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拡大するロームのパワーデバイスソリューション

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パワーデバイスと電源技術特集
拡大するロームの
パワーデバイスソリューション

2016年11月10日号

1. はじめに

半導体パワーデバイスは、我々の生活における様々な機器に応用されている。これら機器の更なる省エネルギー化を実現するために、パワーデバイスの技術動向は大いに注目されている。
ロームでは、個別半導体、LSIの開発・製造により培われた技術を発展し、パワーデバイス関連製品の展開を事業の柱の一つとして注力している。シリコン半導体材料をベースとした高性能IGBTデバイスの製品開発・展開はもちろん、画期的な特性を有したSiC (シリコンカーバイト) 半導体を用いたパワーデバイス製品も展開している。加えて総合半導体メーカーとして、制御ICやパワーデバイスとICを複合化したインテリジェントパワーモジュール製品の展開も実現している。以下に、ロームの最新パワーデバイスソリューションを紹介する。

2. シリコンカーバイト半導体パワーデバイス

SiCパワーデバイス (ケイ素と炭素からなる化合物半導体、炭化ケイ素「シリコンカーバイド」を材料とするパワー半導体) の先進性とすぐれた性能に注目し、長年の研究を経て、ロームは2010年よりショットキーバリアダイオード、MOSFET製品、2012年よりフルSiCパワーモジュール製品を量産開始することで業界をリードしてきた。現在、これらSiCパワーデバイス製品は、産業機器をはじめとし、車載、民生機器など様々なアプリケーションにおいて採用され、その有効性を発揮し省エネルギー化を実現している。

① SiCショットキーバリアダイオード

SiCショットキーバリアダイオード (以下、SBD) は、低いスイッチング損失、順方向電圧特性を有し、高効率電源機器・太陽光パワーコンディショナなどで多く使用されているデバイスである。ロームは、AEC-Q101に準拠した車載向けディスクリート製品も2012年より製品展開しており、近年、需要が急増している電気自動車・プラグインハイブリット自動車の車載充電回路へ多数のメーカーから採用されている。
加えてロームでは、2016年4月より、第3世代SiCショットキーバリアダイオード製品をリリースした。SiC SBDの特長である低スイッチング損失を維持したまま、更なる高温時の低順方向電圧、低リーク電流特性の実現 (図1)、及びサージ電流への耐量を高めることに成功した (図2)。変換効率向上への貢献はもちろんで、パワーデバイス自体の電流耐量向上により、アプリケーション上で使用される際の「信頼性」も製品価値として求められていることに応えるデバイスである。650V耐圧 2A~10A仕様の製品を既にリリースしており、サーバー・PC等の高効率電源PFC回路内の整流ダイオードとして広く採用が進んでいる。年末から、来年にかけ、大電流仕様、1200V耐圧製品への展開を進めていく予定である。

各世代SiC SBDの順方向電圧、リーク電流特性比較
図1 各世代SiC SBDの順方向電圧、リーク電流特性比較
順方向電圧特性とサージ電流耐量の相関グラフ
図2 順方向電圧特性とサージ電流耐量の相関グラフ

② SiC MOSFET

1000Vを超える電圧耐量を持ったスイッチングデバイスにおいて、SiC材料を用いたMOSFET製品は、主流であるIGBT製品と比較し、スイッチング損失低減において、優位性を確保したデバイスである (図3)。加えてロームでは、2015年より世界で初めてトレンチゲート構造を採用した製品の開発に成功し、より低導通損失 (オン抵抗) に貢献する製品リリースをしている。現在、650V、1200V耐圧製品を展開している。

Si IGBTとSiC MOSFETのスイッチング損失比較
図3 Si IGBTとSiC MOSFETのスイッチング損失比較

さらに、1700V耐圧のSiC-MOSFETを昨年より製品展開しており、総合半導体メーカーとしての強みを活かし、制御用ICと組み合わせた提案を実施し、産業機器向けに採用が進んでいる (図4)。

1700V SiC MOSFET製品と制御ICのソリューション提案
図4 1700V SiC MOSFET製品と制御ICのソリューション提案

1500V以上の耐電圧性能を有したデバイスにおいて、シリコン材料のデバイスと比較し、SiC材料デバイスを採用することで大きなメリットを得られる。パワーデバイスを使用した際の導通損失に関わる物性値を表すパラメータとして、規格化オン抵抗 (デバイス単位面積あたりのMOSFET駆動時における抵抗値、低いほど良い) の値を用いた場合、シリコン材料と比較し、SiC材料を用いたことで約100分の1の値を有したデバイスを実現している (図5)。性能が良い分、高価な製品というイメージが強かったSiCパワーデバイスにおいても、これほどの性能差を実現できたことで、チップサイズを大きく低減する事ができ、さらにシステムにおいても高効率化の恩恵としてヒートシンクの小型化実現などにより、全体コスト低減に貢献できる可能性が大きくなったことで主に産業機器向けの補機電源用途で採用が加速的に進んでいる。

1500V耐圧におけるSi MOSFET とSiC MOSFETの規格化オン抵抗の比較
図5 1500V耐圧におけるSi MOSFET とSiC MOSFETの規格化オン抵抗の比較

③ フルSiCパワーモジュール

フルSiCパワーモジュールとは上記で紹介したSiCショットキーバリアダイオード、MOSFETデバイスを使用したパワーモジュール製品である。同等定格電流のIGBTモジュール製品と比較し、大幅なスイッチング損失の低減を可能とした製品であり、アプリケーションにおける高周波動作を低損失で実現可能 (図6) であることにより冷却機構や周辺部品の小型化といったメリットを発揮できる。

同等電流定格のSi IGBTモジュールとSiCモジュールを比較した損失シミュレーション結果
図6 同等電流定格のSi IGBTモジュールとSiCモジュールを比較した損失シミュレーション結果

これまで、ハーフブリッジ内部回路構成をもった製品展開を実施してきた中でもチョッパタイプの製品展開を拡大している (図7)。様々なアプリケーションにおいて、より選びやすい製品展開を図っている。

フルSiCパワーモジュールのパッケージ外観と内部回路構成
図7 フルSiCパワーモジュールのパッケージ外観と内部回路構成

3. シリコン半導体パワーデバイス

ロームは総合半導体メーカーとしてシリコン材料をベースとした製品展開も充実している。IGBT製品、及び駆動ICも組み合わせたインテリジェントパワーモジュール製品を今回紹介する。ロームは先進的なSiC製品のみならず、既存のシリコン半導体パワーデバイス事業においても注力しており、パワーデバイスソリューションの充実を図っている。

① 第3世代IGBT (絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)

2009年より高破壊耐量を特徴とした第1世代IGBTデバイスを展開し、現在は車載イグニッション用途で2輪車・4輪車向けにロームのIGBTデバイスは多く採用されている。2014年からの第2世代IGBTデバイスの汎用展開により、家電、産業機器 (太陽光、汎用モータなど) 向けに採用が進んでいる中で、2016年末より順次、第3世代IGBTデバイスのリリースを計画しており、今回一部製品を紹介する。
太陽光、UPS、溶接機などのインバータ回路向けに、従来の第2世代IGBTデバイスと比較し、低VCE (sat) (低導通損失)、高速スイッチング特性を実現したRGTVシリーズのリリースを計画している。RGTVシリーズは、高温時のVCE(sat)が9%、スイッチングオフ時の損失が11%低減を実現したデバイスである (図8)。650V耐圧、30A~80A(Tc=100°C時) 製品を年末より順次展開を計画している。

第3世代IGBT (RGTVシリーズ) と第2世代IGBT (RGTHシリーズ) の比較
図8 第3世代IGBT (RGTVシリーズ) と第2世代IGBT (RGTHシリーズ) の比較

② インテリジェントパワーモジュール (IPM)

機器の省エネルギー化を実現するため、インバータ回路の採用は家電 (エアコン等) で進んでいる。その中で、インバータ駆動を実現するために用いられているパワーデバイス製品として、多くのメーカーでインテリジェントパワーモジュール (以下、IPM) が使用されている。ロームでは、エアコン等で要求される省エネ化を実現すべく、IGBTを用いた600V、10A、及び15A仕様のIGBT-IPM製品のみならず、高速ボディダイオード仕様のMOSFET (PrestoMOS™) を用いた600V 15A仕様のMOS-IPM製品を展開している(図9)。

インテリジェントパワーモジュール製品の外観
図9 インテリジェントパワーモジュール製品の外観

また、これらIPM製品は家電のみならず、産業機器向けモータ製品でも使用されている。今回、新たにラインアップした600V、30A仕様IGBT-IPM製品においては、ソフトリカバリFRDデバイスを採用しており、アプリケーション上におけるノイズ性能面でのメリットが期待できる。加えて、内部ICのおける熱検知によって動作シャットダウンする機能 (サーマルシャットダウン) を搭載した製品のみ展開していたが、温度モニタ機能を有した製品展開を2017年初めに予定しており、お客様における製品選択の自由度が増している。

4. 最後に

総合半導体メーカーとして、シリコン・シリコンカーバイト半導体パワーデバイスの充実を図るとともに、最適な駆動用ICやそれらを組み合わせたインテリジェントパワーモジュール製品の展開を実現することで、アプリケーションの省エネルギー化を実現していく。今後もロームは、省エネルギー化で社会に貢献していくデバイス開発を進めていく。