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創業製品:抵抗器 挑戦し続けるロームのイノベーション

07/19/2018

抵抗器は、ロームの創業製品である。1954年に炭素皮膜固定抵抗器の実用新案を取得し、開発・販売を開始して以来、1976年には、世界で初めてチップ型抵抗器を開発するなど、業界を牽引し続けている。1981年に変更した社名も、抵抗器Resistorの「R」、電気抵抗の単位である「Ohm」が由来となっており、ロームのDNAを語る上で最も重要な製品の一つである。

今回汎用デバイス生産本部 抵抗器製造部 統括課長 米田将記氏にお話しを伺い、世界中にいる顧客のために、課題をどのように乗り越え、開発を進めてきたのか、またどのようにして不可能を可能にしてきたのか、ロームの考え方を探った。

抵抗器製造部で統括課長務める米田将記氏

1999年に抵抗器製造部に配属されて以来、実績を積み重ねてきた米田氏は、「あらゆる製品で電子化が進み、抵抗器が電子機器にとって欠かせない部品のひとつとなる中、ロームは常に市場ニーズを考え、革新的な技術と製造工程の開発に取り組み、業界に先駆けた開発をしてきました。電子機器・モバイル機器の普及にあわせて、ロームが得意とする小型化技術で抵抗器市場を牽引すると同時に、車載・産業機器分野においても、高付加価値な製品を提供しています。その結果として、既に累計2兆個のチップ抵抗器を世界に送り出しています。」と語る。

 

トライアンドエラーを繰り返しながら実現する“業界初”製品

米田氏が世界で初めて開発した、耐サージ特性に優れた長辺電極タイプの抵抗器LTR18シリーズは、数々の開発課題を乗り越えて完成した一つの成功例である。

この製品は、長辺電極を採用することで、実装基板への高い接続信頼性を有している。また、独自の抵抗体設計により、高い定格電力と優れた耐サージ耐性をもち、静電気など回路に瞬間的に加わる大きな電圧により、チップが破壊されるという心配も減る。もともと、長辺電極抵抗器と耐サージ特性に優れた耐サージ抵抗器は別々に存在していたが、これらを両立するのは非常に難しく、開発から約2年かけて量産が実現した。

「ロームでは、試作から評価まで、全てを各エンジニアが一貫して取り組んでいる。実際やってみないとわからないことが数多くあるため、図面をひいたり、材料を選定するなど、自分の手でトライアンドエラーを繰り返しながら、質の高い、新しい製品の開発に取り組んでいる。」と米田氏は説明する。

 

市場ニーズを反映した製品開発

抵抗器は長年製造方法に大きな変化がなく、新しい製品を開発するのが段々と難しくなってきている。しかし、こうした状況下でも、常に顧客にとってメリットのある製品を供給していくためには、積極的に顧客の声を聞き、製品開発に反映していく姿勢が大切になる。さらに、要望を最大限に取り入れつつ、幅広いアプリケーションで使用してもらうためには汎用性も重要である。そのために、市場トレンドも追い続けている。

自動車や産業機器市場では、近年特に、過酷な環境でも優れた性能を確保できる抵抗器や電流検出用のシャント抵抗器へのニーズが高まってきている。ロームは昨年11月、こうした大電力アプリケーションの電流検出用途向けに最適な、高電力・低抵抗のシャント抵抗器「GMRシリーズ」を量産した。独自の材料と構造により、優れた放熱性を実現しており、過電流が流れた場合でも、抵抗値が変化することなく安定した性能を保つことができるようになった。また特殊な材料を採用したことで、低抵抗領域でも優れた抵抗温度係数を達成しており、高精度かつ信頼性の高い製品にもなっている。これにより、自動車や産業機器で幅広く採用されはじめている。

また、「高電力かつ小型」、「過酷な温度環境でも優れた性能を確保できる」などの高信頼性をもつ抵抗器の要求も高い。こうした市場要求に対しては、高電力、耐サージ、耐硫化といった特長のある特殊抵抗を提供しており、この分野もハイパワーシャント抵抗と並んで年々成長している。

高電力、低抵抗が特長のシャント抵抗器「PSRシリーズとGMRシリーズ」

あらゆるアプリケーションでの電子化にともない、抵抗器の需要は増加している。「日本国内はもちろん、特に欧州や中国の自動車関連での受注も増えてきています。まず国内外のお客様それぞれに求められている需要を満たすべく、安定供給を徹底していきます。品質の確保と安定供給を継続していくためにも、各部署、工場と連携して、材料や製造工程などの最適化を行っていきたいと考えています。」と米田氏は語る。

新しい製品をつくるために挑戦し続け、その製品を安定して供給することは世界を牽引する革新的な企業でいるために非常に重要なことだ。