interview202302_title_cms

社外取締役対談

interview202302_main_cms

グローバルメジャーを実現するためにガバナンスの更なる強化を目指す

本インタビューは、ROHM Group Integrated Report 2023に掲載されたものです。

ロームの取締役会の雰囲気をどのように評価されていますか。
また、この1年間で特に印象に残った議題は何でしょうか。

南雲

ロームは現在の中期経営計画において積極的な設備投資を継続しており、取締役会でもさまざまな説明を受けています。しかし、半導体の世界的な需要の高まりを受けて、半導体関連の設備投資額も上昇しています。投資はいかに額を抑えるか、つまり小さく生んで大きく育てるかが重要だと私は考えていますが、その部分が想定どおりにできているのか、社外取締役にはなかなか見えてこないことを懸念しています。

Kenevan

私は25年間、マッキンゼー・アンド・カンパニーでコンサルティングを担当し、半導体業界を含めさまざまな業界のバリューチェーンを見てきました。投資やM&Aは、戦略・戦術ともにしっかり取り組まないと踏み外してしまうので、目的や戦術、手法などについて、透明性を保つためにも、ほかの取締役と共に議論し、判断していきたいと思っています。ロームの取締役会は、松本社長をはじめ社内の役員の方々が社外取締役の話をよく聞き、活発な議論が行われていますが、課題だと思う点が二つあります。一つは、イシューの大きさと議論の長さの釣り合いが取れていないと思われることです。例えば、工場建設の議題では数百億円という大きな金額を動かす点についての議論は短時間で終わり、細部に関することに議論が集中してしまうことがあります。もう一つは、IR活動を通して上がってくるトピックや投資家からの問い合わせなど、株主や外部の声を取り入れることで、取締役会でもっと意識してガバナンスを進めていきたいと考えています。

南雲

Kenevanさんがおっしゃるとおり、ロームの取締役会は非常にオープンで、自由に議論ができる場だと思います。社外取締役全員が言いたいことを発言し、執行側の取締役もしっかりと聞いてくれる雰囲気があります。私も細部より、企業経営の根幹をなす部分の議論にもっと時間を割くべきだと思いますが、執行側の役員は重要な議題は取締役会の前の段階で十分議論しているので、そこで出なかった細かい点が取締役会で議論の対象となり、松本社長も丁寧に対応しているのだと思います。経営執行会議には社外取締役もオブザーバーとして参加できます。そこで相当に議論を重ねていることを知っているので、取締役会ではポイントを絞って質問するようにしています。

ロームは2030年に「グローバルメジャー」という目標を掲げています。
この実現に向けて、ご自身の役割をどのように考えていますか。
また、取締役会に求められる専門性や取り組んでいくべき課題は何でしょうか。

Kenevan

私は、「グローバルメジャー」というロームの大きな方針を、単なる決まり文句ではなく、具体的なアクションを導くものにしたいと考えています。しかし現在のロームがグローバルメジャーといえるかと考えると、製造や開発など一部は納得できますが、海外のキー・アカウント・マネジメント(重要顧客の管理・育成)については疑問が残ります。グローバルメジャーに近づくための課題は、取締役会でも1年かけてもまだ十分に議論できていないと考えています。グローバルメジャーという言葉に対する考え方は、人によって異なるので、いくつか「ロームならでは」のグローバルメジャーの定義が必要なのではないでしょうか。中期経営計画などで掲げる「1兆円企業」という目標や、特定の商品分野でトップ3に入るといったことがそれにあたると思います。

南雲

1兆円企業を目指すことは、グローバルメジャークラスの規模としても大切です。日本国内ではもう限りがあるので、グローバルメジャーになるには、やはり海外で勝っていかなくてはいけません。そのために必要なのは、海外人財の獲得・育成とスピード感だと考えています。

Kenevan

ロームの取締役会はかなり多様化が進んでいますが、これを会社全体に浸透させて、特に海外人財の活用を進めることが、1兆円企業の実現やスピード感のアップにつながると思います。村松さんや、2023年6月に新しく入られた井上さんは、グローバルHRがご専門なので、お2人の今後の活躍を期待しています。社外取締役は皆さんそれぞれ得意分野を持っており、南雲さんは経営のトップを長年経験され、私は海外のコンサルティングや戦略でキャリアを蓄積しています。そのほかの方々も法律や会計など、やはり会社に必要な知見を持っており、バランスが取れていると感じています。

Human Resources

南雲

Kenevanさんが言われたように、取締役会はスキルマトリックスの分担がきちんとできていて、社外取締役はそれぞれの専門分野の見地から質問や意見を述べています。今回、3名の社外役員の選任にあたり、監査等委員の人数が減って監査等委員ではない社外取締役が増えたので、その点に関しては議論がありました。また、今回は会社からの提案を役員指名協議会が承認する形でしたが、私が役員指名協議会の議長に指名されましたので、今後は選任プロセスを更にオープンにし、候補者との事前面接や意見交換も重視して運営できればと考えています。

グローバル人財の育成など、ロームの人財戦略についてどうお考えでしょうか。

南雲

南雲

海外へ行って活躍できる人財ということもさることながら、海外に子会社があるなら、現地の優秀な人財に任せるということもグローバル人財の力だと思います。トップを現地の方に任せ、きちんとマネジメントできる人財をそばにつけることが大事です。私自身、フィリピンで会社を立ち上げて経営してきた経験から、どの国へ行っても思いやりと感謝が大切であることは変わらないと感じました。海外人財とは、その国の文化や人の気持ちを大切にできる人のことだと思っています。

南雲

Kenevan

ちょうど取締役会で議論している内容ですが、海外人財の活用には、まずロームの経営層自身のグローバル化が必要だと思っています。若くて非常に優秀な人財が執行役員クラスにいるので、その人たちに海外経験を積ませ、多様化を進めることが重要です。ロームには素晴らしい企業DNAあり、礼儀正しく細やかなロームの文化は、これまで人財育成にも生かされていました。しかし、海外ではコミュニケーションの中で自然にさまざまなずれが生じます。今後、ロームの譲れない部分や良いところを守りながらも、海外のコミュニケーションスタイルや文化といかにすり合わせていくかが求められます。経営層にとっては特に大きな挑戦だと思いますが、南雲さんのフィリピンでの経験や、私が日本に来た経験が、皆さんのグローバル化の手助けになると思っています。

ロームの持続的成長を支えるガバナンスを更に進化させるために、何が必要でしょうか。

Kenevan

Kenevan

ガバナンスに関しては、国内・海外で分けて考える必要はないと考えています。会社の規則や各自の役割があり、そこで果たすべきこと、例えば、取締役会は経営層から上がってくる情報を見てしっかり判断し、議論をするという点は国内外で変わりはありません。透明性とコミュニケーションの向上への取り組みという、現在のガバナンス強化の延長線上にグローバルガバナンスもあります。共通のガバナンス認識を持つ海外の人財が同じガバナンスの輪の中に入ってくるというのが大切です。それらの人財には、スキルや経験に加え思いやりや感謝、責任感などの人間性やケイパビリティが求められます。さらに、会社を良くしようとする姿勢や、新しいアイデアを拒絶しない柔軟な考え方などのマインドセットも必要です。ロームでは松本社長の就任後、この会社を更に良くしていこうという文化がかなり整ってきたので、今後少しずつ勇気をもって輪を広げ、外国人を巻き込んでいければいいと考えています。

Kenevan

南雲

財務にしろ非財務にしろ、皆さん会社の目標に向かって行動していますが、会社の常識と会社外の常識が全く違っていて、会社のために良かれと思ってやったことが、今の世の中では非常識だということが起こりえます。例えば、エンゲージメント調査などでマネジメント層が厳しすぎて中間層の数字が上昇しない点が課題となることがあります。これは、どのように社員満足度を上げていくかを考えるだけで改善しますから、マネジメント層を含めた全員がきちんとガバナンスを学んでいかなければならないと考えています。今後そうした点を、私たち社外取締役も中間管理職の人たちといろいろ議論しながら制度を変えていければと思っています。

グローバルメジャーの実現に向けて、ロームが取り組むべき課題は何だと考えておられますか。

南雲

今、世の中がネガティブになっており、物の考え方もスローダウンする傾向にあります。ロームはそうならないよう、将来を見据えて、やるべきことをやっていかなくてはなりません。恐れずに投資すること、開発投資に対してももっと積極的になって、失敗も許すぐらいの度量を持って、どんどん新しいことに挑戦させることが必要です。世の中の景気が落ち込みそうなときこそが肝心で、他社がやらないならうちがやるというくらいの気概を持って取り組んでいきたいと思っています。

Kenevan

どうしても足元の業績に目が行きがちですが、一歩引いて業界全体を見る必要があります。ロームは競合に比べて規模が小さいので、時が経って業界が凝縮されていくと、かなり立場が弱くなってしまいます。半導体は特に規模がものを言う世界です。ロームは現在、規模とは一線を引いた製品分野を扱っていますが、今後は規模の強みを得るべく、工場の建設や開発センターを担う人財の採用、時にはM&Aも視野に入れて、やはり投資をしていく必要があります。投資家の方々も、四半期ごとの業績に関する質問をしつつも、潜在的には成長企業かどうか、この会社は自分が預けている資本をゆくゆくはどのように育てていくのかといった見方をしているので、中長期的にはグローバルメジャーを目指すという、会社を大きくする戦略は間違いないと思っています。

南雲

私がいたタイヤ業界は、ビッグ3があまりに巨大なため、ほかの企業は乗用車市場だけでは、到底太刀打ちできません。私がいた会社では、農耕用というニッチかつ決してなくならない分野に特化した上で、インドやスウェーデンなどの会社を買収し、今までにないポートフォリオを構築したことが奏功しました。Kenevanさんが言われたように、ロームも、規模では世界の競合に及ばないものの、いかに特色を出しつつこの分野では負けないという強みを作っていくかが重要だと思います。

Kenevan

おっしゃるとおりで、工場への投資にしてもM&Aにしても、どこでどう戦えば勝ち筋があるのか、戦略をはっきりさせた上で行うべきです。幸い、ロームはその部分がはっきりしています。パワーデバイスやアプリ分野、技術的にはSiCなどで、そこは間違っていません。あとは、サプライチェーンをどうやって押さえ、商品力を高めるかということと、何をやらないかをしっかり決めるということも重要です。現在ロームは、オーガニック成長やM&Aに向けた投資を仕込んでいる最中で、取締役会には投資に対する重い責任があります。ロームはきちんと戦略的にM&Aを考えているので、今後は、戦術を持って交渉を進め、買収後に必要な人財を確保するなどの施策を、取締役会でもしっかりと規律を持って進めていきたいと思います。

common_css

New_company localNavi.js