完全ノイズレスを追求 Next Generation Op Amp
 

革新的なノイズ設計でより正確かつ繊細な動作を実現
センシング技術の明日を拓く2つのオペアンプ

車載電子機器や産業機器分野において、センサの重要度が高まっています。 センサの微弱な信号を増幅するためにはオペアンプの配置が不可欠ですが、
より正確な動作を行うためには、外部からの放射電磁雑音(EMI)に対する耐性が高いことや、オペアンプ自身がノイズを出さないことが必要です。
ロームでは、EMIの影響を最小限に抑える車載用バイポーラオペアンプと、業界最高*レベルの低ノイズ・ノイズ耐性を備えた産業機器用CMOSオペアンプを開発しました。

Pickup Product

低ノイズ CMOS オペアンプ
 

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技術解説

開発の背景

近年、自動車会社の電子化が進み、ADAS(先進運転支援システム)などの導入にともない、センサの重要性や需要が高まっています。加えて、産業機器分野では、IoTの利用が急速に拡大。センサによる高度な制御が不可欠になりました。これらの分野では、制御の高精度化に加え、消費電力を抑えることも重要な課題であり、周辺回路の低電圧化が進んでいます。
センサから出力される信号は非常に微小なため、周辺の電装システムや通信機器からのノイズの影響を受けやすく、入力信号がノイズごと増幅されてしまい、誤認識や誤動作が発生する可能性が高くなります。同時に、高精度の電圧増幅を実現するためには、オペアンプ自体がノイズを出さないことも極めて重要となります。ロームではこれまでのノウハウを結集し、ノイズ設計が不要なほどEMIに対する耐性が高い車載用オペアンプと、業界最高*レベルの低ノイズ性能を実現する産業機器用オペアンプを開発しました。

技術的背景

ロームでは、商品企画から回路設計、レイアウト、試作評価、テスト開発まで一貫した生産体制をとっています。この2つのオペアンプ開発においては、回路設計や素子レイアウトなどの開発プロセスでの作り込みと、素子の形状や材質の検討、パッケージングといった製造プロセスでの作り込みを密な連携のもとに実施。それぞれの工程において緻密な見直しを重ね、改善策を最適に融合させることで、極めて高いEMI耐性を備えたオペアンプと業界最高*レベルの低ノイズCMOSオペアンプを開発することができました。

※2018年10月ローム調べ

 

Nano Pulse Control®
Nano Energy®
業界最高*レベルのノイズ耐性で、ノイズ対策の負荷を大幅に軽減

右のノイズ周波数ごとの出力電圧変動のグラフが示すように、A~Eの一般品が周波数によってノイズの影響を受けやすいピークを計測していることに対し、ロームの新製品は周波数による変動が極めて少なく、出力電圧変動を±1%以下(一般品は±3.5~10%)に抑えることに成功しました。
この高EMI耐量を実現したことにより、これまで車載電装部品設計者を悩ませ、多くの時間や手間を必要としていたノイズ対策の負荷を大幅に軽減。従来必要とされていたCRフィルタやシードなど、外付け部品のコストやスペースも削減します。

※2018年10月ローム調べ

 

回路やレイアウト、素子サイズなどを徹底的に見直しノイズ耐量を大幅に改善

ロームではこれまでの製品を徹底的に分析し、ノイズ対策回路の追加とレイアウトの見直し、最適な寄生容量を生むプロセスの選定により、EMIに対する耐性を大幅に改善。チップのダウンサイズという業界の潮流に囚われることなく、柔軟な発想で最適な選択を行ったことも成功の鍵となりました。また、この画期的なノイズ耐性は1つの対策では決して実現できず、3つの要因を融合することでここまでの改善ができたといえます。

ノイズ対策にかかっていた時間や手間、コストなどを大幅に軽減

画期的な高EMI耐量により、従来必要だった外付けのCRフィルタや金属板シールドを配置する必要がなくなり、周辺部品のコストダウンや省スペース化に貢献します。
また、これまでノイズ対策の設計を行う場合、機能設計やノイズ設計を行った後のノイズ評価でNGになると、最初からやり直す必要があり、時間と手間と更には費用的にも大きな負担がかかっていました。
これに対しロームの新しいオペアンプを使用すれば、設計工数や費用を大きく低減させることが可能となり、短納期のセット設計にも貢献できます。

高い汎用性を備え世界基準の信頼性規格にも準拠

この新しい高EMI耐量オペアンプは、従来のオペアンプと同じ汎用性能を持っているため、従来品からの置き換えの場合でも、安心してお使いいただけます。
また、車載電子部品の規格として世界的に広く採用されているAEC-Q100に準拠する高い信頼性を備えています。

業界最高*の低ノイズで、更なる高精度化を実現

センサの高精度制御へのニーズが高まる中、ロームでは、オペアンプ自身が発生させるノイズを大幅に低減させたCMOSオペアンプを開発しました。内部のトランジスタや抵抗から発生するノイズは、信号増幅の際に誤差を生むことで、増幅制度を悪化させます。これに対しロームは、回路設計と製造プロセスの両面から改善を行い、右のグラフが示すように業界最高*の低ノイズを実現。ちなみに、2.9nV/√Hzは従来の約1/6、7.8nV/√Hzは従来の約1/5という数値です。更に、増幅時に誤差の要因となる入力バイアス電流と入力オフセット電圧を大きく制御すると同時に、従来ノイズとトレードオフの関係にあった発振マージンの位相余裕を業界最高レベルの68°に改善。低ノイズだけでなく、大幅な高精度化や動作の安定化を図っています。これらの改善により、センサの能力を十分に引き出す周辺回路の設計が可能となりました。

※2018年10月ローム調べ

 

製造工程と回路設計の両面からの対策を組み合わせ業界最小*ノイズを達成

ロームの従来品低ノイズオペアンプを製造プロセスの側面から分析。不純物による電子の散乱を大幅に制御することにより、フリッカノイズを抑えることに成功しました。これを抑えることで低周波数帯のノイズ特性が大きく向上しました。
加えて、回路構成やトランジスタの大きさを調整し、抵抗値を下げることで、IC内部のトランジスタや抵抗、配線などから発生するサーマルノイズ(ホワイトノイズまたは熱雑音)を低減。これらの低ノイズ実現のポイントは、製造と設計の両面からアプローチを行ったことであり、この2つが融合しなければ業界最小*のノイズ特性は実現できませんでした。ロームの垂直統合型生産体制のメリットがここでも存分に発揮されています。

※2018年10月ローム調べ

入力バイアス電流と入力オフセット電圧を大幅に低減

入力バイアス電流については、静電気による破壊を防ぐ素子のリーク電流が主な要因といわれていますが、その素子サイズを最適化することで、0.5pAまで電流値を抑制(従来品の約1/2)。入力オフセット電圧については、トランジスタの素子サイズを大きくすることでデバイスのばらつきによる影響を最小化し、電圧利得を高めるという回路設計上の見直しも実施。更に、入力オフセット電圧を最適化できる製造プロセスを選択していることも、450µV(従来比1:4)という低い値を実現できた要因です。

位相余裕の向上で高い安定性を確保

このオペアンプの3つ目の特長が高い安定性です。従来のオペアンプには、ノイズを低減すると位相余裕が小さくなり、発振が起こりやすくなるという課題がありました。この製品では発振を抑えるために回路内に組み込まれる位相補償を数箇所に分けて最適化することで、68°という高い位相余裕を実現。更に、発振しやすさの指標として挙げられる容量性負荷特性を500pFまで高めています。