世界初となる国際無線通信規格 Wi-SUN FANの認証を取得

2019年2月4日

京都大学 大学院情報学研究科の原田博司教授の研究グループ(以下 京都大学)と、株式会社日新システムズ(以下 日新システムズ)、ローム株式会社(以下 ローム)が共同開発したIoT(Internet of Things:“モノ”のインターネット) 向け新国際無線通信規格Wi-SUN FAN (Field Area Network)搭載無線機器が、世界で初めてWi-SUN アライアンスが行ったWi-SUN FAN認証試験に合格し、認証を取得いたしました。

■ 背景

スマートシティやスマートグリッドなど屋外での通信ネットワークを実現するためには、高品質で長距離かつ安全なネットワーク技術が必要となります。Wi-SUN FANはIoT構築に最適な国際無線通信規格「Wi-SUN」の新規格で、電気・ガス・水道のメータリングのほか、インフラストラクチャ、高度道路交通システムなど、スマートシティ、スマートグリッドを構築するさまざまなアプリケーションにおいて、相互運用可能な通信ネットワーク技術として期待されています(図1)。
このWi-SUN FANは、IEEE802.15.4g規格の低消費電力無線伝送技術とIPv6による多段中継技術を利用した相互運用可能な低消費電力IoT無線通信技術です。IoT用の無線通信規格および技術適合性・相互接続性認証を行うWi-SUNアライアンスは、2016年5月16日に標準仕様を制定し、これを受け京都大学、日新システムズ、ロームの3者は、2016年11月11日にWi-SUN FANに対応した無線機の基礎開発に成功したことを発表しました。その後Wi-SUNアライアンスは、2018年10月3日にWi-SUN FAN認証プログラムを発表しましたが、Wi-SUN FAN認証を取得した無線機は存在していませんでした。

Wi-SUN FANシステムの概要

図1 Wi-SUN FANシステムの概要

■ 今回の成果

今回、Wi-SUN FANの基礎開発成果を元にWi-SUN FANの技術仕様書および認証プログラムに対応した無線機(写真1)を開発し、複数社の異なる無線機を複数台用いて、マルチホップ、周波数ホッピングおよび高度な認証セキュリティを利用したIP通信による認証試験に合格しました。この無線機は、Wi-SUN FAN技術仕様書に記載されている以下の機能を有します。

  • 日本で運用上必要となるIEEE 802.15.4/4g/4eに対応した物理層、MAC層
  • 6LowPAN、IPv6に代表されるIETF制定のアダプテーション層、ネットワーク層、トランスポート層
  • RPLを用いたマルチホップ通信方式
  • 周波数ホッピング
  • 認証セキュリティ対応
  • マルチベンダ相互接続性
認証を受けた機器

写真1 認証を受けた機器

本無線機は、1km程度の距離を安定して伝送することができるIEEE802.15.4/4g/4e技術を核に、Wi-Fiシステムで導入実績のあるインターネット接続用国際規格、およびIPをベースに無線機間の多段中継を実現するマルチホップ国際規格を統合した機能を搭載しています。そのためスマートシティやスマートメータリングを構成する各種センサー、メーター、モニターを手軽にインターネットに接続することが可能になります。なお、本成果は、IEEE 802.15.4/4g/4eの標準化・開発実績のある京都大学、Wi-SUN対応の通信ミドルウェアの商用化を行う日新システムズ、同標準化に対応した通信モジュールを開発するロームという京都に本拠をもつ3者が、産学連携の共同コンソーシアム「次世代Wi-SUN共同研究コンソーシアム・京都」を組み、内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の中で行われたものです。

■ 認証取得概要

認証取得日時:2019年1月30日
認証機関:Wi-SUNアライアンス
認証試験機関:Allion Labs, Inc.
認証番号:WSA 0171(Wi-SUN FANの認証番号としては世界初)

取得したProduct Certificate Document

図2 取得したProduct Certificate Document

■ 今後の展開

今後も、3者はWi-SUNアライアンスが主催する相互接続性仕様検証イベントに参加し、Wi-SUN FAN規格の技術適合性・相互接続性認証試験に貢献するとともに、本無線機を社会実装するため、さらなる開発を京都における産学連携プロジェクトとして推進してまいります。 また本成果は、2月5日より米国・ニューオーリンズで開催される米国最大級の電力業界関連のイベント「DistribuTECH 2019」のWi-SUNアライアンスのブースにおいて展示を行う予定です。

【用語説明】

■ IEEE 802.15.4g
屋外で利用可能なセンサー、メーター等に搭載し、エネルギーマネージメント等を行うために必要となる無線通信伝送部(物理層)の国際標準規格。1ホップ最大1km程度の伝送が都市部でも実現でき、低消費電力にIPv6等の情報を伝送できる特長を有する。米国IEEE802.15委員会で制定。京都大学 原田博司教授は、この標準化委員会の副議長であり、フレーム同期部コードが強制規格に採用されるなどの技術的なメジャーコントリビュータである。
■ IETF
インターネット技術の標準化を推進する任意団体。 コンピュータシステムを相互接続するため、 共通の技術仕様策定を議論するグループから発展したもの。
■ Wi-SUNアライアンス
IEEE 802.15.4g規格をベースにエネルギーマネージメント、防災、工場等の各種アプリケーションを実現するために他のオープンな国際標準規格と融合させ、製造メーカ間で相互接続可能な国際無線通信規格「Wi-SUN Profile」を制定する任意団体。現在会員企業は全世界に100社以上。スマートメーターと宅内エネルギー管理システム(HEMS)との間の通信規格「Wi-SUN ECHONET」は全国の電力会社に採用。現在すでに当該仕様が搭載されているスマートメーターは700万台以上出荷。今後は東京電力管内で2000万台以上出荷される予定。詳細はhttps://www.wi-sun.orgを参照。
■ Wi-SUN FAN(Field Area Network)
Wi-SUNアライアンスが制定するスマートメータリング、配電自動化を実現するスマートグリッドおよび、インフラ管理、高度道路交通システム、スマート照明に代表されるスマートシティを無線で実現するためのセンサー、メーターに搭載するIPv6で多段中継(マルチホップ)可能な通信仕様。2016年5月16日にバージョン1をWi-SUN FANワーキンググループで制定。物理層部にIEEE 802.15.4g、データリンク層に IEEE 802.15.4/4e、アダプテーション層にIETF 6LowPANそしてネットワーク層部にIPv6、ICMPv6、トランスポート層にUDP、そして認証方式としてIEEE 802.1xを採用している。また製造ベンダー間の相互接続性を担保するための試験仕様等も提供されている。
■ 京都大学 大学院情報学研究科 原田博司研究室について
京都大学 大学院情報学研究科 原田博司研究室は、京都大学 大学院情報学研究科通信情報システム専攻に所属し、ディジタル通信分野に関する研究開発を行っています。特に原田博司教授は、2012年Wi-SUNアライアンス設立時の共同創業者(Founder member)であり、現在Wi-SUNアライアンス理事会議長(Chair of the Board)として、また、Wi-SUNアライアンスHAN WG議長として、Wi-SUNシステムの技術仕様策定、普及活動を行ってきました。原田博司研究室では、Wi-SUNシステム全般の研究開発を行っており、主に通信方式、電波伝搬・伝送、システム最適化、応用システム等の研究開発を行っています。
■ 日新システムズについて
日新電機株式会社(東証1部上場)の全額出資子会社である日新システムズは、これまで組み込みシステム開発で培った機器制御技術とネットワーク技術を土台に、エネルギーをはじめとする様々な分野において、価値あるスマート社会を実現していくことで新しい未来をみなさまと共に創り続ける企業です。
日新システムズのホームページ   https://www.co-nss.co.jp/
Wi-SUN FANソリューションページ   https://www.co-nss.co.jp/media/press/wsf/

 

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