SiCパワー半導体がもたらす産業機器のイノベーション

2011年3月11日に発生した「東日本大震災」とそれに起因した東京電力福島第一原子力発電所の事故により、日本国内の電気エネルギーは化石燃料への依存度が一段と高まった。とくに、化石燃料の海外依存度が90%を超える日本にとって、電気エネルギーの有効活用は喫緊の課題となっている。こうした中、電気エネルギーの有効活用に大きな役割を果たすと期待されるSiCパワー半導体の可能性を言及する技術セミナー「SiCパワー半導体がもたらす産業機器のイノベーション」(日刊工業新聞社主催、ローム特別協賛)が、「国際ロボット展2013」の会期中の2013年11月8日(金)に東京ビッグサイトで行われた。同セミナーには国際ロボット展の来場者を中心に約150人が聴講。SiCパワー半導体の研究開発や商品化の変遷に加え、活用が期待される産業機器分野とその効果・有効性などについての講演に熱心に耳を傾けていた。

SiCパワー半導体がもたらす産業機器のイノベーション

SiCパワー半導体がもたらす電気エネルギーの有効利用 今から約10年前から、人口、食糧、エネルギー・環境、医療・健康が大きな問題になると主張してきた。当時からエネルギーの海外依存度は高く、その80%を輸入に頼っていた。なかでも、電気エネルギーは非常に使いやすいため活用が増えることは必至であり、その有効利用が大きな課題と考え、勝手に"パワーテクノロジー(パワテク)"と名付けた。

現在のパワーデバイスはシリコン(Si)で作られているが、バイポーラトランジスタ(BPT)がスイッチングデバイスとして初めに出た。しかし、高い周波数では応答できないという課題があった。一方、パソコンやモバイルなどのロジックとメモリーで使われるMOS電界効果トランジスタ(MOSFET)はSiの場合、電力容量は高くないが高速でスイッチングできる良さがある。この組み合わせがインシュレーテッド・ゲート・バイポーラトランジスタ(iGBT)で、現在のパワーエレクトロニクスの主役になっている。これがシリコンカーバイド(SiC )MOSFETになると、電力容量がSiのiGBTレベルまでカバーできる一方で、高速動作が可能になるため期待が大きい。

SiCのメリットは、大きなバンドギャップと1ケタ大きな絶縁破壊電界、さらに金属(銅)並みの熱伝導率を持っているところからくる。高速・高温で使えるため、インバーターは高効率で小型化が図れ、冷却も水冷でなくて済むなどが大きなメリットになる。家電製品を例にとると、日本全国で動いているエアコンなどインバーターを使う家電製品では、年間約180億キロワットアワーの電力が無駄になっている。つまり原子力発電所2基分に相当する。高速列車では現在SiのiGBTが使われているが、その段数と同時に損失も減る。ハイブリッド車(HEV)でも高温動作が可能で高効率化が図れ、航続距離の増大というメリットを見いだせる。こうしたことをデバイスが出ていない約10年前に話していた。

ここに至るまでに、1950年代半ばには、米国ではゲルマニウムトランジスタが使われていたが、高温での動作が難しいことが課題であり、高温エレクトロニクスに対する注目が高まった。その時、タイミングよく良い結晶ができるという報告があり、米国をはじめオランダ、英国、日本でも研究が行われた。しかし、材料としての品質は優れていても形状が不ぞろいでデバイスを製作するまでに至らず、基礎研究にとどまっていた。デバイス製造には大型のウエハーが必要であり、Si板の上にSiCを積めばという考えに基づき、京都大学での研究が始まった。

1980年代後半から90年代にかけようやく2インチの大きさを実現することができ、これを活用してMOSFETを世界で初めて作ることに成功した。ところが、漏れ電流があるため、実際のデバイスでの使用は厳しいと思われ、その解消のためアチソン結晶を使うことを試み、成長温度を1520℃程度まで高めることが可能になった。しかし、研究レベルから実際に利用できるデバイスにまで高めるには企業の力が必要であったものの、成果報告だけではなかなか前に進まず、1993年に実際のデバイス(ショットキーダイオード=SBD)を作る作戦に出た。これにより、企業のデバイス関係者に大きなインパクトを与えたようで、ドイツ・インフィニオン社で2001年に商品化された。ただ、国内企業でなかったことは残念であった。

現状でウエハーは3インチ、4インチが量産され、さらに6インチも出始めている。SBDは2001年にインフィニオン社が世に送り出したが、日本では2010年4月にロームから国内で初めて発売された。この直後、SBDとSiのiGBTを組み込んだエアコンを三菱電機が展開したほか、日産自動車が燃料電池用に作った実車にSiのiGBTとSiCのSBDを積んで走行実験を行ったという報告がある。国家プロジェクトで三菱電機が発表したのは、Siのインバーターに比べ小型化が可能になり、損失低減70%(研究室レベル)を実現したほか、ロームが2011年12月に発表したSiCのSBDでは600ボルトの耐圧で損失抵抗が0.8ミリオームスクエアセンチというもの。損失がメカニカルスイッチに比べ小さいものができるため、商品化が待たれる。

こうしたパワー半導体のエネルギーの有効利用で、最も省エネ効果が期待できるのは汎用インバーターやモーター制御。導入量が多いため、デバイスメーカーも新たなフィールドとして力を入れている。そのほかではCPUサーバやUPS、分散電源が考えられる。太陽電池でも今はメガソーラーが話題だが、SiのiGBTが使われている。変換効率だけを見ると、SiのiGBTとSiCのパワーMOSFET、SBDでは大きな差はないが、SiCのパワーMOSFETは非常に小さな電力から動作する。それほど照射量の多くない朝でもSiCパワーMOSFETは素晴らしい性能が出せるという結果が出ている点は見逃せない。

また、安川電機とロームが自動車のドライブ用に巻き線の異なる高速用と低速用を組み合わせ、2段階制御でドライブすることを提唱している。こうなると、インバーターをモーター部に入れることが可能になるところから、将来はモーターインホイールが出てくると考えられる。

産業機器で見ると三菱電機が2012年夏に、SiのiGBTとSiCのSBDを用いて、東京メトロ銀座線で電力損失のデータを集めた。これによると損失が30数%低減するというものであった。SBDのスイッチングが早いため、かなりの高速領域で電気回生ブレーキを使えるからだと考えられる。さらに、2013年2月にはオールSiCインバーターを高速エレベーターに適用したところ、全電力損失低減が65%になったという。前述に研究室レベルで70%の低減を確認したというが、これが現実のシステムとして可能になるまでに来ている。インバーターの体積が40%減って専有面積も小さくなり、エレベーターの筐体そのものも軽量化が図れたことを含めた結果として注目したい。

こうして見ると、すべてが順調に進んでいるように思われがちだが、そうは単純ではなかったのが実情である。1993年にワシントンで行われた国際会議でSBDの講演を行ったが、当時、シーメンス社の代表者がこれからのパワーデバイスの材料はSiCしかないと考え、すでに前年から取り組んでいると言ってきた。その時、これはとんでもないことになりかねないと思ったのである。

実は、米国のベンチャー企業であるクリー社(1987年設立)が1991年ごろからウエハーの供給をすでに始めていたこともあり、このままではウエハーが米国に、パワーデバイスがドイツに持って行かれ、日本はアセンブル屋に成り下がってしまう。会議終了後、日本の企業にこうした情報を提供したものの、当時の日本はバブル経済崩壊後でもあり、理解は示しつつも動きが取れなかったのも実情であった。

その後、ようやくいくつかの国家プロジェクトが動きだすこととなった。現在は「最先端研究開発プロジェクト」と「新材料パワー半導体プロジェクト」の二つが動いている。
SiはSBDがだめで、PiNダイオードとMOSFET、iGBTで4.5キロボルトまで来ている。この近場ではSiCのSBDとMOSFET、JFETがSiデバイスを大きく凌駕している。これ以上のところではSiの場合、多段設置が必要だが、SiCのバイポーラデバイスを使うと段数が大きく減少する。実際の実験で出ている数値では10キロボルト耐圧以上のものが出現し、大学レベルでは1段で20キロボルト耐圧以上が行えるものの研究が進んでいる。これが実社会で使われるようになれば、スマートグリッドへの展開も視野に入る。現状では家庭用、ビルディング用、そしてコミュニティー用でHEMSやBEMS、CEMSのスマートグリッドコンセプトが生まれているが、使用領域の拡大が実現できれば、グリーンイノベーションの実現や国際競争力の高い新産業分野の創出も達成できるであろう。

このように、SiCのパワーデバイスは多数キャリアのユニポーラデバイスであるSBD、JFET、MOSFETはすでに市販レベルで入手できるようになっており、応用例でも電力損失低減の実績が出ている。今後の展開は産業機器分野に集約されるであろう。性能的な評価は得られても、まだ高価であることがネックで、この解消には使いたい人や分野を増やしていかないといけない。そこで、京都地区では産学連携はもちろん、産産連携という仕掛けをフルに活用して、いくつかのプロトタイプを開発して広く展開していくことを模索している。併せて、幅広いユーザーの声や考えをいかにして収集していくかも重要であると考えている。

SiCパワー半導体がもたらす電気エネルギーの有効利用 ロボット&産業機器分野におけるSiCパワー半導体導入の効用 パワー半導体の最先端を行くロームのSiC

ロボット&産業機器分野におけるSiCパワー半導体導入の効用 ロボットで有名なガンダムは、架空の話ではあるが核融合炉を用いて得た電力で動作する設定になっている。その関節はモーター駆動であるとされ、設定上の出力は新幹線クラスであるため、ゆくゆくはガンダムをSiCで動かせるのではないかという気にさせる。ただ現状では、人が乗れるロボットである水道橋重工の「クラタス」や榊原機械の「ランドウォーカー」は、電子制御だがエンジン駆動の油圧で動作している。電動のロボットは小型になるが、本田技研工業の「アシモ」やロボカップで使われるものがあり、それらはリチウムイオン電池を積み、モーターの高応答性を利用して複雑な制御を実現している。

SiCの利点として、導通損失とスイッチング損失が少ないだけでなく、熱伝導が高いために小さい面積でも放熱が容易であることが挙げられる。この特徴をいかに産業機器やロボットに活用していくかが重要になる。1970年代初頭にパワートランジスタが登場した時と比較して、現在では3ケタぐらいインバーターの電力密度は上がっている。Siではこれ以上の小型化は難しく、SiCしかない。ただ、インバーターの素子だけを替えれば実現できるわけではなく、回路での損失や、リアクトルやコンデンサーなどの他の構成部材を含むシステムとしての最適化は不可欠になる。

具体例を挙げると、航空機ではフライバイワイヤだ。従来はフラップやラダーは油圧で制御していたが、油圧パイプが何本も必要で重くなる。軽量化には操縦桿での制御を電気信号にして油圧パイプを電線とすることが有効であり、コンピューターを介することで制御の高性能化が可能となる。エアバスA360からは操縦桿もゲーム機のようなジョイスティックになっているという。ただ実際は、電子制御で油圧アクチュエーターを動かすことになるため、電気モーターや密閉式の電気油圧アクチュエーターで代替するパワーバイワイヤも検討されている。一方、ボーイング787は重量200トンと軽量化が進むが、機体の電子化で電気容量が増加、重量を増加させずに対応するためリチウムイオン電池を使用している。こうした小型・軽量化と大容量化が同時に必要な場面でSiCが使えると考えられる。今後もさらなる電子制御、電動化は必至で、飛行制御装置や防氷装置、さらに補機もその方向にあり、極限環境に耐えることが重要になる。

さらに、航空機のような高高度飛行では宇宙線によるパワーデバイス誤動作への対応も避けられないが、SiCを活用すればバンドギャップの大きさから誤動作の確率がSiより下がることが期待される。同じ理由で、原子炉内での作業用ロボットのモータードライブ素子としての活用を目指した研究開発も進んでいる。また、SiCのSBDは逆回復電流が小さく、温度などの動作条件が変化しても逆回復が増加しないため、低温から高温まで広い動作条件が必要なアプリケーションに対するパワーデバイスとしての適用も考えられる。

建設機械でもハイブリッド化、電動化が進んでいる。省エネのほか騒音や排ガス規制もその背景にある。エンジンで油圧を動かすタイプではこれらの条件をクリアできないが、電動化することで可能となる。また、電気モーターは非動作時には電気を使わず、本質的にアイドリングストップであるため省エネ化が進めやすい。さらに、機械の移動や作業時の負荷変動における高いピーク負荷に対応したインバーターが必要になるところから、SiCの適用の利点が現れる。ただ、SiCの耐熱性を生かそうとすると、現状のパッケージに使用されているプラスチック樹脂では素子の温度上昇に耐えることができない。そのため、パッケージもセラミックスなど耐熱性能が高いものが必要になる。デバイス実装としてインフィニオン社では、金属拡散接合でハンダ層を薄くして過渡熱抵抗を下げる手法を採用している。こうすればより使いやすくなる。

プレス機械も電動サーボに代わりつつある。サーボモーターはインバーターで制御するが、より高度な制御を行うには高速なスイッチング動作が必要となるため、SiCデバイスの活躍の場が出てくる。プレス機械の電動サーボーモータドライブに用いるインバーターには非常に大きなパルスパワーが要求され、コンデンサーとパワーアンプを一体化させることで高応答なサーボプレスシステムを構築できることから、SiCパワーデバイスの利点を生かすことができると考えられている。

ほかにもSiCへの転換が有利となるものに電車がある。初期の新幹線はブレーキ時に発電して架線に電力を戻すことができなかった。300系以降はSiのゲートターンオフサイリスタ(GTO)、iGBTを使ったインバーター回路の適用により、架線に電気を戻すことで一層の省エネ化が図られた。パワーデバイスの冷却方式も自然風冷に代わってきている。N700系では新幹線の走行風のみによる冷却システムが採用され、信頼性も大きく向上した。こうしたアプリケーションへもSiCの活用が可能になるであろう。

産業用ロボットも用途は広いが、基本は電動サーボで動く。サーボモーターはサーボアンプを用いたフィードバック制御を行っている。このサーボアンプにSiCを使えば小型化が図れ、外付けのサーボアンプをロボットのアーム内に直接組み付けることも実現できるというわけだ。

スイッチング動作が早いという特徴からは、高周波誘導加熱への適用もメリットが大きいと考えられる。家庭用のiH調理器は高周波を印加することで銅やアルミ鍋でも金属内に渦電流を流し、その損失で鍋を加熱している。産業用の誘導加熱装置も同様に、高周波数により歯車の表面だけに渦電流を流し、高温にして歯の部分だけを焼き入れすることも可能になる。この場合、高い周波数でのスイッチングが必要とされるため、SiCが有効になるのではないかと検討されている。

HEV・EVにも使えるであろう。とくにEVは動力源の設置場所の自由度が高く、インホイールモーターが利用可能である。産業用ロボットと同様にインバーターを小型化してモーターに直付けできれば、インホイールモーターとして高性能化が図れる。ここもSiC活用分野として考えられる。

メガソーラーのパワコンでは、最大出力が得られるのは年間でわずかの時間しかない。運転時間のほとんどは定格の数割以下の出力となる部分負荷状態で動作する。こういう状態ではSiCを使ったパワコンの方が優れる。SiCのMOSFETの低出力での損失はSiのiGBTより低くなるため、年間で最も出現頻度の高い低出力領域でも損失を少なく電力変換が行えるためだ。

このように、各種産業機器分野でもSiCパワーデバイスを活用することが可能になりそうだ。ただ、それには小型・軽量化、価格低減のほか、負荷率、使用条件や信頼性などさまざまな検証が避けられない。これらを一つひとつ解消していくことで、SiCパワーデバイスを活用するメリットがより見えてくるのではないか。

パワー半導体の最先端を行くロームのSiC SiCデバイスの特徴は600ボルトを超える高電圧帯で使えることにある。そこでロームでは、SiCパワー半導体の使用領域が600ボルト以上を狙って商品化を進めている。低い電圧でもSiCデバイスを作ることはできるがSiとの性能差がなく、よりメリットの出しやすい高電圧領域に特化している。具体的に使われているアプリケーションとしてはモーター駆動、電源関係になるが、今後最も期待するのが産業機器や電車などより大きな電力を扱う領域になる。

現在、SiCが使われている事例を挙げると、太陽光発電のパワコン、電源関係、産業機器に大別される。パワコンに関してはダイオードやMOSFETを使ったインバーターが出始めている。電源は歴史も古く、PFC回路のダイオードにSiCのSBDが使われている。今年市場が立ち上がったのが電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)の充電器でSBDが用いられているが、MOSFETはこの分野ではまだ1、2年かかるのではないかと見ている。産業機器分野はここ3、4年評価が進み、実用化へ歩み出しており、太陽光、電源に次ぐ三番目の市場として立ち上がるのも間近であろう。

ロームの開発体制は、基板からモジュールまで部品に関するすべてを自社グループで開発生産できる全体最適の体制を採っている。ただ、これに固執するのではなく、チップの形でモジュールメーカーに供給することも行っている。基板はグループに加わったドイツ・サイクリスタル社が光半導体用6H結晶のウエハーとパワー半導体用の4H結晶基板を2、3、4インチで量産。6インチの技術開発も完了し、ローム向けにサンプル出荷が始まっている。4インチと同等の結晶性が得られている。並行してデバイスラインのパイロットラインも整備中。チップコストが4インチに比べ安価になると見られる2014年下期に量産へ切り替える考えだ。

ロームの商品化の歴史は、2010年にSBD、DMOSトランジスタの量産を始め、2012年3月にフルSiCモジュールを商品化した。現在量産している製品は第2世代で、2010年から量産したデバイスに比べ、オン抵抗が低いことが特徴となっている。SiCのSBDは逆回復時間が小さいが、部品が高価格であるため、第2世代では低価格化を図っている。2014年早々には第3世代の商品化を予定する。MOSFETは1200ボルトに定格電流10-35アンペアを商品化、さらにSiCのMOSFETとSBDを同梱した製品もラインアップする。

実際のデバイスの性能では、1000ボルトの耐圧領域ではSiのMOSFETに比べ100分の1のオン抵抗を確保。さらに、トレンチのMOSFETは性能向上の余地を残している。これによりチップ面積を小さくできコストダウンにつなげることができる。また、導通損失の差がコストに直結するため、SiのMOSFETに比べSiCではすでに安く製造できる。SiのiGBTに比べてチップ面積が2分の1や4分の1になっても、SiCのMOSFETが高くなる。量産効果をコストに反映させることも一手段だが、トレンチを入れさらに性能を向上させることでコストダウンを図る考えだ。

SiCのMOSFETはSiのMOSFETやiGBTに対抗するデバイスとして位置づけられ、SiのMOSFETは600ボルト以下で使われることが多く、1000ボルト以上はニッチ市場となっている。産業機器など高電圧で使われる機器では1500ボルトのSiのMOSFETが使われるが、100分の1のチップ面積で同等の性能を出せるため、SiCでは置き換えが可能になる。このようにSiでも1500ボルト領域の用途があることから、2014年、1700ボルト用途を狙った商品を展開する予定にある。SiのMOSFETの領域に関してはコスト、サイズ、性能すべてで同等またはそれ以上の商品化を見込んでいる。

メーンとなるパワー半導体は現在、SiのiGBTの市場になる。ここでのSiCのメリットはスイッチング損失を1ケタ下げられることにある。iGBTとは異なり電源を切る際にテール電流がないため、スイッチング損失差が大きくなる。さらに、iGBTでは逆方向に電流を流せないが、SiCのMOSFETは寄生ボディダイオードがあり、ここに電流を流すことができ、さらにMOSFETのチャネル部に逆導通させることも可能で、iGBTで必要な並列のファーストリカバリーダイオード(FRD)をなくすこともできる。

実際のスイッチング特性では、SiのiGBT、FRDの組み合わせと、SiCのMOSFET、SBDの組み合わせで見ると、SiCにはテール電流がない分、EOFFで86%削減できる。オン動作ではSiCはSBDのリカバリー電流がないためEONは34%削減できる。三相インバーターの操作制御をした際、SiとSiCを同じ条件で比較すると、導通損失はほぼ同じ値を示すがスイッチング損失とのトータルでは60数%削減する。周波数を2倍の30キロヘルツに上げても半減できるというメリットも生まれる。

別の見方をすると、パルス幅変調(PWM)が20キロヘルツの場合、SiのiGBTモジュールでは60アンペアでジャンクション温度が125℃だが、SiCではより大きな120アンペアまで電流を流すことができるため、損失が少ないメリットをどのように生かしていくかが重要になる。このほかに、メリットを引き出しやすいものとしては直列共振で動かす用途も挙げられる。

SiCモジュールとしては現在も量産化を図っている半面、商品アイテムは決して多くはなく、120アンペアではSiCのMOSFETとSBDを並列化しており、180アンペアではMOSFETの逆導通を使うタイプになっている。2014年には1200ボルトで300アンペア、1700ボルトで250アンペアの汎用モジュールを商品化する予定だ。また、次世代商品の展開としては、デバイスでは第3世代としてトレンチタイプSBDとMOSFETの量産を開始する考えである。トレンチタイプにすると同じオン抵抗でも入力容量やゲート電荷を大きく下げ、チップ面積を2分の1にすることができる。

SiCのディスクリートやモジュール商品のみならず、ユーザーがより簡便に評価される場合、キャリア周波数を200キロヘルツまで可変できる10キロボルトアンペアおよび50キロボルトアンペアの汎用インバーターをMyWayプラスが商品化。東洋エレクトロニクスでも10キロボルトアンペアで500キロヘルツまでキャリア周波数を上げる汎用インバーターもあり、評価いただければと考えている。