHM Group Integrated Report 2024に掲載されたものです。
ロームは「品質管理基本方針」で「つねに生産方式の近代化を図り」とうたっているように、創業以来、新技術をいち早く知り、考察し、果敢に取り入れることを実践しています。グローバルメジャーを実現する上で欠かせないロームの強みは、自社で一貫して生産する「IDM」であり、その意義は品質第一の実践、それにコスト競争力向上です。この意義を生かすには、技術力・観察力・実行力が競合他社を上回ることが大前提となります。
一方で、今の生産方式や材料で他社に勝っているとしても、それが永続的に続くことはありません。ものづくりの基本である3現主義(現場、現物、現実)やローム独自のノウハウを活用しながら、品質や歩留まりをより一層向上させる取り組みが必要だと考えています。
今後の課題は「伝承と進化」です。伝承では、グループ全体の技術の知を結集し、教育資料にまで落とし込むこと。進化ではフレキシブルラインをはじめとする生産ラインや装置の進化を図ること、また生産現場の「ビッグデータ」を精査・分析し、ムリ・ムラ・ムダのない管理体制を築いていきます。今後もロームはハード(装置)・ソフト(管理)両面で進化するものづくりを目指していきます。
SiCパワーデバイスの生産キャパシティを増強
ロームは、主力商品であるSiCパワーデバイスの安定供給を実現するため、先行投資によって生産能力の拡大を図っています。自動車や産業機器市場では、環境負荷の低減、カーボンニュートラルを達成するため、電動化を中心に技術革新が進み、市場の拡大が見込まれています。足元のEV需要が弱含んでいるものの、将来に向けた成長性、引き合いの強さは変わっておらず、生産能力を増強する計画を進めています。現在、6インチSiCウエハを使用した生産が中心となっていますが、8インチにシフトしています。同面積当たり、20~30%程度のコスト改善が見込まれており、生産キャパシティとコストパフォーマンスを大きく向上させることができます。2023年10月に取得した宮崎第二工場の立ち上げも並行して進めており、ウエハにおいては2024年度中に、デバイスにおいては2026年度中に量産稼働させ、今後ロームの主力生産拠点として活用していきます。
フレキシブルライン
2021年4月、独自に培った技術を集約して組み立て工程を自動化した「フレキシブルライン」が稼働しました。これにより、故障モード影響解析(FMEA*)のもと、加工性能の向上により製品品質の向上を実現しました。また、生産指示や材料・製品の運搬供給、工具交換、人作業の自動化によりばらつきを極小化し、省人化によって人生産性は従来の2倍に引き上がりました。さらに工程設計を企画段階から実施することによりリードタイムは従来の1/10となりました。自動車や産業機器市場では、少量でも長期間安定して商品の供給を望む顧客も多く、フレキシブルラインはそうした顧客の要望にこたえ、高品質で多品種少量生産が可能なラインとなっています。現在、このコンセプトラインを活用し、さまざまな技術検証を積み重ねている最中であり、そこで得られた要素技術を開発中の無人化ワイドラインに生かし、量産工場へ展開するのが当面のミッションです。
*FMEA:Failure Mode and Effects Analysis(故障モード影響解析)の略。製品や製造プロセスが持つリスクを設計段階で評価し、取り除く手法のこと。