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高耐圧GaNデバイスの駆動に最適な絶縁ゲートドライバICの量産を開始

2025年5月15日

BM6GD11BFJ-LB

ローム株式会社(本社:京都市)は、600Vクラスの高耐圧GaN HEMT駆動に適した絶縁ゲートドライバIC「BM6GD11BFJ-LB」を開発しました。本製品を組み合わせることでGaNデバイスの高周波・高速スイッチングにおける安定した駆動を実現し、モーターやサーバー電源など、大電流アプリケーションの小型化と高効率化に貢献します。
新製品は、ローム初の高耐圧GaN HEMT向け絶縁ゲートドライバICです。急激な電圧上昇および下降を繰り返すスイッチング動作においてデバイスと制御回路を分離し、安全な信号伝送を実現します。
独自に開発したオンチップ絶縁技術を用いることで寄生容量を低減し、最大2MHzの高周波駆動を実現しました。GaNデバイスの高速スイッチング特性を引き出すことで、アプリケーションの省エネ化と高性能化に貢献するほか、周辺部品を小型化できるため実装面積の削減にもつながります。
また、絶縁ゲートドライバICのノイズ耐性を示すコモンモード過渡耐圧(CMTI)*1は従来品比で1.5倍となる150V/ナノ秒(ns)で、GaN HEMTスイッチング時の懸念である高スルーレートでの誤動作を防止して安定した制御をサポートします。最小パルス幅も従来品比で33%縮小し、オン時間を最小65nsに短縮。これにより高周波化しても最小Duty比を確保できるため、損失低減を最小限に抑えます。
GaNデバイスのゲート駆動電圧範囲は4.5V~6.0V、絶縁耐圧は2500Vrmsで、ロームのEcoGaN™シリーズとして新しくラインアップに加わった650V 耐圧GaN HEMT「GNP2070TD-Z」をはじめ、さまざまな高耐圧GaNデバイスの性能を引き出します。出力側の消費電流は0.5mA(最大)で業界トップクラスの低消費電力性能を達成しており、待機電力も削減できます。
新製品は2025年3月より量産(サンプル価格600円/個:税抜)を開始しています。インターネット販売も開始しており、コアスタッフ™オンラインチップワンストップ™などから購入することができます。

EcoGaN™は、ローム株式会社の商標または登録商標です。
「コアスタッフ™」、「チップワンストップ™」は、各社の商標または登録商標です。

<開発の背景>

各国のエネルギー消費が年々増加する中で、省エネ対策は世界共通の課題であり、とりわけ「モーター」や「電源」は、全世界の電力消費量の約97%を占めると言われています。その効率改善のカギを握るのが、SiC(シリコンカーバイド:炭化ケイ素)やGaN(ガリウムナイトライド:窒化ガリウム)など、新材料を用いて電力の制御や変換を担う次世代のパワーデバイスです。
ロームは、シリコン半導体やSiC向け絶縁ゲートドライバICの開発で培ったノウハウを生かし、GaNデバイス駆動に特化した絶縁ゲートドライバICの第一弾として本製品を開発しました。今後は、GaNデバイス駆動用のゲートドライバICをGaNデバイス製品とセットで提供し、アプリケーション設計の容易化にも貢献していきます。

<アプリケーション例>

◇産業機器:PVインバータ、ESS(電力貯蔵システム)、通信基地局、サーバー、産業用モーターなどの電源
◇民生機器:白物家電、ACアダプタ(USBチャージャー)、PC、テレビ、冷蔵庫、エアコン

<用語説明>

*1) コモンモード過渡耐圧(CMTI)
絶縁ゲートドライバの主要なパラメータの1つで、短時間に発生する急激な電圧上昇への耐性をいう。特にGaN HEMTなどスルーレートが高いデバイスを駆動する場合は、急激な電圧変化が生じやすく、CMTIの高いゲートドライバを用いることでデバイスの損傷を防ぎ、回路の短絡リスクを低減できる。