GaNデバイスの性能を最大限引き出す「超高速駆動制御」IC技術を確立
GaNデバイスと制御ICの組み合わせで電源アプリケーションの省エネ化や小型化に貢献

※2023年3月3日現在ローム調べ

2023年3月3日

<要旨>

ローム株式会社(本社:京都市)は、GaNデバイスなど高速スイッチングデバイスの性能を最大限引き出す超高速駆動制御IC技術を確立しました。
近年、GaNデバイスは高速スイッチングの特性優位性から採用の広がりを見せる一方で、その駆動を指示する役割を担う制御ICの高速化が課題となっていました。
こうした中、ロームは、電源ICで培った超高速パルス制御技術「Nano Pulse Control™」を更に進化させ、制御パルス幅を従来の9nsから業界最高となる2nsまで大幅に向上することに成功。同技術を制御ICに搭載することで、GaNデバイスが持つ性能を最大限まで引き出す超高速駆動制御IC技術の確立に成功しました。
現在、本技術を用いた制御ICの製品化を進めており、2023年後半に100V入力1ch DC-DCコントローラとしてサンプル出荷を開始する予定です。ロームのGaNデバイス「EcoGaN™シリーズ」などと組み合わせることで、基地局やデータセンター、FA機器、ドローンなど様々なアプリケーションの大幅な省エネ化や小型化に貢献します。
ロームは今後も得意とするアナログ技術を中心にアプリケーションの使いやすさを追求し、社会課題を解決する製品開発を進めていきます。

 

大阪大学 大学院工学研究科 森 勇介 教授

長年、省エネを実現するパワー半導体材料として期待の大きかったGaNですが、品質やコストなど様々な課題がありました。こうした中、ロームは、信頼性を高めたGaNデバイスの量産体制を確立するとともに、その性能を最大限発揮するための制御ICの開発も進めておられます。これはGaNデバイスの普及に向けた非常に大きな一歩になるでしょう。
パワー半導体の性能を真に発揮するためには、ウエハ、デバイス、制御IC、モジュールなど、それぞれの技術を有機的に連携する必要があります。その点、日本にはロームをはじめ、多くの有力企業がそろっています。
我々が取り組むGaN on GaNのウエハ技術から、ロームが取り組む、デバイス、制御IC、そしてモジュールまで、ALL JAPANで協力することで、脱炭素社会の実現に貢献したいと思います。

 
GaNデバイスの性能を最大限引き出す「超高速駆動制御」IC技術

<背景>

電源回路部の小型化を追求するにあたり、高周波スイッチングによる周辺部品の小型化が必要となります。そのためには、GaNデバイスなど高速スイッチングデバイスの駆動性能を十分に引き出す制御ICが必要でした。
今回、周辺部品を含めたソリューション提案を実現するために、ロームが得意とするアナログ電源技術の1つである「Nano Pulse Control™」を搭載したGaNデバイスに最適な超高速駆動制御IC技術を確立しました。

<制御IC技術の詳細>

この技術は、ロームの垂直統合型生産体制における、回路設計・プロセス・レイアウトのアナログ技術を結集して実現した「Nano Pulse Control™」を搭載。独自の回路構成により制御ICの最小制御パルス幅を従来の9nsから2nsまで大幅に向上したもので、48V系、24V系のアプリケーションを中心に高電圧から低電圧への降圧変換を1つの電源ICで構成可能(最大60Vから0.6V)となります。GaNデバイスと組み合わせた高周波スイッチングにおける駆動周辺部品の小型化に最適で、本技術を搭載したDC-DCコントローラIC(開発中)とEcoGaN™を使用した電源回路で比較した場合、一般品比で86%の実装面積削減を実現します。

Nano Pulse Control™技術
開発品の電源回路構成 面積比較

<Nano Pulse Control™について>

Nano Pulse Control

ナノ秒(ns)オーダーのスイッチングオン時間(電源ICの制御パルス幅)実現により、従来不可能だった高電圧から低電圧への変換を可能にする超高速パルス制御技術です。
Nano Pulse Control™の技術詳細は下記URLからご覧ください。
https://www.rohm.co.jp/support/nano

<EcoGaN™について>

EcoGaN

EcoGaN™は、GaNの持つ低いオン抵抗と高速スイッチング性能を最大限生かすことで、アプリケーションの低消費電力化と周辺部品の小型化、設計工数と部品点数の削減を同時に目指した省エネ・小型化に貢献するロームのGaNデバイスです。

*EcoGaN™、Nano Pulse Control™は、ローム株式会社の商標または登録商標です。

<森 勇介 教授 プロフィール>

森勇介 教授

大阪大学大学院工学研究科 准教授などを経て、2007年より同科教授に就任、現在に至る。
GaN結晶成長技術などの開発と研究に長年携わり、結晶量産技術を確立。現在、GaNデバイスの社会実装を推進するために、GaN基板上にGaNトランジスタを形成する、GaN on GaNウエハ技術の高品質化の取り組みに加え、数多くの企業との産学連携も手掛けるなど、GaN技術応用研究の第一人者。
2008年 文部科学大臣表彰科学技術賞をはじめ、近年では2022年 全国発明表彰「未来創造発明奨励賞」、2022年 第13回化合物半導体エレクトロニクス業績賞(赤﨑勇賞)受賞など。