業界初の「アナデジ融合制御」電源、LogiCoAロジコア™電源ソリューションの提供を開始
LogiCoA™マイコンにより、フルデジタル制御電源同等の機能を低消費電力で実現

※2024年4月23日現在 ローム調べ

<要旨>

LogiCoA001-EVK-001

ローム株式会社(本社:京都市)は、小~中電力帯(30W~1kWクラス)の産業機器、民生機器に向けて、フルデジタル制御電源*1と同等の機能をアナログ制御電源*2レベルの低消費電力、低コストで実現できるLogiCoA™電源ソリューションの提供を開始しました。LogiCoA™は、アナログ回路の性能を最大限に発揮させるためにデジタル要素を融合する設計思想のブランドです。そして、LogiCoA™電源ソリューションは、LogiCoA™マイコンを中心としたデジタル制御部分と、シリコンMOSFET等のパワーデバイスからなるアナログ回路を組み合わせた、業界初の「アナデジ融合制御」電源です。フルデジタル制御電源において高速CPU*3やDSP*4等のデジタルコントローラが担う機能を低ビットのマイコンで処理できるため、アナログ制御電源では実現の難しい高機能を低消費電力かつ低コストで実現できます。また本ソリューションは、LogiCoA™マイコンに電流、電圧値等の各種設定値を記憶できるため、電源回路に応じた周辺部品の性能ばらつき補正が可能です。これにより、アナログ制御電源と比較して設計マージンを考慮する必要がなくなるため、電源の小型化や高信頼化に貢献します。さらに、動作ログデータをマイコン内の不揮発性メモリに記録できるため、不具合時のバックアップとしてログの記録が求められる産業機器の電源にも最適です。
ローム公式Webサイト上では、非絶縁バックコンバータの回路でLogiCoA™電源ソリューションを体感できる評価用リファレンスデザイン「REF66009」を公開しています。このWebサイト上では、評価に必要な回路図、PCBレイアウト、パーツリスト、サンプルソフトウェア、サポートドキュメント等の各種ツールを公開しており、ロームから提供可能なリファレンスボード「LogiCoA001-EVK-001」を使用することで、実機評価が可能です。
なお、LogiCoA™電源ソリューションに搭載されているLogiCoA™マイコンは、2024年6月より量産及びサンプル提供を開始する予定です。今後、さまざまな電源トポロジーに対応できるように、LogiCoA™マイコンの製品展開を進め、アプリケーションにおいて電力損失の大部分を占める電源部の省エネ化、小型化を実現することで、持続可能な社会の実現に貢献します。

<背景>

中電力帯で動作する産業用ロボット機器や半導体製造装置等では、一般的にアナログ制御電源が数多く採用されています。しかし、近年ではこれらの電源にも高い信頼性や細かい制御が求められており、アナログ制御のみの電源構成では市場要求に対応することが困難です。一方、フルデジタル制御電源は、細かい制御や設定が可能な代わりに、搭載されるデジタルコントローラの消費電力が大きいことやコストが高いという問題があり、小~中電力帯の電源においては採用が進んでいません。この課題に対してロームは、アナログとデジタルの長所を融合したLogiCoA™電源ソリューションを開発。高機能かつ低消費電力のLogiCoA™マイコンにより、さまざまな電源トポロジーを容易に制御できる環境を構築することが可能です。

LogiCoA™電源ソリューションの概要

<「LogiCoAロジコア™」ブランドについて>

LogiCoA™は、ロームが得意とするアナログ回路の性能を最大限に発揮させるために、デジタル要素を融合する設計思想に対して付与されたブランドです。アナログ回路のメリットとデジタル制御のメリットを融合することで、回路トポロジーの潜在能力をフルに引き出し、電力活用の高効率化に貢献します。ロームは、このLogiCoA™を電源分野のみならずパワーソリューション全体に適用できる設計思想と考えており、今後の製品及びソリューションへの応用を視野に入れています。

LogiCoA™

・「LogiCoA™」は、ローム株式会社の商標または登録商標です。

<提供を開始するLogiCoA™電源リファレンスデザインの詳細>

ローム公式Web上では、LogiCoA™マイコンの機能を確認することが可能な評価用リファレンスデザイン「REF66009」を提供しており、非絶縁の12Vバックコンバータ回路を使ってLogiCoA™電源ソリューションの基本動作を確認できます。リファレンスデザインページから取得可能なサンプルソフトウェアを使用することで、実行タスクのシーケンス制御や各種パラメータのモニタ機能等もリファレンスボード「LogiCoA001-EVK-001」を使って実機で確認することが可能です。リファレンスボードについては、担当営業もしくは、ロームWebのお問い合わせ先よりお問い合わせください。

リファレンスデザインボード「LogiCoA001-EVK-001」の概要

<アプリケーション例>

・産業用ロボット機器  ・半導体製造装置  ・アミューズメント機器
ほか、一般的な産業機器、民生機器(30W~1kW)に幅広く搭載可能です。

<LogiCoA™マイコンについて>

ロームは、LogiCoA™電源ソリューション等のアナログ・デジタル融合制御に最適化したLogiCoA™マイコンを開発中です。このマイコンは、タイマー連携可能な3chのアナログコンパレータや各種パラメータのデジタル制御が可能となるD/Aコンバータ等を搭載しており、さまざまな電源トポロジーに対応できます。LogiCoA™マイコンの量産及びサンプル提供は2024年6月を予定しています。

■LogiCoA™マイコンの暫定スペック

品番 動作電圧 温度 タイマー コンパレータ A/Dコンバータ D/Aコンバータ プログラマブル
ゲインアンプ
CPU メモリ パッケージ
Code
Flash
Data
Flash
RAM
☆ML62Q2033 4.5V

5.5V
Ta=-40℃

+105℃
(Tj=+115℃)
(絶対最大定格:
Tj Max.=+125℃)
16bit timer with
PWM/Capture
×
6カウンタ、10出力
最大64MHz動作
(分解能15.625ns)
3ch
(クロック
非同期動作)
応答時間:
Typ.100ns
12bit
SA-ADC:
5ch
8bit、
2ch
1ch、ゲイン設定:
4レベル
(×4/×8/
×16/×32)
16bit RISC
CPU Core
(U16)、
最大16MHz
動作
16KB 4KB
(消去単位:
128B)
2KB TSSOP20
☆ML62Q2035 32KB
☆ML62Q2043 16KB WQFN24
☆ML62Q2045 32KB

☆:開発中

<用語説明>

*1)フルデジタル制御電源
デジタル技術を活用して電力供給を制御する電源のこと。高速CPUやDSP等を使用して、電圧や電流等の各種パラメータを精密にモニタリング、制御できるため、電源の効率性、信頼性等の向上が可能となる。また動作ログデータの取得等、アナログ制御電源では難しい機能も実現できる。一方、CPUやDSPは高価かつ消費電力が大きいため、コスト面や省エネの観点ではこの点がネックとなる。
*2)アナログ制御電源
アナログ部品で構成されたシンプルな電源構成。電源構成がシンプルな上に消費電力も少ないため、現在1kW以下の電源においては主流の電源構成となっている。一方、任意のパラメータ設定やログデータの記録等、高機能の実装は難しいため、これらの機能を実現したい場合、コスト及び消費電力の大きなフルデジタル制御電源の検討が必要となる。
*3)CPU / Central Processing Unit
プログラムを実行し、データを処理する中央制御装置のこと。計算や処理を担当し、プログラムに従って命令を実行する。
*4)DSP / Digital Signal Processor
アナログ信号をデジタル化し、変換したデジタル信号に対して解析、フィルタリング、増幅等の処理を行う装置。高速処理やさまざまなアプリケーションに対応可能な柔軟性を持ち、電源以外に音声処理や画像処理等、デジタル信号を扱う回路において重要な役割を果たす。