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パワー系半導体特集
直流技術としての直流昇圧・降圧技術 (DC-DCコンバータ)

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パワー系半導体特集
直流技術としての
直流昇圧・降圧技術 (DC-DCコンバータ)

2017年1月19日号 電波新聞ソリューション

1. はじめに

近年、省エネ意識の高まりにより、あらゆる分野において電力変換ロスを低減するための取り組みが進んでいる。直流電圧を変換する場合、変換方式は大きく2つに分けられる。1つはシリーズレギュレータ、LDOと呼ばれるリニアタイプのものと、もう1つはスイッチングレギュレータ、DC-DCコンバータと呼ばれるスイッチングタイプのものがある。シリーズレギュレータは部品点数が少なく低コストであるというメリットがある反面、降圧電源しか生成できないことや、電源効率が悪く発熱が大きいといったデメリットが存在する。一方で、スイッチングレギュレータの場合、部品点数が多くなり設計が複雑になることや、スイッチング動作を行うためスイッチングノイズが発生することなどのデメリットがあるが、降圧電源のみではなく、昇圧、昇降圧、反転など様々な種類の電源が生成可能であり電圧変換の自由度が高く、電源効率が良く電力変換ロスを低減することができるというメリットがある。そこで、本章では利用することが多いスイッチングレギュレータにおける直流降圧、及び直流昇圧電源の動作原理について解説する。

2. 降圧スイッチングレギュレータの動作原理

図1から図5を用いて降圧スイッチングレギュレータの動作原理について説明する。
図1は、降圧スイッチングレギュレータの概略図を示したものである。
図2は、入力電圧と出力電圧の関係概略図を示したものである。
図3は、降圧スイッチングレギュレータのスイッチオン時の電流経路を示したものである。
図4は、降圧スイッチングレギュレータのスイッチオフ時の電流経路を示したものである。
図5は、各部品での電圧及び電流波形を図示したものである。

降圧スイッチングレギュレータの動作プロセスを簡単にいうと、DC電圧を一旦AC電圧に変換して、そのAC電源を平滑化することによってDC電源に変換するということである (図1参照) 。
図1において、

  1. S1がON、S2がOFFだとL1にはVinが印加
  2. S1がOFF、S2がONだとL1はGNDへ接続
  3. Vin (DC) をVinとGNDのパルスに変換
  4. C1で平均化されDCへと変換

という動作を行うことによって電圧変換を行っている。この動作をPWM動作として説明すると、S1=ON/S2=OFFでVinを給電する時間を30%、S1=OFF/S2=ONで0V状態を70%のパルス周期にし、そのパルスを平均化するとVinの30%の値の電圧が出力されることになる。例えば、Vin=10Vとすると出力電圧は3Vとなる。 (図2参照)

降圧スイッチングレギュレータの概略図
入力電圧と出力電圧の関係概略図

次に、実際の降圧スイッチングレギュレータの回路と動作について詳細に説明する。図3、図4は図1の概略図を実際の回路に置き換えたものである。一般的に降圧スイッチングレギュレータは、出力電圧と基準電圧を比較する比較回路、比較回路の出力をスイッチのON、OFF時間 (デューティーサイクル) に変換しスイッチを駆動するための制御回路、入力電源をON、OFFするためのスイッチ及びダイオード、電流を電圧に変換するためのインダクタ及び出力コンデンサによって構成されており、パルス幅が一定となるようにフィードバック制御を行うことで出力電圧を一定に保っている。降圧スイッチングレギュレータの動作として、

  1. 比較回路 (エラーアンプ) が、出力電圧が設定電圧になっているかどうかを基準電圧と比較する。
  2. 出力電圧が設定電圧よりも低い場合、スイッチがONすることで入力側から出力側へ電力を供給する。
  3. この時インダクタに磁気エネルギーが蓄積される。
  4. 出力電圧が設定電圧よりも高くなると、スイッチをOFFする。
  5. インダクタに蓄積されていた磁気エネルギーが電流となって出力負荷へ供給される。
  6. インダクタの磁気エネルギーがなくなり、出力電圧が下がってくると再びスイッチをONする。

といった1~6の動作を繰り返し行うことで、一定の値の出力電圧を供給することを実現している。図5はスイッチング動作を行っている時の各部品での電圧電流波形を示している。
このように、スイッチをON、OFFさせることによって電圧変換を行うことからスイッチングレギュレータと呼ばれており、出力側に必要な電力を必要な分だけ入力側から取り込んでいるため、電力変換ロスを少なくすることが可能である。

降圧/スイッチオン時の電流経路
降圧/スイッチオフ時の電流経路
降圧/各箇所での電圧電流波形

また、降圧スイッチングレギュレータは非同期 (ダイオード) 整流式と同期整流式と呼ばれる2つの回路構成がある。図3及び図4で示したものは非同期 (ダイオード) 整流式であり、回路構成や制御方法は比較的容易というメリットがあるが、電源効率は同期整流に劣るというデメリットがある。その理由は、スイッチOFF時にダイオードに流れる電流とその時発生する順方向電圧により電力損失が発生するためである。
そのため、この損失を低減させるため同期整流式は、非同期 (ダイオード) 整流式のダイオードをトランジスタに置き換えることで、ダイオードで発生していた電力損失を軽減している。例えば、非同期 (ダイオード) 整流式の場合、ダイオードに流れる電流を1A、その時の順方向電圧を0.5Vとすると電力損失は0.5Wとなる。
同期整流式であれば、トランジスタのコレクタ飽和電圧による損失を考慮してトランジスタをNch-MOSFETとした場合、FETに流れる電流を1A、FETのON抵抗を50mΩとするとFETでの電力損失は50mWと非同期 (ダイオード) 整流式に比べると電力損失を大きく低減することができる。

3. 昇圧スイッチングレギュレータの動作原理

図6から8を用いて昇圧スイッチングレギュレータの動作原理について説明する。
図6は、昇圧スイッチングレギュレータのスイッチオン時の電流経路を示したものである。
図7は、昇圧スイッチングレギュレータのスイッチオフ時の電流経路を示したものである。
図8は、各部品での電圧及び電流波形を図示したものである。
図6、図7に示すように昇圧スイッチングレギュレータの回路構成としては、比較回路、制御回路、スイッチ、ダイオード、インダクタ、出力コンデンサによって構成されており、パルス幅が一定となるようにフィードバック制御を行うことで出力電圧を一定に保っている。また、回路構成部品としては降圧スイッチングレギュレータと同等であり、降圧スイッチングレギュレータの入出力の構成を逆にしたものが、昇圧スイッチングレギュレータの構成となる。昇圧スイッチングレギュレータの動作として、

  1. 比較回路 (エラーアンプ) が、出力電圧が設定電圧になっているかどうかを基準電圧と比較する。
  2. 出力電圧が設定電圧よりも高い場合、スイッチがONすることで入力側から出力側への電力供給を停止する。この時、負荷へは出力コンデンサから電流が供給される。
  3. この時、インダクタに磁気エネルギーが蓄積される。
  4. 入力側から出力側への電力供給が停止しているため、出力電圧は低下し、出力電圧が設定電圧よりも低くなると、スイッチをOFFする。
  5. スイッチがOFFすると、インダクタはスイッチがONしていた時に蓄積されていたエネルギーを出力負荷へ供給する。この時、インダクタは電流を流し続けようとし、出力負荷に電流を供給するためSW端子の電圧は、出力電圧とダイオードのVFの和になる。
  6. 出力側に電流が供給され、出力電圧が上がってくると再びスイッチをONする。

といった1~6の動作を繰り返し行うことで、入力電圧よりも高い電圧を出力し、一定の値の出力電圧を供給することを実現している。

昇圧/スイッチオン時の電流経路
昇圧/スイッチオン時の電流経路
昇圧/各箇所での電圧電流波形

4. まとめ

スイッチングレギュレータの用途は、市場の様々な要求に応えることができるよう、多種多様な開発が積極的に行われている。直流を扱うスイッチングレギュレータのラインアップは益々充実される。
今後は高効率、高性能なものを市場に投入され、スイッチングレギュレータは社会の省エネ化に欠かせない技術となっている。