工場や物流倉庫における設備管理・状態監視のメンテナンスフリー化に貢献する、
電池不要な静電容量センサ内蔵のRFID通信LSI「MR793200」を開発

<要旨>

24pin WQFN

ロームグループのラピステクノロジー株式会社(以下、ラピステクノロジー)は、工場や物流倉庫における近距離無線通信で設備管理・状態監視を行うIoT機器に向け静電容量センサ内蔵のRFID*1通信LSI「MR793200」を開発しました。
新製品は、ラピステクノロジーが培ってきた無線通信技術とマイコンの省電力アナログ/デジタル変換回路技術を組み合わせることで開発、静電容量センサでの状態検出とUHF帯*2RFIDの無線通信をワンチップかつ電池不要な動作を実現します。「MR793200」が内蔵する静電容量センサは、広い測定範囲(最大100pF)と高検出精度(±5%)を実現しており、重量やゆがみといった状態監視の用途にも対応できます。これら内蔵する静電センサの特長と電池不要な動作により、従来必要だった複数のデバイス調整をなくすとともに電池管理を必要とした設備管理・状態監視向けIoT機器のシンプル化とメンテナンスフリー化に貢献します。
新製品は、2022年12月よりサンプル出荷(サンプル価格:1,000円/個:税抜)を開始しており、2023年3月から量産を開始する予定です。生産拠点は、前工程がラピスセミコンダクタ宮城工場(宮城県)、後工程は ROHM Integrated Systems (Thailand) Co., Ltd.(タイ)となります。なお、バンプ付きウエハ品「MR7930」も2023年2月にサンプル出荷を開始する予定です。
今後もラピステクノロジーは、IoT機器の用途・ニーズに適応する高性能・高品質の無線通信LSIを開発することで、利便性の高いIoT社会の実現に貢献していきます。

<背景>

近年、工場や物流倉庫、インフラなどで、業務の簡易化や効率化を目的として、Wi-Fi/Bluetooth®等の無線通信と状態監視用にセンサを採用した設備管理・状態監視向けIoT機器の普及が進んでいます。一方、これらIoT機器は電池管理やメンテナンスの工数が大きな課題となっており、Wi-Fi/Bluetooth®に代わる通信として、電池不要での動作を特徴とし、国際標準規格「ISO/IEC 18000-63」「EPC Gen2」*3への仕様統一で利便性が高まったRFID通信が採用されるようになりました。しかしながら、状態監視用のセンサには依然として電池が必要でした。
ラピステクノロジーは、この課題に対して、UHF帯RFIDの無線通信と静電容量によるさまざまな物理状態の検出を電池不要で実現することで、IoT機器のメンテナンスフリー化に貢献する新製品を開発しました。

 
新製品「MR793200」を使用したアプリケーション例
静電容量センサを重量検出へ応答する場合

<新製品の特長>

1. 電池不要かつ静電容量センサとRFIDの無線通信を搭載することで、IoT機器のメンテナンスフリー化に貢献

新製品は、通常のRFID通信だけでなく、内蔵する静電容量センサも電池不要で動作できます。3m程度のRFID通信と静電容量による状態検出をワンチップかつ電池不要で実現でき、重量変化や構造劣化などの状態監視を行うIoT機器のメンテナンスフリー化に貢献します。

2. 高い静電容量値と高検出精度を要求する用途に対応可能

新製品に内蔵された静電容量センサの性能

新製品に内蔵された静電容量センサは、電池不要でありながら最大100pFの静電容量まで対応でき、±5%の高精度で測定できるため、高静電容量と検出精度が必要なアプリケーションに適用可能です。例えば、物流パレットでの細かな重量検出、数10cmのケーブルでのゆがみ検出など適用範囲が広いため、さまざまなセンサ電極形状・材質を活用した電池不要なIoT機器の開発にも貢献できます。

3. 業界標準規格準拠のリーダー・ライター対応し、幅広く搭載可能

新製品は、UHF帯RFID通信の国際標準規格「ISO/IEC 18000-63」「EPC Gen2」に準拠するリーダー・ライター(読み取り端末、書き込み端末)に対応しているため、既存のUHF帯RFID通信環境にそのまま使用できるなど、幅広いアプリケーションに搭載可能です。

品番データ
シート
RFID通信静電容量センサ動作温度[℃]パッケージ
[mm]
通信特性[dBm]通信プロトコル検出容量[pF]検出精度[%]
NewMR793200PDFread: -9.5
sensor: -8.5
ISO/IEC 18000-63,
EPC Gen2
5 ~ 100±5-40 ~ +65WQFN24
WQFN24
(4.0×4.0×0.8)

<アプリケーション例>

◇工場や社会インフラにおける設備管理: 漏水検知、ネジ緩み検知、腐食劣化検知、歪み検知
◇物流倉庫における状態監視: 空棚管理、パレットの積載管理、輸送物の積付け・固縛管理
など、静電容量センサによるさまざまな物理状態の検出をRFID通信で管理するアプリケーションに最適です。

<サポート情報>

下記公式Web上のRFID紹介ページにて、製品の概要を紹介するとともに、データシートを公開しています。
URL:https://www.rohm.co.jp/lapis-tech/product/telecom/mr7930_793200

<用語説明>

*1) RFID(Radio Frequency IDentification)
無線通信を使って非接触で特定の電子タグ(RFIDタグ)を自動で認識し、データを取得する技術。
*2) UHF帯(Ultra High Frequency: 極超短波周波数)
300MHz~3GHzの周波数帯域のこと。
RFID通信においては、国際標準規格「ISO/IEC 18000-63」で860MHz~960MHzの周波数帯域が規定されている。さらに、日本では、920MHzの周波数帯域として規定されている。
*3) 国際標準規格「ISO/IEC 18000-63」「EPC Gen2 (Electronic Product Code global Class1 Generation2)」
ISO/IEC 18000-63は、RFIDを採用するデバイスが製品としての互換性を確保し、相互運用性を促進することを目的に制定された。動作周波数をはじめとするさまざまな項目でパラメータやプロトコルが規格化されている。
EPC Gen2では、RFIDタグに対して、RFIDを使ってデータを読み書きするためのルールが規定化されている。
・Bluetoothは米国Bluetooth SIG, Inc.の商標または登録商標です。