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トランジスタとは? 安全に使用するための選定方法

 

トランジスタを動作させると電気的、熱的な負荷がかかります。
トランジスタにとって負荷が大きすぎると寿命が短くなったり、最悪の場合、破壊することもあります。
そのようなことを防止するためにも、実使用状態をチェックし、使用上問題がないか確認する必要があります。
ここでは、その具体的な判定方法について解説しています。
トランジスタを安全に使用していただくため、是非参考にしてください。

判定前に:トランジスタの選定~実装までのフロー

1. トランジスタの選定

Web、ショートフォームカタログより仕様を満たすトランジスタを選定します。
トランジスタ製品ページへ

2. スペック・サンプルの入手

サンプルの一部はWebから入手可能です。

3. 実際の回路(評価回路)にトランジスタを実装

  • 選定したトランジスタが実際の回路で安全に動作するか?
  • 動作はしたが、長期的(信頼性的)に安定して動作するか?
    などなど、電気的マージンも考える必要があります。

トランジスタの使用可否判定方法

使用可否の判定は以下の流れで行います。各ステップをクリックしていただくと、詳細について説明したページへリンクします。

実際の電流・電圧波形を測定する
絶対最大定格を常に満たしているか?
SOA*範囲内に入っているか?
※SOA…安全動作領域(Safety Operating Area)の略
使用雰囲気温度でディレーティングしたSOA範囲内に入っているか?
単発パルス? 連続パルス?
平均消費電力は周囲温度での定格電力以内か?

1.実際の電流・電圧波形を測定する

電流・電圧の確認

トランジスタにかかる電圧、電流をオシロスコープで確認します。
仕様書に記載のある定格を全て満たすことが必要ですが、特に確認すべき項目は以下の通りです。

特に確認すべき項目

トランジスタの種類 電圧 電流
バイポーラトランジスタ コレクタ‐エミッタ間電圧:Vce コレクタ電流:Ic
デジタルトランジスタ 出力電圧:Vo(GND‐OUT間電圧) 出力電流:Io
MOSFET ドレイン‐ソース間電圧:Vds ドレイン電流:Id

例:バイポーラトランジスタ2SD2673をスイッチングさせたときの波形(100μs/div)

バイポーラトランジスタ2SD2673をスイッチングさせたときの波形

あとでスイッチング時の電力損失を計算するため、OFF→ON時とON→OFF時は拡大波形を確認します。

2.絶対最大定格を常に満たしているか?

絶対最大定格の確認

「1.電流・電圧の確認」で確認した電流・電圧が、仕様書に記載してある絶対最大定格を越えていないか確認します。
1.の例では確認していない項目もありますが、それらも全て絶対最大定格以下である必要があります。突入電流や電圧サージに
よって一瞬でも絶対最大定格を越えていたら使用不可能です。絶対最大定格を越えると破壊や劣化の可能性があります。

例:2SD2673の仕様書(絶対最大定格の記載)

絶対最大規格[Ta=25℃]

例:一瞬だけ絶対最大定格を越えている例(使用不可能)

一瞬だけ絶対最大定格を越えている例

3.SOA範囲内に入っているか?

安全動作領域(SOA※1)の確認 1

安全動作領域(SOA)はトランジスタが安全に動作できる領域を表します。
ただし、SOAは1パルスのみについてのデータであり、繰り返しパルスが入る場合は全てのパルスがSOA内に入っていることに加え、「4.安全動作領域(SOA)の確認2」で計算する平均印加電力が定格電力以下であることが必要です。

※1 SOA…安全動作領域 (Safety Operating Area)の略。ASO(Area of Safe Operating) という場合もあります。

SOA 確認方法

「1.電流・電圧の確認」で確認した波形が、安全動作領域(SOA)の範囲に入っているか確認します。突入電流や電圧サージによって一瞬だけでも絶対最大定格を越えていたら使用不可能です。
また、「2.絶対最大定格の確認」で確認した絶対最大定格の範囲内に入っていてもSOAの範囲を越えていることがあるのでご注意ください。(下の例参照)

例:2SD2673 SAFETY OPERATING AREA

2SD2673 SAFETY OPERATING AREA

4.使用雰囲気温度※1でディレーティングしたSOA範囲内に入っているか?

※1 使用雰囲気温度、またはトランジスタの発熱で温度上昇している場合はそのときの素子温度で考えます。

安全動作領域(SOA)の確認 2

通常の安全動作領域(SOA)は常温(25℃)におけるデータのため、周囲温度が25℃以上の場合、またはトランジスタ自体の発熱で素子温度が上昇しているときはSOAの温度ディレーティングが必要です。

SOAの温度ディレーティング方法
バイポーラトランジスタ編  MOSFET編

※ディレーティングする温度は、基本的には素子の温度です。

安全動作領域(SOA)の確認

素子温度の詳しい計算方法は 『素子温度の計算方法』をご参照下さい。

付属1 SOA(安全動作領域)の温度ディレーティング方法<バイポーラトランジスタ編>

1.SOA(安全動作領域)

SOA(安全動作領域)は、周囲温度が25℃以上の場合、またはトランジスタ自体の発熱で素子温度が上昇している場合は温度ディレーティングする必要があります。ディレーティングする温度は、前者の場合は周囲温度、後者の場合は素子温度です。具体的には、SOAラインを低電流方向に平行移動します。ディレーティング率は、図1で示すようにその領域によって異なります。

1-1. 熱制限領域
この領域では、SOAラインは45°の傾きを持っています(電力一定のライン)。
この領域では、ディレーティング率は0.8%/℃です。

1-2. 次降伏領域
バイポーラトランジスタでは熱暴走を原因とする2次降伏領域が存在します。
2次降伏領域においてはSOAラインは45°以上の傾きをもっています。
この領域では、ディレーティング率は0.5%/℃です。

SOAの温度ディレーティング

2.例 Ta=100℃

2-1.熱制限領域でのディレーティング
例えば、周囲温度100℃の場合、以下のようになります。

熱制限領域でのディレーティング

したがって、この領域のSOAラインは電流が小さくなる方向に60%平行移動します。

2-2. 2次降伏領域でのディレーティング
同様に、2次降伏領域でのディレーティングは以下のようになります。

2次降伏領域でのディレーティング

したがって、この領域のSOAラインは電流が小さくなる方向に37.5%平行移動します。

SOAの温度ディレーティング

付属2 SOA(安全動作領域)の温度ディレーティング方法<MOSFET編>

1.SOA(安全動作領域)

MOSFETのSOAにはバイポーラトランジスタのように2次降伏領域がなく、熱制限領域(電力一定ライン)のみとなっています。バイポーラトランジスタと同様に、この領域ではディレーティング率は0.8%/℃です。また、MOSFETの場合は温度が上がるとON抵抗が増加する分、最大電流のディレーティングも必要となります。

MOSFETの温度ディレーティング

ON抵抗増加による最大電流ディレーティングについて

周囲温度が上がっても最大消費電力は一定ですが、ON抵抗は増加します。
したがって、周囲温度の上昇によりON抵抗がR1からR2になったとすると25℃における最大電流Iは温度上昇によりI'にディレーティングされるとすると

2.例 Ta=75℃

2-1. SOAラインのディレーティング
例えば、周囲温度75℃の場合は、

SOAラインのディレーティング

したがって、この領域のSOAラインは電流が小さくなる方向に40%平行移動します。

2-2. 最大電流のディレーティング
同例えば、RSS100N03の場合、
最大電流はID=10A、IDP=40AでON抵抗は
25℃ (VGS=10V、ID=3A)で10mΩ
75℃ (VGS=10V、ID=3A)で16mΩ (それぞれtyp値)なので、
75℃においての最大電流は

最大電流のディレーティング

となります。

5.連続パルス? 単発パルス?

電力・発熱確認

単発パルス

電源投入時や立ち下げ時の突入電流のように、一度だけパルスが入る場合(繰り返しパルスでないとき)を単発パルスといい、
この場合、

SOA範囲に入っていることを確認した段階で、使用可能です。使用してください

連続パルス

パルスが繰り返し入る場合を連続パルスといい、この場合、

周囲温度における定格電力以下か確認する必要があります。

6.平均消費電力は周囲温度における定格電力以下か?

定格電力以下の確認

周囲温度における定格電力以下 = 素子温度が絶対最大定格の150℃以下となります。素子温度が150℃になるような
電力を定格電力として定めています。
詳しくは『素子温度の計算方法』をご参照下さい。

電力計算方法

基本的に、平均電力は電流と電圧の積を時間で積分した値を時間で除したものです。

On時の損失分の電圧

この場合、1周期を4つ程度の区間に分けて計算します。

計算式

実際の積分計算は、積分公式を用います。
以下で、「1.電流・電圧の確認」で確認した波形の例の計算を実際に行います。

(1)OFF→ON時

OFF→ON時
積分公式から、1の区間

(2)ON期間中

ON期間中

(3)ON→OFF時

ON→OFF時
ON→OFF時

(4)OFF時は電流がほぼゼロ(実際には数nA~数10nA程度のリーク電流が流れています)と考え、OFF期間中の消費電力はゼロと考えます。

以上の計算から各区間における積分値を合計して1周期の長さ400μsで除すると、 平均消費電力は

なお、ここではバイポーラトランジスタの2SD2673の例でコレクタ電流:Icとコレクタ-エミッタ間電圧:Vceの積分を行いましたが、デジトラでは出力電流:Ioと出力電圧:Voで、MOSFETではドレイン電流:Id と ドレイン-ソース間電圧:Vdsで同様の積分計算を行えば、平均消費電力を計算することができます。
平均消費電力を求めたところで、仕様書のコレクタ損失(MOSFETの場合ドレイン損失)を確認します。

例:2SD2673の仕様書

2SD2673の仕様書

この場合、平均印加電力が0.415Wで許容コレクタ損失が0.5W(推奨ランド:ガラエポ基板実装時)なので周囲温度25℃においては使用可能と判断します。(正確には、許容コレクタ損失は実装基板やランド面積などによる放熱条件によって異なりますが推奨ランド実装時の値を目安としました)

周囲温度が25℃以上の場合は、電力軽減曲線を確認して温度ディレーティングを行います。例えば、周囲温度が50℃のときは25℃のときに比べて許容損失は80%となるので、許容損失は0.5W×80%=0.4Wとなります。この場合、平均消費電力は0.415Wなので周囲温度50℃においては使用不可能となります。

電力軽減曲線

素子温度の詳しい計算方法は、『素子温度の計算方法』をご参照ください。

電力算出用積分公式

電力算出用積分公式

電流Iと電圧Vによるa-b間の積算電力算出

電流Iと電圧Vによるa-b間の積算電力算出
電流Iと電圧Vによるa-b間の積算電力算出
電流Iと電圧Vによるa-b間の積算電力算出
電流Iと電圧Vによるa-b間の積算電力算出
電流Iと電圧Vによるa-b間の積算電力算出これらの公式は、VとIに関して対称なので、VとIを入れ替えても成り立ちます。

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