特集:センサ・デバイス
無線通信とセンサが新たな市場を創造

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無線通信とセンサが新たな市場を創造

ニーズが多様化する小型センサ

エレクトロニクス業界をけん引する新たなテクノロジー・ドライバーとして、数年前から様々な分野で注目されている「センサ・ネットワーク」。無線通信技術の進化と、センサの小型化を背景に、着々と普及の機運が高まっている。
センサ・ネットワークとは、多数のセンサを相互に接続したネットワークを指す。最近では、センサの接続に無線通信を使ったシステムを指すことが多い。かねてからセンサ・ネットワークが注目を集めているのは、「仮想空間」とリアルな世界をつなぐセンサ・ネットワークが、リアルな世界における様々な課題を解決するソリューションをもたらす可能性を秘めているからだ。
すでに工場、医療/ヘルスケア、交通、建設、農業、環境管理など、様々な分野でセンサ・ネットワークを利用した新しい取り組みが始まっている。しかも、センサ・ネットワークの応用が広がるとともに、新しいビジネスが生まれる可能性もある。そうなればセンサや通信機器のメーカーをはじめ関連する様々な分野で新たな市場が生まれる。


センサと無線の技術が普及を後押し

ここ数年、センサ・ネットワークが注目を集めるようになったのは、センサの小型化が進んだことや、無線技術が進化したことがある。小型になるとセンサを取り付ける場所の自由度が高まる。さらに無線通信でセンサを接続することができれば、センサ同士を接続するためにケーブルを引き回す必要もなくなる。これによって、センサ・ネットワークを構築する場所や測定対象に関連する制限がぐっと減る。
さらに最近になって「クラウド・コンピューティング」の技術が浮上してきたことで、センサ・ネットワークの応用が広がる機運が一段と高まってきた。クラウド・コンピューティングとは、サーバーが提供する機能をインターネットなどのネットワークを介して利用する環境を指す。「クラウド(雲)」と表現されているのは、ユーザーからコンピュータが見えないからだ。クラウド・コンピューティングの技術を利用すれば、離れた場所に稼働している複数のサーバーを1台の仮想的なコンピュータとして使ったり、データ処理の負荷に応じて使用するコンピュータの台数を動的に増減させたりといったことが可能だ。こうした技術を利用すれば多数のセンサから集めた膨大なデータを一気に処理できる高い能力を備えたコンピューティング環境を実現できる。


様々なセンサが続々と市場へ

センサ・ネットワークの普及が進めば、センサに対する要求は多様化する。応用の広がりとともに検出対象が増えるからだ。こうした動きを受けてエレクトロニクス業界ではセンサを開発する動きが加速してきた(図A)。
実際に、いわゆる人間の五感に対応する様々なセンサの開発が市場に登場しつつある。例えば、視覚に関連するものでは、各種イメージ・センサをはじめ照度センサや人感センサ。触覚ならば圧力センサや温度センサ。臭覚に関連するものではガス・センサやにおいセンサ。味に関する情報を検出する味覚センサもある。また、製品化で先行している加速度センサやジャイロスコープは、人間の三半器官の働きを代替するセンサの一種と言えよう。
センサは、センサ・ネットワークを利用した新しいサービスやビジネスを実現するうえでのキー・デバイスである。センサ・ネットワークの広がりとともに、センサおよびセンサを核としたソリューションに対するニーズは、ますます高まるはずだ。

[図A] 用途が広がるセンサ


センサのトータル・ソリューションを展開「動き」と「光」を網羅する多彩な製品が強み

ロームは、グループ会社との連携によるシナジーを生かして、センサを核としたソリューションの強化を図っている(図1)

多田 佳広氏
ローム株式会社 KTC LSI開発本部
Kionixプロジェクト リーダー
[図1] ロームグループの主なセンサ・デバイス(開発中含む)

「センサ関連事業は、今後の成長戦略の柱の一つ。グループ会社の技術とノウハウを結集し、この事業に取り組みます。目標はセンサ市場における『トータル・ソリューション・プロバイダー』です」(同社KTC LSI開発本部 Kionixプロジェクト リーダーの多田佳広氏)。
ロームが展開するセンサ事業の大きな特長は、グループ会社と連携を図り、豊富な種類のセンサを揃えていることだ。「『動き』を検出するセンサを複数提供しているほか、遠赤外線からX線まであらゆる光の波長を網羅する様々な光センサを提供することができます。半導体技術に基づいたセンサを提供しているデバイス・メーカーの中でも提供できるセンサの種類が特に多いのがロームです」(多田氏)。


多くの実績を誇る加速度センサを提供

具体的には、アナログおよびデジタルの照度センサIC、開閉スイッチなどに使われているホールIC、温度検出素子や電源回路などを1チップに集積した高精度温度センサICといった各種センサ・デバイスを従来から製品展開している。これに加えて可視光から近赤外領域まで広い範囲で高い感度を発揮する「超高感度CIGSイメージ・センサ」、紫外線領域の光を検出できる「MgZnO紫外線センサ」など先進的なセンサ技術を開発済みだ。
さらに、2008年にOKIセミコンダクタがグループ会社となったことで同社が製品化している「SOI紫外線センサ」や、同社が日産自動車と共同開発した「赤外線イメージ・センサ」もロームのソリューションの一部に組み入れることが可能になった。「OKIセミコンダクタが得意としているローパワーマイコンとセンサを組み合わせたソリューションを提供することも可能です」(多田氏)。
続いて2009年にMEMSセンサ技術の世界的なパイオニアとして知られる米Kionix Inc.が、ループ会社に加わったことで、同社のセンサ・ソリューションの幅が一段と広がった。「これまで手掛けていなかった加速度センサやジャイロスコープといった慣性センサが加わったことで、製品ラインアップが一気に充実しました」(多田氏)。1993年に設立されたKionix社は、MEMS技術を使った加速度センサの大手として知られている。特に周辺回路を集積し、センサ出力信号の処理アルゴリズムとセンサを一体化する同社の技術に対する市場の評価は高い。これまでに、世界の大手携帯電話メーカーがKionixの製品を採用しているほか、ゲーム機のコントローラにも搭載されている。
Kionix社は、着々と品種を増やしており最近では2010年11月に、2品種のジャイロスコープ(図2)と3品種の加速度センサを発売している。「ロームが開発した各種IPやOKIセミコンダクタのローパワーマイコンのIPを、Kionix社のセンサと組み合わせれば高機能な『インテリジェント慣性センサ』を実現できます。このようにグループ会社の技術を融合することで、より付加価値の高い製品やソリューションを提供する方針です」(多田氏)。

[図2] Kionix社のジャイロスコープSEM画像


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