負荷容量で一切発振しない2ch高速CMOSオペアンプ「BD77502FVM」を開発
圧倒的ノイズ耐量「 EMイーエムARMOURアーマー™」シリーズの高速オペアンプ、ラインアップ拡充でコンパクト設計に貢献

2020年9月24日

<要旨>

2ch高速CMOSオペアンプ「BD77502FVM」

ローム株式会社(本社:京都市)は、計測機器や制御機器で使われる異常検知システム、微小信号を扱う各種センサなど、高速のセンシングを必要とする産業機器・民生機器に向けて、2ch高速グランドセンスCMOSオペアンプ*1「BD77502FVM」を開発しました。
「BD77502FVM」は、圧倒的なEMI耐量*2(以下、ノイズ耐量)と、高速増幅(高スルーレート10V/µs)に対応しながら配線などの負荷容量で発振しない特長で、高い評価をいただいている高速オペアンプの2回路内蔵(2ch)新製品です。圧倒的なノイズ耐量により、全ノイズ周波数帯域での出力電圧変動を±20mV以下(一般品比10分の1)に抑えると同時に、負荷容量で発振しやすい高速タイプのオペアンプにおいて一切発振せずに安定動作が可能です。このため、センサなど微小な信号を出力するデバイスの後段に設置した際、外部ノイズと負荷容量の影響を受けずに高速の信号増幅を可能にし、2ch製品としてコンパクトに、アプリケーションの設計工数削減と高信頼化に貢献します。
本製品は、2020年8月よりサンプル出荷(サンプル価格 500円/個:税抜)を開始しており、2020年10月から当面月産100万個の体制で量産を開始する予定です。
ロームは今後、本シリーズのラインアップ化をさらに加速させ、車載対応も進めることで、幅広いアプリケーションの設計工数削減と高信頼化に貢献していきます。

<背景>

近年、IoTの広がりとともに、自動車や産業機器などあらゆるアプリケーションにおいて、高度な制御を行うために多くの電子部品が搭載されています。アプリケーションの電子化・高密度化が進んだことで、ノイズ環境はますます悪化しており、センサなどの微小な信号を扱うデバイスのノイズ設計が大きな課題になっています。また、安全のための各種異常検知システムでは、微小な信号を高速に増幅できるオペアンプが必要とされていますが、高速タイプのオペアンプは、配線などの負荷容量が原因となり、発振しやすく扱いにくいため基板設計時の負荷が大きいという課題がありました。
ロームは、圧倒的なノイズ耐量のEMARMOUR™シリーズにおいて、独自の電源技術「Nano Cap™」搭載により、負荷容量で一切発振しない特長を持つ1ch高速CMOSオペアンプ「BD77501G」を開発。その製品は、顧客だけでなく他分野の技術者も含め、分野・地域問わず幅広く反響をいただいており、今回、市場の求める2ch新製品を開発しました。

圧倒的なノイズ耐量を実現した「EMARMOUR™」オペアンプシリーズ
独自の超安定制御技術で、発信しない高速オペアンプを実現

<EMARMOUR™とは?>

設計・開発工数に対するEMARMOUR™の効果

「EMARMOUR」は、ロームの「回路設計技術」「レイアウト技術」「プロセス技術」を融合することで開発され、ISO 11452-2による国際的ノイズ評価試験において、全ノイズ周波数帯域での出力電圧変動が±300mV以下というノイズ耐量を実現した製品にのみ与えられるブランド名です。圧倒的なノイズ耐量により、システム開発におけるノイズ課題を解決することで、設計工数削減や高信頼化に貢献します。

<新製品の特長>

新製品「BD77502FVM」は、圧倒的なノイズ耐量を実現するEMARMOUR™シリーズにおいて、高速タイプのオペアンプでありながら負荷容量で一切発振しない特長を持つことで、産業機器市場で採用が進む1chグランドセンスCMOSオペアンプ「BD77501G」の展開製品です。下記特長を実現するとともに、2ch製品として、市場の求める、よりコンパクトなアプリケーション基板設計に対応します。

1. 発振しない高速オペアンプが、負荷容量起因の設計工数を削減

新製品は、ローム独自の電源技術「Nano Cap™」を搭載したことで超安定制御を実現しており、異常検知システムなどで求められる高速増幅(高スルーレート10V/µs)に対応しながら、配線などの負荷容量で一切発振しないオペアンプとなっています。一般的な高速オペアンプが配線などの負荷容量で不安定になり、配線や周辺部品の制約により非常に扱いにくいのに対して、本製品は一切発振せずに安定した動作ができるため、アプリケーションの設計工数削減に貢献します。

2. 圧倒的なノイズ耐量で、ノイズ設計負荷を軽減
(EMARMOUR™の特長)

圧倒的なノイズ耐量を実現

新製品は、EMARMOURのオペアンプシリーズとして、全ノイズ周波数帯域での出力電圧が、一般品は±200mV以上変動するのに対して、±20mV以下という圧倒的なノイズ耐量を実現しています。各周波数のノイズに対する対策(フィルタ回路の構築)を不要にし、システムで重要な役割を果たすセンサなどのノイズ設計負荷を軽減できるため、アプリケーションの設計工数削減や高信頼化に貢献します。

3. ノイズ対策用部品を16点削減 (EMARMOUR™の特長)

ノイズに対する外付け部品比較

新製品は、圧倒的なノイズ耐量を実現したことで、一般品には欠かせない外付けのノイズ対策部品(電源、入力、出力の各CRフィルタ)を削減することができます。例えば2chのオペアンプで一般品と比較した場合、計16点のノイズ対策部品を削減可能です。

<アプリケーション例>

■異常電流検知器やガス検知器などの設備管理機器  
■高速制御(信号伝達)を必要とするモータ
■インバータ制御機器  
■トランジスタ駆動用のプリドライバ・バッファ

など、高速信号伝達を必要とする産業機器・民生機器において、負荷容量を一切気にせず高速増幅することができます。

<EMARMOUR™ CMOSオペアンプシリーズのラインアップ>

品名回路数最大動作電圧(V)入力オフセット電圧(mV)(Typ.)バイアス電流(nA)スルーレート(V/μs)(Typ.)回路電流(mA)(Typ.)Nano Cap™技術(出力安定)パッケージ
BD77501G1ch1540.00110.01.3SSOP5

BD77502FVM
2ch2.6MSOP8
BD87581YG-C1ch1413.52.3-SSOP5
BD87582YFVM-C2ch5.0-MSOP8

<Nano Cap™とは?>

「Nano Cap」は、ロームの垂直統合型生産体制において、「回路設計」「レイアウト」「プロセス」、3つの先端アナログ技術を結集することで実現する超安定制御技術を指します。安定制御により、アナログ回路のコンデンサに関する安定動作課題を払拭することで、自動車や産業機器、民生機器などを問わず、幅広いアプリケーションの設計工数削減に貢献します。

<用語説明>

*1) オペアンプ
オペアンプは増幅器とも呼ばれ、入力信号を増幅することができる。センサ出力信号などの微小な信号を増幅することで、マイコンなどが認識できる電圧レベルにする。
オペアンプとよく一緒に紹介されるコンパレータは比較器とも呼ばれ、入力信号のしきい値判定に使用される。センサ出力信号などに対して、しきい値判定を行いデジタル(High / Low)信号を出力することができる。
オペアンプとコンパレータの役割
*2) EMI(Electromagnetic Interference: 電磁妨害)耐量
EMI耐量は周囲で発生するノイズに対する耐性を表す指標。EMI耐量が低い場合に周囲でノイズが発生した際、デバイスやシステムが誤動作する懸念があるため、フィルタ(コンデンサ、抵抗など)やシールド(金属板)でノイズ対策を行う必要がある。逆にEMI耐量が高ければノイズの影響を気にする必要がなくなるため、対ノイズの設計工数削減に大きなメリットを持たせることができる。

・「EMARMOUR™」「Nano Cap™」は、ローム株式会社の商標または登録商標です。

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