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技術記事indexPro 掲載

2025年03⽉19⽇

オンデバイスでAI学習・推論が可能なAIマイコン、業界初登場ロームがスタンドアローンAI「Solist-AI™」搭載32bit汎用マイクロコントローラを開発
電子機器の故障予兆検知をクラウドサーバー不要、かつエンドポイントでリアルタイムに実現

(※:2025年2月ローム調べ)

オンデバイスでAI学習・推論が可能なAIマイコン、業界初登場 ロームがスタンドアローンAI「Solist-AI™」搭載32bit汎用マイクロコントローラを開発 電子機器の故障予兆検知をクラウドサーバー不要、かつエンドポイントでリアルタイムに実現
※ 本コンテンツは掲載元の許可を得て転載しています。
※ 内容は取材当時のものです(2025年03⽉)

ローム株式会社(本社:京都市)は、IoT分野のエッジコンピューター・エンドポイントに向けて、AI(人工知能)により、モータやセンサなどを搭載する電子機器の故障予知(故障予兆検知)を実現できるオンデバイス学習AIマイコンを開発した。
AI機能搭載32bitマイクロコントローラ「以降AIマイコン」は、AIアクセラレータと32bit CPUの組み合わせにより、超低消費電力(約40mW)で、ソフトウェア処理の約1/1,000の時間で学習・推論を実現し、クラウド不要でリアルタイムの故障予知が可能である。AIマイコンの導入を容易にするため、パートナー企業との連携でエコシステムを構築し、顧客の製品開発支援や簡単に導入可能なシステムの提供を目指している。
(※:ローム従来品比)

ロームAIマイコン

ロームAIマイコン:

  • ・エンドポイント向けのAI搭載
  • ・AIマイコン単独で学習・推論が可能
  • ・ハードウェアによる高速AI処理
  • ・超低消費電力
  • ・AI導入のための開発支援ツール提供が可能

Solist-AI™を実現するAIマイコン

Solist-AI™ブランド

Solution with On-device Learning Ic for STandalone-AI
Solist-AI™は、ロームがエッジコンピューティング分野に向けて提供するオンデバイスAIソリューションに与えられるブランド名称です。独自に開発したオンデバイス学習AI技術により、音楽用語「ソリスト(独奏者)」に由来する名前のとおり、クラウドサーバーに依存せず、エッジデバイス単体でリアルタイムの学習・推論処理を可能にします。コンパクト設計と低消費電力を特徴とし、AIイノベーションの拡大に貢献します。
※「Solist-AI™」は、ローム株式会社の商標または登録商標です。

Solist-AI™ブランドロゴ

ロームAIマイコンのコンセプト

AIマイコンは、AIアクセラレータ「AxlCORE-ODL」を搭載したマイコンで、単独で学習と推論を実行可能である。AIマイコンはセンサ入力を活用した「異常の予兆検知」を得意とし、正常状態を学習したあとの入力データから「いつもと違う」状態を数値化することで異常を検知する。
クラウドサーバーとの連携が不要で、エンドポイントでの単体動作に加え、超低消費電力を実現しており、電池駆動の用途にも対応可能である。デバイス上で学習できるマイコンとして、Solist-AI™は業界初のソリューションである。

ロームAIマイコンのコンセプト

従来のAIとSolist-AI™の比較

AIにはクラウド型、エッジ型、エンドポイント型の3種類がある。クラウド型AIはクラウドコンピューターで学習や推論を行い、エッジ型AIはネットワークの中間機器にAIを搭載している。一方、エンドポイント型AIはロボットやセンサなど端末機器にAIを組み込む方式である。AIマイコンは、AIアクセラレータを搭載したマイコン単独で学習・推論を実行するため、クラウドを使わず、現場設置後の追加学習や再学習が可能である。設置環境や機器の違いに柔軟に対応できる。

AIとSolist-AI™の比較

AIマイコンの活用方法

AIマイコンは、異常の予兆を検知し、機器が故障する前に通知することを目的としており、人の健康診断に例えられる。AIによる推論データから異常度を判断し、異常が深刻化する前に早期対応が可能である。これにより、24時間の自動監視が実現し、ライン停止リスクや修理コストの低減に貢献する。また、顧客の「機器が壊れる前に通知してほしい」というニーズにこたえることができる。

”いつもと違う”という異常の予兆を検知

AIマイコンの活用方法

AIマイコンの具体的な活用事例

AIマイコンは、従来のソフトウェア処理では困難であったさまざまな要素の数値化を可能にし、実現が難しかった分野への多様な応用が期待されている。具体的な活用事例は以下のとおりである。

FANモータの異常振動の検知

AIマイコンの具体的な活用事例

ファンモータに取り付けた加速度センサから得られる加速度信号をAIが学習・推論することによりファンモータの異常を知ることができる。ファンモータに異常が発生すると加速度が変化し、その変化をAIが異常度として出力する。この異常度の大きさに応じて、部品の劣化や損耗などによるさまざまな故障の予兆を検知することが可能になる。

モータ軸受損傷の検知

モータ軸受損傷の検知

モータの軸受損傷は人間の聴覚による検知が行われたりしているが、耳に聞こえるレベルになるとかなりの損傷が発生していることが多い。加速度センサの出力をAIマイコンで学習・推論することにより、損傷の初期段階で予兆を検知することが可能となる。

その他の活用事例は以下のとおりだが、これら以外にも幅広い分野での応用が期待される。
故障予知(故障予兆検知)が求められる、または動作停止ができない機器
■産業機器…モータやセンサが使用されている機器(モータ、ロボット、FAセンサなど)
■住設家電…給湯器、冷蔵庫など
予測精度の向上が必要な機器
■動作終了時間予測…洗濯機、炊飯器、給湯器(数十分程度動作時間がある機器)、バッテリー(劣化)

学習用データの準備が不要

一般的なAIソリューションは、学習データの収集、ラベル付け、AIモデルの学習、ソフトウェア生成、マイコンへのプログラム書き込みを経て推論を実行するが、AIマイコンではアクセラレータ(AxlCORE-ODL)が単独でハードウェア処理をするため、AIモデルのソフトウェア生成が不要である。設置場所での学習・推論が可能で、手順が大幅に簡略化されていて、学習後すぐに推論に戻れる点が特長である。また、一般的なAIでは再学習時に再度ソフトウェア生成が必要だが、AIマイコンではその手続きが不要で効率的である。

AI実行までのステップ

AI実行までのステップ

ロームAIマイコンと各種AIチップの性能比較

下表は従来型のAIとロームAIマイコンの比較表である。ロームAIマイコンは、ネットワーク不要、数ミリ秒での学習・推論が可能、約40mWという超低消費電力での動作する、というところが大きな特長である。応答時間はミリ秒と高速で,ソフトウェア処理を行っている従来のAIの約1/1000の時間で処理ができる。

ロームAIマイコンと各種AIチップの性能比較

ロームAIマイコン

ML63Q2500グループ概要

ML63Q2500グループはArm®Cortex®-M0+をコアとし、AIアクセラレータ(AxlCORE-ODL)とCAN FDコントローラをはじめ豊富な周辺ブロックを搭載した32bitマイクロコントローラである。
AIアクセラレータ(AxlCORE-ODL)の処理とAI以外のソフトウェア処理を並行して実行できる特長がある。アクセラレータ稼働中もシリアル通信や周辺制御などを効率的に行い、推論完了後は結果を出力する。
※Arm®、Cortex®は、米国およびその他の国におけるArm Limited(またはその子会社)の登録商標です。

ロームAIマイコンと各種AIチップの性能比較

ブロック図

ブロック図

開発支援ツール

ロームは、AIマイコン(ML63Q2500グループ)向けに、以下の開発支援ツールを提供している。このうち、①~⑤と⑦はロームが提供し、⑥はエコシステムパートナーが提供、⑧、⑨は市販品を顧客が用意する必要がある。
アクセラレータ(AxlCORE-ODL)はハードウェアで処理されるため、AIモデルのソフトウェア開発は不要だが、顧客の機器におけるアプリケーションソフトウェア開発の省力化を支援するため、以下のユーティリティを提供している。
■Solist-AI™ SIM:AI適用効果をPC上で検証可能なシミュレーション
■Solist-AI™ Scope:AIの動作をリアルタイムで可視化(グラフ表示)する高速リアルタイムデバッガ波形ビューワ

開発支援ツールの構成

開発支援ツールの構成

Solist-AI™エコシステム

エコシステムの構想

ロームはAIマイコンの導入拡大を目指し、パートナー企業と協力してエコシステムを構築している。顧客が自社機器にAIを組み込む場合と、少量多品種の産業機器分野向けに既製品をシステムに導入する場合を想定している。さらに、ハードウェアやソフトウェア提供者、システムインテグレータなど各分野の企業と連携し、新たなパートナー企業の募集も進めている。

エコシステムの構想

まとめ

ロームの開発したSolist-AI™を実現するAIマイコンは、超低消費電力でリアルタイムの故障予兆検知をオンデバイスで実現する。マイコン単独で動作し、クラウドやネットワーク接続が不要で、遅延もゼロである。さらに、設置環境や機器の個体差に柔軟に対応し、事前の学習データ準備も不要である。

今後は、AIマイコンのラインアップ拡充やパートナー企業との連携によるエコシステム構築を通じ、即時の導入が可能な既製品やカスタム開発など多様なソリューションの提供を目指している。

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