Solist-AI™テクノロジー
⼀⾔にAI(Artificial Intelligence)といっても、その役割・性能はAI技術そのものと、搭載されるマイコンのような製品によって多岐にわたります。このページでは、ロームのSolist-AI™がどのように実現され、お客様に何を提供できるかを詳しくご紹介します。
技術詳細
Solist-AI™によるソリューションは、独自のオンデバイス学習AIを搭載したSolist-AI™マイコンと、ユーティリティソフトや評価基板など豊富なサポートツールにより提供されます。
1. エッジコンピューティングAIマイコン(Solist-AI™マイコン)
Solist-AI™マイコンは、シンプルな3層ニューラルネットワークのアルゴリズムで構成される、ローム独⾃のハードウェアAIアクセラレータ「AxlCORE-ODL」を搭載したマイコンです。Arm® Cortex®プロセッサ、ROM容量、端⼦数で製品展開を進めており、幅広い⽤途にオンデバイスAIソリューションを提供します。
AIマイコンの詳細は、こちらの製品情報ページをご参照下さい。
2. Solist-AI™のAIアルゴリズムと「AxlCORE-ODL」
Solist-AI™のAIアルゴリズムは、3層のニューラルネットワークをベースとしたエクストリーム・ラーニング・マシン(Extreme learning machine, ELM)の一種です。ハードウェア化に適した演算構成と、AI処理時のメモリ消費量を抑えられるのが特徴です。
また、AxlCORE-ODLは、AIアルゴリズムを高速かつ低消費電力で実行するためのハードウェアアクセラレータです。AI用演算の高速化に加えて、AI処理全体をバッチ化して実行できるため、AI処理中におけるMCU側の負担を大きく低減できます。バッチ処理を組み替えることで、FFTの高速化なども可能です。
3. AI動作確認用シミュレータ「Solist-AI™ Sim」
Solist-AI™ Simは、Solist-AI™の機能をPC上で確認することができるシミュレーションツールです。AIの学習・推論結果を簡単に確認できるので、短期間でAI活用効果を確認できます。1回のシミュレーションに要する時間は数秒程度であり、複数の条件での活用効果を短時間で検討できます。
現在、異常検知向け(教師なし学習)と予測/パラメータ推定向け(教師あり学習)のシミュレーションツールを公開しています。
4. 実機動作確認用ユーティリティ「Solist-AI™ Scope」
Solist-AI™ Scopeは、Solist-AI™マイコン内部で扱っているデータを波形として表示するツールです。AIに入力するセンサデータやAIから出力される異常度データなどをリアルタイムに確認できるため、AIが想定通りの動作をしているかを簡単に確認できます。
※ Solist-AI™ Scopeはリファレンスソフトウェアに同梱されています。
5. 組込みソフトウェア開発
リファレンスソフト(ペリフェラルドライバ、ライブラリ、サンプルソフトウェア)
Solist-AI™マイコン用の各種ペリフェラルドライバ、AIライブラリおよび各種サンプルプログラムです。統合開発環境「LEXIDE-Ω」とリファレンスボードで動作を確認できます。
Solist-AI™の動作をモニタすることを目的としたリアルタイムビューワ:Solist-AI™ Scopeも同梱されています。使用の際は接続アダプタ(MM-FT232HC*1)が必要ですので、お客様にてご用意ください。
AIアプリケーションのサンプルソフトウェア
Solist-AI™マイコンを用いた異常検知AIアプリケーションのサンプルソフトウェアです。加速度センサから取得した加速度データをもとに初期学習・推論を行い、異常度を算出します。
本サンプルソフトの動作には、統合開発環境「LEXIDE-Ω」とリファレンスボードの他、加速度センサおよび PC接続用アダプタ(MM-FT232HC*1 )が必要です。お客様にてご用意ください。
*1 MM-FT232HCはサンハヤト社の製品です。
*2 FT232H/FT2232HはFTDI社の製品です。
6. ARM®コア統合開発環境
LAPIS Development Tools LEXIDE-Ωは、ローム独自の8ビットRISC プロセッサ「nX-U8/100コア」、16ビットRISCプロセッサ「nX-U16/100コア」を搭載したマイクロコントローラ用、およびArm® Cortex®-Mコアを搭載したロームのマイクロコントローラ用アプリケーションプログラム開発環境です。
オープンソースのEclipseおよびCDTプラグインをベースとした統合開発環境により、効率よいプログラム開発をサポートします。
Keil® MDKをご使用の際は、別途お問い合わせ下さい。
7. マイコン搭載リファレンスボード(ローム提供)
Solist-AI™マイコンの動作を確認できるリファレンスボードです。ソフトウェアの開発、デバッグ、Flash 書き込みを⾏うことができます。また、Solist-AI™Scopeを接続して、AIの動作を確認することも可能です。
8. マイコン搭載リファレンスボード(エコシステムパートナー提供)
エコシステムパートナーから提供されるAIマイコン搭載システム評価ボードです。詳しくはエコシステムパートナーに関するページをご参照下さい。
導⼊フロー・活⽤事例
Solist-AI™は、独⾃に開発したオンデバイス学習AI技術と豊富なサポートツールの提供により、お客様の検討・検証、そして運⽤までをスムーズにサポートします。ここでは、Solist-AI™の導⼊フローと活⽤事例をご紹介します。
Solist-AI™活⽤事例1 −予知保全−
モータ軸受損傷の検知: ⽣産設備/機械の予知保全で、状態基準監視CBMに活⽤
Solist-AI™マイコン⽤の各種ペリフェラルドライバ、AIライブラリおよび各種
背景と課題
- ⽣産設備/機械等の異常/故障を予知保全したい
- 定期点検する⼈材(知⾒を有したエンジニア)の不⾜
Solist-AI™の活⽤
- 設備の初期導⼊時に、加速度センサ等を⽤いて定速運転の振動状態を正常なデータとして現場学習
- 通常運転時の振動状態を学習データと継続⽐較し、⼀定量乖離したときに異常の予兆(=“いつもと違う”)を発報
期待される効果
- “いつもと違う” を AI で早期検知し、原因調査
⇒予定外の装置の修理/交換やチョコ停/ドカ停を低減 - 人手によるTBMから、AIシステムによるCBMを構築
⇒トータルメンテナンスコストを削減
※上記は予知保全の事例の⼀つです。モータシステムに限らず様々なシステムへの適⽤が可能です。
Solist-AI™活用事例2 -状態/劣化/パラメータ予測-
バッテリーの劣化予測/状態変化検知:製品の劣化指標の未来予測や、通常測定できないパラメータの推定に活用
背景と課題
- お客様のバッテリー搭載機器の使い方は様々
- バッテリーの満充電容量の劣化等を把握できず、使い方に制限
Solist-AI™の活⽤
- 標準劣化特性(SOH)を事前学習し、出荷。実使用でのSOHを追加学習し、バッテリー劣化を正確性高く予測する
- バッテリーの各セルの標準充放電特性を事前学習し、出荷。実使用で追加学習し、セルばらつきを加味した状態変化を検知
期待される効果
- お客様の使い方/使用環境を学習
⇒未来の劣化を予測し、使用可能期間を延長 - 各セルばらつきを加味して学習
⇒充電容量やアンバランス異常/状態変化を早期検知
※上記は状態/劣化予測の事例の⼀つです。バッテリーシステムに限らず様々なシステムへの適⽤が可能です。
Solist-AI™活用事例集
モータ異常検知・バッテリー劣化の事例だけでなく、産業機器・電気製品・生産設備など様々なシーンの導入事例を詳細資料にまとめました。Solist-AI™導入の検討にお役立てください。
エコシステムパートナーとの取り組み
Solist-AI™は、さまざまなエコシステムパートナーと共同で提供されます。ハードウェアやソフトウェアの開発をはじめ、基盤環境の開発・提供にいたるまで、お客様がすぐに使用・導入できるように支援します。
また、Solist-AI™によるAIイノベーションの拡大に貢献するべく、エコシステムパートナーを継続して募集しています。ご興味ある方は、ぜひご連絡ください。
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注)「Solist-AI™」は、ローム株式会社の商標または登録商標です。
「ARM® 」「Cortex® 」「Keil® 」は、Arm Limited またはその子会社の商標または登録商標です。