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より安心・安全な自動車に 電子部品の機能安全に向けたロームのとりくみ

09/11/2018

京都の半導体メーカーであるロームは、今年3月、自動車向けの機能安全規格である「ISO 26262」の開発プロセス認証を、ドイツの第三者認証機関TÜV Rheinland(テュフ ラインランド)より取得しました。これにより、ロームの自動車向けデバイスの開発プロセスが、ISO 26262の最高レベルの安全度水準である「ASIL-D」まで対応可能と認められたことになります。

 

ロームの高品質設計室 技術主査の中嶋氏は、1993年にロームに入社して以来、生産システムの開発や、赤外線通信、LCDドライバ、車載向けのシステム電源などの製品開発に携わってきました。こうした25年間で培ったあらゆる経験がISO 26262の取得につながっていると言えます。ロームにとってISO 26262の開発プロセス認証取得はどのような意味をもたらすのか、また将来の可能性について、中嶋氏に尋ねました。

 

ロームは1958年の創業以来、文化の進歩向上に貢献することを目的として事業を進めてきました。開発から製造までのほぼすべてのプロセスをロームグループ内で担う垂直統合型の生産システムは、高い品質を作り込み、確実なトレーサビリティやサプライチェーンの最適化を実現しており、高品質な製品を世界市場に安定的に供給するためには欠かすことができません。

「最近の自動車市場は、100年に1度といわれるくらいの劇的な変化を遂げていると言われています。 」と中嶋氏は語ります。「これまでも電子部品は自動車で数多く使用されてきましたが、現在ADAS(advanced driver-assistance systems)や自動運転などの技術革新により自動車市場で必要な電子部品の数は、急激に増加しています。」

日々進化し続ける自動車市場に対し、ロームは10年以上前から、製品を提供してきました。特に自動車向け製品をけん引してきたのは、電源ICです。例えば、カーオーディオ用電源ICは実績も大きく、そこから車載ミリ波モジュール向けのシステム電源やDCDCコンバータ、自動車のエンジンが停止している時などに消費される電流が少ない低暗電流LDOなどにシフトしてきました。最近では、EV(Electric Vehicle:電気自動車)化の流れから、電力の変換効率を劇的に改善するSiCパワーデバイスなどもラインアップに加え、幅広い製品を提供しています。

 

自動車向けの売上が飛躍的に増加する中、ロームは、2014年春頃からISO 26262の調査を開始しました。自動車市場では、ここ数年で、世界的に電子化への流れが加速しています。それに伴い機能安全(監視装置や保護機能などのメカニズムを追加することでリスクを最小限に抑える手段)の需要も高まっていたため、プロジェクトを開始する時期としては最適でした。

 

2018年3月31日現在、自動車部門はロームの純売上高の32%を占めています。堅調に伸びる自動車市場の中でもADAS分野は非常に高い成長を見込んでいます。

例えば、自動運転には自動化のレベルがありますが、現在はレベル2(運転支援)とレベル3(高速道路での自動運転、最終的には制御)であるとされています。専門家によると、2020年までにはレベル4 (完全なる自動運転)に達すると言われており、それに伴い、さらに自動車の電子化は進んでいくと考えられます。自動車の電子部品の役割が高まる一方、ISO 26262の開発プロセス認証を取得することで、より安全で高品質な製品の開発に努めていくことができるのです。

中嶋氏は、「ISO 26262準拠の製品に対する需要は高まっており、将来的にISO 26262に準拠した製品だけを採用するお客様が出てくる可能性が十分にあります。」と語ります。

 

しかし、ISO 26262の認証取得は簡単ではありませんでした。プロジェクト立ち上げ当初、社内にはこの規格に精通したエンジニアがいませんでした。中嶋氏含む3名で立ち上がったプロジェクトは、まずISO 26262に関するセミナーや勉強会に出席し、規格の基礎を学ぶところから始まりました。その後、他社や市場の調査を経て、全員で知恵を絞って認証取得に向けて進めてきました。開発プロセスは何かひとつの製品や技術に対するものではないため、部署を横断して徐々に必要なメンバーを加え、今では50人を超える大プロジェクトになっています。

こうした認証取得のためにコンサルティングを依頼する企業が多い中、自社内にノウハウをためるためにも、ロームはたった6回ワークショップに参加しただけでした。また、認証取得に向けた業務体制の整備や社内での規格重要性の周知など、様々な働きかけを行い、これまでプロジェクトメンバー全員が一丸となって取り組んできた結果、費用を抑え、かつ他社にも引けをとらない約2年半という短期間で、目標であったISO 26262の開発プロセス認証取得を達成しました。

 

「第三者認証機関から認証を取得したことで、ロームの電子部品は、機能安全に対応していくことが可能になるため、お客様の安心感に繋がります。これは今後の販売拡大に向けて、必要不可欠なことです。」と中嶋氏は話します。

認証書 授与の模様(2018年3月)
左:テュフ ラインランド ジャパン株式会社
  運輸・交通部 部長 有馬 一志 様
右:ローム株式会社 
  LSI開発本部 商品開発担当  統括部長 金井 延浩

 

「海外、特に欧州では、認証取得が非常に重要です。」と中嶋氏は続けます。ロームグループ全体でISO 26262認証の重要性を認知させるために、海外の営業スタッフや技術者に向けた説明会も開催しました。そうすることで、ロームが目標としている自動車市場および海外市場の売上拡大に大きく貢献するでしょう。

 

自動車の品質を向上させていくためには、部品レベルでも高品質が求められます。ISO 26262に準拠したプロセスで開発したものは、今まで以上に高品質を担保したものが開発できるはずです。今後は、機能安全が求められる電源ICやタイミングコントローラICなどの製品から順次、開発プロセスを適用していきたいと考えています。

また、2018年中に更新される予定であるISO 26262の2nd Editionは、乗用車以外にもバス、トラックなどの大型車両や2輪への適応拡大も盛り込まれ、半導体のガイドラインも追加される予定です。

ロームは2nd Editionに対応するための準備を進め、認証取得により製品の品質を保ち続けていくでしょう。