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注目のLPWA無線、その可能性

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電波新聞 ハイテクノロジー LPWA技術特集 注目のLPWA無線、その可能性

はじめに

IoTを支える無線技術として、低消費電力で、カバーエリアの広い、その名の通りのLow Power Wide Area(LPWA)が注目をあつめている。LPWAとひとくくりに呼ばれるものの、多種多様な方式があり、それらの得意不得意もまた、多様である。さらに、現段階ではどの方式が主流になるか予測不可能である。そこで今回は、LPWA無線活用におけるこれらの悩みを解消できる一案として、複数のLPWA無線方式を組み合わせたシステムについて検討・提案する。また、それを実現するラピスセミコンダクタのLPWA向け製品を紹介したい。

LPWA無線とは?

LPWA無線とは、通信量(データレート)を抑えて、長距離の通信に特化した無線方式である。3G/LTEよりLow Powerかつ3G/LTEやWi-SUNよりWide Areaという特性がある。各種無線規格とLPWA無線の相関を図1に示す。

図1:LPWA無線の立ち位置
図1:LPWA無線の立ち位置

図1からわかる様に、LPWA無線は、3G/LTEを低電力化・長距離化したNB-IoT(3GPPの呼称は、Cat-NB1)と、WI-SUNに代表される特定小電力(Sub-GHz)無線を、長距離化したLPWAに大別され、使用する周波数帯の特徴から前者をライセンスドLPWA、後者をアンライセンスドLPWAと呼ぶ。さらに、ライセンスドLPWAは、携帯電話の技術を流用していることからセルラーLPWAとも呼ばれる。いずれにしても、元の無線方式から、データレートを絞ることにより、感度を改善し、電波の到達距離を飛躍的に増大させた点が特長である。
※ 3GPP(Third Generation Partnership Project):1998年12月に設立、第三世代携帯電話(3G)に関する標準仕様策定を目指すプロジェクト

LPWA無線方式の分類

LPWA無線は前述のとおり、LTEベースのNB-IoTと特定小電力無線を長距離化したLPWAに分類されるが、この他にも特徴的な差異があり表1にまとめた。これらの差異について、まずはアンライセンスドLPWAとライセンスドLPWAの違いについて解説する。

表1:2つのLPWA無線方式(アンライセンスドとライセンスド)
表1:2つのLPWA無線方式(アンライセンスドとライセンスド)

両者には、大きく3つの差異がある。1つめの差異は、無線周波数帯である。使用する無線周波数帯が違うだけでなく、アンライセンスド/ライセンスドの意味する“みんなのもの”/“誰かのもの”という文字通り、独占的にライセンサが使用できる周波数帯かどうかの違いがある。例えば、ライセンスドLPWAが使用する905M~915MHz帯は、2011年からソフトバンクがLTEに使用している。一方、アンライセンスドLPWAが使用する916M~928MHz帯は、ある一定の無線特性を満たしていれば(技適合格)、誰でも使用できるため、多様なシステムが混在することになる。このシステム混在に起因する衝突を避けるため、キャリアセンスや送信規制というルール(電波法)を設けることで、通信障害を回避している。

アンライセンスドLPWA無線方式の比較

アンライセンスドLPWAの先鋒といえば、LoRaWAN(LoRa)、Sigfoxである。これらを比較したものを、表2に示す。

表2:アンライセンスドLPWA無線方式の比較表
表2:アンライセンスドLPWA無線方式の比較表

LoRaWANは、LoRaアライアンスによって標準化・公開されているプロトコルスタックで通信構築している。LoRaWANの優位性は、アライアンスメンバの多さと採用実績である。メンバ数は、ワールドワイドで、300を超えると言われ、その中には、IBM、CISCOなどのSIerはじめ、各レイヤのメンバが参画している。技術的には、Chirp Spreading Spectrum(CSS)による拡散ゲインにより、データデートを落しつつ、リンクバジェットを向上させている。

Sigfoxは、ワールドワイドの実績が抜群で、すでに30カ国以上のサービス展開がされている。ただし、LoRaアライアンスのような、標準化団体はない。その代わり、仏Sigfox社が一手に、物理層からプロトコルスタックの実装を行い標準化している。さらに、一国一事業者というスキームを導入しており、日本では、KCCSが事業展開している。このビジネススキームは、携帯電話のそれと同じであり、Sigfoxのユーザは、端末だけ契約し、購入することでサービスエリア内での通信が可能となる。

IEEE802.15.4kとは

アンライセンスドLPWA無線方式には前述のLoRaWAN、Sigfoxのほかに、IEEE802.15.4kという方式も存在する。無線家の間では素性の優れたLPWA無線方式として知られるものである。その主要因は、長距離化手法として、Direct Sequence Spectrum Spreading(DSSS)を用いていることである。このDSSSを採用することにより、IEEE802.15.4k無線は、高い妨害波耐性を獲得している。

図2:DSSSの妨害波耐性の解説
図2:DSSSの妨害波耐性の解説

図2はDSSSを用いた送受信が、同一システムの妨害波と他システムの妨害波とでどのように区別されるかを模式的に説明している。まず、左列はIEEE802.15.4kの基本的な動作を示す。送信側で、元信号に特定のノイズコード(拡散信号)を掛け合わせることにより、ノイズレベルにスペクトル拡散され、ノイズ化(拡散)した伝搬信号を作成する。この伝搬信号を受信側で受信する際に、拡散時と同じ拡散信号で、再度掛け合わせる(逆拡散)ことにより、ノイズ化された伝搬信号を元信号に復元できる。

一方、拡散と逆拡散で異なるノイズコードを使用した例を中央列に示す。ここでは送信側の拡散信号を変えて伝搬信号作成し、受信側で前述(左列)と同じ拡散信号で逆拡散するが、伝搬信号は復元されずノイズとして認識される。つまり、同一システムからの妨害波を受信しても、ノイズ化に使用した拡散信号と復元に使用する拡散信号が異なるため、きちんと妨害波ノイズとして処理されることとなる。

また、右列は、異なる無線システムからの妨害波の例として元信号をそのまま伝搬した場合を示す。伝搬信号はDSSS無線システムの受信側で、拡散信号を掛けるため、拡散されノイズ化される。この様に、DSSSを用いると、同一システムの妨害波だけでなく、他システム妨害波に対しての耐性を獲得できる。

Dual-LPWAの取り組み

以上の様な前提で、理想のLPWAネットワーク階層構造について、考えてみたい。安定・安心なNB-IoTだけで構成すると、端末もランニング費もコストがかさむ。そこで、基幹ネットワークと末端ネットワークとで様々な仕様のLPWAを組み合わせるというコンセプトを提案したい。

図3:理想のLPWAネットワーク階層構造
図3:理想のLPWAネットワーク階層構造

図3のように、理想のLPWAネットワークは、ライセンスドLPWAとアンライセンスドLPWAの組み合わせや、公衆ネットワークと自営ネットワークの組み合わせで実現できる。前者は基幹にNB-IoT、末端にアンライセンスドLPWAを使用するものである。また、後者の公衆と自営の組み合わせであるが、前述の表2にも記載したが、アンライセンスドLPWAにも、公衆ネットワークが実現されている。これがSigfoxである。よって、基幹から末端までのネットワークがアンライセンスドLPWAのみで、構成可能となることになる。これは、NB-IoTの安定・安心という特長は享受できないものの、安価かつネーションワイドな通信ネットワークとなりうるのである。

これを実現するためには、Sigfoxを含む2方式のアンライセンスドLPWAデバイスがあればよい。それを実現したのが、図4に示すラピスセミコンダクタ製無線通信LSI「ML7404」である。これは、SigfoxとIEEE802.15.4kを搭載し、業界初Dual-LPWA無線トランシーバとして、図3の通信ネットワークをアンライセンスドLPWAで実現できる。

図4:IoT向けDual-LPWA無線通信LSIの概要
図4:IoT向けDual-LPWA無線通信LSIの概要

今後の取り組み

ラピスセミコンダクタは今後も、Dual-LPWA無線通信LSIによるお客様のLPWA導入をサポートすべく、制御CPUやプロトコルスタックを整備したリファレンス・デザインのリリースや、モジュールベンダ、プロトコルスタックベンダとの協業を強化し、通信システムとして提案可能なソリューションの開発、提供に注力していく。