※2023年12月5日ローム調べ 2023年12月5日 ローム株式会社(本社:京都市、以下ローム)は、2023年1月より株式会社Quanmatic(クオンマティク、本社:東京都新宿区、以下Quanmatic社)と協働で、半導体製造工程の一部であるEDS工程に量子技術を試験導入し、製造工程における組合せ最適化を目指す実証を進めておりました。このたび生産効率改善において一定の成果が得られ、2024年4月に本格導入を目指すこととなりましたので、お知らせします。なお、半導体製造工場の大規模量産ラインにおいて、量子技術による製造工程の最適化を実証したことは世界初の成果となります。 近年、さまざまな分野で量子技術の活用が試行され、特に量子アニーリング方式*2は物流業界の配送ルート最適化等、組合せ最適化の分野で導入が進んでいます。一方、半導体業界においては、大規模な製造工程になるほど、組合せ数が指数関数的に増加し、さらに制約条件が多数あるため最適解を得ることが難しく、古典コンピュータでも近似的に演算可能な規模の工程における導入にとどまっていました。 EDS工程についても、製造デバイス、テスト装置、テスト条件などの組合せ数は膨大で、工程の一部であっても、製造工程を最適化する解の導出は非常に困難でした。そのため、従来は基本的な計算ルールをベースに、蓄積した知見やノウハウを活用してオペレーション(工程の割り付け)を行うことが一般的でした。 こうしたなか、ロームとQuanmatic社は、2023年1月よりEDS工程におけるさまざまな制約条件を考慮した量子ソリューションを用いたオペレーションシステムの検討を開始。Quanmatic社が持つ、早稲田大学・慶應義塾大学の研究に基づく量子計算技術効率化のプロダクト群や、量子と古典計算技術を駆使した計算フレームワーク及び専門的な定式化技術に、これまでロームが蓄積してきた膨大な知見とノウハウ、各種データを融合させることで、2023年9月にプロトタイプの構築に成功しました。 本プロトタイプをロームの国内外の工場に試験導入し検証した結果、稼働率、納期遅延率などのターゲットとする指標をそれぞれ数%ずつ向上できるという実証成果が得られました。アルゴリズム化によって計算時間も大幅に短縮されるため、製造条件の変更に合わせたタイムリーかつ最適なオペレーションが可能になります。 今後、両社は、さらに連携を深めるとともに、海外工場での試験運用を重ねることでオペレーションシステムの精度向上を図り、2024年4月の本格導入を目指してまいります。 早稲田大学 理工学術院 教授/株式会社Quanmatic CSO&Co-Founder 戸川 望 「本成果は大学で研究された高度に数学的な最適化計算手法が世の中に応用された事例であり、量子関連技術を土台とし日々最適化されるサプライチェーンを通じて半導体製品を提供することは量子技術の大規模な現実応用という意味で非常に大きな意味を持ちます。このような成果を積み重ねることが、日本政府の掲げる『量子社会未来ビジョン』(2030年に1000万人が量子技術を利用する社会)を実現する礎になると信じています。」 ローム株式会社 取締役 上席執行役員 CTO 立石 哲夫 「脱炭素社会の実現に向けて、半導体の役割は、ますます大きくなり、その安定供給は社会課題の一つにもなっています。今回、量子技術を用いて、大規模な量産ラインに適したオペレーションシステムを開発できたことは、半導体製造業界にとっても大きな一歩で、リアルタイムでの生産オペレーションの最適化を可能とします。現状にとどまらず、幅広い工程へ量子技術やその関連手法の導入を加速し、より全体最適のサプライチェーンを構築することで、安定供給体制の強化を目指してまいります。」 *1) Electrical Die Sorting。ウエハ上に形成したチップの電気的特性をテストする工程で、半導体デバイスの信頼性確保や歩留まり向上に必要不可欠 *2) 東京工業大学の西森 秀稔教授が提唱し、2011年にカナダのD-Wave Systems社が世界で初めて商用提供したことで量子コンピューティングブームの火付け役となった技術。組合せ最適化問題に強く、用途を絞り込んでいるため社会実装に近いとされる ■Quanmatic社について Quanmatic社は、量子関連技術の活用を目的としたコンピュータサイエンスアルゴリズムの開発を目的とし、早稲田大学戸川望教授(Chief Scientific Officer)の研究シーズを元に、CEO古賀純隆、慶應義塾大学田中宗准教授(Chief Technology Officer)とChief Product Officer武笠陽介の4名で2022年10月に設立したスタートアップです。「量子技術に誰もがアクセス可能な世界を実現する」というビジョンの下、アルゴリズム知財をビジネス課題に適用するための最適化エンジンの開発を継続して進め、ハードウェアに依存しない汎用的な量子計算技術の効率化ソリューションを展開しています。 https://quanmatic.com/ この件に関するお問い合わせはこちら
ローム、Quanmatic社と量子技術による製造工程最適化の実証完了
大規模半導体製造工場では世界初※の成果、2024年4月にEDS工程*1で本格導入を目指す
※2023年12月5日ローム調べ
2023年12月5日
ローム株式会社(本社:京都市、以下ローム)は、2023年1月より株式会社Quanmatic(クオンマティク、本社:東京都新宿区、以下Quanmatic社)と協働で、半導体製造工程の一部であるEDS工程に量子技術を試験導入し、製造工程における組合せ最適化を目指す実証を進めておりました。このたび生産効率改善において一定の成果が得られ、2024年4月に本格導入を目指すこととなりましたので、お知らせします。なお、半導体製造工場の大規模量産ラインにおいて、量子技術による製造工程の最適化を実証したことは世界初の成果となります。
近年、さまざまな分野で量子技術の活用が試行され、特に量子アニーリング方式*2は物流業界の配送ルート最適化等、組合せ最適化の分野で導入が進んでいます。一方、半導体業界においては、大規模な製造工程になるほど、組合せ数が指数関数的に増加し、さらに制約条件が多数あるため最適解を得ることが難しく、古典コンピュータでも近似的に演算可能な規模の工程における導入にとどまっていました。
EDS工程についても、製造デバイス、テスト装置、テスト条件などの組合せ数は膨大で、工程の一部であっても、製造工程を最適化する解の導出は非常に困難でした。そのため、従来は基本的な計算ルールをベースに、蓄積した知見やノウハウを活用してオペレーション(工程の割り付け)を行うことが一般的でした。
こうしたなか、ロームとQuanmatic社は、2023年1月よりEDS工程におけるさまざまな制約条件を考慮した量子ソリューションを用いたオペレーションシステムの検討を開始。Quanmatic社が持つ、早稲田大学・慶應義塾大学の研究に基づく量子計算技術効率化のプロダクト群や、量子と古典計算技術を駆使した計算フレームワーク及び専門的な定式化技術に、これまでロームが蓄積してきた膨大な知見とノウハウ、各種データを融合させることで、2023年9月にプロトタイプの構築に成功しました。
本プロトタイプをロームの国内外の工場に試験導入し検証した結果、稼働率、納期遅延率などのターゲットとする指標をそれぞれ数%ずつ向上できるという実証成果が得られました。アルゴリズム化によって計算時間も大幅に短縮されるため、製造条件の変更に合わせたタイムリーかつ最適なオペレーションが可能になります。
今後、両社は、さらに連携を深めるとともに、海外工場での試験運用を重ねることでオペレーションシステムの精度向上を図り、2024年4月の本格導入を目指してまいります。
早稲田大学 理工学術院 教授/株式会社Quanmatic CSO&Co-Founder 戸川 望
「本成果は大学で研究された高度に数学的な最適化計算手法が世の中に応用された事例であり、量子関連技術を土台とし日々最適化されるサプライチェーンを通じて半導体製品を提供することは量子技術の大規模な現実応用という意味で非常に大きな意味を持ちます。このような成果を積み重ねることが、日本政府の掲げる『量子社会未来ビジョン』(2030年に1000万人が量子技術を利用する社会)を実現する礎になると信じています。」
ローム株式会社 取締役 上席執行役員 CTO 立石 哲夫
「脱炭素社会の実現に向けて、半導体の役割は、ますます大きくなり、その安定供給は社会課題の一つにもなっています。今回、量子技術を用いて、大規模な量産ラインに適したオペレーションシステムを開発できたことは、半導体製造業界にとっても大きな一歩で、リアルタイムでの生産オペレーションの最適化を可能とします。現状にとどまらず、幅広い工程へ量子技術やその関連手法の導入を加速し、より全体最適のサプライチェーンを構築することで、安定供給体制の強化を目指してまいります。」
*1) Electrical Die Sorting。ウエハ上に形成したチップの電気的特性をテストする工程で、半導体デバイスの信頼性確保や歩留まり向上に必要不可欠
*2) 東京工業大学の西森 秀稔教授が提唱し、2011年にカナダのD-Wave Systems社が世界で初めて商用提供したことで量子コンピューティングブームの火付け役となった技術。組合せ最適化問題に強く、用途を絞り込んでいるため社会実装に近いとされる
■Quanmatic社について
Quanmatic社は、量子関連技術の活用を目的としたコンピュータサイエンスアルゴリズムの開発を目的とし、早稲田大学戸川望教授(Chief Scientific Officer)の研究シーズを元に、CEO古賀純隆、慶應義塾大学田中宗准教授(Chief Technology Officer)とChief Product Officer武笠陽介の4名で2022年10月に設立したスタートアップです。「量子技術に誰もがアクセス可能な世界を実現する」というビジョンの下、アルゴリズム知財をビジネス課題に適用するための最適化エンジンの開発を継続して進め、ハードウェアに依存しない汎用的な量子計算技術の効率化ソリューションを展開しています。
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