常識破りのモンスター
SiCに男泣き!
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漫画 見ル野栄司のロームに男泣き!

見ル野氏を男泣きさせたロームのシブすぎ技術とは? 見ル野栄司氏がローム・アポロ株式会社筑後工場を訪問。
工場見学の後、案内役を務めた奥村啓樹技術員と対談を行った。

近い将来、SiC製品が世の中を劇的に変える

ロームが半導体で有名なのは知っていましたが、
今はパワーデバイス、LSIシナジー、LED、センサと多岐にわたっているのですね。

ええ。
この4つの分野を成長エンジンに掲げて挑戦を続けていますが、
なかでも期待されているのが、SiCが属するパワーデバイス分野です。

先日、京都本社にうかがい、ロームのトランジスタを見せてもらいましたが、
砂粒みたいに小さくて驚きました。
どうやって作っているのか、本当に不思議です。
ところでSiCというのは、
シリコンとカーバイドがまざったものという認識で合っていますか?

従来の半導体材料であるシリコンにカーボン(炭素)を
1対1で共有結合させて誕生した新しい材料です。
大電流・高電圧に強いというのが最大の特長ですが、
日本のパワーデバイスが全部SiCに切り替わると
原発5基がなくなるといわれるくらいのインパクトがあります。
SiCを使うことで、今までロスしていたエネルギーが有効利用できるようになり、
近い将来、世の中は劇的に変わると思います。

さっき、SiC MOSFETを見せていただき
こんな小さなものに1200V・35Aも流せるのかと興奮しすぎて、
イスから転げ落ちてしまいました。
世界初のSiC MOSFETの開発と量産化にたどり着くまでには
相当な苦労があったと思います。
最初はどんな研究から始められたのですか?

入社した年にアメリカにいき、
アーカンソー大学で高温でも動かせるモジュールの共同開発に取り組みました。
低温でデバイスを接着して高温でも保つ新しいハンダ接合の技術を開発し、
賞も受賞させていただきました。

データをとったり、何度も試作したり、
地味な作業もあったでしょう?

量産化に向けて信頼性試験をかけると壊れる。
壊れたサンプルを解析して、デバイスやプロセスを再設計して、
同じ試験にかけたら今度は違うところがこわれる。
その繰り返しを経て、実用に耐えるデバイスを作るプロセスが一番大変でした。

世界初の開発・量産化に感じる喜びとプライド

SiC MOSFETの初量産の時はどうでしたか?

シリコンと違ってSiCには前例がないので、
過去の前例・経験がまるで使えない。
原理原則に立ち戻り、考えて考えて考え抜いて、
これまでのシリコンにはない構造やプロセスを提案して具現化しました。
前例のない初の挑戦で、
これまでにないことをやっているというのは苦しいけれど楽しかったですね。
特許レベルのアイデアがかなり入っていますが、
そうでなければ量産はできてなかったと思います。

アイデアはどんな時に浮かぶのですか?

延々と考え続けます。
寝るまでずっと考えて、考えついたものを翌日に試します。
考えている時は苦しいです。夢にも出てきます。
仕事の8割は苦しくて、2割は楽しい。
そうしたなかで私たちは、
他社はまだ製品化できていない世界初の開発・量産化を実現できた。
自分たちにしかできなかったことに非常に喜びを感じますし、
プライドも持っています。

地味な研究を積み重ねて成果を出す。
苦しさの連続だけど、楽しくもある。
そこになんともいえないシブさを感じます。

はい。
後で振り返ると苦しみ抜いた8割さえも楽しいと思えます。
私がデバイスを手がけ始めたのは2009年からですが、
私の入社より先にプロジェクトは始まっていましたので、
会社としては2002年から8年かかっています。
基本的に私たちの仕事はチームプレイなので、
周囲の人をどれだけ巻き込めるかも大事です。
工場の人、元の部署の人、いろんな人に教えてもらいます。
エンジニアだからロジックで動いてくれると思い込み、
3年くらい前まではロジックだけでぶつかっては怒られてを繰り返していました。
今は、どれだけ共感を持ってもらえるかをまず考えます。
「あいつ頑張ってるから」「こんなに一生懸命に頼んでくるんだから」。
そんな共感をどれだけ持ってもらえるかが勝負だと思っています。

電子回路のロジックよりも難しいですか。

全然難しいです。
実は僕、見ル野さんの大ファンで、マンガを読むたびに、
「僕ら、理工系エンジニアの気持ちを代弁してくれている」とうれしくなるんです。
『シブすぎ技術に男泣き!』も好きですが、
主人公に感情移入して読んでしまうのは、『ロッカク』。
エンジニア魂がゆさぶられるというか、
「ある、ある、ある、ある」みたいな感じで共感するんですね。
ロッカクレンチがなまるとか、ネジがなまるとか、実際に作業してたらある話。
そういうところに揺さぶられますね。

マンガではできのよくない主人公がステップアップしていくので、
入社すぐにアメリカにいって活躍しちゃう奥村さんとはまるで違うのですが、
仕事にまっすぐで、ひたむきで、コツコツ努力するところなど、
主人公と奥村さんは似ていますね。
気持ち的な部分で共感してもらえたら嬉しいです。

一貫生産体制の強みを生かして

ところで、SiCデバイスはどんなところで使われるのですか?

大電流・高電圧を扱う送電システム、
電源、電気自動車、ハイブリッドカー、鉄道などです。
電気自動車なら基幹部分のほとんどに使えますし、
大電流でハイパワー、周波数の高い領域で
効率よく作業できる溶接装置なども開発できます。

大きな需要が見込めそうですね。

2010年にSiC MOSFETが量産を開始し、
2012年にはSiC MOSFETとSiC SBD(ショットキーバリアダイオード)の2つを
あわせた"フルSiC"モジュールの量産も開始しました。
どちらも世界初。
量産化の先陣を切っているので、
年率60%、70%で伸びているSiC市場をしっかりとらえることができるはずです。

一貫生産体制もロームの強みですね。

ウエハからモジュールまで一貫生産を実現したのも、
ロームが世界で始めてでした。
一貫生産することで価格は安定し、
品質もグループ会社で保証しているので安心して使っていただいています。
お客様の声を直接聞くのも研究者にとって大切なことなので、
ドイツの学会で講演した時もよく要望を聞きにうかがいました。

研究者が直接、お客様を訪問するのですか?

求める電流値、耐圧値、使いやすい形はお客さんによって違うので、
うまくあうように機種展開を含めて商品戦略を練るのも大事です。
時間をかけて顧客と性能をすりあわせますが、
カスタムしすぎると売れません。
顧客の要望を集めて最小公倍数をめざしながら、
より売れるものを作っていかなければいけないと思っています。

自分で産んで、育てて、巣立つまでを見守る

ところで、これまでたくさんの会社で取材させてもらいましたが、
ロームさんのように、研究開発、商品化、量産化まで
すべてのプロセスを同じ人が担当という体制をとっている会社は
他にはなかったですね。

ロームでは研究開発フェーズから立ち上がった商品は
そうしたプロセスをたどることが多いです。
私も最初は研究開発本部にいて、
共同開発でアメリカへ行って、戻ってきて製造部に行き、
効率よく量産化できるラインを考えるために、
今年3月からはローム・アポロに出向して製造の現場にいます。

研究開発を手がけた人が部署を移って量産に入るというのは、
いいものを作るためにベストな体制だと思います。
途切れてしまうと、量産側が何かあった時に混乱し、ロスもでる。
もし僕が客先の技術者だった場合も、
安心して任せられるので歓迎するな。

私も、自分で産んで、育てて、巣立つまでを
一貫して担当できる体制があるからこそ、
世界初のSiC MOSFETの製品化・量産化に成功し、
世界的にもインパクトの大きい仕事ができているのだと思っています。

理系の人間にとっては夢。だけど実現は難しい。
それを見事に奥村さんがやってのけている。
ひとりで全部作っている感じは、
鉄腕アトムのお茶の水博士みたいで憧れます。

いえいえ。ひとりで全部だなんてとんでもない。
どのプロセスも、プロジェクトの各メンバーが知恵を出し合い、
意見を戦わせ、力を結集して達成していきます。
「革命だよ!オレたちの手で、すげぇもんつくって、世の中ひっくり返してやる!」
と叫ぶ『工場虫』の登場人物たちのように、
アツくて泥臭い世界なんですよ(笑)。

コンパクトでエコなSiC革命が起きる?

また何か新しいものを作りたいとか、
今、考えていることはありますか。

次なる野望はありますよ。
SiCは耐圧が大きければ大きいほどメリットが出るので、
たとえば3.3キロとか4.5キロとか、
もっと高い電圧領域で使えるようにしたいですね。

3.3キロというと電車、その上となると発電所。
発電所や変電所がものすごく小さくなり、
ビルの変圧室はそのうち小さな箱に収まってしまうんでしょうか。
太陽光発電や風力発電などにも大きな影響を与えるでしょうね。
本当にとんでもないモンスターが現れたものです。
ところで、電気自動車や産業機器などでは
もう実用化は始まっているのですか?

引き合いはたくさんいただいていますが実用化はこれからです。
今の電気自動車は冷却しないといけませんが、
SiCならモーターの機構をタイヤに組み込むことも可能です。
まだクリアしないといけない課題はたくさんありますが、
うまくいけば、ちゃんとしたスピートで走行しながら横に動く車など、
車のデザインすら変えてしまう可能性も秘めています。

大きなウエーブが来そうな予感がします。
エネルギー界にも電機業界にも革命ですよ、これは。

プロフィール

理工系漫画家。1971年生まれ。
92年日本工学院専門学校メカトロニクス科卒業。
半導体製造装置やアミューズメントゲーム機などの設計開発の会社に勤務した後、漫画家としてデビュー。
代表作に『東京フローチャート』(小学館)『工場虫』『シブすぎ技術に男泣き!①②③』(中経出版)、
『ロッカク』(アスキー・メディアワークス)ほか。

2007年ローム株式会社入社。
ディスクリート生産本部SiCパワーデバイス製造部技術員。
現在はローム・アポロ株式会社筑後工場に出向。

※掲載内容は2013年時点の情報です。

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