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ロームのパワー半導体 回路設計者を⽀える先端素材と応⽤技術

 
 

ロームのパワー半導体
回路設計者を⽀える先端素材と応⽤技術

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電⼒消費の増⼤とパワー半導体

電動⾃動⾞の浸透や、AIの進化によるサーバー電⼒消費などを背景に、世界の電⼒消費量は年々増え続けています。また、化⽯燃料をベースとした⽕⼒発電や経済活動によるCO2(⼆酸化炭素)の排出増加が⼤きな社会課題となっており、これに⻭⽌めをかけるためのエネルギー消費の効率化が、喫緊の課題となっています。
ロームは、こうした社会情勢に応えるべく、電⼒効率改善のカギを握るパワー半導体の開発、その活⽤のためのノウハウ提供に注⼒しています。

電⼒消費の増⼤とパワー半導体

パワー半導体の選び⽅  

様々なサプライヤーが、多くの半導体部品を提供しています。半導体部品は、個々のスペック、特性だけで選べばよいのでしょうか? 回路設計者は、設計プロセスでさまざまな課題に直⾯します。特にどんなアプリケーションでも電源回路は不可⽋ですが、寄⽣インダクタンスで回路動作が安定しなかったり、過熱による問題が発⽣したりすることが多々あります。また、すべてのアプリケーションにとってベストな電⼦部品というものは存在せず、取捨選択が求められます。サプライヤーの選定においては、こうした問題に対応するノウハウを持っている企業を選ぶことで、回路設計者の負担軽減が可能となります。

回路設計者の悩みに応える 

パワー半導体を使⽤する回路設計者は、寄⽣インダクタンスの低減、熱放散の設計、保護回路の実装など、パワー半導体を回路に組み込んだ場合に⽣じる諸問題まで視野に⼊れた製品開発を⾏う会社を選択することで、設計の労⼒を削減できます。たとえば、寄⽣インダクタンスを最⼩限に抑えるように、事前に設計されたパワーモジュールを提供する会社を選択することで、回路設計時の試⾏錯誤を減らすことができるでしょう。
また、デバイスの安定動作を確保するために、そもそも⾼い放熱性能を持つパッケージを開発する会社も、理想的なパートナーになるはずです。
さらに、過電流、過電圧、過熱保護などの保護機能を内蔵したパワーモジュール(IPM)を採⽤すれば、設計者の労⼒をもっと⼤幅に削減できます。
シリコン、SiC、GaNなど、幅広いデバイスオプションを提供し、アプリケーションに応じた最適解を提供できる会社もよいでしょう。例えば、SiCデバイスは⾼効率で低損失の電⼒変換が可能であり、電気⾃動⾞(EV)や再⽣可能エネルギーシステムへの採⽤が進んでいます。また、GaNデバイスは⾼周波特性にも優れており、⾼速スイッチングによって更に⾼効率が期待できる通信機器やデータセンターでの活⽤が期待されています。このようにSiCとGaNは優れた材料ですが、使⽤される⽤途によっては、価格の⾯を含め、シリコンの⽅が有⽤であることがよくあります。すべて提供可能なサプライヤーを選べば、価格と性能のバランスの取れた、最適なトポロジー、部品を提案してもらえることでしょう。別な観点で⼤事なのが、⻑期供給プログラムを通じて製品の安定供給を確保している企業を選ぶことです。産業機器や⾃動⾞などライフサイクルの⻑いアプリケーションにも、安⼼して採⽤できるはずです。また、シミュレーション⽤のモデルデータを豊富に提供しているメーカーを選べば、実際に⼿元で回路を試作する前に、PC上で問題点を洗い出し、設計の⼿間を省くことができます。
⼀⾔で⾔えば、回路設計者の⼿間を軽減するための対策が、事前に製品・サービスレベルに含まれているメーカーを選ぶと良いでしょう。

パワー半導体のトータルソリューション  

ロームは、世界で初めてSiC(シリコンカーバイド:炭化ケイ素)を使ったMOSFETを量産するなど、⻑年パワー半導体分野においてノウハウと技術を蓄積してきました。SiCと同じく次世代半導体として注⽬されているGaN(ガリウムナイトライド:窒化ガリウム)を量産するなど、新たな素材開拓にも成功しています。
ローム株式会社は、各アプリケーションに最適なパワー半導体群として、シリコン、SiC、GaNから成る「Power Eco Family」を提供しています。様々な電⼒容量・周波数に対応するパワー半導体、その性能を引き出すためのドライバー等を提供することで、幅広い電⼒制御アプリケーションに対し、⼩型化・省エネルギーを実現します。

Power Eco Family

EcoSiC™

EcoSiC™(エコエスアイシー)は、新素材 炭化ケイ素(SiC)をベースとしたパワー半導体ブランドです。SiCはシリコンを上回る⾼耐圧、⾼耐熱性をもち、⼤電⼒のアプリケーションに最適です。具体的には、電気⾃動⾞や無停電電源装置などに使われます。ロームでは、SiC MOSFETやSiC SBD(ショットキーバリアダイオード)など、さまざまなSiパワー半導体を提供しています。

EcoSiC™

EcoGaN™

EcoGaN™(エコガン)は、新素材 窒化ガリウム(GaN)をベースにしたパワー半導体ブランドです。GaNはシリコンやSiCを上回る⾼耐電圧、⾼周波数動作を特徴とします。ロームは、GaN HEMT(⾼電⼦移動度トランジスタ)や、コントローラを内蔵したパワーステージICを提供しています。アプリケーションの低消費電⼒化と周辺部品の⼩型化、設計⼯数と部品点数の削減を同時に実現する、「使いやすいGaNデバイス」を標榜したブランドとなります。
SiCに⽐べて、⼩電⼒だが⾼周波数が求められるようなアプリケーション、例えば電源アダプターやデータサーバー電源、PVインバータなどをターゲットにしています。

EcoGaN™

EcoIGBT™

EcoIGBT™(エコアイジービーティー)は、シリコン絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)およびモジュール(IPM)のブランドです。⾼耐圧性に優れ、⼤電⼒アプリケーションで主に採⽤されています。同じく⾼耐圧を誇るSiCより⽐較的安価であり、代わりに低周波動作となりますが、電⾞の電源回路など⼩型化要求が少ない⼤型アプリケーションを中⼼に広く採⽤されています。

EcoIGBT™

EcoMOS™

EcoMOS™(エコモス)は、シリコンMOSFETのブランドです。⽐較的安価な素材であるシリコンを採⽤し、家電や産業⽤ロボットなど、中電⼒、中周波数領域を中⼼に、広範に採⽤されています。単なる価格優位性に留まらず、⻑年の開発努⼒により、ノイズ性能やスイッチング性能などの多岐にわたるパラメータから、⽤途に応じた製品選択ができる幅広いラインナップを特徴としています。

EcoMOS™

Power Eco Familyの特⻑

ロームのPower Eco Familyは、幅広いアプリケーション向けにさまざまな電⼒容量と動作周波数範囲をカバーしています。また、回路設計者が直⾯する課題を軽減するために、ドライバーやモジュールなどを充実させています。

資料  

パワー半導体とは何か?

パワー半導体とは、電⼒を制御するために設計された半導体電⼦部品の総称です。(ここではICを除外し、ディスクリートのみをパワー半導体と定義しますので、半導体素⼦ということになります)
パワー半導体は、産業機器、電気⾃動⾞、家電製品など、電気で動くさまざまなアプリケーションに組み込まれています。たとえば、電流と電圧を制御して、CPUの命令に基づいてモーターを動かしたりします。
電源回路に組み込まれるトランジスタやダイオード、サイリスタなどがパワー半導体に分類されます。

パワー半導体とは何か?

パワー半導体と⼩信号半導体の違い

パワー半導体は、電気エネルギーの効率的な制御と変換を可能にする現代の技術で重要な役割を果たす電⼦部品です。⺠⽣⽤電⼦機器から産業⽤電源システムまで、電気で動くすべてのアプリケーションで不可⽋な部品となります。パワー半導体は、電気信号の整流、増幅、切り替えなどの機能を持ち、CPUと実際の駆動部品の間を取り持ちます。
具体的には、トランジスタやダイオード、サイリスタなどの半導体素⼦がパワー半導体として使われますが、これらの素⼦の中にはパワー半導体ではなく⼩信号半導体に分類されるものもあります。
両者の違いは、「電圧と電流の⼤きさ」と「⽤途」で説明されます。

電圧、電流の⼤きさ

パワー半導体 : ⾼電圧や⾼電流を処理します。(約1W以上)
⼩信号半導体 : 低電圧・低電流に対応

⽤途

パワー半導体 : 電⼒の変換または制御。
⼩信号半導体 : ⾳声などの信号処理と増幅。
つまり、扱う電圧や電流の⼤きさによって、パワー半導体としてのトランジスタと⼩信号半導体としてのトランジスタが存在するわけです。

パワー半導体は、さらに「整流素⼦」と「スイッチング素⼦」に分類できます。
整流素⼦は⼀⽅向にのみ電流を流す機能を持ち、スイッチング素⼦はオン/オフスイッチ機能を持っています。さらに、スイッチング素⼦は、FETとバイポーラトランジスタに⼆分されます。

「整流素⼦」は、より具体的には、⼀⽅向にのみ電流を通す整流機能を⽤いて交流電流を直流電気に変換できるダイオードのことで、電⼒制御に関する様々な⽬的のために使⽤することができます。
「スイッチング素⼦」はトランジスタもしくはサイリスタのことで、どちらも電流をオン/オフできます。違いは、サイリスタはトランジスタよりも⽤途は限定されますが、より⾼い電圧や電流に耐えることができ、鉄道や電⼒網などで使⽤されています。

つまり、パワー半導体とは、「整流」と「スイッチング」の2つの機能を利⽤して、1W以上の電⼒を制御する半導体素⼦の総称とも⾔えます。

ダイオード、トランジスタ

ダイオード

ダイオードは、電流を⼀⽅向に伝導し、他の⽅向の電流を遮断する半導体素⼦の⼀種です。その中でも、1W以上の電⼒を扱うものを、パワーダイオードと総称します。電源、モーター制御回路、および電⼒変換回路で広範に使⽤されます。パワーダイオードには、整流ダイオード、スイッチングダイオード、ショットキーダイオードなど、さまざまな種類があります。整流ダイオードは通常、交流電源を直流電源に変換するために使⽤されますが、スイッチングダイオードは電流のスイッチとして使⽤されます。ショットキーダイオードは、順⽅向電圧降下が少ないことで知られており、特に⾼効率と⾼速スイッチングを必要とするアプリケーションで使⽤されます。

ダイオード

トランジスタ

トランジスタは、電気信号を増幅したり、スイッチとして機能したりする半導体素⼦です。その中でも1W以上の電⼒を扱うものを、パワートランジスタと総称します。トランジスタは、信号の増幅やデジタル回路のスイッチングが可能です。トランジスタは、⼩型で⾼効率なため、コンピュータ、スマートフォン、家電製品など、さまざまな電⼦機器に広く使⽤されています。また、集積回路(IC)の基本構成要素としても重要な役割を果たしています。

トランジスタ

バイポーラトランジスタ

バイポーラトランジスタは、エミッタ(E)、ベース(B)、コレクタ(C)の3つのレイヤで構成されています。NPN型とPNP型の2種類があります。
NPN型の場合、エミッタはN型半導体、ベースはP型半導体、コレクタはN型半導体で構成されています。
〈特徴〉
⼩さなベース電流で⼤きなコレクタ電流を制御します。電流増幅率が⾼いですが、スイッチング速度は⽐較的遅いです。ベース層は⾮常に薄いため、エミッタから注⼊された電⼦がベースを通過しやすく、⼤きなコレクタ電流を流すことができます。この構造により、⾼い電流増幅率を実現しています。
〈⽤途〉
電⼒増幅、オーディオアンプなど
理由:電流増幅率が⾼く、アナログ信号の増幅に適しています。ただし、スイッチング速度が遅いため、⾼速スイッチングアプリケーションには適していません。

バイポーラトランジスタ

MOSFET

MOSFETには、ゲート(G)、ドレイン(D)、ソース(S)の3つの端⼦があります。Pch型とNch型の2種類に分類されます。Nch型の場合、ソース、ドレイン領域がN型半導体で構成されています。
〈特徴〉
電圧制御タイプで、ゲートとソース間の電圧でドレインとソース間の電流を制御します。⾼速スイッチングが可能で、オン抵抗は低いですが、⾼電圧ではオン抵抗が増加する傾向があります。
ゲートに電圧を印加すると、絶縁膜下の半導体層に電界が発⽣し、電⼦が集まってチャネルを形成します。このチャネルを介して、電流はソースからドレインに流れます。このチャンネルはゲート電圧によって制御されるため、ゲート電圧を変化させることで電流の流れを調整できます。これにより、MOSFETは⾮常に⾼速なスイッチングが可能です。
このように、MOSFETは⾼速スイッチング機能を備えているため、インバータやスイッチング電源などのアプリケーションで広く使⽤されています。
〈⽤途〉
スイッチング電源、インバータ、モーター制御など
理由: ⾼速スイッチングと低オン抵抗により、効率的な電⼒制御が可能になります。電圧制御タイプなので、ゲートの駆動が容易です。

※低オン抵抗
チャネルが形成されると、電流はソースからドレインに流れます。このとき、チャンネルの抵抗は低いため、電流は効率的に流れます。これが低オン抵抗の特徴です。低オン抵抗により、低電⼒損失と⾼効率の電⼒制御が可能になります。

MOSFET

絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(IGBT)

IGBTは、MOSFETとバイポーラトランジスタの特性を組み合わせたトランジスタです。ゲート(G)、コレクタ(C)、エミッタ(E)の3つの端⼦があります。MOSFETのドレイン側にP+コレクタ層を追加し、P-N-P-N構造となっています。IGBTは、⾼電圧アプリケーションに使⽤されます。
〈特徴〉
⾼速スイッチング: MOSFETのゲート構造により、⾼速で電流をオン・オフすることができます。
⼤電流駆動: バイポーラトランジスタの特性により、⼤きな電流を流すことができます。これにより、電⼒変換やモーター駆動などの⽤途に適しています。(⼩信号IGBTは存在しません)
電圧制御: 電圧で制御されるタイプのトランジスタです。
⾼いブレークダウン電圧: P+コレクタ層とN-ドリフト層により、⾼電圧に耐えることができます。
低いオン抵抗: 伝導度変調により、通電時の抵抗が⼩さくなります。
ターンオフ時間が⻑い: バイポーラ動作により、ターンオフ時にキャリアを排出する必要があるため、電流を⽌めるまでの時間が⻑くなります(ターンオフとは電流が流れている状態から⽌まる状態への遷移のことです)。 〈⽤途〉
⾼電圧および⾼電流スイッチング、電気⾃動⾞インバータ、産業⽤モーター制御など
理由
MOSFETの⾼速スイッチング特性とバイポーラトランジスタの⾼電流駆動能⼒を兼ね備えた⾼ブレークダウン電圧と⾼電流駆動能⼒を備えています。ただし、ターンオフ時間が⻑いため、超⾼速スイッチングアプリケーションには適していません。

絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(IGBT)

シリコン、炭化ケイ素、窒化ガリウムの棲み分け

かつて半導体に使われる材料はシリコンだけでしたが、現在は複数の材料が使われています。
それぞれの特性を活かし、使い分けられています。

シリコン=ケイ素(Si)

シリコンは、地球上に豊富にあり、加⼯が容易で、⽐較的安価であるため、半導体の材料として最も⼀般的な素材です。シリコンには条件次第で電気を通したり通さなかったりする性質があるので、半導体素⼦の電気のオンオフなどに使⽤されるわけです。
また、シリコンは効率よく熱を放散する性質があるため、素⼦が発熱しても安定して動作することができる、信頼性の⾼い素材でもあります。また、シリコンは化学的に安定しており、酸化や腐⾷に強いため、⻑期間にわたって安定した性能を維持することも可能です。

シリコン=ケイ素(Si)

炭化ケイ素(SiC)

炭化ケイ素(SiC)は、シリコン(Si)と炭素(C)の化合物で、近年、次世代のパワー半導体として注⽬されてきました。SiCはシリコンに⽐べてさらに耐電圧や耐熱性が⾼く、電⼒損失が少ないのが特徴です。例えば、電気⾃動⾞(EV)や太陽光発電システムでの採⽤が進んでいます。SiCの優れた特性の理由の⼀部は、その広いバンドギャップにあります。シリコンのバンドギャップは1.1 eVですが、SiCは3.2 eVで約3倍の幅があります。バンドギャップが広いと、電⼦が価電⼦バンドから伝導バンドに移動するためにより多くのエネルギーが必要になり、⾼電圧に耐える能⼒が向上します。また、SiCは熱伝導率が⾼く、効率的に放熱できるため、⾼温環境下でも安定した動作が可能です。しかし、SiC製造には独⾃の課題があります。SiCは⾮常に硬く、加⼯が難しい材料です。単結晶の成⻑には、結晶⽋陥を低減するための⾼度な技術と精密な制御が必要です。また、SiCウェーハの⼤⼝径化や⾼品質化も課題であり、製造コストが⾼くなる傾 向にあります。
これらの要因により、SiCデバイスの製造はシリコンに⽐べて困難でコストがかかります。⼀⽅、低電圧でコストに敏感なアプリケーションの場合、安価なシリコンは依然として現実的な選択肢です。⽤途に適した素材を選択することが重要です。

炭化ケイ素(SiC)

窒化ガリウム(GaN)

窒化ガリウム(GaN)の利点は、⾼耐電圧、低オン抵抗です。まず、GaNはSiCよりさらにバンドギャップが広く(約3.4 eV)、⾼電圧に耐えることができます。また、GaNは通常、AlGaN/GaNヘテロ構造を⽤いた⾼電⼦移動度トランジスタ(HEMT)として設計されており、⾼い電⼦移動度を実現することで⾼速スイッチングが可能になります。これらの特性により、パワー半導体としての優位性を最⼤限に発揮することができます。
ただし、GaN半導体素⼦にはいくつかの課題もあります。GaN半導体素⼦は⾼周波で動作するため、ノイズが増加しやすく、ノイズ抑制のために、正確なゲート駆動電圧制御が必要となり、設計の難しさが増します。またGaNは結晶化や加⼯が難しい材料であり、その製造⼯程には⾼度な技術が求められるため、これらの問題を解決できるサプライヤーは限られています。

窒化ガリウム(GaN)

素材による使い分け

  • シリコン(Si)
    費⽤対効果が⾼く、家電製品や⽐較的低電圧の電⼒制御装置によく使⽤されます。
  • 炭化ケイ素(SiC)
    ⾼電圧、⾼温環境での使⽤に適しており、電気⾃動⾞や再⽣可能エネルギーシステムなど、
    ⾼効率が求められる分野で使⽤されています。
  • 窒化ガリウム(GaN)
    通信インフラストラクチャやデータセンターなど、⾼速スイッチングが
    有利なアプリケーションに特に適しています。

    これらの材料は、その特性に応じて最適に使⽤されます。
    どの材料がどのアプリケーションに適しているかを理解することで、より効率的な電⼒制御が可能になります。

まとめ
パワー半導体素⼦は、さまざまなアプリケーションで電⼒を管理および変換し、機械的な動きを伴わずに動作する⼩型スイッチとして機能し、⾼い信頼性と効率を実現します。また、電気⾃動⾞、データセンターや、太陽光発電とインバータは、パワー半導体素⼦の重要な成⻑分野であり、AIの発展や持続可能社会の実現に貢献しています。

パワー半導体使⽤時の課題

パワー半導体の重要性はますます⾼まっていますが、最適な性能を確保するためには、いくつかの課題に対処する必要があります。

寄⽣インダクタンスの低減

寄⽣インダクタンスとは、電流が流れる回路で意図せずに発⽣する抵抗のようなものです。これは、電流が急激に変化したときに、回路の⼀部がその変化を妨げる⼒を持っていることを意味します。
⼩信号半導体とパワー半導体の両⽅で、この寄⽣インダクタンスは回路動作の信頼性に問題となる可能性があります。例えば、電流が急激に増加すると、寄⽣インダクタンスが変化を抑えようとするため、回路に不要な電圧変動(サージ電圧)が⽣じます。これは、デバイスのパフォーマンスと信頼性に悪影響を与える可能性があります。回路内の電⼒を管理するパワーデバイスは、特に寄⽣インダクタンスの影響を受けやすいため、寄⽣インダクタンスを最⼩限に抑えることが効率的な動作のために重要です。
この問題を解決するためには、寄⽣インダクタンスを最⼩にすることが重要です。例えば、配線を短くし、部品を適切に配置することで、寄⽣インダクタンスを減らすことができます。

放熱設計

パワー半導体の放熱設計は、半導体の性能と寿命を確保するために重要です。パワー半導体は⼩信号半導体に⽐べて、⾼電圧や⼤電流を扱うため、動作時に⼤量の熱を発⽣します。この熱を適切に管理しないと、過熱し、誤動作を起こしたり、破損したりします。適切な放熱設計により、動作温度を⼀定範囲内に保ち、安定した性能を維持できます。また、適切な放熱設計により、デバイスの寿命を延ばすことができます。
具体的な⽅法として、ヒートシンクの使⽤、冷却⽅法の選択、TIM(熱伝導)材料の使⽤、ヒートパイプ、プリント回路基板の設計などがあります。ヒートシンクは、デバイスから熱を吸収し、周囲の空気に放出する役割を果たします。冷却⽅法には、⾃然空冷、強制空冷、⽔冷があり、製品の特性や使⽤環境に応じて最適な⽅法が選択されます。TIM材料は、シリコングリースやパッドのような素材で、発熱体とヒートシンクの間の熱伝導率を向上させます。ヒートパイプは冷却⽤の液体を封じた⾦属製の筒で、熱源からの熱を⻑距離にわたって効率的に吸収します。また、プリント基板のレイアウトや銅箔の厚みを⼯夫することで、効率よく熱を拡散させることができます。

保護回路の実装

保護回路は、パワー半導体をはじめとする電⼦回路を異常動作から保護するための回路です。パワー半導体は⼩信号半導体に⽐べて⾼電圧や⼤電流を扱うため、過電流や過電圧、過熱などの異常と隣り合わせです。保護回路はこれらの異常を検出し、回路を保護します。これにより、システム全体の安定性が維持され、他のコンポーネントへの影響が最⼩限に抑えられます。また、過電流や過電圧による発⽕や爆発などの危険を防ぎ、ユーザーの安全を確保しています。
具体的な⽅法には、過電流保護、過電圧保護、過熱保護、および短絡保護などが含まれます。過電流保護はヒューズ、回路ブレーカー、過電流検出回路を使⽤し、過電圧保護はツェナーダイオード、バリスタ、サージアブソーバを使⽤します。過熱保護は、サーミスタまたは温度センサーを使⽤して温度を監視し、異常発⽣時に動作を停⽌します。短絡保護は、短絡検出回路とリレーを使⽤して電流を迅速に遮断します。
設計者の時間を節約するために、IPMなどの⼀部のパワー半導体モジュール(複数の素⼦や回路を組み合わせたもの)には、最初から保護回路が組み込まれています。

デバイス選択

システム要件に基づいてパワー半導体を選択する場合、まずシステムに必要な最⼤電圧と電流を決定し、対応するパワー半導体を選択することになります。(定格電圧および定格電流は、デバイスが安全に動作できる範囲を⽰しています。)次に、スイッチングデバイスであれば、スイッチングの速度と効率について考えます。⾼速スイッチングが必要な場合は、エネルギーを効率的に変換できるデバイス(たとえばMOSFET)を選択しますが、⾼速スイッチングは発熱につながるため、冷却システムも考慮する必要が出てきます。
また、動作温度範囲も重要です。パワー半導体は、特に周囲温度が変動する可能性のある場合、⾼温と低温の両⽅で正常に動作する必要があります。また耐⽤年数を求めるなら、耐熱材料で作られたデバイスを選択します。最新技術を搭載した⾼性能パワー半導体は⾼価なものが多いため、コストと性能のバランスを重視して最適なデバイスを選定していきます。

シミュレーションとモデリング ー電⼦回路設計の効率化

モデリングとは、パワー半導体の振る舞いを数式や等価回路で表現する⼿法です。これにより、実際の半導体の動作を仮想的に再現し、シミュレーションで使⽤するモデルを作成できます。⼀度作成したモデルは他の回路設計シミュレーションでも再利⽤できるため、設計効率も向上します。

シミュレーションとは、上記のようにモデリングによって作成したモデルを⽤いて、実際の回路を構築する前に仮想環境での動作確認を⾏う⼿法です。これにより、設計フェーズの早い段階で問題を発⾒して修正できます。シミュレーションの利点は、設計の最適化、コスト削減、時間の節約です。回路の挙動を詳細に解析することで最適な設計パラメータを⾒つけることができ、実際の試作前に問題を解決できるため、試作回数の削減やコストダウンにつながります。また、設計プロセス全体の時間を短縮し、製品の市場投⼊までの時間を短縮します。
モデリングに基づくシミュレーションにより、電⼦回路設計の効率と信頼性が向上します。

Power&Analog Technology

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