2015年4月23日
※2015年4月23日現在ローム調べ
ローム株式会社(本社:京都市)は、このほど、世界で初めてトレンチ構造を採用したSiC-MOSFETを開発し、順次量産を開始します。既に量産化されているプレーナー型のSiC-MOSFETに比べ、同一チップサイズでオン抵抗が50%削減でき、太陽光発電用パワコンや産業機器向け電源、工業用インバータなど、あらゆる機器の電力損失を大幅に低減します。 なお、今回開発したSiC-MOSFETは、パワーモジュール化した製品での提供を予定しており、5月よりサンプル出荷、6月より量産を開始する予定です。生産拠点は、前工程がローム・アポロ株式会社(福岡県)、後工程がローム本社工場(京都市)となります。また、今後はディスクリートパッケージ品を含めたラインアップ展開も順次行う予定です。
近年、世界規模で電力供給問題への対応が求められている中、発電した電力をいかに効率的よく輸送し、利用するかといった電力変換に注目が集まっています。こうした電力変換時の損失を劇的に減らすキーデバイスとして期待されているのがSiCパワーデバイスです。ロームでは2010年にSiC MOSFETの量産化に成功するなど、業界をリードする製品開発を行い、さらに電力損失低減を実現させるデバイス開発を進めてまいりました。
京都大学 工学研究科 電子工学専攻 木本恒暢教授 「ローム社は、理論的性能限界に近づいているSi(シリコン)材料に対して、高耐圧、低損失(高効率)が実現できるSiC(シリコンカーバイド:炭化珪素)材料を使ったSiCパワーデバイスに早くから着目し、世界をリードする開発・量産を進めています。 今回、SiCの特性を最大限に生かすことのできるトレンチ構造を採用したSiC-MOSFETの量産化に、世界に先駆けて成功した意義は非常に大きく、画期的なマイルストーンです。本SiC-MOSFETは極めて優れた低損失特性と高速スイッチング特性を兼ね備えた最高性能のパワートランジスタです。電力変換時の効率を上げ 「ムダなく」 電気を使う本製品の量産により、太陽光発電用パワコンや産業機器向け電源などあらゆる機器の省エネ化、小型・軽量化に貢献していくでしょう。」
1. トレンチ構造の採用により、低オン抵抗デバイスを実現
これまでも、SiC-MOSFETにおけるトレンチ構造の採用はオン抵抗低減に有効であるという理由から注目されていましたが、デバイスの長期信頼性を確保するため、ゲートトレンチ部分に発生する電界を緩和する構造を確立する必要がありました。 今回、ロームは独自構造の採用によりこの課題を克服し、世界で初めてトレンチ構造を採用したSiC-MOSFETの量産化に成功しました。既に量産中のプレーナー型SiC-MOSFETに比べ、オン抵抗を約50%低減、あわせてスイッチング性能(入力容量を約35%低減)の向上を実現しています。
2. フルSiCパワーモジュールの展開
今回、開発したトレンチ構造SiC-MOSFETを使用したフルSiCパワーモジュールを開発しました。 内部回路は2in1構成で、SiC-MOSFETおよびSiC-SBDを用いた1200V/180A定格の製品となります。 同等レベルの電流定格であるSi-IGBTモジュール製品と比較した場合はもちろん、 プレーナー型SiC-MOSFETを使用したフルSiCモジュールと比較した場合も、スイッチング損失を約42%低減しています。
・フルSiCパワーモジュール
・ディスクリート
650V、1200V定格の製品を各3品番ずつ、順次展開していきます。 定格電流は、118A(650V)、95A(1200V)までの製品展開となります。
世界初※、トレンチ構造採用のSiC-MOSFETを開発・量産
大幅な低オン抵抗化により産業機器などの大電力機器の小型・低消費電力化に貢献
2015年4月23日
※2015年4月23日現在ローム調べ
<要旨>
ローム株式会社(本社:京都市)は、このほど、世界で初めてトレンチ構造を採用したSiC-MOSFETを開発し、順次量産を開始します。既に量産化されているプレーナー型のSiC-MOSFETに比べ、同一チップサイズでオン抵抗が50%削減でき、太陽光発電用パワコンや産業機器向け電源、工業用インバータなど、あらゆる機器の電力損失を大幅に低減します。
なお、今回開発したSiC-MOSFETは、パワーモジュール化した製品での提供を予定しており、5月よりサンプル出荷、6月より量産を開始する予定です。生産拠点は、前工程がローム・アポロ株式会社(福岡県)、後工程がローム本社工場(京都市)となります。また、今後はディスクリートパッケージ品を含めたラインアップ展開も順次行う予定です。
<背景>
近年、世界規模で電力供給問題への対応が求められている中、発電した電力をいかに効率的よく輸送し、利用するかといった電力変換に注目が集まっています。こうした電力変換時の損失を劇的に減らすキーデバイスとして期待されているのがSiCパワーデバイスです。ロームでは2010年にSiC MOSFETの量産化に成功するなど、業界をリードする製品開発を行い、さらに電力損失低減を実現させるデバイス開発を進めてまいりました。
京都大学 工学研究科 電子工学専攻 木本恒暢教授
「ローム社は、理論的性能限界に近づいているSi(シリコン)材料に対して、高耐圧、低損失(高効率)が実現できるSiC(シリコンカーバイド:炭化珪素)材料を使ったSiCパワーデバイスに早くから着目し、世界をリードする開発・量産を進めています。
今回、SiCの特性を最大限に生かすことのできるトレンチ構造を採用したSiC-MOSFETの量産化に、世界に先駆けて成功した意義は非常に大きく、画期的なマイルストーンです。本SiC-MOSFETは極めて優れた低損失特性と高速スイッチング特性を兼ね備えた最高性能のパワートランジスタです。電力変換時の効率を上げ 「ムダなく」 電気を使う本製品の量産により、太陽光発電用パワコンや産業機器向け電源などあらゆる機器の省エネ化、小型・軽量化に貢献していくでしょう。」
<特長>
1. トレンチ構造の採用により、低オン抵抗デバイスを実現
これまでも、SiC-MOSFETにおけるトレンチ構造の採用はオン抵抗低減に有効であるという理由から注目されていましたが、デバイスの長期信頼性を確保するため、ゲートトレンチ部分に発生する電界を緩和する構造を確立する必要がありました。
今回、ロームは独自構造の採用によりこの課題を克服し、世界で初めてトレンチ構造を採用したSiC-MOSFETの量産化に成功しました。既に量産中のプレーナー型SiC-MOSFETに比べ、オン抵抗を約50%低減、あわせてスイッチング性能(入力容量を約35%低減)の向上を実現しています。
2. フルSiCパワーモジュールの展開
今回、開発したトレンチ構造SiC-MOSFETを使用したフルSiCパワーモジュールを開発しました。
内部回路は2in1構成で、SiC-MOSFETおよびSiC-SBDを用いた1200V/180A定格の製品となります。
同等レベルの電流定格であるSi-IGBTモジュール製品と比較した場合はもちろん、 プレーナー型SiC-MOSFETを使用したフルSiCモジュールと比較した場合も、スイッチング損失を約42%低減しています。
<ラインアップ>
・フルSiCパワーモジュール
・ディスクリート
650V、1200V定格の製品を各3品番ずつ、順次展開していきます。 定格電流は、118A(650V)、95A(1200V)までの製品展開となります。
<用語説明>
金属-酸化物-半導体電界効果トランジスタのことで、FETの中では最も一般的に使用されている構造である。
スイッチング素子として使われる。
トレンチは溝を意味する。チップ表面に溝を形成し、その側壁にMOSFETのゲートを形成した構造。 プレーナー型MOSFETに構造上存在するJFET抵抗が存在せず、プレーナー構造よりも微細化が可能なため、 SiC材料本来の性能に近いオン抵抗が期待できる。
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