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【入門者向け】オーディオの仕組みと技術を解説

03/19/2020

音楽は今や、私たちの生活の中でもっとも身近な存在の1つです。音楽のストリーミングサービスや動画共有サイトによって、簡単に、いつでもどこでも好きな音楽を聴くことができるようになりました。

特に最近は技術の進歩によって、スマートフォンなどの小型・携帯型デバイスでも高音質な音楽が再生可能です。また、今後は5Gの普及によって、通信速度や容量などの制約が現在(※記事執筆時、2020年)よりもさらに取り払われます。VRといった演奏時の映像表現なども含めて、家や移動中でもこれまで以上に臨場感や迫力のある音楽が楽しめる日常がすぐにやってくることでしょう。

そこで今回は、そもそも音はどのような仕組みで再生されているのかに焦点を合わせ、日頃楽しんでいる音楽に隠された技術に迫ります。

1.オーディオを構成する3つの要素

普段の生活の中で、スピーカーなどを指してなにげなく「オーディオ」という言葉が使われています。しかし、オーディオは大きく分けて3つの仕組み(機器)で成り立っています。

まずはその3つの仕組みである、「プレーヤー」「アンプ」「スピーカー」について、それぞれ簡単に解説します。

オーディオを構成する3つの要素

① 記録メディア内の音源を読み取る「プレーヤー」

音楽の再生は、まずデータ化された音源を読み取るところから始まります。その役割を果たすのがプレーヤーです。

このプレーヤーは、記録された音楽情報(音源)を読み取り、電気信号に変換します。情報の読み取り方は、レコードでは針、CDではレーザーなど、記録媒体によってそれぞれ異なります。現在主流になっているCDやメモリに保存されたデジタル音源では、オーディオ専用に設計された半導体(CDに記録された音源を読み取るサーボICやメモリ内の音源を読み出すオーディオSoCなど)が、音楽情報を取り出す役割を担っています。これらのICは、ロームをはじめとした半導体メーカーがオーディオメーカーなどに提供しています。

記録媒体から読み取ったデジタル音源は、デジタル信号のまま、もしくはDAC(デジタル/アナログコンバーター)という装置でアナログ信号に変換されてから、後述するアンプに受け渡されます。特にDACを介す場合は、いかに音質を劣化させずにアナログ信号にできるかが非常に重要で、DACが音質にもっとも影響を与える部品だと言われる理由でもあります。

② プレーヤーが読み取った信号を増幅する「アンプ」

「アンプ」はプレーヤーが読み取った信号を、音声として再生できるようにするための“増幅”を行います。ちなみに、アンプはアンプリファイアー(増幅器)の略です。

スピーカーを駆動させるには、プレーヤーが読み取った信号に大きなエネルギーを持たせる必要があります。そのため、アンプはその信号の波形をできる限り変えずに増幅(大きく)し、スピーカーを駆動する役割を担います。スポーツにたとえるなら、スピーカーに対してどれだけ良い“アシストパス”ができるかがアンプの腕の見せどころです。

人間の伝言ゲームと同じように、介在するプロセスが多いほど元の音源が劣化(変化)する可能性が高まるので、アンプの性能の良し悪しで音質が大きく変わるともいえます。

③ データ化された音源を実際の音声にする「スピーカー」

データ化された音源を実際の音声にする「スピーカー」

オーディオの中で、一般的にもっとも知られているのがこの「スピーカー」ではないでしょうか。スピーカーには、プレーヤーやアンプによって変換・増幅された電気信号をエネルギーにして、空気を震わすことで人間の耳に音を届ける役割があります。

プレーヤーやアンプも同様ですが、なかでも特にスピーカーは形状や大きさ、構造や材質などが多岐にわたります。そのため、ここではあくまで大まかな仕組みについて説明します。

アンプから伝えられた電気信号は、スピーカー内にあるユニットを振動させます。このユニットは簡単にいうと、磁石の仕組みを利用してユニット内のパーツを電気信号のとおりに動かすことで空気を震わせています。空気を震わせること、つまり音を響かせる仕組みにはいくつかの種類があり、主流なのはコーン型やホーン型といったタイプです。さらに、ユニットを複数に分けることで、低音・中音・高音それぞれの音を出すスピーカーもあります。

またギターやピアノ、あるいは笛や太鼓などのように、音は空洞(楽器を構成する筐体)の中で跳ね返ることで大きく響きます。この空洞のつくり方もスピーカーによって違いがあります。

コンポやスマホ、パソコンは3つの要素を兼ね備えている

ここまで紹介したプレーヤー、アンプ、スピーカーが合わさることによって、音楽が再生されること分かりました。これらが全て揃うことで1つのオーディオシステムが成り立ちます。

ですが、普段私たちが音楽を楽しんでいるスマートフォンやパソコン、あるいはステレオコンポなどはどのような仕組みになっているのでしょうか? 実は、これらの機器では最初からいくつかの機能がセットになっています。

スマートフォンやパソコン

プレーヤー、アンプ、スピーカーのすべての役割を一台でこなします。ヘッドフォンなどをつなげて、スピーカーの機能だけをスマートフォンやパソコンの外に出すこともできます。

ステレオコンポ

プレーヤー、アンプ、スピーカーが1つのセットになったものです。ちなみにコンポはコンポーネント(構成要素)が由来です。

2.誰もが意識するけど実は曖昧…。「音質」とは一体何か

誰もが意識するけど実は曖昧…。「音質」とは一体何か

いま多くの人にとってもっとも身近なオーディオはスマートフォンとヘッドフォン(イヤフォン)の組み合わせではないでしょうか。家電量販店や通販サイトを見ると、数千円のものから数十万円のものまで、値段もブランドも多様な商品が販売されています。その中で、みなさんが購入する際に意識するポイントには必ず「音質」が入っていませんでしょうか?

一方で、「音質とはなにか?」と聞かれて全員が答えられないのも事実だと思います(そして、答えが人によってまちまちです)。また、前の章で紹介したように、音楽が再生されるまでには多くの仕組みや機器が使われています。そのため、音質はヘッドフォンだけの性能ではなく、そもそもの音源の良し悪しも含めた、オーディオシステム全体の中で左右されるのです。

次はこの音質について考えていきましょう。ここでは「絶対的な定義」と「相対的な定義」、2つの側面から見ていくことにします。

絶対的な定義

音質と聞かれて、誰もが共通して挙げる要素を「絶対的な要素」とします。そこで必ず挙げられるのが、「音源を忠実に再生できること」です。具体的には、音が歪まず、全ての音域をきちんと鳴らすことができ、耳障りなノイズが発生しないということです。

ここで、音源自体が忠実でない場合についても考えておきたいと思います。例えば、CDをパソコンで取り込んで、それをMP3などの別のフォーマットに非可逆に変換すると、音源が圧縮されてしまいます(もちろん、ファイルサイズが小容量になるメリットもあります)。これはカメラで撮影した高画質の写真データを、メールに添付したり、ソーシャルメディアに投稿するために圧縮することをイメージすると分かりやすいでしょう。

相対的な定義

誰もが共通してイメージする「絶対的な定義」とは異なり、個人の好みや理想、よく聴く音楽などによって定義が異なるのが音質の興味深い面です。これを「相対的な定義」として簡単に説明します。

例えばヘッドフォンのパッケージや紹介文を見ると、「クリアな音」「パワフルな重低音」といった言葉が書かれています。しかし、よく考えると音がクリアなほうが音質が良いのか、それとも重低音が響いたほうが音質が良いというのか、どちらでしょうか? ——これこそが個人によって評価が変わる部分です。

最近のポップスやR&B、ヒップホップ、あるいはダンスミュージックなどを聴く場合は重低音がグルーヴ感を生み、心地よさを演出するでしょう。しかし、オーケストラによる交響曲などを聴く場合は、さまざまな音域・音色の音をクリアに再生でき、目の前に演奏者がいるような臨場感や音の複雑な交わりを楽しめることが求められるでしょう。

つまり、音質は、音源をきちんと再生できることに加えて、再生する音楽によって変わる「どう聞きたいか」を踏まえて定義されるものだとも言えます。

3. 音質を左右するのはわずか1センチ四方の電子部品

冒頭の繰り返しになりますが、録音された音源はデータ化され、オーディオシステムによって再生されます。そのため、音質の良し悪しには音源、プレーヤーやアンプも大きく影響を与えています。

ロームはオーディオ機器自体を作るメーカーではありませんが、プレーヤーやアンプに使われているオーディオ機器向け電子部品を数多く作っており、音にこだわるハイエンドのオーディオ機器やカーオーディオ、カーナビゲーションシステムにも多く採用されています。特に、音量調整用のICや、DACは、オーディオ機器の音質を高めるために最も重要な特性である低雑音と低歪率において、世界最高クラスを実現する製品です。

最後に、電子部品メーカーであるロームがこれらの製品を生み出せる原動力について、触れておきたいと思います。根底にあるのは、品質第一の考え方です。企業目的である「われわれは、つねに品質を第一とする。」。この思いのもと、製品の細部に至るまで徹底した品質向上を図っています。また、オーディオ機器の音質を向上させたいという探究心を持つエンジニアが多数いることではないでしょうか。

オーディオ機器向けの製品においては、音質に影響をおよぼす28個のパラメータを特定したことをはじめ、いまもなお音質設計技術を磨き続けています。回路・マスク設計はもとより、ウエハ、パッケージに関わる製造上の音質パラメータのコントロール、さらに試作段階で音楽を繰り返し再生し確認することで、狙い通りに解像度・臨場感・迫力などの音質を高める製品開発を行っています。

このようなロームのオーディオ機器向け製品に込める想いとこだわりはこちらをご覧ください。

ROHM Musical Device「MUS-IC」について

より良い音づくりに向けて ロームオーディオソリューションの鍵とは