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SemiDriveとロームが共同開発
~スマートコックピット向けSoC「X9SP」とロームPMICとのリファレンスデザイン~

2025年6月25日

2025年上海モーターショーのSemiDrive Technologyブースでの写真

2025年上海モーターショーの
SemiDrive Technologyブースでの写真
SemiDrive Technologyの創業者 仇雨菁氏(右から3番目)、
創業者兼CTO 孫鳴楽氏(左から2番目)
ROHM Semiconductor (Shanghai) Co., Ltd.
米澤秀一董事長(左から3番目)

ローム株式会社(本社:京都市)は、スマートコックピット向けSoC*1開発のリーディングカンパニーであるSemiDrive Technology Ltd.(以下、SemiDrive)と、スマートコックピット向けリファレンスデザイン「REF68003」を共同開発しました。このリファレンスデザインは、SemiDriveのスマートコックピット向けSoC「X9SP」を中心に構成されており、ロームのPMIC*2を搭載しています。本リファレンスデザインは2025年上海モーターショーのSemiDriveブースにも展示されました。
SemiDriveのスマートコックピット向けSoC「X9シリーズ」は、メータクラスタ、インフォテインメントシステム(IVI)、コックピットドメインコントローラ、コックピットと車体一体型システムなど、エントリーモデルからフラッグシップモデルまで、幅広いラインアップを展開しています。Gasgoo研究院の最新調査データによると、2025年1月〜3月の中国国内の乗用車登録台数のうち車両価格が10万元(約200万円)以上のモデルでは、SemiDriveのコックピット用X9シリーズの搭載台数が、現地市場で首位を記録しています。上海汽車、奇瑞汽車、長安汽車、第一汽車、広州汽車、北京汽車、東風日産、東風本田などの自動車メーカーが展開する、50以上の中国主力モデルおよび多数の海外モデルに搭載されています。
SemiDriveとロームは2019年より技術交流を開始し、スマートコックピット向けのアプリケーション開発に焦点を当てた協力関係を築いてきました。2022年には自動車分野における先進的な技術開発パートナーシップを締結。これまでに、SemiDriveの車載SoC「X9H」、「X9M」および「X9E」と、ロームのPMICやSerDes IC*3、LEDドライバICなどを組み合わせたスマートコックピット向けリファレンスデザインを共同開発しています。
そして2025年、SemiDriveとロームは、車載SoC「X9SP」をベースにした新たなリファレンスデザインを共同開発し、中・上級向けコックピットなどに提案します。コックピットの安全レベルISO 26262 ASIL-B*4を満たすロームのSoC用PMIC「BD96811F44-C」、「BD96806Q04-C」、「BD96806Q05-C」および「BD96806Q06-C」を提供し、システムの安定性と電力効率の向上に貢献します。今後もロームは、自動車用インフォテインメントシステム向け製品の開発を継続し、自動車の利便性と安全性の向上に貢献していきます。


SemiDrive Technology Ltd. CTO 孫 鳴楽
自動車のスマート化が加速する中で、車載電子部品に対する要求はますます高くなっています。X9SPは、X9シリーズの高性能コックピットSoCの中心となるフラッグシップ製品で、スマートコックピットやクロスドメイン統合化に向けて設計されており、高性能と高信頼性を備え、特に駐車支援機能付きスマートコックピットソリューションに適しています。このたび開発したリファレンスデザインには、ADASやコックピット向け半導体を豊富にラインアップするロームのPMICをX9SPと組み合わせることで、システム全体の安定性と電力効率を向上させています。今後もロームとの協業を継続することで、革新的な車載向けソリューションを幅広く提供できることを期待しています。

ローム株式会社 取締役 上席執行役員 立石 哲夫
車載向けSoCのリーディングカンパニーであるSemiDriveと、新たなリファレンスデザインを共同開発できたことを大変うれしく思います。次世代自動車を中心に、インフォテインメントやADAS機能のモニタリングなどあらゆる機能を搭載する「スマートコックピット」の採用が加速する中で、PMICなどの車載アナログ半導体の役割は重要度を増しています。今回ロームが提供したSoC向けPMICは、次世代の車載電源構成に柔軟に対応しながら機能安全性も満たすことのできる電源ICです。今後もSemiDriveとの交流を深めることで、次世代コックピットの多機能化を支える幅広い製品開発に注力し、自動車のさらなる進化に貢献してまいります。

<開発の背景>

近年普及が進むスマートコックピットは、メータクラスタやインフォテインメントなどの多様な機能を備えるほか、大型ディスプレイの採用も加速しています。それに伴い、車載SoCに求められる処理能力も増加していることから、主要デバイスとして電力供給を担うPMICなどの電源ICには、電流対応と高効率動作の両立が求められています。
ロームが提供するSoC向けPMICは、高い安定性と効率性を兼ね備えるだけでなく、内部メモリ(OTP)による任意の出力電圧設定やシーケンス制御も可能です。最小限の回路変更でさまざまな車種・モデル向けの電源システムを構築できることから、自動車メーカーの開発工数削減に貢献します。

SemiDrive Technology Ltd.(芯驰半导体科技有限公司)について

SemiDriveはあらゆるシーンに対応する車載SoCのリーディングカンパニーです。スマートコックピットおよびスマート車両制御分野をカバーする、高性能かつ高信頼性の車載SoCの提供に注力し、将来の車載電子・電気アーキテクチャに対応した幅広いラインアップを展開しています。現在、260社以上の顧客と取引があり、200件を超えるプロジェクトを保有。車載向けSoCの累計出荷数は800万個を超えています。また、上海汽車、奇瑞汽車、長安汽車、東風汽車、第一汽車、理想汽車、日産、ホンダ、フォルクスワーゲンなど、中国国内90%以上のOEMに加え、一部の主要海外自動車メーカーとも取引実績があります。
詳細については、SemiDriveのWebサイトをご覧ください。

<用語説明>

*1) SoC(System-on-a-Chip)
単一の半導体パッケージ内にCPU(Central Processing Unit)、メモリ、インタフェースなどを統合した集積回路。高い処理能力や電力効率、スペース削減を実現できるため、車載機器、民生機器、産業機器分野において幅広く使用されている。
*2) PMIC(パワーマネジメントIC)
複数の電源系統を内包し、電源管理、シーケンス制御などを行う機能をワンチップに搭載したIC。DC-DCコンバータICやLDO、ディスクリート部品などを個別に使って回路構成することに比べて、スペースや開発工数などを大幅に削減できるため、近年では、車載機器、民生機器を問わず、複数の電源系統を持つアプリケーションで一般的なデバイスとなっている。
*3) SerDes IC
データの高速伝送を目的として、通信方式の変換を行うために、対で使う2つのICの総称。シリアライザ(Serializer)でデータを高速で伝送しやすい形に変換(パラレルデータをシリアルデータに)し、デシリアライザ(Deserializer)は伝送されてきたデータを元の形に変換(シリアルデータをパラレルデータに)する。
*4) ISO 26262、ASIL(Automotive Safety Integrity Level)
ISO 26262は、2011年11月に正式発行された車載電子制御の機能安全に関する国際規格。車載電子制御において故障のリスクを算出し、そのリスクを軽減する仕組みを機能のひとつとしてあらかじめシステムに組み込む「機能安全」を実現するための開発プロセスを標準化したもの。車両の構想からシステム、ECU、組み込みソフトウェア、デバイス開発、およびそれらの生産・保守・廃棄に至るまで、車両の開発ライフサイクル全体が対象となる。ASILはISO 26262で定義された4段階のリスク分類であり、リスクレベルが高いほど機能安全に対する要求値が高い。