2017年4月19日 <要旨> ローム株式会社(本社:京都市)は、産業機器用の電源、太陽光発電パワーコンディショナーやUPS等のインバータ、コンバータ向けに1200V 400A、600A定格のフルSiCパワーモジュール「BSM400D12P3G002」、「BSM600D12P3G001」を開発しました。 本製品は、独自のモジュール内部構造および放熱設計の最適化を実施した新パッケージの開発により、600A定格を実現しました。これにより、産業機器用の大容量電源など、より大電力アプリケーションへの検討が可能となります。また、一般的な同等電流定格のIGBTモジュールと比べてスイッチング損失を64%低減(チップ温度150°C時)しました。これにより、アプリケーションの省エネ化に貢献します。さらに、高周波駆動による周辺部品の小型化はもちろん、高周波駆動時はよりスイッチング損失の低減効果が大きくなるため、冷却システムなどの小型化にも寄与します。例えば、冷却機構での損失シミュレーションに基づく試算において、同等電流定格のIGBTモジュールと比較した場合、SiCモジュールの使用により水冷ヒートシンクを88%小型化※することができます。 なお、本モジュールは、6月からサンプル出荷・量産を開始します。生産拠点は前工程がローム・アポロ株式会社(福岡県)、後工程がローム本社工場(京都市)となります。 <背景> 近年、SiCはその省エネ効果から、自動車や産業機器などで採用され、またさらなる大電流製品のラインアップが期待されています。SiC製品の特長である高速スイッチング性能を最大限活かすためにも、特にパワーモジュール製品のような電流定格の大きい製品においては、スイッチング時のサージ電圧の影響を抑えた新規パッケージ開発が必要でした。 ロームでは、2012年3月に世界で初めて内蔵するパワー半導体素子を全てシリコンカーバイドで構成したフルSiCパワーモジュールの量産を開始しました。以来、1200V、300A電流定格までの製品を展開し、様々な分野での採用が進んでおります。今回、新パッケージの開発により、IGBTモジュール市場において、主要な電流定格レンジである100Aから600AまでをカバーするフルSiCモジュールのラインアップ拡充を成功したことにより、更なる需要の拡大が見込まれます。 <特長> 1. 大幅なスイッチング損失低減により、機器の省エネに貢献 ローム製SiC-SBDとSiC-MOSFETを搭載したフルSiCパワーモジュールの実現により、一般的な同等電流定格のIGBTモジュールと比べ、スイッチング損失を64%低減(チップ温度150°C時)しました。これにより、アプリケーションの電力変換損失を低減でき、省エネに貢献します。 2. 高周波駆動の実現により、周辺部品を小型化 PWMインバータ駆動時の損失シミュレーションにおいて、同スイッチング周波数における損失を同等電流定格のIGBTモジュールと比較した場合、5kHz駆動時に30%、20kHz駆動時に55%と、より大幅なトータル損失低減を実現します。20kHz駆動時の場合、必要と想定されるヒートシンクサイズを88%小型化することが可能です。 加えて、高周波駆動が可能になるため、周辺受動部品の小型化に貢献します。 <大電流化を実現するための技術ポイント> 1. パッケージ内部インダクタンスを大幅に低減 パワーモジュール製品の大電流定格化を図るにつれ、スイッチング動作時のサージ電圧が大きくなるため、パッケージ内部のインダクタンスを低減する必要があります。今回、内蔵するSiCデバイスの配置や内部パターン、端子構造などを最適化することで、従来品と比較し、内部インダクタンスを約23%低減。従来パッケージと比べて同損失時のサージ電圧を27%抑えた新パッケージGタイプの開発により、400A、600A定格の製品化を実現します。加えて、同等サージ電圧駆動条件下においては、新パッケージの採用により、24%のスイッチング損失の低減を実現します。 2. パッケージの放熱性を大幅に向上 600A定格の大電流化を実現するには、内部インダクタンスの低減に加え、放熱性も必要になります。新製品は、モジュールの放熱性に大きく寄与するベースプレート部分の平坦性を向上させることにより、ベースプレートとお客様にて取り付けられる冷却機構間の熱抵抗を57%削減することができました。 また、これまで展開してきたSiCモジュール同様、容易に製品評価を可能にする評価用の駆動用ゲートドライバボードも用意しています。 <SiCパワーモジュールのラインアップ> 品名 絶対最大定格 インダクタンス(nH) パッケージ サーミスタ 内部回路図※ VDSS(V) VGS(V) ID (A)[Tc=60°C] Tj max(°C) Tstg(°C) Visol (V)[AC 1min.] BSM080D12P2C008 1200 -6~22 80 175 -40~125 2500 25 C type45.6 × 122× 17mm - BSM120D12P2C005 120 BSM180D12P3C007 -4~22 180 BSM180D12P2E002 -6~22 180 13 E Type62 × 152× 17mm ○ BSM300D12P2E001 300 BSM400D12P3G002 -4~22 400 10 G Type62 × 152× 17mm BSM600D12P3G001 600 <用語説明> インダクタンス 流れる電流を変化させたとき電磁誘導により発生する起電力の大きさを表わす量のこと。 サージ電圧 定常的に電気が流れる電気回路の中で瞬間的に激しく変動する電圧のこと。本リリース内では、具体的にMOSFETのスイッチングをオフする際に発生する電圧を指して使用している。 IGBT (Insulated Gate Bipolar Transistor) 絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ。ゲートにMOSFETを組み込んだバイポーラトランジスタ。 MOSFET (Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor) 金属-酸化物-半導体電界効果トランジスタのことで、FETの中では最も一般的に使用されている構造である。スイッチング素子として使われる。 SBD (Schottky Barrier Diode) 金属と半導体を接触させることでショットキー接合が形成され、整流性(ダイオード特性)が得られることを利用したダイオード。少数キャリア蓄積効果が無く高速性に優れているという特徴を持つ。 <関連情報> ■ 特設ページ ■ 新商品速報 1200V 400A/600A フルSiCパワーモジュール(PDF:414KB)
フルSiCパワーモジュールのラインアップを拡充
1200V 400A (BSM400D12P3G002)、600A (BSM600D12P3G001) 対応で
大電力アプリケーションの高効率化、小型化に貢献
<要旨>
ローム株式会社(本社:京都市)は、産業機器用の電源、太陽光発電パワーコンディショナーやUPS等のインバータ、コンバータ向けに1200V 400A、600A定格のフルSiCパワーモジュール「BSM400D12P3G002」、「BSM600D12P3G001」を開発しました。
本製品は、独自のモジュール内部構造および放熱設計の最適化を実施した新パッケージの開発により、600A定格を実現しました。これにより、産業機器用の大容量電源など、より大電力アプリケーションへの検討が可能となります。また、一般的な同等電流定格のIGBTモジュールと比べてスイッチング損失を64%低減(チップ温度150°C時)しました。これにより、アプリケーションの省エネ化に貢献します。さらに、高周波駆動による周辺部品の小型化はもちろん、高周波駆動時はよりスイッチング損失の低減効果が大きくなるため、冷却システムなどの小型化にも寄与します。例えば、冷却機構での損失シミュレーションに基づく試算において、同等電流定格のIGBTモジュールと比較した場合、SiCモジュールの使用により水冷ヒートシンクを88%小型化※することができます。
なお、本モジュールは、6月からサンプル出荷・量産を開始します。生産拠点は前工程がローム・アポロ株式会社(福岡県)、後工程がローム本社工場(京都市)となります。
<背景>
近年、SiCはその省エネ効果から、自動車や産業機器などで採用され、またさらなる大電流製品のラインアップが期待されています。SiC製品の特長である高速スイッチング性能を最大限活かすためにも、特にパワーモジュール製品のような電流定格の大きい製品においては、スイッチング時のサージ電圧の影響を抑えた新規パッケージ開発が必要でした。
ロームでは、2012年3月に世界で初めて内蔵するパワー半導体素子を全てシリコンカーバイドで構成したフルSiCパワーモジュールの量産を開始しました。以来、1200V、300A電流定格までの製品を展開し、様々な分野での採用が進んでおります。今回、新パッケージの開発により、IGBTモジュール市場において、主要な電流定格レンジである100Aから600AまでをカバーするフルSiCモジュールのラインアップ拡充を成功したことにより、更なる需要の拡大が見込まれます。
<特長>
1. 大幅なスイッチング損失低減により、機器の省エネに貢献
ローム製SiC-SBDとSiC-MOSFETを搭載したフルSiCパワーモジュールの実現により、一般的な同等電流定格のIGBTモジュールと比べ、スイッチング損失を64%低減(チップ温度150°C時)しました。これにより、アプリケーションの電力変換損失を低減でき、省エネに貢献します。
2. 高周波駆動の実現により、周辺部品を小型化
PWMインバータ駆動時の損失シミュレーションにおいて、同スイッチング周波数における損失を同等電流定格のIGBTモジュールと比較した場合、5kHz駆動時に30%、20kHz駆動時に55%と、より大幅なトータル損失低減を実現します。20kHz駆動時の場合、必要と想定されるヒートシンクサイズを88%小型化することが可能です。
加えて、高周波駆動が可能になるため、周辺受動部品の小型化に貢献します。
<大電流化を実現するための技術ポイント>
1. パッケージ内部インダクタンスを大幅に低減
パワーモジュール製品の大電流定格化を図るにつれ、スイッチング動作時のサージ電圧が大きくなるため、パッケージ内部のインダクタンスを低減する必要があります。今回、内蔵するSiCデバイスの配置や内部パターン、端子構造などを最適化することで、従来品と比較し、内部インダクタンスを約23%低減。従来パッケージと比べて同損失時のサージ電圧を27%抑えた新パッケージGタイプの開発により、400A、600A定格の製品化を実現します。加えて、同等サージ電圧駆動条件下においては、新パッケージの採用により、24%のスイッチング損失の低減を実現します。
2. パッケージの放熱性を大幅に向上
600A定格の大電流化を実現するには、内部インダクタンスの低減に加え、放熱性も必要になります。新製品は、モジュールの放熱性に大きく寄与するベースプレート部分の平坦性を向上させることにより、ベースプレートとお客様にて取り付けられる冷却機構間の熱抵抗を57%削減することができました。
また、これまで展開してきたSiCモジュール同様、容易に製品評価を可能にする評価用の駆動用ゲートドライバボードも用意しています。
<SiCパワーモジュールのラインアップ>
タンス
(nH)
ミスタ
(V)
(V)
[Tc=60°C]
(°C)
(°C)
[AC 1min.]
~
125
45.6 × 122
× 17mm
62 × 152
× 17mm
62 × 152
× 17mm
<用語説明>
<関連情報>
■ 特設ページ
■ 新商品速報
1200V 400A/600A フルSiCパワーモジュール(PDF:414KB)
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