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物流業界の課題をLiDARで解決

06/09/2023

需要が増加する一方で、深刻な人手不足に悩む物流業界。
AGV(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)などを用いたスマート物流システムの導入をお考えの事業者様が増えています。しかし、安全面やシステムの管理などに不安を抱いている方も多いようです。
実際、ISOでも高い機能安全が要求されており、安全がきちんと担保されたインテリジェントなセンシング技術やモジュールが必須になりつつあります。
そこで、より安全で安心できるスマート物流システムの構築を目指して、より遠く、より精細に感知でき、太陽光ノイズの影響を受けにくい、ロームの最先端のLiDAR(3D・距離センシング)技術が注目されています。

スマート物流、スマートロジスティクスとは?

最新のIoT・AI技術やデータを活用して、物流業務を効率化・最適化し、よりスマートで持続可能な方法で貨物の輸送・配送を行う物流システムの導入が進んでいます。
例えば、運転支援システムはドライバーの負担を軽減し、運転の安全性を高めてくれます。また、IoT技術を用いてリアルタイムにデータを収集すれば、効率的な配送ルートが導き出され、より多くの荷物をより迅速に配送することもできるでしょう。そして、AGVやAMRなどを活用し、荷物の受け渡しやピッキング作業などを自動化すれば、人手不足に悩まされることなく、迅速かつ正確に物流業務を遂行することができます。このスマート物流システムの要となるのが、最先端のセンシング技術です。Eコマースの普及拡大に伴って物流量が増えている一方で、物流業界における深刻な人手不足は常態化しており、長時間労働を引き起こしています。スマート物流システムを導入することで業務の自動化・省人化・効率化が進み、業務量の削減や労働時間の短縮、経費削減等ができ、物流業界の課題解決の一助になると期待されていますが、本格的な普及にはまだいくつかの課題が残っています。

日本の運送・物流業界の危機⁉ 迫る、2024年問題

2024年問題とは?

2024年4月1日以降、働き方改革関連法により、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されます。トラックドライバーの労働環境改善が期待される一方、いくつかの深刻な問題が生じる可能性が指摘されています。それが「2024年問題」です。
では、2024年問題とは、具体的にどのような問題が想定されているのでしょうか。

2024年、物流業界の命運を握る2つの難題

一つ目の問題は、運送・物流業者の売上や利益の減少です。
規制で運べる荷物量が減ったからといって、運賃の大幅な値上げは難しく、収入が減少する恐れがあります。また、割増賃金率の引き上げで人件費が増加し、利益の減少につながる可能性もあります。

二つ目の問題は、トラックドライバーの収入が減少することです。
労働時間の規制によって走行距離が減り、運行手当の支給が減るために収入が減少する恐れがあります。ドライバーだけでなく、仕分け作業者も同様です。

この2つの難題に伴って離職率が上昇し、ますます人手不足が深刻化して、物流網に混乱が生じる可能性も懸念されています。
これら2024年問題の解決策の一つとして、運送・物流業界では、スマート物流システムを取り入れた自動化・省人化・効率改善が急務となっています。

2024年問題とは?

スマート物流を支える、最先端の3D・距離センシング技術 LiDAR

スマート物流に欠かせないセンシング技術の中でも、最も重要となるのがLiDAR(ライダー/Light Detection And Ranging)です。
LiDARは、レーザー光を発射して物体に反射させ、戻ってくる光の時間を計測することで、対象物までの距離や形状、位置などを精密に測定するセンシング技術です。またLiDARにより、SLAM(スラム/Simultaneous Localization and Mapping)と呼ばれる、「自己位置の特定」と「周辺環境の地図作成」を同時に行う技術の実現も可能になります。
優れたLiDARを採用することで、次のようなメリットが得られます。

①高精度な位置情報をリアルタイムで取得

SLAMでは、センサから得た情報をもとに、さまざまな機器の自己位置の特定と周辺環境の地図作成を同時に行います。ロボットの場合、まずはロボットの位置を推定し、その位置をもとに地図を作成。さらにその地図をベースにして、ロボットの位置をより正確に推定するのです。
SLAMがなければ、ロボットは周囲の環境を認識することができず、自律的に行動することはできません。
例えば、庫内での資材・在庫搬送や配達先ラストワンマイルへの商品配送にAGVやAMRを用いる場合、SLAMによって車両や歩行者、在庫などの移動物体をリアルタイムに検出し、正確な位置の特定や追跡が可能になります。
ロボットアームによるピッキングや仕分け作業や在庫管理なども、SLAMで自己位置と周辺環境を正確に把握することで、効率的かつ安全な自動化に貢献します。
つまり、SLAMはスマート物流システムの実現には欠かせない技術なのです。

そんなSLAM技術の要となるのが、LiDAR、カメラ、ToFなどの最先端のセンシング技術です。
中でも、LiDARは測距精度に優れており、最大検知距離も長いのが特長で、人や物、車両などが目まぐるしく行き交う物流の現場において使用されるAGVやAMRでは特に前方の物体までの距離を正確に把握する必要があるため、LiDARの導入が進んでいます。

SLAMの技術が進歩することで、自律移動システムはさらに進化し、よりインテリジェントなスマート物流の実現が可能になるでしょう。

高精度な位置情報をリアルタイムで取得

②安全性とセキュリティを強化

障害物、危険、その他の潜在的なリスクをリアルタイムで検出できるため、衝突、事故、商品やインフラへの損傷を未然に防ぐことができます。また、施設の境界監視、侵入検知、およびセキュリティ監視などにも使用でき、物流システム全体の安全性とセキュリティを向上させます。

③効率と生産性の向上

LiDARで測定した物体の位置、向きに関する正確なリアルタイムデータは、合理化および最適化された物流オペレーションを実現します。サプライチェーンの可視性の向上やトレーサビリティの強化にもつながり、人件費の削減やリソース割り当ての最適化にも貢献します。

④持続可能な物流へ

LiDARで測定されたデータを活用、分析することで、輸送や配送、積荷の効率化を実現。配送回数が減ることにより、省力化、省エネルギー化、排気ガス等の低減、事故の未然防止、効率的な資源利用など、物流業務全般における持続可能な取り組みをサポートできます。

持続可能な物流へ

LiDARに求められる、5つのポイント

①「より遠く、より精細に」

安全で安心できるスマート物流サービスの実現には、インテリジェントなLiDAR技術が求められます。
LiDARは、カメラやレーダーで安全を確保できない部分を補うものとして導入が進んでおり、カメラ+LiDARやカメラ+レーダー+LiDARといったセンサーフュージョンの流れが今後も進むことが予想されます。
そんなLiDARに要求されるのは、「より遠くのものを、より精細に」検知できる性能です。AMRやロボット、自動運転車などを安全に運用するためには、遠くの小さな障害物を正確に検出し、一定の距離を保つことが必須です。その上で、人や他の機器などの動きを認識し、運転可能な範囲を見積もる必要があります。
屋内だけではなく、AGVやAMRを工場や倉庫など建屋間の移動を伴う搬送ロボットとして使用したり、さらに進んだ商品自動配送ロボットへの活用や、より複雑な状況下での人との協働などを想定した場合、屋外での運用も視野に入れなければなりません。太陽光ノイズの低減はもとより、交通渋滞状況の把握や走行時の正確な周囲マッピング、悪天候やあらゆる光源、照明条件下でのより精細な長距離センシングが要求されるでしょう。
LiDARは、ミリ波レーダーに比べて波長が短い電磁波であり、検出の際に空間分解能が高いこと、離れた対象物までの距離や位置の測定に優れていること、稼働ミラーと組み合わせることで対象物の方位や形状を検知でき3D観測ができることなど、様々な利点があります。

②波長温度依存性を一般品の1/3に抑えて「より遠く」へ

半導体レーザーは温度によって波長が変化してしまいます。ロームの高出力半導体レーザーは発振波長の温度依存性を一般品の1/3に抑えることに成功しました。発振波長の温度依存性を抑えたことでノイズとなる太陽光カットフィルタの波長範囲を縮小でき、その結果、太陽光の影響を極小化することで、同じ光出力なら距離伸長、同じ距離なら光出力低減(低消費電力化)に貢献します。

③「より精細に」を叶える、高出力半導体レーザー

より遠くの対象物を細かく検出するためには、どれだけ光を小さく絞って照射できるかがポイントになります。 ロームの高出力半導体レーザーは独自の技術で狭発光幅を実現。
レンズで光を収束させた密度の高いレーザーで、より強く、遠くまでセンシングすることが可能なため、一般的な半導体レーザーと比較して測定距離の伸長が見込めます。

ラインアップ

ローム高出力半導体レーザーの特徴

④2つのLiDAR技術

ロームは、高出力半導体レーザーとVCSELの2つの技術を所有する数少ないメーカーのため、 お客さまの用途やニーズ、困りごとに合わせた、柔軟なソリューションのご提案が可能です。

2つの方式の半導体レーザー

⑤さらにインテリジェントなLiDARソリューションを提供

スイッチング特性に優れたGaNデバイスを組み合わせることで、LiDARの距離分解能および計測距離をさらに向上できます。GaNデバイスを使用すると、従来のシリコンでは実現できなかった1ns程度の極細パルスでレーザーを駆動できます。1nsの時間のずれは30cmの距離のずれに相当するため、パルス幅が太くなると高精度の距離検出ができなくなりますが、GaNデバイスはこの課題を克服できます。また、電流が流れる時間が短くなり、発熱が抑えられることで、より大電流の駆動ができるため、長距離の計測が可能となります。ロームでは、すでにGaNデバイスの量産体制を確立しており、その特性を最大限に引き出すための高速制御が可能なゲートドライバICまで含めたソリューションを提供しております。2種類の半導体レーザー駆動回路に関するリファレンスデザインやボードもご用意しており、設計工数削減にお役立ていただけます。

スマート物流の未来

今まで物流業界で活用されている無人搬送機は、磁気テープなどの上を走行するAGVが主流でした。しかし現在では、自由に動き回って人と協働できるAMRの検討と導入が増えており、自動化や省人化による効率改善がさらに進んでいくと思われます。

人と機械が協働できる物流システムへ

人と機械が協働できる物流システムの実現には、機能安全がきちんと担保されているLiDARの存在が欠かせません。ISOでも厳格な機能安全が要求されていることから、屋外で使用する機器は特に太陽光(紫外線)の影響を受けにくい、波長温度依存性が低い半導体レーザーが求められます。
ロームの高出力半導体レーザーは波長温度依存性が低く、波長範囲が狭い太陽光カットフィルタと組み合わせることで太陽光ノイズを減らせるため、これまでの一般的なLiDARよりも検知力が高く、測定距離が伸長します。
ロームのインテリジェントなセンシングソリューションを導入いただくことで、一般的なAMRよりもさらに高性能で高効率な機器の開発も可能になり、さらに進化した、安全で安心なスマート物流システムの実現に貢献します。
国内では、低速・小型の自動配送ロボットの実用化に向けて、制度化を含む道路交通法の改正法が2023年4月1日に施行されました。関連法整備が一歩進んだことで、今後の実用化の加速に期待が膨らみます。

人と機械が協働できる物流システムへ

より効果的でスマートな物流システムへ

ロームは、物流現場との密なコミュニケーションを図り、要望や問題点を共有することで、ご要望に合わせたセンシングソリューションやその他の半導体ソリューションをご提案。より効果的なスマート物流の実現に貢献します。

より効果的でスマートな物流システムへ

物流現場に必要なソリューションをワンストップで

ロームでは、上記の高出力半導体レーザー、GaNデバイス、ゲートドライバICに加えて、限られたバッテリー内の電力を効率的に使用するための各種パワーデバイス(シリコンベースのMOSFETIGBTSiCデバイスなど)、電源ICモータドライバICワイヤレス通信部品LEDなど、トータルソリューションとして開発からサポートまでワンストップで一貫したサービスを提供しております。

物流現場に必要なソリューションをワンストップで

まとめ

スマート物流の実現に不可欠なLiDAR技術に加えて、各種センサ、モータ駆動、インテリジェントな省エネルギー技術、ネットワーク技術など 、機器開発に関する困りごとをロームなら1社で解決することができます。

商品紹介・詳細情報、その他のリンクなど

半導体レーザー

高出力半導体レーザー

光センサ

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