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【掲載記事】自動車用部品技術特集
コネクティッドカーに向けたロームグループの取り組み

自動車用部品技術特集
コネクティッドカーに向けた
ロームグループの取り組み

2017年4月20日号

1. 背景

車業界は完全自動運転に向けて、突き進んでいる状況である。
日本だけ見ても、新車において高級車のみならず一般車や軽自動車に至るまで自動ブレーキシステム等のADAS (Advanced driver assistance system) 機能が搭載されており、認知度も非常に高く、身近なモノとなってきている。ロームもADAS向けに電源LSIを中心に製品を供給している。 (図1)
ただし、完全自動運転を実現するにはまだまだ様々な技術の革新が必要である。今回はその一つの重要な要素であるコネクティッドカー、特に車の無線通信に対し記載する。
車が無線技術で様々なモノとつながってきた経緯も振り返る事で、これから起き得るであろう動きを予測していく。
合わせて、導入の起因が快適性を求めたものか、法規制化に伴うものかに分けることでそれぞれの機能の導入理由や現状を把握していく。

package
図1: 車載のメイン分野であるADAS

2. 従来のコネクティッド (車内での通信)

従来の車室内には様々な無線機能が搭載されている。
スマートキーやFMトランスミッターが快適性の為に搭載されてきた。
最近では無線LANやBlueToothがカーナビやカーオーディオに搭載され、スマートフォンと接続することで、Internet上にあるコンテンツを車室内で楽しむ事ができる。
一方法規制で搭載されたものは厳密には車室内ではないがTPMS (Tire Pressure Monitoring System) があり、タイヤの空気圧が減った際、運転者に知らせる機能がアメリカで法規制により導入され、ヨーロッパ、韓国にも展開されている。
車業界で法規制と無線通信が組み合わさった初の例となる。
導入当初は4つのタイヤ内の気圧を直接モニターし、無線で情報を転送していた。現在は低コスト化を実現するために間接モニタータイプも存在し、車体のバランスをチェックする事で空気圧のチェックをする方式もある。ただし、複数のタイヤの空気圧が低い時や、ある程度のスピードが出ないとモニターできないと言った欠点も存在する。 (特に駐停車時にモニターできない欠点が大きい)
いずれにしても、何かしらの方法でタイヤの空気圧をモニターする機能がアメリカやヨーロッパ、韓国の新車には必須な機能となっている。

3. 従来のコネクティッド (車外との通信)

従来の車にはETCやVICS (図2)、TV、GPS等の基本受信機能を前提とした通信機能が搭載されてきた。これらの機能で運転者や同乗者は車での快適性を手に入れてきた。
ロームグループであるラピスセミコンダクタではETCやVICS、TVのデジタル放送受信用のLSIを開発しており、市場にて採用されている。
またロームではそれらの周辺に必要な電源LSIや汎用LSI、ディスクリート、受動部品等を供給し、それらの機能が安定した動作ができるように貢献してきた。
法規制に伴い安全のために導入されたコネクティッドも存在する。
それは今年1月からロシアでスタートしたERA-Glonass (ロシア版のeCallと呼ばれている) である。この機能は事故発生時、エアバックと連動し、救急情報と位置情報を通信機能で緊急対応機関 (日本で言う消防署に当たる機関) に連絡し、救急車の到着時間を短縮するための機能である。この機能は2018年4月からヨーロッパでも導入される予定であり、新車への搭載が義務付けられる。この機能が搭載される事で、特に寒冷地での事故の二次災害 (事故で暖房が利かなくなった際の凍傷など) を防ぐ事ができる。

VICS用LSIブロック図
図2: VICS用LSIブロック図

4. これからのコネクティッド

V2X (Vehicle to Everything) と呼ばれる車と様々なものとの通信が今後のメインテーマとなる。 (図3)

V2Xとは
図3: V2Xとは

最近良く話題となっているモノのインターネット (IoT:Internet of Things) の車版とも言える。
これは自動車業界と通信業界がタッグを組むという今までにない大きな変化となる。
元となる技術は約10年前からDSRC (Dedicated Short Range Communication) と呼ばれる通信方式にて車業界と交通インフラ業界が中心となって車車間や路車間通信の実証実験を世界各地で行ってきた。
当初は交通事故撲滅に向けて、安全のための様々な機能が搭載予定であった。
車と車通信例:見通しの悪い交差点で、お互いどこから車が来るのかわかる。
車と路面通信例:信号の変化を伝え、減速を促す。
通信規格も世界中共通で対応できるよう、無線LAN (Wi-Fi) を基準としたDSRC専用のIEEE802.11pと呼ばれる規格を作り上げた。
本来であれば、2016年末にアメリカで法規制化され、新車への搭載義務がスタートする予定であった。
延期となった背景には諸説あるが、自動運転へ向けた動きが加速しており、この通信と自動運転との関係性が強すぎたためだと思われる。また、最近問題となっているハッキングに対する脆弱性への対策がまだ追いついていなのも理由の一つであると思われる。
確かに自動運転の為のセンサ‐はADAS (Advanced Driving Assistance System) と呼ばれるCMOSセンサ‐やミリ波、レーザーや超音波センサなど多種あるが、完全自動運転を実現するためには一つでも多くの情報源が必要となり、車車間や路車間の情報も重要な情報の一つであるのは明白である。
また、車の通信に対するハッキングに対しても強固な堅牢性を実現しなければ、操舵系に直接つながる完全自動運転では致命的な事故につながる恐れがある。
そういった理由からV2Xをスタートできなかったと思われる。

車業界は完全自動運転に向けて突き進んでおり、コアとなる技術はADAS (Advanced Driver Assistance System) とAI (Artificial Intelligence) となる。ADAS、特にAIにはV2Xを介した情報も学習の為に必要だと思われる。
例えば交通事故発生時、事故車より、事故直前の映像、事故車と周辺インフラとの路車間情報、事故車周辺の車からの車車間情報、ADAS関連機器の情報等を即時に入手できれば、まずは世界中に情報展開でき、事故への注意喚起ができる。更にこの情報がAIへの貴重な情報源となり、対策案が練られ、全車へ展開されれば安全な完全自動運転につなげる事ができる。
ロームはこのV2X用に最適な電源LSIを各種用意している。
車載対応スイッチング電源「BD9SXXX-Cシリーズ」は0.6A-6.0Aまでを2㎜角、3㎜角、4㎜角にて対応しており、V2X用の小型モジュールを作るのに最適である。 (図4)

Power FET
(Hside/Lside)
Pch/Nch Pch/Nch Nch/Nch Nch/Nch
freq. (max) 2.4MHz 2.2MHz 2.2MHz 2.2MHz
Switching Adjustable
External sync.
- External sync. External sync.
Package QFN 4mm×4mm SON 2mm×2mm QFN 3mm×3mm QFN 4mm×4mm
Output
Channel
0.6A - BD9S000NUX - -
1A - BD9S100NUX - -
2A BD90521EFV
BD90521MUV
- BD9S200MUF -
3A - - BD9S300MUF -
4A BD90541MUV - BD9S400MUF -
6A - - - BD9S600MUF
新規V2X、車載Wi-Fi等に最適な電源です
図4: セカンダリ スイッチングレギュレータ ラインアップ

車載用に必須な高温対応 (動作温度 -40-125°C) やAM帯域をはずしたスイッチング周波数である2MHzを実現し、周辺部品のコイルやコンデンサを小型化できるのが大きな特徴である。
また、多電源化に対応できるよう、車載対応LDOも多数用意している。特にモジュール用に最適な超小型1㎜角「BUXXJA2MNVX-Cシリーズ」も用意し、 (図5) 様々な電源構成要求に対応できるようにしている。

SSON004R1010
図5: 車載対応LDO「BUxxJA2MNVX-C シリーズ」

ロームはこれからコネクティッドカーにどんどん導入されるであろう無線関連製品に対して、電源系LSIからディスクリートまで、様々な提案を進めていくために、5GAA (Automotive Association) と言う団体に参画した。(2017年5月15日現在)この団体はCelluler-V2Xという規格を立ち上げ、世界に展開するために通信業界と車業界が初めてタッグを組んだ団体である。通信業界は5G導入へ向けて、車業界は自動運転に向けて一緒になって進めていこうという団体で、昨年9月に立ち上げた団体である。 (図6)

5GAA (Automotive Association)
図6: 5GAA (Automotive Association)

ロームとしてはこの団体に参画した事で、CSVとして掲げる3つのECO (Eco Earth, Eco Energy, Eco Life) を実現していきたい。具体的には、これから大量に作られるであろう車の自動運転関連製品や5G通信に関わる製品に製造技術や回路技術を結集して実現した小型製品や高効率製品を供給していくことでECOにつなげていく。
通信機能や自動運転を進めるためには、電子回路が増え、ますます省エネ化・小型化が要求される。
そのために開発した2つの電源先行技術について簡単に紹介する。
一つ目はNano Pulse Control® である。この技術はスイッチング電源において極細パルス (50ns以下) を生成できる技術である。従来の100ns程度から大幅にダウンしたことにより、より高周波数化が実現でき、電源部の大半を占めるコイルやコンデンサを最小化できる技術である。これにより製品の小型化を実現できる回路技術となる。
二つ目はNano Energy® である。この技術は回路電流を極限まで減らしつつ、電源の特性を大きく落とさない回路技術である。この技術を各電源製品に搭載していく事で低消費を実現し、高効率な電源を低待機時電力で供給し、起動時間を短く、無駄な電力を消費しない製品につなげていく。
Celluer-V2Xが導入される時期は明確にはなっていないが、ロームは今後も可能な限り迅速に最適な製品を供給できるように開発を進め、導入初期の段階より貢献できるよう努めていく。