最大1W給電可能なワイヤレス給電チップセット「ML766x」を開発
~業界最小クラスのシステムサイズでウェアラブル機器のワイヤレス給電と非接触通信を両立~

 

2021年10月19日
※2021年10月 ラピステクノロジー調べ

<要旨>

BM1390GLV

ロームグループのラピステクノロジー株式会社(以下、ラピステクノロジー)は、ウェアラブル機器向けに、最大1Wのワイヤレス給電が可能なチップセット「ML7661」(送電側)、「ML7660」(受電側)を開発しました。
新製品は、送受電に必要な制御回路を内蔵することで、外付けマイコンを不要とし、1W給電クラスでは業界最小クラスのシステムサイズを実現。リストバンド型血圧計やスマートウォッチ、補聴器など、長時間装着を想定したバッテリー容量の大きいウェアラブル機器に最適です。さらに、新製品は、13.56MHzの高周波数帯を採用しているため、同じ周波数の近距離無線通信規格「Near Field Communication(NFC)※1」での非接触通信も可能です。1つのチップセットでワイヤレス給電と通信ができるため、産業機器やPCの冷却用ファン、E-bikeのトルクセンサなど、有線ではデザインに制約が出るような回転系機構を持つ機器において、デザイン性や設計自由度の向上に貢献します。
なお、新製品は、2021年9月にサンプル出荷(サンプル価格500円/個:税抜)を開始しており、2022年4月から当面月産10万個の体制で量産を開始する予定です。生産拠点は、前工程がラピスセミコンダクタ宮城工場(宮城県)、後工程は「ML7661」が ROHM Integrated Systems (Thailand) Co., Ltd.、「ML7660」がラピスセミコンダクタ宮崎工場(宮崎県)です。
ラピステクノロジーは、今後も高品質なワイヤレス給電LSIを開発し、多くの人が暮らしやすいスマート社会の実現に貢献していきます。

<背景>

近年、小型電子機器(特に小型医療機器)の感電に対する安全性向上のニーズが高まっています。これに対して、ワイヤレス給電は電源コネクタを必要としないことから、密閉型の筐体で防水・防塵性能を高めることができるため、充電や発汗時の感電に対する安全性を大きく向上させることが可能です。しかし、現在ワイヤレス給電で広く普及しているQi(チー)規格※2は、給電量が最大15Wと大きいものの、アンテナサイズとチップセットを含めたシステムサイズも大きく、ウェアラブル機器への搭載は困難でした。
ロームグループのラピステクノロジーは、この課題に対し、ワイヤレス給電の周波数帯に13.56MHzを採用することで、ワイヤレス給電機能と非接触通信機能を内蔵した、給電量200mWのワイヤレス給電チップセット「ML763x」を2020年6月より量産。市場から好評を得た一方、リストバンド型血圧計やスマートウォッチ、補聴器などバッテリー容量の大きいウェアラブル機器に対応できるよう、給電量アップを求める声もありました。そこで、今回、小型かつ給電量1Wの新製品を開発し、ワイヤレス給電を搭載可能なアプリケーションをさらに拡大しました。

ワイヤレス給電 背景

<新製品の特長>

1. 最大1Wのワイヤレス給電を業界最小クラスのシステムサイズで実現

BM1390GLV

新製品は、必要給電量に応じた送電電力の最適制御により、LSI本体の発熱を抑制することで、最大1Wのワイヤレス給電を実現。また、給電に高周波数帯の13.56MHzを採用しているため、アンテナの小型化も実現しており、一般品に比べてシステムサイズを30%削減可能なため、リストバンド型血圧計やスマートウォッチ、補聴器等の小型電子機器に最適です。さらに、I2Cインタフェース※3とSPIインタフェース※3に対応した通信プロトコルを内蔵しているため、これらを搭載するデジタルセンサ等をマイコンレスで制御することができます。マイコンの実装スペース削減により、給電量1Wクラスの一般品と比較しても、業界最小クラスのシステムサイズです。

2. ワイヤレス給電と非接触通信の両立により、アプリケーションのデザイン性や設計自由度向上に貢献

BM1390GLV

新製品は、ワイヤレス給電に13.56MHzの高周波数帯を採用することにより、同じ13.56MHzの近距離無線通信規格「Near Field Communication(NFC)」での非接触通信も可能です。ワイヤレス給電と非接触通信の両方ができるため、例えば産業機器やPCの冷却用ファン、E-bikeのトルクセンサ※4など、有線ではデザインに制約が出るような回転系機器において、デザイン性や設計自由度の向上に貢献します。また、独自の通信フォーマットを採用したことにより、ML763xにおいて4msであったデータ通信間隔をML766xでは1msに短縮。よりリアルタイムに回転数の制御やモニタリングを実現します。

3. マイコンレスのシステム構築により、開発工数を削減

新製品は、給電効率を上げるための送電量調整と二次電池仕様に合わせた温度閾値等のパラメータ設定のみで簡単にシステムを構築可能です。これにより、システム制御用マイコンとそのプログラム開発が不要となるため、開発工数の削減に貢献します。同時に、低消費電力モードも搭載しており、システム待機時の消費電力も大幅に削減します。

<開発サポート>
本チップセットには、13.56MHzワイヤレス給電の評価を簡単に開始できる「ML766x」の評価キットを用意しています。また、PCからユーザー個別の設定ができるコンフィグレーションツールやアンテナデザイン、アンテナ調整に関するドキュメントも用意しており、お客様のご要求に応じたさまざまな給電システムの構築をサポートします。(評価キット及びサポートに関しては、個別にお問い合わせください。)製品の詳細は下記URLからご覧ください。
https://www.lapis-tech.com/jp/semicon/wpt/landing/ml7660_61.html

<製品仕様>

項目 ML7661 ML7660
機能 13.56MHzワイヤレス給電送電LSI 13.56MHzワイヤレス給電受電LSI
仕様 ・シリアルインタフェース SPI/I2C ・シリアルインタフェース SPI/I2C
・496Byte Data Flash
・10ビットA/Dコンバータ:外部信号4本測定可能
・NFC Forum Type 3 Tag機能搭載
電源 5V アンテナ磁界からの生成電圧で起動
動作温度 -40℃~+85℃ -40℃~+85℃
パッケージ 40pin WQFN(6.0mm×6.0mm×0.8mm) ・30pin WL-CSP(2.28mm×2.61mm×0.48mm)
・32pin WQFN(5.0mm×5.0mm×0.8mm)

<応用分野>

  • ・医療クラス2までの医療向けウェアラブル機器: 補聴器、リストバンド型血圧計
  • ・ウェアラブル機器: スマートグラス、スマートウォッチ
  • ・回転系機器: 冷却FAN、E-bike向けトルクセンサ

など

<用語解説>

※1:近距離無線通信規格「Near Field Communication(NFC)」
NFCとは、13.56MHzの周波数を使用して触れる程度の距離で通信する近距離無線通信技術です。業界標準団体NFCフォーラムで仕様を定義しています。NFCフォーラムにはアソシエイトメンバーとしてロームが加入しています。

※2:Qi(チー)規格
ワイヤレスパワーコンソーシアムが策定したワイヤレス給電の国際標準規格。スマートフォンのワイヤレス給電で採用されている。

※3:I2Cインタフェース、SPIインタフェース
I2CはInter-Integrated Circuit、SPI はSerial Peripheral Interfaceの略で、どちらもコンピュータ内部で使われるデバイス同士を接続する同期式シリアル通信の1つ。非同期式シリアル通信に比べて、高速で通信でき、複数のスレーブを接続することができる。

※4:トルクセンサ
回転時の力の大きさ(トルク)を電気信号に変換するセンサ。E-Bikeにおいては、踏み込み量を検知し、モータにフィードバックすることに使う。

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