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「第3世代 走行中ワイヤレス給電インホイールモータ」の開発に成功
― 世界初 受電から駆動までのすべてをタイヤのなかに ―

ローム株式会社(以下、ローム)は、東京大学大学院新領域創成科学研究科の藤本博志准教授らの研究グループ(以下、東大グループ)、株式会社ブリヂストン、日本精工株式会社、東洋電機製造株式会社と共同で(以下、当研究グループ)、道路からインホイールモータ(以下、IWM)に直接、走行中給電できる「第3世代 走行中ワイヤレス給電インホイールモータ」(図1)を開発し、実車での走行実験に成功しました。
これは2017年3月に東大グループらが発表した「第2世代ワイヤレスIWM」を発展させたものであり、実用化に向けて走行中給電性能・モータ性能・車両への搭載性を大幅に改善しました。

今回、IWMユニットの小型化にあたっては、ロームの研究開発品である超小型SiCパワーモジュールが貢献しています。ロームは今後も革新的なSiCパワーデバイスの開発とともにデバイス性能を最大化する制御ICやモジュール技術についても研究開発を進め、パワーソリューションとして提供することで、自動車や産業機器の技術革新に貢献してまいります。

図1「第3世代 走行中ワイヤレス給電インホイールモータ」」
図1 「第3世代 走行中ワイヤレス給電インホイールモータ」

<発表の主なポイント>

1.すべてをタイヤのなかに

電気自動車の駆動装置であるモータ・インバータと、走行中ワイヤレス給電の受電回路のすべてをホイール内の空間に収納するIWMユニットを開発しました。さらに、走行中給電の受電コイルをもホイール内に配置するために必要な要素技術開発に着手しました。モータの性能面では、2017年発表の「第2世代」ではモータ性能が軽自動車クラス(1輪あたり12 kW)であったのに対し、今回発表の「第3世代」では乗用車クラス(1輪あたり25 kW)を実現しました。
ユニットのサイズの面では、「第2世代」はIWMユニットがホイールから飛び出ており車両への搭載性に課題がありました。そこで「第3世代」ではモータ設計の最適化と合わせて超小型SiCパワーモジュールを搭載しIWMに適した構造とすることで軸方向にコンパクトなユニットを実現し、車両への搭載性を大幅に改善しました(図2)。

図2 車両搭載性の比較
図2 車両搭載性の比較

2.充電からの解放

「第2世代」では走行中ワイヤレス給電の能力が1輪あたり10 kW程度であったのに対し、今回発表の「第3世代」では20 kWへの性能向上を実現しました。この性能をもつ走行中ワイヤレス給電システムを、信号機手前の限られた場所にだけ設置したスマートシティが実現された場合、電気自動車のユーザは充電の心配をすることなく移動できるようになり、電気自動車の利便性が飛躍的に高まります。

<研究背景>

地球温暖化を食い止めるため、温室効果ガスの排出量を減らす「低炭素社会」の実現は地球規模の課題です。日本における二酸化炭素(CO2)排出量のうち自動車が占める割合は17.9%(2017年度、環境省発表値)であり、排出量削減が求められています。また、自動車のCO2排出量の規制値は全世界において年々厳しくなっております。このような背景から自動車の電動化が急速に進んでいます。特に内燃機関を搭載しない電気自動車(EV: Electric Vehicle)は走行中にCO2を排出しないため有力な解決手段であると言えます。

一方でEVは充電に伴う利便性の課題や、大量のバッテリ生産するための資源量の懸念などが指摘されています。EVの持続可能な普及のためには、少ないバッテリ搭載量で効率的に走ることのできるEVの実現が求められています。そのための一つの手段である、走行中のEVにエネルギーを送る「走行中給電」の実現に向けて世界的に多くの研究が行われています。走行中給電には多くのメリットがあります。

  • 1. バッテリ搭載量が少ないのでEVが軽くなり、少ないエネルギーで走ることができる
  • 2. 同様の理由でEVの価格が安くなる
  • 3. バッテリの残量や充電時間を心配することなくEVに乗ることができる

また、走行中給電は再生可能エネルギーとの親和性が高いことが特徴です。太陽光発電や風力発電は気象状況で発電量が大きく変動するため、電力系統にその変動を吸収する仕組みが必要です。大容量の蓄電設備を電力系統に設置することが検討されていますが、もし走行中のEVに自在に電力を供給することができればEVがその役割を果たすことができます。EVのバッテリを蓄電設備として使うアイデアは以前から考えられていましたが、走行中給電が無い場合は駐車して充電器につながっているEVしかその役割を果たすことができません。したがって走行中給電は運輸部門のCO2排出量削減だけでなく、再生可能エネルギーの拡大に向けても重要な技術であると言えます。

<今後の展望>

当研究グループを中心とした本プロジェクトでは、今回開発した「第3世代 走行中ワイヤレス給電インホイールモータ」の実験と評価を進めつつ、新しいアイデアを盛り込んだ次世代機の提案と試作を意欲的に進めていきます。また、「走行中ワイヤレス給電インホイールモータ」の実用化に向けて、現在の参画メンバーに留まらず他の組織・企業が持つさまざまな領域の知見を広く取り入れながら2025年に実証実験フェーズへの移行を目指します。

<今後の公開予定>

  • 2019年10月15日~10月18日 CEATEC 2019
    ロームブース
  • 2019年10月24日~11月4日 東京モーターショー2019
    日本精工ブース、ブリヂストンブース
  • 2019年11月8日 公益社団法人 自動車技術会 電気動力技術部門委員会 公開委員会

<関連情報>

東京大学大学院新領域創成科学研究科からのニュースリリース
http://www.k.u-tokyo.ac.jp/info/entry/22_entry772/