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特集:電源&パワーデバイス
ROHMのパワーデバイス&電源IC技術

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ROHMのパワーデバイス&電源IC技術

1.パワーデバイスの進化

近年、地球温暖化を防ぐためにCO2排出量を減らすことが人類の課題となっている。CO2排出量を減らすには節電と電圧の変換効率を上げることが必須である。こうした中、ロームはLED照明にて節電を、パワーデバイスにて変換効率の向上に貢献している。
変換効率を上げるためには損失を減らすことが必要である。発電所では数10万Vの電圧を発生させている。これらの電圧は電線や変圧器を通じて、例えば身近な携帯電話の充電器では約5Vまで電圧を低下させて使用している。発電所から充電器までには何度も電圧が変換されており、変換するたびに損失が発生している。これらの損失の原因の一つがパワーデバイスの損失である。この損失がゼロになれば、CO2排出量を大幅に減らす事が可能となる。完全にゼロにする事は出来ないが、ゼロに近づけるためにロームは日々研究、開発を繰り返している。その結果損失を低下でき、CO2を減らせることでロームの企業的存在価値を高められると考えている。
パワーデバイスに関して業界TOPのラインナップを揃えるロームは、Siベースのスーパージャンクション(SJ)-MOSFET、MOSFET、バイポーラトランジスタ、ショットキーバリアダイオード(SBD)、ファーストリカバリダイオード(FRD)、ダイオード(Di)、ツェナーDi以外にも、シリコンカーバイド(SiC)、窒化ガリウム(GaN)といった次世代素子を加え、パワーデバイスとして各電圧領域で特色のある製品作りをしている(図1)。

トランジスタ開発トレンド
[図1]トランジスタ開発トレンド

特にSiCでは世界のTOPを走る研究、開発から製造へとスムーズな移行が進みSiC SBDに続き、世界初となるSiC MOSFETの本格的な量産スタートに成功した。また、素子だけでは本来SiCがもつ性能を100%発揮できないとの市場要求に応える形で、モジュール製品の量産も今年スタートした。
高電圧領域はSiCでカバーし、数100V程度をSJ-MOSやMOSFETにてカバーしている。最近では数100V程度の商品ラインナップの拡充に力を入れている。
もちろん従来の低耐圧領域の商品の拡充も行っている。先日発表した新構造のMOSFETは40V耐圧で100Aもの電流を流せる製品である。損失の主要因であるRonも1mΩを切った。
またダイオードでは従来まで厳しいと言われていた高耐熱のSBDの開発にも成功した。これは電気化が進む車の厳しい温度条件でも使えるため、燃費を改善できる。
このように、ロームはパワーデバイスにおいて、すでに多くの製品を世の中に向けて発表している(記事)。

ロームが既に発表しているパワーデバイス関連製品
【記事】ロームが既に発表しているパワーデバイス関連製品

さらに、これらのパワーデバイスを駆動すべくLSIも日々耐圧を向上させている。従来数10VであったロームLSIの耐圧は現在では600V耐圧まで向上し、幅広い耐圧のパワーデバイスを駆動することが可能となった。
絶縁が必要なセットには、最近発表した絶縁機能付きゲートドライバで対応している。これは3チップを1パッケージ化し、絶縁化を行う事でパワー段とコントロール部の分離が可能となった。絶縁耐圧は2500Vrmsを実現している。LSIの回路設計技術と半導体(Wa)製造技術、パッケージ技術を合わせ持つロームだからこそ製品化が可能となった製品の一例である。
また、パワーデバイスの高耐圧化に伴い、周辺で使用する抵抗も新シリーズを開発した。
それが、高耐圧抵抗のKTRシリーズである。高電圧発生部(例:カメラのフラッシュ用電圧部、キセノンタイプでは一時的に数100V発生させている。)には低耐圧抵抗を直列に接続し耐圧を稼いでいたが、KTRシリーズは構造から見直しを行い高耐圧化したため1つの抵抗で300V以上の耐圧を実現している。こうしてデジタルカメラ等の部品点数削減を実現している。
 ロームでは各耐圧に対し、パワーデバイスだけでなく、周辺部品を含めた改善案をトータルで提供している。

2.電源IC技術

ロームの電源ICはあらゆる分野に向け開発を進めている。
電源ICには大きく分けてシリーズ電源とスイッチング電源がある。シリーズ電源においては、周波数特性や出力段特性、回路電流の低減が日々行われている(図2)。今年の目玉は何と言っても回路電流6μAを実現した車載用LDOだ。50V耐圧のBiCDMOSのプロセスを用い、1チップで電源回路を実現している。回路電流の少ない製品は存在するが、この耐圧かつ厳しい車載市場で使用可能な電気的特性や信頼性を確保した製品は世界初である。
また、LDOの損失を極力抑えることができるシリーズ電源としてUltra LDOのBD35xxシリーズがある。こちらはNch FETと2電源構成の二つの手法を用いる事で入出力電圧差を大幅に低減することができるシリーズ電源である。シリーズ電源の効率は(出力電圧÷入力電圧)で決まるため、入出力電圧を低減する事で効率を高くできる。それにより効率をスイッチング電源並に高くすることを可能とした。最近の多種類の電源が必要となってきており、スイッチング電源の数量を減らすことができるソリューションである。特にPCやデジタル家電にて採用されている(図3)。
以上のようにロームには特徴をもったシリーズ電源が各耐圧、各電流に応じてラインナップを揃えており、様々な製品において採用されている。
また、スイッチング電源においては、従来の電圧モード、ピーク電流モード゙に加えて平均電流モードやON time制御、H3REGTMが新製品として続々登場している。
これらの製品で特筆すべきが6MHzのスイッチング電源BU900xxシリーズである。このICは高周波数スイッチング電源技術のROHMとして2010年のCEATECにて展示した20MHzのコイルレススイッチング電源技術を活かした新製品である。(図4)周辺部品が入出力のコンデンサとコイル1つの3点のみで、なおかつ高周波数化により小型品を使用できトータルで電源部面積を小さくできるのが大きな特徴である。
さらに1.3mm×0.9mmという小型パッケージ、回路電流40μAという低消費電流化を実現する事でスマートフォンをはじめとする携帯機器に採用されている(図5)。
また、H3REGTM は高速過渡応答を実現するロームオリジナル制御方式である。電圧モードや電流モード、ON Time制御と比較しても出力電流変動時の電圧ドロップに大幅な改善が見込まれる。(図6)

Linear Regulators-Rich Productラインアップ
[図2]Linear Regulators-Rich Productラインアップ
「BD35xxシリーズ」のFuture Solution
[図3]「BD35xxシリーズ」のFuture Solution
20MHzスイッチング電源 6MHz 1.0A Step-downDC-DCコンバータ
[図4]20MHzスイッチング電源"コイルレス"降圧DC-DCコンバータ [図5]6MHz 1.0A Step-downDC-DCコンバータ

Transient Response Comparison
[図6]Transient Response Comparison

3.パワーデバイス&電源ICの小型化

最近のセット基板は電源だらけだと嘆くセット設計者が多い。また、日増しにプリント基板の土地代が高騰していると聞く。
確かに、最近のスマートフォンやタブレットPC等を分解した写真を見ると電池に追いやられて非常に小さく隅っこに追いやられた基板があるのがわかる。更にCPUやメモリといった分かりやすいLSIを除くとコイルが複数個搭載されており、かなり目立っている。
これらのコイルは大抵スイッチング電源部のコイルであり、間接的にかなりの数量の電源が使われていることがわかる。シリーズ電源に至っては最近パッケージが超小型化し印字が見えないため素人目には何のICかわからない。
ロームのシリーズ電源ではWLCSP(Wafer Level Chip Size Package)技術を用い0.96mm角から0.8mm角へと小型化を推進している。これは端子ピッチを0.5mmから0.4mmとする事に連動して小型化が進んでいる。
ロームでは更に小型化を先行して端子ピッチを0.3mmとした世界最小の0.65mm角サイズのパッケージを開発する。(CEATEC展示予定)これにより更なるセットの小型化を推進する(図7)。
また、FETやDiも小型化を推進している。こちらは新構造パッケージを採用する事で実現している。例えば従来のFETのパッケージの最小サイズは1.2mm角であったが、最新の小型パッケージは0.8mm×0.6mmと約70%の超小型化を実現している。
このようにロームは部品小型化を推進し、部品の小型化⇒セットの小型化⇒廃棄物の低減⇒CO2削減に貢献している。
最新の小型製品としてICの周辺部品を取り込んだ1パッケージ電源もある。ICの周辺部品を搭載した製品であり、超小型でテーピングにて実装対応可能でICライクに使える超小型モジュールである。ROHMでは次世代のICパッケージの一つと位置付け製品化に力を入れている。内蔵基板技術を用いる事で周辺部品の搭載とICとの接続を可能とし、なおかつ面積の削減を実現できる。1パッケージ電源を使用するセット設計者は、実装面積の削減、最適レイアウトによるスイッチングノイズの低減、簡単使用、のメリットを享受でき、セット設計に全力を傾けることができる。またセットの購買担当者は部品点数が削減し、日々増加する部品表をすっきりとしたものにできる。
まずは実装面積の厳しいスマートフォン向けに2つの製品を開発した。
1つ目は先ほど紹介したBU900xxシリーズを搭載した降圧電源のBZ6AxxGMシリーズである。この製品は面積を削減しつつ、高さを1mmに抑えた製品である。
世界最小クラスを実現した2.9×2.3mmという小型化ながら650mAもの出力電流に対応した製品である。
2つ目は昇圧電源シリーズであるBZ1AxxGMシリーズだ。昇圧電源や昇降圧電源として使用でき2.3×2.4mmと世界最小サイズを実現した製品である。もちろん高さも1mmだ。
この製品の使い方は多岐にわたる。例えばリチウム電池(2.7-4.2V)から5Vを作るような回路でこの1パッケージ電源を使用すると簡単にUSB用電源やHDMI用電源、LEDトーチライト用電源として使用することができる(図8)。

CMOS LDO WLCSP ロードマップ
[図7]CMOS LDO WLCSP ロードマップ
1パッケージ電源シリーズ
[図8]1パッケージ電源シリーズ

また、5Vでしか使えないICをリチウム電池環境下で使用するためにBZ1AxxGMシリーズを使用するのも有効な手段だ。入力電圧範囲が広いICではリチウム電池の幅広い電源電圧範囲に適応するために犠牲となっている特性も少なからず存在する。それらを失わないためにBZ1AxxGMシリーズで作った5Vを利用するのも手段の一つである。
1パッケージ電源は「すべての部品を1チップに」というLSIとしてのゴールまでの間のつなぎの製品であるが、電源部で使用する高耐圧や大電流のパワーデバイス、大容量のコンデンサや大電流対応コイルは確実に21世紀中には1チップ化できない(と予想する)。22世紀にどんな事が出来るかを先取りできる1パッケージ電源の開発に力を入れるロームの先を見据えた製品ラインナップの今後に期待してほしい。
最後に、ロームが掲げる4つの成長エンジンのうちの一つが「SiCを中心としたパワーデバイス製品の強化」である。
ロームでパワーデバイスや周辺部に関われる人はとても恵まれている。なぜなら会社の方針であると同時に、CO2削減に直接貢献できる素晴しい分野だからだ。高効率化、大電流化、高耐圧化、小型化、モジュール化など色々な方面での仕事が人類に多少なりとも良い影響を与えられる事に誇りをもち、これからも日々邁進していきたい。


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