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製造業と物流に革命を起こすインダストリアルIoT(IIoT)

11/04/2020

インダストリアルIoT(IIoT)

様々なモノがインターネットを介してつながり合う「IoT(Internet of Things)」。

メディアで取り上げられる機会が増えて認知も拡がりましたが、「インダストリアルIoT(IIoT)」については、投資対効果が高いと言われ、産業分野で導入が進んでいるにもかかわらず、まだ詳しく知らない方も多いようです。

そこで今回は、製造業に革命を起こすといわれるIIoTとは何か? また、IIoTが製造業や物流にどのような影響を与えるのか? について紹介します。

インダストリアルIoT(IIoT)とは?

「インダストリアルIoT(IIoT)」はその名の通り、産業分野に特化したIoTです。

以前ブログに掲載した「IoTとは?」の記事の中で、ロームのセンサと無線通信技術の活用について紹介しましたが、IIoTも同様に、機器や設備をインターネットに接続後、情報を収集・蓄積し、あらゆるデータを分析することで、生産や業務の効率を改善したり、設備の故障を未然に防ぐようアラートで知らせたりすることができます。工場で具体例を考えれば、リードタイムの短縮、不良品リスクの最小化、トレーサビリティの強化、保全費用の削減などが可能になります。

具体的な例を見ていきましょう。

スマートロジスティクス(スマート物流)

生産された商品が消費者の元に届くまでには、多くの手間がかかっています。
そのため、物流過程のすべてを人力で行うと、ミスの可能性も高くなり、人件費もかさみます。そこでIoT技術を活用することで、商品について「何が」「いつ」「どこにあるのか」をリアルタイムで監視するとともに、これらのリスクを最小限にするのがスマートロジスティクス(スマート物流)です。

また、通販サイトなどで注文した商品が当日や翌日に届くのも、スマートロジスティクスを導入し、物流過程を可視化・効率化したことで実現しているサービスです。

スマートロジスティクス(スマート物流)のイメージ

スマートファクトリー

これまでにも工場(製造現場)では、生産工程の一部分を機械により自動化するファクトリーオートメーション(FA)という取り組みが進められ、産業の発展に寄与してきました。これにIoT技術を加えることで、さらなる進化を促すものがスマートファクトリーです。

スマートファクトリーは、センサや無線通信技術を用いて、生産工程における、設備、人、モノの情報を「可視化」して共有し、AIがそれらの情報を管理・シミュレートして、生産ラインを「最適化」します。そして、作業者への通知や作業ロボットへの指示や制御を行って「自動化・自律化」することで、生産工程の効率化を図ります。

スマートファクトリーイメージ

IIoTは便利なだけじゃない

さて、IIoTは、家庭のIoT関連ビジネスと比べて、なぜ投資対効果が高いと言われるのでしょうか。それは、家庭のIoTでは便利さに目を奪われますが、IIoTは便利さではなく、効率化やトレーサビリティの強化、費用削減を目的に行われるからです。

工場においては、効率化はもとより、トレーサビリティの強化を例にすれば、可視化により「何が」「いつ」「どこで」「どのようにして」作られたのかを追跡調査できるようになるため、品質や安全に対しての保障を容易にします。

また、保全費用削減を例にすれば、センサを備えた生産設備が故障の前兆を察知し、通知や警告を発することで、メンテナンス頻度の最適化や事故の未然防止(予兆保全)につなげることができます。加えて、これまで熟練技術者個人の技術に依存していたような「匠」の作業も、情報の蓄積と分析、画像解析などによって次世代に継承することもできるのです。

IIoT化のメリット

IIoTのトレンド

世界を見渡せば、例えば中国は特にIIoTの導入が進んでいます。
中国政府は2011年頃からすでにIoTを活用して近代化を進めるという方針を示しており、工場をはじめ、医療分野などでもIoTを積極的に導入してきました。

2020年を過ぎてからは、広帯域で低遅延、広範囲をカバーできる無線通信システム「5G」を最大限に活用して、AIや高画質カメラシステムなどと連携を図り、物流工程の人員配置や生産エリアの状況をリアルタイムで感知することで、資源や資材の調達や管理を最適化する動きが活発になりつつあります。

第4次産業革命として「インダストリー4.0戦略」を打ち出しているドイツでは、「インダストリー4.0戦略」飛躍に向けて、官民連携で製造業や機械業の主団体をはじめ、ドイツ国内の多くの企業がIoT化に取り組んでいます。

また、米国主導のもと、「産業のインターネット化」ともいわれるインダストリアル・インターネットの動きも活発です。これを推進するインダストリアル・インターネット・コンソーシアム(Industrial Internet Consortium、IIC)には、米国の名だたる企業はもちろんのこと、日本や欧州の企業も数多く参画しており、200社にせまる勢いです。
IoT技術の活用によるインダストリアル・インターネットの実装だけでなく、オープンな活動から新しい価値やサービスが生まれることも期待されています。

さらに、日本では、政府が主導する「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)のプロジェクトの一つに「スマート物流」が取り上げられ、研究開発が始まっています。同プロジェクトでは、製造業や物流事業者、流通事業者から各種データを収集し、活用を希望する事業者に提供する効率的なプラットフォームの構築を目指しています。

ドライバーの不足や宅配時の不在などの配送現場環境の改善や、在庫管理状況などをサプライチェーン内で共有することによってロスを大幅に削減するなど、物流事業や小売業の生産性を現在より2割向上させることが見込まれています。

IIoTに活用されている先端技術

スマート物流やスマートファクトリーなどを実現するうえで重要となる、代表的な3つの先端技術を紹介します。

スマートタグ(RFID)

小売店でも利用が進んだことで、消費者が目にする機会も増えている「スマートタグ」。
スマートファクトリーやスマート物流においても非常に重要な役割を果たしています。

例えば、商品にスマートタグを取り付けて一括で読み取れば、検品や棚卸し作業も飛躍的に効率化します。もちろん、そのデータは資産管理に役立てることもできます。管理にかかる人員や工数を一気に削減できるのです。

スマートタグを取り付けて一括読み取りでリアルタイム管理

ロボット

IIoTに欠かせないのが「ロボット」の存在です。

センサ技術やカメラ機能、AI等の発達によって、工場や設備の中を自律的に移動して作業を行うロボットが増え始めており、荷物の運搬や点検にもロボットの活躍の場が広がっています。

工場や設備の中を自律的に移動して作業を行うロボット

ドローン

今後、物流を抜本的に改革しうるものとして「ドローン」が大きく注目されています。

ある調査会社によると、ドローン世界市場規模は現在、軍需と民需を合わせて約1.9兆円。今後もさらに拡大を続け、25年には約2.9兆円にまで成長するとみられています。その中でも輸送・配送サービス分野は、20年から25年のCAGR(年平均成長率)が29.7%と、非常に高い成長率が予測されているのです。

ヨーロッパや中国、アメリカなどでは、すでにドローンを利用した配送サービスが郊外を中心に始まっています。大手の通販業者をはじめ、医療物資などの搬送、中には料理やアイスクリームのデリバリーといった身近でユニークなサービスも現れています。

日本では政府が、離島や過疎地・都市部等での貨物輸送や災害発生時に活用するべく、貨物輸送実験を行っているため、規制が緩和されれば実用化も進みそうです。

IIoTの課題とロームのソリューション

IIoTで投資コストに見合う結果を得るためには、収集した情報をいかに活用するか、役立てられるかが一番の問題です。

そのためには、「IoTとは?」で紹介したように、センサで情報を収集し、無線通信モジュールなどを使って高信頼のネットワークに載せ、サーバー(クラウド)で処理する。アプリケーションを動かすという考えを目的に向かってシステムを詰める必要があります。

ロームが、IIoT含むIoTに対して豊富なセンサや無線通信技術によるソリューション、そしてそれらを簡単に評価できる評価キットを提供できるのは「IoTとは?」で紹介したとおりですが、スマートロジスティクスとスマートファクトリーに向けにはサーマルプリントヘッドのような製品も提供しています。

IIoTで採用が進むロームのサーマルプリントヘッド

サーマルプリントヘッドは、製造業や物流においては主に製品や梱包材に貼り付けるラベルへのプリントに使用されますが、梱包材・包装材に直接「製造年月日(デートコード)」を印字することもあります。製品の印字性能については、従来は作業効率の観点から、比較的大きな数字を(多少汚くても)より高速に印字することが求められていましたが、近年では安全・安心の観点やIIoTの流れにより、製造年月日だけでなく、トレーサビリティ向上や詳細情報へのアクセスのため、2次元バーコードのような複雑なものをプリントすることが求められるようになっています。
ところが、一般的なサーマルプリントヘッドでは、印字品質(情報量や解像度)を高めるためには印字速度(言い換えれば作業効率)を落とさなければならないことも多く、情報量と作業効率を高いレベルで実現することは困難でした。

ロームが2019年に開発した、高精細・高速印字が可能なサーマルプリントヘッド「TH300xシリーズ」は、環境にやさしい包装紙などに305dpiの高解像度で秒速1メートルの超高速印字を実現します。印字速度と印字品質を極めて高いレベルで両立できることに加えて、腐食に対して一般品比7倍以上の耐性(長寿命化)も実現しており、特殊な環境下でも長期に使用できるため、食品包装や物流・品質管理工場におけるデートコード用サーマルプリンタでの採用が進んでいます。

ロームのサーマルプリントヘッド

<関連リンク>

IoTとは? 重要な4つの構成要素と活用事例、自作のための知識を紹介
https://www.rohm.co.jp/blog/-/blog/id/7405417

ロームのサーマルプリントヘッド
https://www.rohm.co.jp/products/printheads