広域エリアネットワーク構築に最適!高性能マルチバンド無線通信LSI「ML7436N」を開発
複数周波数に対応し、ワールドワイドにモデル展開可能

<要旨>

高性能マルチバンド無線通信LSI ML7436N

ラピステクノロジー株式会社 (以下ラピステクノロジー) は、スマートメーター、スマート街路灯といったインフラのほか、スマート工場、スマート物流などでも必要とされる、広域エリアネットワークの構築に最適なマルチバンド無線通信LSI「ML7436N」を開発しました。
新製品は、高速動作可能な32bit CPUコア「Arm®Cortex®-M3」と、無線通信LSIとして業界最大級の容量となる1024KBのメモリを搭載しています。
メモリには、マルチホップ通信 (中継機能) やワイヤレスでのファームウェア更新 (FOTA∗1) に対応するための大規模プログラムや大量データを実装可能なため、システムの広域メッシュネットワーク化やメンテナンス工数削減に貢献します。さらに、強力な暗号化回路も搭載されているため、構築したシステムの秘匿性も高めることができます。
また、これまで世界中で使用するIoT機器は、各国の無線に関する法規や規格ごとに開発が必要でしたが、新製品は、マルチバンド (Sub-1GHz及び2.4GHz) 対応のRFチップを搭載し、ワールドワイドにモデル展開が可能です。
なお、新製品は、2020年12月にサンプル出荷 (サンプル価格 1,000円/個 : 税抜) を開始しており、2021年3月から当面月産10万個の体制で量産を開始する予定です。
ラピステクノロジーは、今後も高品質な無線通信LSIを開発し、多くの人が暮らしやすいスマート社会の実現に貢献していきます。

特定省電力無線商品コンテンツ

<背景>

近年、インフラ、工場、物流などの分野においては、IoT機器を活用したスマート化が進んでいます。広域エリアをカバーする通信には、安定性の確保や秘匿性の高いメッシュネットワークの構築が不可欠であり、大容量メモリや処理能力の高いCPUを搭載した無線通信LSIの需要が高まっています。さらに、日本国内においては、法改正により、2020年4月からはIoT機器にアップデート機能を実装することが義務化され、遠隔でのファームウェア更新が必須となりました。
ラピステクノロジーは、スマートメーターで多くの採用実績を持つ無線技術を結集することで、これらの課題を解決し、セキュアなメッシュネットワークをワールドワイドで容易に構築可能な新製品の開発に成功しました。

<特長>

1.メッシュネットワークを容易に構築、管理可能

新製品はArm社の高速かつ低消費電力の「Arm®Cortex®-M3」を採用しています。また、無線通信LSIとしては、業界最大級となる1024KBのメモリを搭載しており、Wi-SUN FAN∗2に代表されるマルチホップ通信やメッシュネットワークの機能を持つIoT機器に最適で、FOTAにも対応可能です。ラピステクノロジーが提供するFOTAを実装することで、製品出荷後のIoT機器のアップデートも容易になるため、システムのランニングコストやメンテナンス工数の削減にも貢献します。
なお、新製品はロームで開発中のWi-SUNモジュールにも搭載され、マルチホップ通信可能なWi-SUNネットワークを容易に実現するモジュールの開発にも貢献しています。このモジュールは近日リリース予定です。

2.マルチバンド対応により、ワールドワイドなモデル展開が可能

新製品は、Sub-1GHz (400MHz to 960MHz) と2.4GHzの複数周波数に対応しています。これまで無線通信機器の海外展開に際しては、各国の法規、規格に合わせて何種類もの無線通信LSIを採用する必要がありましたが、新製品はひとつの無線通信LSIで各国のSub-1GHz通信に対応可能です。また、ISMバンド∗3である2.4GHzにも対応しているため、アジア諸外国のようなSub-1GHz通信が規格化されていない国、地域においても展開ができます。さらに、新製品は電圧や温度といった環境変動に対して安定した無線特性を有しており、屋内、屋外問わず高品質で安定した通信が可能です。

送信パワー特性と受信感度特性

送受信ともに温度による性能ばらつきが少ないため、
屋内外問わず安定した通信が可能

3.セキュアなネットワークを実現可能

一般にFANやIoT機器で通信されるデータは暗号化されており、ソフトウェアによる暗号処理は非常に負荷が重く、膨大なソフトウェア処理が必要でした。新製品では、AES等各種の暗号化に対応したハードウェアエンジンとパケット処理に最適なDMAコントローラを搭載したことにより、CPU負荷を従来品から1/2000と大幅に軽減しています。さらにハッシュ関数 (SHA-224 / SHA-256) や、よりランダム性を高めた真性乱数 (TRNG∗4)も新たに搭載しました。これらにより、システムの低消費電力化を図りつつ、セキュアで信頼性の高い通信が可能です。

<開発サポート>

新製品を簡単に評価できる「ML7436N」評価ボード、評価ツール、サポートソフトウェアを、お問い合わせに応じて提供します。また、電波認証試験に必要なテストモードに対応したリファレンスソフトの提供など、無線機器開発に向けて、充実した開発サポート体制を構築しています。

<製品仕様>

項目仕様
マイコンCPUコアARM®Cortex®-M3
内蔵メモリFlash : 1024KB (512KB×2)、RAM : 256KB
インタフェースGPIO×17 (Max)、UART×3、SPI (マスタ / スレーブ)×2、I2C (マスタ / スレーブ)×2
タイマ32bit×4、WDT、RTC、16bitフレキシブルタイマ (PWM/オートリロードタイマ他)
アナログADC : 10bit×3
セキュリティ、乱数AES : (128 / 192 / 256)、ECB / CBC / CFB / OFB / CTR / CCM / GCM / GMAC、HASH (SHA-224 / SHA-256)、真性乱数 (TRNG)
その他DMA×8、内蔵ブートプログラム、デバッグインタフェース (SWD)
RF規格ARIB STD-T66 / T67 / T108、ETSI EN 300 220、FCC PART15
周波数400MHz to 960MHz、2.4GHz
変調方式4GFSK / 4GMSK、GFSK / GMSK、4FSK / FSK / MSK
転送速度1.2kbps to 300kbps (受信のみ to 1Mbps)
受信感度-107dBm@920MHz / 100kbps、-95dBm@2.4GHz / 100kbps
出力パワー20mW / 10mW / 1mW
動作周波数32.768kHz to 81MHz
動作温度-40°C to +85°C
電源電圧2.6V to 3.6V
パッケージTQFP48 (9mm×9mm)

<応用分野>

スマートメーターをはじめとしたインフラストラクチャ機器、工場内、物流、農地などでのセンサネットワーク機器、その他無線通信が必要なIoT機器全般。

<用語説明>

∗1 : FOTA (Firmware update Over-The-Air)
無線通信を経由してアプリケーションなどのソフトウェアを配布、更新すること。
∗2 : Wi-SUN FAN (Field Area Network)
Wi-SUNアライアンスが制定する、スマートメーター、スマート街路灯といったインフラの管理など、スマートシティを無線で実現するためのセンサ、メーターに搭載するマルチホップ通信可能な通信規格。
∗3 : ISMバンド (Industrial Scientific and Medical band)
産業、科学、医療分野で汎用的に使うために割り当てられた周波数帯域のこと。ISMバンドを利用するほとんどの機器は免許不要。
∗4 : TRNG (True Random Number Generator)
真性乱数生成器。
 

Arm®及びCortex®は、Arm Limited(又はその子会社)のEU又はその他の国における登録商標です。

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