SiCで切り拓くパワーデバイスの新時代
革新的なパワーデバイスの開発を通じて
新たな価値創出と社会課題の解決に貢献
近未来で電力をより効率的に扱うために
パワーデバイスに求められる技術革新
排気ガスを出さない電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)など次世代のクルマ、利便性の高いIoTやデジタルトランスフォーメーション(DX)を支えるデータセンターおよび5G通信基地局・・・。私たちの近未来は、電力を消費する高度な電気・電子機器を活用することで成り立ちます。これらの機器が生み出す価値を多くの人が享受できるようにするために、それと同時に貴重な地球の資源を無駄なく使用するために、電力をより効率的に扱う仕組みづくりが極めて重要になります。電気・電子機器の大電力化に適応し、そして地球環境の保全にも貢献するため、電力・電源システムの中核部品であるパワーデバイスには、新時代の礎となる技術革新が求められています。
半導体の新時代を拓くSiCで
パワーデバイスを革新するローム
パワーデバイスの分野では、技術的に成熟したSi(シリコン)デバイスだけでは、飛躍的な技術革新を望めなくなりつつあります。そこで、Siに代わるブレイクスルーとして注目されている半導体材料が、高電圧駆動時の性能と耐熱性に優れたSiC(シリコンカーバイド)です。
ロームは、パワーデバイス分野において、Siを素材とした高耐圧のトランジスタ(MOSFET、IGBT)やダイオード(SBD、FRD)だけでなく、SiCを素材としたトランジスタ(SiC MOSFET)やダイオード(SiC SBD)の開発に強く取り組んでいます。中でもSiCデバイスは、2010年にSiC MOSFETの世界初量産を開始して以来、現在に至るまでSiCデバイスの技術と製品で業界をリードし続けています。SiCウェハの製造から、新たなデバイス構造、製造プロセス、パッケージ、品質管理の手法まで、SiCデバイスの進化に欠かせない技術を自社で開発する一貫生産体制を取っているロームだからこそ、業界に先駆けて高品質のSiCデバイスを開発することができます。
今、新時代の開拓に挑むロームのもとには、パワーデバイスに関する最先端のニーズと知見が世界中から集まっています。ニーズに幅広く対応するために、SiCデバイスはもちろんのこと、Siデバイスでも、新たな価値を持つ技術と製品を開発し、提供しています。
SiCデバイスには大きな可能性がある
その潜在能力を最大限まで引き出す
2020年、ロームはSiCデバイスの飛躍的な性能向上を実現した第4世代SiC MOSFETを発表しました。第3世代で投入した独自のダブルトレンチ構造をさらに進化させることによって、高い信頼性を犠牲にすることなく、前世代比でオン抵抗を40%低減。また、スイッチング時の課題となっていた寄生容量も大幅に削減し、スイッチング損失も約50%低減することに成功しました。この低オン抵抗、高速スイッチング特性を兼ね備えた第4世代 SiC MOSFETは、電気自動車のインバータや産業機器の各種スイッチング電源など、様々な電気・電子機器の劇的な低消費電力化や小型化に貢献することができます。ただ、SiCデバイスのポテンシャルは高く、まだまだ性能アップの可能性があります。ロームでは、既に第5世代SiC MOSFETの開発にも着手しており、デバイスの進化で業界をリードし続けていきます。
また、東京大学の藤本博志准教授らの研究グループが、ロームのSiCデバイスを活用してインバータの小型化により、タイヤホイールの中に搭載可能なインホイールモーター(IWM)とし、道路からインホイールモーターに直接、走行中給電できる技術を開発するなど、イノベーションの種も生まれてきています。
急拡大するSiCパワーデバイス市場
積極投資でトップシェアを目指す
その特性からSiCデバイスの有効性は広く知られるようになりました。今後電気自動車のインバータ向けを中心に応用開拓が急激に進み、2025年には市場規模が2018年の4倍以上になると予想されています。ロームは急増するSiCデバイスの需要に応える生産能力を確保すべく、そしてトップシェア30%を目指して、積極的な投資を進めています。
2009年には、ドイツのSiCウェハメーカーであるSiCrystal社を取得し、SiCデバイスの安定製造に欠かせない高品質なSiCウェハの安定調達体制を整えるとともに、大口径化や生産能力増強に取り組んできました。さらに2020年12月には、前工程の生産拠点であるローム・アポロ株式会社の筑後工場(福岡県)にSiCデバイス専用の生産棟が完成。BCM(事業継続マネジメント)体制も強化し、中長期的な需要増加に対応できる生産体制の構築を目指しています。
ロームは、業界をリードするパワーデバイス技術・製品が実現する革新的な“省エネ”と“小型化”により、近未来を支える電力・電源システムの新たな価値創出と社会課題の解決に貢献していきます。