interview202301_title_cms

対談:人財への取り組み

interview202301_main_cms

ロームの持続的成長を支える人財戦略の在り方

本インタビューは、ROHM Group Integrated Report 2023に掲載されたものです。

2030年グローバルメジャー実現に必要な人財像とその人財の保持育成に向けた取り組み

立石

グローバルメジャーを目指すには、グローバルで活躍できる人財が自然と育っていく風土・環境を醸成することが大事だと思っています。ロームは多くの海外関係会社と共に、「ONE ROHM」として一つになろうとしています。そのためには、日本と海外の営業組織は同じチームの一員として対等に仕事をし、また、日本のFAEと海外の開発者や技術者とも、一つのチームとして協力する環境を作っていかなくてはなりません。さらに、日本から海外へ積極的に人財を送り出し、海外関係会社の人財を日本で受け入れるなどの取り組みを続けることで、地域の枠に捉われないグローバル人財が育っていくことを期待しています。

井上

私は長く外資系企業や国際機関でグローバルな人事に関わってきました。現在は大学で人的資源管理やリーダーシップ、組織マネジメントなどを教えています。その観点から、ロームが「経営基本方針」の中で「広く有能なる人材を求め、育成し、企業の恒久的な繁栄の礎とする」ことを定めていることを素晴らしいと思っています。グローバル人財に関しては、立石さんのおっしゃる人財が育っていく風土・環境の仕組みを作ることはとても重要と思いますし、現在行われているうまくいっている取り組みを続けていくことは重要と思います。それに加えて、経営戦略に基づき人的ポートフォリオを構築することも必要と思います。グローバルメジャーを目指す上で重要かつ戦略的なポジションを特定し、どのようなスキルを持った人がどこにいつどの程度必要なのかを明確にするとともに、国内国外を問わずどこにどのような人財がおられるのかを可視化し、必要なマッチングをしていくことも重要と思います。さらに、会社が期待するグローバル人財像を社員の皆さんにお伝えしていくことも重要と思います。

立石

人財の育成環境が重要なのは、働いている人が幸福を感じられなければ、会社から去ってしまうからです。グローバル人財を育成し、その人財を保持できる会社になるには、互いの考え方や文化の違いを許容できる企業風土を醸成しなくてはなりません。また、グローバル企業であるためには、日本の組織と海外の組織が適宜交流し、連携することが必要だと考えています。現在、役員間の議論では育成を目的とした配置転換や、若手社員に積極的に海外勤務経験を積ませるなどのジョブローテーションを検討しています。

立石

井上

社員の皆さんが、会社の仕事をするなかで働きがいを感じて日々過ごしていただけるのが大切なことと思っています。一方、働く人の価値観は多様化しており、働きがいについても一筋縄ではいきません。例えば、日本と他国を見てみると、海外企業の多くはジョブ型雇用で、基本的に全員が特定分野のプロ、高度専門人財になることを目指しているといってもよいでしょう。グローバルメジャーとなれば、海外の同業他社にいる、そうした高度専門人財と競えるほどの専門性を培う必要があり、これまでの日本の企業に多かったローテーションで人財を異動させるゼネラリスト育成方式では、太刀打ちできなくなる懸念があるのではないでしょうか。

立石

確かにゼネラリストだけではその通りだと思います。ただ、海外の企業でも、幅広い知識を持って専門家と専門家をつなげる役割を持つ高度な技術者がいます。そのような横のつながりを強化できるゼネラリストがいることで組織を有機的に結合し、業務効率を高めています。ロームには既にこういった人財がいますので、ここに高度な専門性を持つ技術人財の専門家を増やしていくことで強い組織ができ上がると考えています。そういった専門家の育成を加速するため、2019年度に「スペシャリスト職制度」を導入しました。これは、キャリアパスを複数の選択肢から自分の意思で選ぶことができ、働き方の多様化を推進する施策でもあります。各自が意思に沿ったキャリアを選ぶことで、より働きがいのある職場環境を実現することを目指しています。今後、同制度により社内の専門家が増えていけば、海外や他社から専門人財を採用した際にも、すぐ最適なポジションに配置できる組織体制を実現できると考えています。

井上

今後の技術の発展とともにエンジニアの専門分野の細分化が進み、その分野での先端性は更に重要になっていくと思います。ロームのスペシャリスト職制度も、日本国内だけでなく、海外の人財とも渡り合える高度専門人財の育成につながると期待しています。また、海外では日本以上に学歴が重視され、博士号を取得していることが高度の専門性を持っていることの証になっているので、ロームでも博士号取得のサポートや、博士号を持つ人財の採用を推進していくことが必要だと思います。

井上

FAE:Field Application Engineer。顧客への製品、各種アプリケーションへ技術サポートを行うエンジニア

チャレンジを生み出す企業風土の醸成に向けて

立石

ロームは元来、「出る杭を打たない」風土を持つ会社です。専門性の強化に向けて、経営側からもチャレンジを推奨し、会社としてサポート体制を整えています。しかし、中国やインドなどの海外に比べると、日本は文化的な特性から積極的に専門性を突き詰める傾向が低く見えます。海外社員と話をすると、自分のキャリアアップに対する意識がとても高いことに驚かされます。専門性を高めることで自身のアイデンティティをどうアピールするかをしっかり考えています。

井上

確かに海外では、周囲と自分の意見が違っても自分の意見を堂々と主張する人が多い気がします。それは、経験や考え方が違っているから、自分は人とは違った貢献ができると思っているからかもしれません。まさにダイバーシティなのですが、こういったばらばらな意見をうまく統合するには、彼らの強みを生かしそれを組織の力にしていくインクルージョン力とでもいうものが必要です。違いをよく認識し、高度な専門知識を持つ人財を、彼らと同等の知識はなくともチームとしてまとめるマネジメント手腕が、グローバル経営を進めていくリーダーには重要だと思います。

立石

もう一点意識しているのは、イノベーションは、非連続な技術から起こるということです。革新的な技術は従来の延長線上からどこか連続性が切れていて、そうした技術や視点を持っている人財の失敗を許容できる文化が必要です。一方で、ベースとなる連続性のある技術をキープして従来の製品の延長線上の開発を進める人財というのももちろん必要で、研究開発を考える際は、双方のバランスが大事だと考えています。

井上

これまでの経験値では推し量れない新しい技術や異文化に対してオープンになること、それに興味を持って面白がり、創造的に考えることができる人財を期待したいところです。立石さんのおっしゃるとおり、イノベーションには非連続性が必要であることを意識する心掛けが必要だと思います。

立石

同質性を好む文化のある日本では、心掛けから始めるのもいいかもしれません。従業員エンゲージメントを高めるためには、そうした会社の方向性をしっかり説明し、理解・共感してもらうことが重要です。従業員がその方向性に共感し、会社の成長に貢献することで自己実現を実感し、さらにその成果や貢献を認められることが、エンゲージメントを高めることにつながると考えています。

井上

働く人はどこで働いているにせよ、理解と共感、そして貢献が認められることを重視していると思います。ロームという会社を好きになり、良い会社だと広めてくれることが相乗効果を生み、海外にまで波及すれば、本当のグローバルメジャーになっていくのだろうと思います。

common_css

New_company localNavi.js