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ロームが世界で初めてSiCトランジスタ(DMOSFET)の量産を開始!
画期的な低オン抵抗と高速動作を両立

発表日:2010-12-21


半導体メーカーのローム株式会社(本社:京都市)はこのほど、低損失・高耐圧で次世代のパワーデバイス材料として期待されている SiC(シリコンカーバイド:炭化珪素)を使用したDMOSFETの開発を完了、量産を開始しました。 この新製品は、SiC結晶欠陥による信頼性の課題や高温プロセスに起因した特性バラツキなど、SiC製トランジスタの量産化に向けての 障害となっていた問題点を、独自のプロセス技術とスクリーニング法の開発によりすべて解決、量産化に成功したもので、 エアコン、太陽電池、産業機器などで電力変換を行うインバータ、コンバータ向けをはじめ、幅広い応用が可能です。

この新製品は、2010年12月からカスタム品として量産・出荷を開始いたしました。 また、2011年夏には汎用品としての出荷を計画しており、その後1年ほどかけて耐圧600Vから1200V、電流5Aから20Aの範囲で ラインアップを拡大していく予定です。生産拠点は、ウエハ製造はサイクリスタル社(ドイツ・エルランゲン市)、 前工程がローム・アポロデバイス株式会社(福岡県)、後工程がROHM Integrated Systems (Thailand) Co., Ltd.(タイ)となっております。

近年、パワーエレクトロニクスの分野では、電力変換時に半導体デバイスで消費される損失が問題となっており、 エコロジーの観点からもさらなる低損失化を目指してシリコンよりも材料物性に優れたSiCによるパワーデバイスの研究開発が進んでいます。 こうした流れを先取りしてロームでは2004年にSiCを用いたMOSFETの試作に成功、その後スイッチング素子、 整流素子を全てSiCデバイスで構成したパワーモジュールの試作に成功するなど、業界に先駆けてSiC デバイス/モジュールの研究開発を進めてまいりました。2010年4月には日本で初めてSiC製SBD(ショットキーバリアダイオード)の 量産化に成功、その後も大電流化に向けて製品ラインアップの拡充を進めています。 また、高品質SiCウエハの確保のため、ドイツ・サイクリスタル社を買収し、SiCデバイスの一貫生産体制の確立に取り組んできました。

今回量産を開始した新製品は、耐圧600Vでオン抵抗が0.4Ωと同耐圧・同チップサイズのシリコンのDMOSFETと比較して10分の1以下の低オン抵抗を実現しました。 またスイッチング時間をオン抵抗の低いシリコンのIGBTと比較して約5分の1以下に短縮、これまでシリコンのデバイスでは実現できなかった 高速と低オン抵抗を同時に実現しました。これにより、インバータ、コンバータなどに採用した場合、損失の大幅な低減だけでなく、 高周波化に伴い周辺部品の小型化が可能なことから、実装面積の縮小や周辺部品のコストダウンも実現できます。 加えて、シリコン製のトランジスタと比較して、高温時の抵抗上昇が極めて少ないため、高出力時の導通損失が小さいという点でも 大きな優位性があります。現在販売中のSiC-SBDと組み合わせて電源回路を構成することで、より低消費電力で小型なシステムの開発に貢献できます。

量産化にあたっては、長年世界中のメーカーで品質改善の取り組みがされてきましたが、特にトランジスタでは多くの課題があり、 量産化には至っていませんでした。ロームでは、独自の電界緩和構造の開発や、独自のスクリーニング法を開発することで信頼性を確保、 また、SiC特有の1700℃に及ぶ高温プロセスでの特性劣化を抑制する技術などを開発し、世界で初のSiCトランジスタ(DMOSFET)量産体制を確立することができました。

ロームでは、SiCデバイス事業を次世代半導体事業の中核技術の一つとして位置付けており、DMOSFETやSBDのさらなる高耐圧化、 大電流化製品のラインアップの強化のほか、トレンチ構造MOSFETやSiCデバイスを搭載したIPM(インテリジェント・パワー・モジュール)など SiC関連製品のラインアップ拡充、量産化を進めてまいります。
 

SiCトランジスタの特長

  • 小型・低オン抵抗
  • 高温でのオン抵抗上昇が小さい
  • 高速スイッチング
  • 高耐圧

 

SiとSiCのMOSFETの特性比較

ターンオフ特性 オン抵抗の温度特性

 

 

用語説明

  1. SiC(シリコンカーバイド:炭化珪素)
    バンドギャップがシリコンの約3倍で、絶縁破壊電界が約10倍、熱伝導率が約3倍という優れた物性値を持つ化合物半導体であり、 これらの特性がパワーデバイス応用と高温動作に適している。
  2. DMOSFET(Double-Diffusion Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistorの略)
    [二重拡散 金属-酸化膜-半導体 電界効果トランジスタ]
    大電流、高耐圧を要求されるスイッチングデバイスに適したパワーデバイス構造。
  3. Super Junction MOSFET
    3次元的な空乏層の広がりを利用して従来よりも低損失化を実現したパワーMOSFET。
  4. IGBT (Insulated Gate Bipolar Transistorの略)
    [絶縁ゲートバイポーラトランジスタ]
    電子だけでなく正孔によっても電流が流れることにより低オン抵抗を実現しているパワートランジスタ。
    しかしながら注入された正孔の蓄積時間のために高速での動作が不可能で、スイッチング損失が大きいという問題がある。
  5. SBD(Schottky Barrier Diodeの略)
    [ショットキーバリアダイオード]
    金属と半導体を接触させることでショットキー接合が形成され、整流性(ダイオード特性)が得られることを利用したダイオード。 少数キャリア蓄積効果が無く高速性に優れているという特徴を持つ。
  6. オン抵抗
    パワー素子の動作時の抵抗値。パワーMOSFETの性能を左右する最も重要なパラメータで、値が小さいほうが高性能である。
  7. パワーエレクトロニクス
    電力(パワー)を半導体デバイス(エレクトロニクス)を用いて都合の良い形態に変換し、自由に制御する技術。
    家庭用の電気製品から、産業、鉄道、電力などのシステムに適用されており、現代の生活に無くてはならない存在である。
    (正田英介 楠本一幸 「パワーエレクトロニクス」 オーム社)

 

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