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常に前進するロームと自動車産業の革命

07/04/2017

近年の自動車産業の進化には目を見張るものがあります。2017年5月、車のバッテリーからインホイールモーターへ電力のワイヤレス伝送が成功しました。最新の画期的な技術革新により、車は送電コイルが埋め込まれた充電レーンを走行中に、充電できるようになります。最終的に、大容量バッテリーが必要なくなることが、電気自動車普及の重要なステップになると専門家は話しています。

近年の自動車産業の進化は目を見張るものがありますが、それは決して新しいものではありません。自動車は、発明以来、安全性、快適性そして環境性能の要求に応えながら開発されてきました。日々進化し続ける自動車に対し、ロームは10年以上前から製品を提供してきました。

日本の京都で創業した同社は、日系企業として初めてカリフォルニア州シリコンバレーに進出した半導体メーカーです。今では、アメリカを含め、4つの大陸、22か国に進出しています。その高性能ICとパワーデバイスは、自動車産業の電子化の動きに無くてはならないものです。

今回、同社の車載戦略部ボディ&パワートレイン課長の坂井善治氏に、これまでの取り組みと今後、市場の変化にどう対応していくのか話を聞きました。
 


「2017年3月31日現在、ロームの純売上高の31%を占めているのは車載部門です。車載売上高の58%が車のインフォテイメント系、20%がパワートレイン系、14%がボディ系、3%がADAS、そして残りの5%がその他の構成です。今後は環境対応車(xEV)、先進運転支援システム(ADAS)関連の売上増加を見込んでいます。」

製造の品質管理部門に10年勤務した坂井氏は、ロームの高い品質と技術革新によって自動車分野で成功することができると考えています。

自動車業界で求められる優れた品質と安定した供給を保証するために、ロームの特徴の1つである垂直統合型生産体制は要となっています。同社では、シリコンインゴット引き上げからフォトマスク製造、ウエハ加工、リードフレーム成形、パッケージングまで、すべての製造段階が完全に内製化されています。

「他企業はテスト工程やパッケージ工程でアウトソーシングを進めているところもありますが、我々はトレーサビリティの観点から行っていません。 当社の垂直統合型生産体制は、車載部品のための最高の製造システムであり、お客様のニーズに柔軟かつ正確に対応します。」(坂井氏)

また、半導体メーカーでありながら、自動車メーカーと直接やりとりする大切さも、坂井氏がロームでのキャリアの中で学んだ大変重要なものの1つです。坂井氏によると、最近ではSiCデバイスの高い競争力をきっかけに、自動車メーカーと直接コミュニケーションをとることが増え、その幅広い商品力をアピールしているそうです。

自動車メーカーとのコミュニケーションは日本国内には留まりません。ロームにとって、グローバルな取り組みはそのDNAの一部にしかすぎません。というのも、同社では、2017年3月31日現在、従業員の74%が海外拠点で働いているのです。坂井氏も、韓国のデザインセンターで4年間勤務した経験が、グローバル化し続けている自動車業界に対応するため、非常に貴重だったと言います。
 


「私は異文化とはどういうものかを理解することができました」と坂井氏は韓国での経験について語っています。「(韓国では)製品に関する判断はその場ですぐ行うなど、意思決定は迅速でした。また、製品だけの提案でなく、お客様のセットでのメリットをふまえた提案が必要だと痛感しました。グローバルでビジネスの成果を最大化する為のさまざまな取り組みを学ぶには、最高のタイミングだったと思います。」(坂井氏)

自動車業界では、環境への影響を減らすことが優先事項のひとつに位置づけられています。ガソリン車からハイブリッド車および電気自動車への移行において、エレクトロニクスは、ますます重要な役割を果たしています。より広い意味で、半導体電子部品の進化は電力消費を減らすためにも不可欠となっていくことは間違いありません。

こうした中、ロームが製造している炭化ケイ素パワーデバイス(SiC)は、非常に特徴的な製品です。SiCは、シリコンと炭素を組み合わせた全く新しい革新的な素材です。低オン抵抗や高温度環境下での動作において優れた特性を持ち、省エネのキーデバイスとして期待の大きい製品です。電気自動車においても、オンボードチャージャーはもちろんのこと、高効率なDC/DCコンバータやインバータにも理想的です。

2016年10月、同社は電気自動車のF1といわれるフォーミュラE選手権のレーシングチーム、Venturiのオフィシャル・テクノロジー・パートナーになりました。ここでインバータユニットにロームのSiCパワーデバイスが採用され、電力変換のロスを少なくしたことで、放熱系の小型・軽量化を実現でき、インバータを約30%軽量化させました。こうした最先端技術が活用されるフォーミュラEは電気自動車への関心を高め、自動車産業のさらなる発展を促しています。

また、環境だけでなく、安全面にも配慮されています。最近では、ADASにも注目が集まっており、色々な課題はあるにせよ、SF映画のような自動運転車が現実のものになる日はそう遠くないと坂井氏はその可能性も見据えています。

「アクセルとブレーキの踏み間違えによる交通事故が増えるなど、世界的に事故防止に対するニーズはまだまだ多いと感じます。自動車に求められる「安全・環境・快適」に対し、私たちの製品の進化はこの目標を達成する方法であると信じています。」(坂井氏)

ロームの高解像度ディスプレイ向けの車載チップセットは、ADAS市場のニーズを満たしています。近年、クラスター(インパネ)やカーナビ、電子ミラーなどの液晶パネル化が急激に進んでおり、用途の拡大に伴いパネルの大型化・高精細化に対する要望も大きくなっています。同社が開発したチップセットは、世界で初めて、液晶パネル向けデバイスだけで機能安全に対応しています。万が一、電子システムの故障などにより不具合が起こった際も、運転者は異常をすぐに認識できるため、自動車の安心・安全に貢献できます。
 


同社はその先駆的な技術の創出と製造において、次々と業界初の製品を開発しています。お客様への提案のために、幅広いラインアップを持っている点もロームの強みのひとつと言えるでしょう。このように急速に進化している自動車市場をリードするためには、技術革新を通じて社会のニーズを引き続き満たすことが重要になってきます。

さらに、坂井氏と彼のチームは、インホイールモーターにワイヤレス給電技術を使用するだけでなく、車と道路、あるいは車同士が通信する未来がくると予測しています。ワイヤレス通信技術により、車は道路や橋の状態や渋滞状況、他の車の位置さえ確認することが可能になっていくそうです。

「安全・環境・快適をキーワードに、自動車が大きく変化していきます。私の個人的な夢は、その変化をいち早く捉えた製品の企画で、自動車産業の発展に貢献することです」と坂井氏は言います。発展する自動車産業において、情熱あふれ、未来志向の従業員達は、ロームさらなる高みへと導いていくことでしょう。