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電気の旅 ~家庭や身近な機器に電気が届くまで~

07/19/2021

電気の旅 ~家庭や身近な機器に電気が届くまで~

私たちの生活を明るく、豊かにしてくれる電気。

今回は、電気がつくられて家庭や身近な機器に届くまで、どのようなプロセスをたどっているのかについて、ご説明します。

家庭に電気が届くまで

スイッチを入れると、電化製品が動き出す。毎日、当たり前のように使っている電気ですが、家庭に電力が届いて、それが利用できるようになるまでには大きく3つのステップがあります。

最初のステップは「発電」、電気をつくる作業です。次のステップは、作った電気を電線や変電所を通して、必要とされているところまで安全かつ効率的に「送電・配電」する、電気を運ぶ作業。最後のステップは、届いた電気を使うため、機器に合った電力に「変換」するという作業です。

1. 発電「電気をつくる」

電気は発電所で作られます。

しかし、「発電」とひと口に言っても、その手法や資源は様々です。

世界全体の発電手法(2017年)

世界のエネルギー自給率は?

日本は世界でも有数のエネルギー消費大国であるにもかかわらず、エネルギー自給率は10%未満です。石油、石炭、天然ガス、ウランなど、発電に必要とされるエネルギー資源のほとんどを海外からの輸入に頼っています。

一方、国際エネルギー機関のIEAの調査をもとにエネルギー庁が作成した資料によると、海外先進諸国のエネルギー自給率は、米国92.6%、英国68.2%、フランス52.8%、ドイツ36.9%となっています。

米国は、2000年代後半に起こった「シェール革命」によって、原油や天然ガスの国内生産量が大きく増加したことや再生エネルギーも増加したことで、高い自給率を確保しています。しかし、英国は未だ高い水準ながらも、同国の主要なエネルギー源である北海油田の枯渇によって原油生産量が徐々に減少傾向にあります。また、フランスは電力の70%以上を原子力発電によって供給することで、海外からの燃料輸入に依存しきることなく、生産を安定させることができるため、自給率は50%前後で安定しているようです。それに対し、ドイツは他に比べると低い自給率ですが、原子力発電所の稼働停止を進めつつも、再生エネルギー導入を促進することで自給率を保っています。

このように、各国々によってエネルギー事情や考え方は大きく異なりますが、いずれにしても、特定の発電方法に依存するのではなく、複数の方法を効率的に組み合わせた発電構成で、安定的で経済的な電力確保を目指す必要があります。

では、それぞれの発電方法にはどのような特徴があり、また、課題があるのでしょうか。

  特徴 課題
火力 ・燃料があれば安定的に発電できる
・出力の調整が容易
・エネルギー変換効率が良い
・制約が少ないので発電所が設置しやすい
・温室効果ガスの抑制
・必要な燃料の国内調達
水力 ・再生可能な国産クリーンエネルギー
・エネルギー変換効率が高い(80%)
・開発初期費用の低減
・発電のための降水量の確保
・ダム建設地域の環境や住民への影響の最小化
原子力 ・燃料の備蓄性が高く、安定供給可能
・温室効果ガスをほとんど排出しない
・大気汚染の原因物質を排出しない
・放射性廃棄物の安全な処理
・有事の際の被害の最小化
・徹底した安全対策による高コストの改善
太陽光 ・再生可能な国産クリーンエネルギー
・光熱費削減
・エネルギーの消費を監視/制御しやすい
   (HEMS、CEMSなど)
・災害時に強い
・発電のための日光量の確保
・発電パネルの耐久性強化
風力 ・再生可能な国産クリーンエネルギー
・昼夜を問わず発電可能
・発電コストが低く、費用対効果が高い
・発電のための風量の確保
・台風など強風時の故障対策強化
・経年劣化によるメンテナンス費用の低減
・ブレードの騒音など、周辺環境への影響の最小化
地熱 ・再生可能な国産クリーンエネルギー
・発電量が天候に左右されない
・昼夜を問わず安定して発電できる
・発電に使用した蒸気は、温泉や
   農業用ハウスなどに再利用も可能
・発電設備の建設に必要な調査や
   掘削作業等に伴う導入コストの低減
・地熱資源の80%以上が国立公園の敷地内に存在
・用水還元による地下水汚染の可能性の最小化
・発電効率の改善

最初の円グラフでも分かる通り、世界全体でみると、石炭や天然ガスを使った火力発電が発電手法の主流となっていますが、それぞれに特徴と課題があり、国や地域によっても最適な発電方法は異なります。

導入が進む再生可能エネルギー

再生可能エネルギーと聞いて、太陽光発電を最初に思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。

近年は、企業の社屋や民間の工場などだけでなく、民家の屋根にもソーラーパネルが設置されて、太陽光発電を行っている家庭も珍しくなくなりました。

とくに西欧諸国は積極的です。

例えば、スペインでは太陽光と太陽熱、風力を合わせて23%、イタリアは太陽光と風力で14%、ドイツも太陽光と風力で24%、英国も同じく太陽光と風力で21%を発電しているといわれています。

太陽光発電設備とは、太陽電池(ソーラーパネル・モジュール)を用いて、太陽光を電力に変換するシステムです。

家庭の太陽光発電設備

ちなみに太陽電池は二種類のシリコン半導体(n型・p型)を重ね合わせた構造でできています。

太陽電池の仕組み

この半導体に光が当たると、n型半導体にはプラス電子のような働きをする正孔、p 型半導体にはマイナス電子がそれぞれ発生します(光電効果)。

その結果、電池のような構造が生まれ、直流電流が流れるのです。

2. 送電・配電「電気をはこぶ」

発電所で発電された電気は、いくつもの変電所や送配電線、変圧器を経由して私たちの家庭に届きます。

発電所で作られたばかりの電気は、送電のロスを減らすため、およそ50万ボルト~27万5千ボルトと超高電圧で送り出されます。しかし、生活の中で電力を使用するためには、それぞれに見合った電圧に落とす必要があります。

ちなみに欧州の住宅で使用されているのは220~240ボルト。アメリカは州にもよりますが115ボルトや120ボルト、オフィスやデータセンターは230ボルトや208ボルトが一般的です。日本では一般住宅やオフィス用は100ボルト、工場設備も200ボルトが使用されていますが、実は世界的にみると非常に珍しい電圧を使用しています。いずれにしても、このままではせっかくの電力を使用できませんので、変電所を経由することで電圧を落とし、それぞれの用途に合った電圧の電力を供給していきます。

送電・配電「電気をはこぶ」仕組み

ところが、発電所から送り出された電気エネルギーのすべてが消費者の元に届くわけではありません。送配電線や変圧器の抵抗によって、一部の電気エネルギーが熱や振動として失われてしまうのです。

これが送電ロスといわれるものです。

送電ロスをいかに抑えるか

エネルギーを有効に使うためには、送電ロスを少しでも抑える必要があります。

送電ロスの割合は国によっても大きく異なります。先進国では、アメリカの送電ロスは約6%、ドイツでは約5%、日本では約3.4%程度といわれています。たかが3.4%と思われるかもしれませんが、火力発電所7基分の電力に相当すると言われたら、いかがでしょう。また、米国のメリーランド大学とジョンズ・ホプキンズ大学の研究チームが2016年に行った調査結果によると、インドの送電ロスは19%、ブラジルでは16%、ハイチ、イラク、コンゴ共和国などでは50%を超えています。

地球環境保全のためにも、送電ロスの改善は重要な課題なのです。

3. 電力の利用「電気をつかう」

発電所から、ようやく各家庭の前までたどり着いた電力ですが、そのままでは利用できません。

家庭への電気は配電柱から引き込まれます。でも、この配電柱に届いた電気は、まだ交流6600ボルトもの電圧があるのです。電気を使えるようにするには、配電柱に備えられている柱上変圧器によって、家庭用に適した100ボルトまたは200ボルトの電圧にまで下げる必要があります。

柱上変圧器を経て家庭用の電圧に変換された電気は、まず電力の使用量を測るために電力量計に流れます。そこからさらに、家庭内で利用するためには様々な変換が行われます。

家庭で電気を利用するまでの様々な変換

さらに家電などの機器が必要とする電圧はそれぞれ違います。必要に応じて降圧・昇圧などを行いますので、その際にも変換ロスが発生してしまいます。

変換ロスをいかに抑えるか

変換ロスを抑えることは、今後、太陽光発電などの再生可能エネルギーの普及にも大きく影響します。

例えば、一般的な火力発電のエネルギー変換効率は40%前後で、最新の発電所では55%以上も可能といわれているのに対し、一般的な太陽光発電システムの発電効率は20%程度しかありません。それ以上も技術的には可能ですが、現状ではコストが高くなりすぎるために一般用途では現実的ではありません。

電力の変換に欠かせない半導体技術

変換ロスを最小限に抑え、エネルギーの効率化と有効活用をするために、企業は日々新しい技術の開発や取り組みを行っています。

その中で中核的な役割を担うのが、パワーデバイス(パワー半導体)です。ただ、技術的に成熟したSi(シリコン)デバイスだけでは、飛躍的な技術革新を望めなくなりつつあります。そこで、Siに代わるブレイクスルーとして注目されている半導体材料が、変換効率に優れたSiC(シリコンカーバイド)です。

SiC MOSFETを製品化

ロームは、パワーデバイス分野において、Siを素材としたトランジスタ(MOSFET、IGBT)やダイオードだけでなく、SiCを素材としたトランジスタ(SiC MOSFET)やダイオード(SiC SBD)の開発に強く取り組んでいます。業界の中でもSiCパワーデバイスの開発にいち早く取り組み、世界に先駆けて SiC MOSFETを製品化。電力変換時の損失を大幅に削減し、太陽光発電システムや産業機器用電源、電気自動車の充電器など、電力システムの高効率化と小型化に貢献しています。

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<関連リンク>

ロームのSiCパワー半導体のテクノロジーを詳しく知る
https://www.rohm.co.jp/analogpower/powertech