IoTとは? 重要な4つの構成要素と活用事例、自作のための知識を紹介
12/05/2019
IoTとはInternet of Thingsの略で、「モノのインターネット」と呼ばれています。この言葉だけではイメージがつきにくいですが、IoTの活用事例や構成要素を見ながら理解を深めていきましょう。
1-1. IoT(モノのインターネット)の概念
IoT(モノのインターネット)とは、さまざまなモノがインターネットにつながっている状態を指します。インターネットにつながることで、それぞれのモノが人の操作やセンサを通じて取得した情報(データ)を、特定のサーバーやクラウド上に蓄積することが可能になります。
この蓄積した情報を解析し、モノの最適な制御や、そのモノを利用している人へ最適な利用方法を提供することで、より快適な社会を築いていくことができます。
1-2. IoTでこんなことが実現できる【活用事例】
IoTの概念を理解したところで、実際にどのような場面で活用されているのか見ていきましょう。活用事例を3つご紹介します。
1-2-1. スマートホーム:IoT×家電
スマートホームとは、IoTを活用して快適な暮らしを実現する家のことです。たとえば、家庭内の電化製品をインターネットにつないで人の操作(音声やスマートフォンアプリ)でコントロールしたり、センサなどを利用して電化製品を自動的にコントロールしたりすることで、快適なライフスタイルを実現しています。
具体的には以下のようなことができるようになります。
- スマートフォンで、家の鍵の開閉やエアコン・照明のON/OFFを操作できる
- 日々の電気使用量を計測し、利用者へ適切なエアコンの温度設定や照明の照度設定を提案する
- センサを使うことで、部屋に人がいれば照明ON、部屋から出れば照明OFFを自動的に行える
1-2-2. スマートシティ:IoT×街
スマートシティとは、IoTを活用して省エネかつ環境に配慮した暮らしを実現する街のことです。スマートシティの概念は時代とともに変わってきていますが、現時点では、街中に張り巡らされたセンサを通じて環境や消費者行動など様々なデータを取得・分析し、街の設備や機器などを遠隔制御することで、インフラ設備の最適化や生活者の利便性向上を目指しています。
具体的には以下のようなことができるようになります。
- スマートフォンのGPSなどの位置情報を元に、街の通行人の流れを把握できる
- 交通量を計測することで、街中の照明を適切な明るさに調整できる
- 駐車場の空き状況を計測し表示することで、観光地での駐車場利用の分散、渋滞緩和が期待できる
1-2-3. コネクティッド・カー:IoT×自動車
コネクティッド・カー(「インターネットに接続された車」の意味)とは、IoTを活用して快適・安全な運転を実現する自動車のことです。実際には、自動車に搭載されているGPSやセンサ、カメラなどを通じて得られる走行データ、周辺の交通情報を取得・分析することで、自動車が安全に走るための制御や最適な交通ルートの提案を実現しています。
具体的には以下のようなことができるようになります。
- 車の自動運転(※完全自動運転は将来的な話)
- 車が盗まれた場合でも、位置情報から追跡できる
- タイヤの空気圧やメンテナンス情報をスマートフォンアプリで確認できる
- スマートフォンをリモコン代わりにして、車に乗っていない際のエアコンやライトを遠隔操作できる
1-3. IoTを構成する重要な4要素
IoTは主に、「デバイス」「センサ」「ネットワーク」「アプリケーション」の4要素で構成されます。
デバイス |
前述した電化製品、スマホ、街の設備・機器、自動車など、 人間が実際にあつかう端末(モノ)のこと。 |
---|---|
センサ |
デバイスに組み込まれて、データを測定するもの。 例として温度、湿度、圧力、光、地磁気、加速度、音など、 環境の状態や動きの変化を検知できるセンサがある。 |
ネットワーク |
センサで取得したデータを、クラウドサーバーや スマートフォンなどの端末に送るための通信手段。 Wi-Fiなどの無線通信を利用するのが一般的。 |
アプリケーション |
センサで取得したデータを人が可視化できるようにするための端末。 パソコンやスマートフォンなどを使用する場合が多い。 |
流れとしては、まずセンサや無線通信デバイスが搭載されたデバイスでモノのデータを取得し、ネットワークを通じてクラウドやサーバーなどでデータを蓄積・分析します。その後アプリケーションでデータを可視化し、デバイスの使用方法を最適化するのが大枠の仕組みです。図にすると以下ようになります。
次の章からは、その中でもデバイスでのデータ取得やネットワーク構築に欠かすことのできない、センサと無線通信について詳しく解説していきます。
2. あらゆる状況を検知するセンサ
あらゆる状況を検知するのに必要不可欠なのが「センサ」です。このセンサを大きく分けると、周囲環境の状態を測定する「フィールドセンサ」と、動きの変化を測定する「モーションセンサ」があります。
フィールドセンサには、温度センサや照度センサなどが含まれ、たとえば外気温や光の強弱を測定することができます。一方のモーションセンサには、加速度センサなどが含まれ、たとえば物体の動きの変化(傾きや振動など)を測定することが可能です。
2-1. 代表的なセンサの種類と用途
代表的なセンサの名称と種類、アプリケーション例を一覧にまとめました。
センサ名称 | 用途 | アプリケーション例 |
---|---|---|
加速度センサ/ ジャイロ(角速度)センサ |
物体の動きの変化を 測定するセンサ (傾き、振動、回転 など) |
車載機器 (ドライブレコーダー、スマートキー など) 産業機器(モーター、ロボット など) |
地磁気センサ |
方角を知るために地球の 磁力を測定するセンサ |
通信機器(スマートフォン など) ウェアブル機器(時計 など) |
圧力センサ |
気体や液体などの圧力を 測定するセンサ |
ウェアラブル機器(スマートウォッチ など) ヘルスケア機器(活動量計 など) |
温度センサ | 温度を測定するセンサ | 室温・気温モニタリング など |
照度センサ | 光の強弱を測定するセンサ |
通信機器(スマートフォン など) 太陽光検知 など |
3. IoT機器をネットワーク化する無線通信
デバイスをネットワーク化するために必要なのが「無線通信」です。
3-1. 無線通信の概要と仕組み
無線通信とは、線を使用せずに電波や光(赤外線)などを使用して情報を伝達する仕組みのことです。電波は空気中を通って広い範囲に伝わることから、テレビやラジオなど公共用の通信のみに利用されてきました。しかし近年では、スマートフォンやパソコンなどで使用されるWi-FiやBluetooth®といったかたちで個人の通信にも利用されています。
IoTの分野においては、無線通信の中でも「近距離無線通信」というカテゴリへの注目度が高く、技術の応用が期待されています。次項では、この近距離無線通信の種類についてご紹介します。
3-2. 通信規格の種類【一覧】
無線通信にはいくつか規格があります。ここでは、Bluetooth®、Wi-Fi、EnOcean®、特定小電力(Wi-SUN)の4つを取り上げ、周波数帯、通信距離、伝送速度、利用するアプリケーションや用途について比較してみます。
4つの規格それぞれの特長を表にまとめました。
Bluetooth® | Wi-Fi | EnOcean® | 特定小電力 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
狭帯域 |
広帯域 Wi-SUN |
|||||
周波数帯 | 2.4GHz帯 | 2.4GHz帯 | 5.0GHz帯 |
315/868/905/ 920MHz帯 |
426/ 429MHz帯 |
900MHz帯 |
通信距離 | ~10m | 数100m | ~200m | ~1km | ||
伝送速度 | 1Mbps~ | 11Mbps~ | 125kbps | ~9600bps | 50kbps~ | |
アプリケー ション例 |
リモコン、 スマートフォン、 パソコン周辺機器、 家電、血圧計、 脈拍計、防犯カメラ |
スマートフォン、 パソコン、 プリンタ、 ゲーム機 |
センサ(照明制御、 窓の開閉制御、 室内空調の制御) |
スマートメータ、 HEMS機器、 家電 |
3-3. 電波法・技適について
無線通信の注意点として、「電波法」を理解しておく必要があります。
仮に同じエリア内で同周波数の電波を使用して通信した場合、相互に干渉し合うことで混乱が生じてしまいます。そこで、「無線通信するときは国から交付されている無線局免許を取得し、正しく公平に利用しましょう」というのが電波法です。
また、この電波法に従って各無線機器は所定の技術基準を満たす必要があり、この技術基準に適合していると認める証明を「技術基準適合証明(技適)」と呼びます。
4. 自作に最適なキットを使用した、簡単IoT
ここまで、IoTの概要と構成のカギとなるセンサ・無線通信について解説してきました。中にはIoTに対して難しいイメージを持った方もいるかと思いますが、キットを使うことで個人でも簡単にIoT機器を作ることができます。
4-1. 自作でできるIoT機器
実際に、キットを使ってIoTデバイスの自作例をご紹介します。
4-1-1. 声で操作するマルチリモコン
これは、ラズベリーパイというマイコンボード(マイクロコンピュータボード、詳細は次項)を使い、「声」でさまざま電化製品のON/OFFができるマルチリモコンです。この自作で使用したものは、簡単に言うとマイコンボード、赤外線LED、音声対応させるためのソフト。写真ではテレビのON/OFFを声の操作で行っていますが、登録すればエアコンや照明などの電化製品でも操作できるようになる優れものです。
詳しい作り方などが知りたい方は、こちらからご覧ください。
https://deviceplus.jp/hobby/raspberrypi_zero_03/
これ以外にも、アイディア次第でさまざまなIoT機器が自作できるので、他の事例を見たい方はDevice Plusの記事をご確認ください。
4-2. IoTの自作に欠かせないマイコンボードと評価キット
最近ではRaspberry Pi(ラズベリーパイ)やArduino(アルディーノ)など簡単に使えるマイコンボードや、ソニーセミコンダクタソリューションズ社製のSPRESENSE™(スプレッセンス)などIoT機器を自作するのに最適なマイコンボードがあります。
4-2-1. Arduino(アルディーノ)
ArduinoはIoTが注目される以前から存在し、最も人気のあるマイコンボードです。他のマイコンボードと比較して価格が安く、マイコンボードとパソコンをUSBケーブルでつなげばすぐに始めることができるので、初心者の方にもおすすめです。ただし、Arduinoにはオペレーションシステム(OS)が搭載されていないため、必要に応じて専用の統合開発環境(IDE)ツールで開発する必要があります。
また、Arduinoが得意とする分野は、ロボットなどの機械制御やパソコンとの通信、簡単な回路テストです。
4-2-2. Raspberry Pi(ラズベリーパイ)
Raspberry PiはArduinoと同じくらい有名なマイコンボードです。Raspberry Piは映像出力、サウンド出力、HDMIディスプレイへの出力、USB、LANといった機能を備えているため、超小型のコンピュータと呼べるほどの機能性があります。
Arduinoと比較すると値段は少し上がりますが、OSにLinuxを搭載することが可能ですので、Linuxに馴染みのある方はこちらの方が使いやすいと思います。また、Raspberry Piが得意とする分野は、サーバーの構築や電化製品のIoT機器化です。
4-2-3. SPRESENSE™
SPRESENSE™はソニーセミコンダクタソリューションズ社が開発したマイコンボードです。Arduinoと互換性があり、こちらもOSが無く専用のIDEで開発する必要があります。他のマイコンボードと違い、GPSやハイレゾリューションオーディオ機能を内蔵しており、音声・画像・位置情報を利用したセンシングアプリケーションの開発が可能です。
4-2-4. 評価キット
上記のマイコンボードを使ってIoTに対応するためのアプリケーションやソフトウェア開発をする場合、センサによるデータ取得や無線通信を行うための評価キット(拡張ボード)の使用をお奨めします。
ロームではこうしたIoT機器の開発をサポートする評価キットや開発ツールを提供しています。
ロームセンサ 評価キット センサメダル |
ウェアラブル機器やビーコンに最適なセンサ評価キット。 6センサ(加速度、気圧、地磁気、照度、磁気(ホールIC)、温湿度センサ)に加え、 Bluetooth®モジュールを搭載。 https://www.rohm.co.jp/sensor-medal-support |
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ロームセンサ 評価キット センサシールド |
Arduino Uno、mbedなどのオープンプラットフォームに接続できるセンサ評価キット。 8つのセンサ(加速度、気圧、地磁気、照度・近接、 カラー、磁気(ホールIC)、温度、脈波)基板を搭載。 https://www.rohm.co.jp/sensor-shield-support |
EnOcean® |
運動エネルギーや温度差など、環境から得られるわずかな電力を使用し データ情報を送信する自己発電型無線通信モジュール。 https://www.rohm.co.jp/enocean |
Lazurite |
920MHz帯の無線通信機能を搭載した低消費電力マイコンボード。 Raspberry Piと連携するキットもラインアップ。 |
SPRESENSE™用 Add-onボード |
ソニーセミコンダクタソリューションズ社が提供する、 IoT向けボードコンピュータSPRESENSE™の機能を拡張するAdd-onボード。 センサ、Bluetooth®無線通信、Wi-SUN無線通信の機能を拡張できる。 https://www.rohm.co.jp/support/spresense-add-on-board |
まとめ
ここまでIoTの仕組み、活用事例、センサ・無線通信について解説してきました。今後のIoT技術の発展のためには、後半で解説したセンサや無線通信がカギになると言われています。
マイコンボードや評価キットを使用することで簡単にIoT機器を自作することができます。IoTをより深く理解するためにも、一度自分の手でIoT機器を作ってみてはいかがでしょうか。