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技術記事PRAXIS 掲載

2024年08⽉30⽇

Nano Pulse Control™ローム、48V DC-DCコンバータ向け超高速パルス制御技術を開発

Nano Pulse Control™ ローム、48V DC-DCコンバータ向け超高速パルス制御技術を開発
※ 本コンテンツは2024年8月30日にELEKTRONIK PRAXISに掲載された記事を、Vogel Communications Groupの許諾を得て日本語に翻訳・転載したものです。
※ 内容は取材当時のものです(2024年08⽉)

無線通信基地局や産業用ロボット、フォークリフト用非常電源など、産業界ですでに広く活用されている48V電源システム。CO2排出規制を背景に、自動車分野でも導入が急速に進みそうだ。

Nano Pulse Control™

ロームの超高速パルス制御技術「Nano Pulse Control™」は、電源ICが直面していた高いハードルをクリアすることを可能にする。(出典:ローム)

欧州で2020年に導入されたCO2排出規制。これがキッカケとなり、欧州ではマイルド・ハイブリッド車(HEV)の開発が加速している。
この開発において注目すべき点は、電源システムにある。これまでHEVでは、12Vの直流電力を利用する電源システムを採用していた。しかしドイツをはじめとする欧州の自動車メーカーは、これを48Vで駆動する電源システムに移行する取り組みを強化している。なぜ、直流電圧を12Vから48Vに高めるのか。それは48Vの方が、駆動モータの出力を高められると同時に、その小型化を図れるからだ。しかもエアコンやパワーウィンドウ用モータ、ワイパー用モータ、電磁ソレノイドなども小型化できる。
しかも48Vの電源システムは、国際標準化機構(ISO)で「ISO 21780」として規格化されている。ISO 21780は、48Vの電源システムを自動車に適用する際に使う電気/電子部品の要件やテスト方法を定めたもの。つまり、自動車メーカーにとって48Vの電源に移行する環境は整ったといえるだろう。

48Vから3.3Vへの電圧変換に課題

しかし、48Vの電源システムに移行するには、難題を解決する必要がある。その難題とは、HEV車両のさまざまな場所に配置されている電子制御ユニット(ECU)には3.3Vや2.5Vといった低い直流電圧を供給する必要があることだ。高い直流電圧を低い直流電圧に変換することは、決して簡単なことではない。
従来のDC-DCコンバータを利用して、48V入力を3.3Vに変換して出力する場合は、2段階のプロセスを経る必要があった。具体的には、スイッチング周波数はAMラジオ帯域に影響を与えない2.2MHzに設定し、48V入力をいったん12Vの中間電圧に降圧する。その後、12V入力を3.3Vに変換して出力するというプロセスである。つまり、DC-DCコンバータを2つ使う必要があり、それぞれに電源ICを用意しなければならない。既存の12V電源システムに比べると、電源ICが1個増えてしまう。

電源ICに求められる要件

電源ICの役割は、バッテリーなどから入力される電圧を、電子回路や半導体素子が正常に動作する電圧に変換し、その電圧を大きく変動させることなく供給し続けることにある。ただし、この役割は必要最小限の部品点数で実現することが求められる。部品点数が増えることは許されない。従って、バッテリーから入力される48Vを直接3.3Vと低い電圧に降圧できる「降圧幅が広いDC-DCコンバータ」が求められている。
それでは、DC-DCコンバータの降圧幅は、どうすれば広げられるのか。鍵は、スイッチング動作のタイミングを制御するパルス幅にある。このパルス幅を狭くすればするほどデューティ・サイクルを小さくでき、降圧幅を広げられる、逆に、パルス幅を広げれば広げるほどスイッチング動作のオン時間が長くなり、デューティ・サイクルは大きくなってしまう。つまり降圧幅は狭くなる。
しかし一方で、パルス幅を狭くするとノイズの影響を受けやすくなってしまう。ノイズが入っても波形が安定する工夫を施さなければ実用に耐えない。そのため現実的には、48V入力を直接3.3Vに降圧する電源ICの開発は、極めて難しいと言わざるを得ない。
もちろん、電源ICを2つ使えば、48Vを一気に3.3Vに降圧できるものの、前述の通り、電源ICが増えることは許されない。電源ICの性能は、いわばパルス幅との闘いである。

ハードルを一気に飛び越える技術が登場

電源ICの高性能化は、いわばパルス幅との戦いと言えるだろう。この戦いを制し、高いハードルを一気に飛び越える技術が登場した。開発したのは、日本の半導体メーカーのロームである。開発した技術は超高速パルス制御技術「Nano Pulse Control™」と名付けられており、最小で9nsと極めて短いオン時間で動作する。すでに、この技術を採用した電源ICを製品化している。
この電源ICを使えば、48Vと高い入力電圧を直接3.3Vや1.2Vに降圧できるようになる。このため2段階のプロセスを経る必要はなくなり、電源ICは1個だけで済む。いわゆる「1チップ設計」が可能になる。さらに、スイッチング周波数は最大4MHzと高いため、コイルなどの外付け部品を小型化できるという特長もある。
「Nano Pulse Control™」を適用した電源ICは、自動車の48V電源システムに最適といえるだろう。もちろん、産業機器やロボット、フォークリフトなど、48V電源システムの導入が想定されるさまざまな用途で使用可能である。

C-DCコンバータICのパルス幅比較(車載・産業機器向け高耐圧製品)

DC-DCコンバータICのパルス幅比較(車載・産業機器向け高耐圧製品)
高周波領域での超高速パルス制御が可能(出典:ローム)

GaNデバイスの性能を最大限に引き出す。

「Nano Pulse Control™」の応用は、48V電源システムにとどまらない。ロームは、この技術をさらに発展させ、GaNデバイス向け電源制御ICへの適用に着手した。GaN デバイスは、スイッチング特性に優れており、極めて高速なスイッチング動作が可能という特長がある。このため、さまざまな用途で採用が進んでいる。しかし、このGaNデバイスの高い性能を生かせる高速駆動対応の電源制御ICはこれまで存在しなかった。電源制御ICに「Nano Pulse Control™」を搭載すれば、GaNデバイスの性能を最大限に引き出せるようになるだろう。
同社はGaNデバイス「EcoGaN™シリーズ」の開発/製品化にも取り組んでいる。このGaNデバイスは、低いオン抵抗と高いスイッチング性能が特長であり、電源回路の省電力化と小型化に貢献するものだ。「EcoGaN™シリーズ」に「Nano Pulse Control™」を組み合わせれば、電源回路の実装面積を86%削減でき、大幅な小型化を実現できる。
現在同社は、GaNデバイス「EcoGaN™シリーズ」の駆動に向けて、「Nano Pulse Control™」を適用したDC-DCコンバータ制御IC(同社は「DC-DCコントロールIC」と呼ぶ)を販売中である。「EcoGaN™シリーズ」に「DC-DCコントロールIC」を組み合わせれば、無線通信基地局やデータセンター、FA機器、ドローンなどの幅広い用途で、消費電力とサイズを大幅に削減できるようになる。
まさにGaNデバイスはブレイクスルーを迎えようとしている。

ローム、GaNデバイスの性能を最大限に引き出す超高速制御IC技術を確立。

ローム、GaNデバイスの性能を最大限に引き出す超高速制御IC技術を確立。(出典:ローム)

GaN部品とNano Pulse Control™技術による電源ソリューション

GaN部品とNano Pulse Control™技術による電源ソリューション:電源回路の実装面積を86%削減し、大幅な小型化を実現。(出典:ローム)

省エネと小型化が特長の革新的電源技術「Nanoシリーズ」

ロームの「Nanoシリーズ」には、今回紹介した「Nano Pulse Control™」のほかに、「Nano Energy™」と「Nano Cap™」と呼ぶ2つの技術が存在する。「Nano Energy™」は超低消費電力技術であり、電源ICとしては業界最小クラスの消費電流である180nAを実現できると同時に、10μAの負荷電流時の最大90%の変換効率を達成できる。「Nano Cap™」は、出力コンデンサの容量を1/10に削減しても電圧の変動幅を±5%以内に抑えられる安定制御技術である。すでにこの3つの独自技術は、ゲートドライバICやパワーマネジメントIC、オペアンプ、コンパレータICなど、さまざまなアナログICに採用されている。

技術を牽引し、限界を超える

「Nano Pulse Control™」の開発に成功する以前は、ロームの電源ICのパルス幅は業界最小の120nsだった。性能向上へのたゆまぬ努力によって、この分野でトップに躍り出た。省エネ化や小型化、安全性能の向上、低消費電力化、高機能化など、市場の要求はますます高まっている。現在は限界と考えられている技術でも、将来はそれを超える可能性がある。

「Nano Pulse Control™」、「EcoGaN™」、「Nano Energy™」、「Nano Cap™」はローム株式会社の商標または登録商標です。

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