特集:電子部品
次世代の「エコデバイス」SiCパワーデバイス

掲載記事

Contributing Articles

次世代の「エコデバイス」SiCパワーデバイス


はじめに

近年、エネルギーの有効利用や地球温暖化に対するCO2排出削減の重要性がかつてないほどに高まっている。ロームでは、省エネやCO2削減に貢献する製品として、低消費電力を追及したLSIや受動部品、光半導体などの「エコデバイス」を市場に提供している。その中でも、次世代の「エコデバイス」として注目を集めているのが、SiCパワーデバイスである。
SiCパワーデバイスは炭素とケイ素からなる化合物半導体、シリコン・カーバイド(炭化ケイ素)を材料として作られるパワー半導体である。従来のシリコンを用いたパワーデバイスに比べて低いオン抵抗・高速スイッチング・高温環境での動作が可能という特長があり、次世代のパワーデバイスとして多くの研究機関・メーカーがその開発に取り組んできた。


「夢のデバイス」が現実に

その優れた性能から長年にわたって「夢のデバイス」として期待されてきたSiCパワーデバイスだが、既に夢は現実のものとなっている。ロームでは既に量産を行っているSiC製のダイオードとMOSFETに加え、それらを応用したパワーモジュールの量産を3月から開始した。
以下、各商品を紹介する。

フルSiCパワーモジュール

SiC-SBD(SiC-ショットキーバリアダイオード)

2001年に世界で最初のSiC-SBDが量産されてから、10年以上経過している。ロームでは、10年から国内メーカーで初めてSiC-SBDの量産を開始しており、既にさまざまな機器に採用されている。
SiC-SBDは、従来のシリコン製FRD(ファストリカバリダイオード)に比べて逆回復時間を大幅に短縮する事が可能で、リカバリ時の損失は約3分の1に低減。この特長を活かし、各種電源PFC回路(連続モードPFC)や太陽光発電のパワーコンディショナーを中心に採用が進んでいる。
ロームでは現在、耐圧600V・1200VのSiC-SBDをラインナップ。さらに、性能を向上した第2世代SiC-SBDの販売を順次開始する。第2世代SiC-SBDは、従来品に比べて短い逆回復時間はそのままに、順方向電圧を低減。通常、順方向電圧を低減すると逆方向リーク電流が増加するが、ロームではプロセスとデバイス構造の改善によって、リーク電流を低く保ったまま、順方向電圧の低減に成功。順方向立ち上がり電圧も0.1~0.15V低減されることから、低負荷状態での動作時間が長い機器で特に効率改善が期待できる。

SiC Power Deviceのラインアップ

SiC-MOSFET

既に数多くの機器への搭載が進んでいるSiC-SBDに対してSiC-MOSFETの量産化は、さまざまな技術的な課題から遅れていた。10年12月、ロームは世界で初めてSiC-MOSFETの量産をカスタム品として開始。さらに7月から、耐圧1200Vの第2世代SiC-MOSFET「SCHシリーズ」「SCTシリーズ」の量産を順次開始する。
従来、SiC-MOSFETは、ボディダイオード通電による特性劣化(MOSFETのオン抵抗・ボディダイオードの順方向電圧が上昇する)が起こる事が知られており、量産化の妨げとなっていた。ロームでは、結晶欠陥に関するプロセスとデバイス構造を改善し、10年の量産開始当時からSiC-MOSFETにおける信頼性面での課題を克服している。
1200Vクラスのインバータやコンバータでは、シリコン製IGBTが一般的に使用されている。SiC-MOSFETは、シリコン製IGBTで見られるテール電流(ターンオフ時に流れる過渡電流)が発生しないため、ターンオフ時のスイッチング損失を90%削減可能で、また50キロヘルツ以上のスイッチング周波数での駆動も可能となる。
これにより、機器の省エネ化や、ヒートシンク・リアクトルやキャパシタなどの周辺部品の小型化・軽量化が可能となる。特に、従来のシリコン製IGBTでは、導通損失よりもスイッチング損失の比率が高くなってしまう用途での置換えが効果的である。

損失比較(30kHz動作時)

「フルSiC」パワーモジュール

現在、1200Vクラスのパワーモジュールにはシリコン製のIGBTとFRDを組み合わせたIGBTモジュールが広く用いられている。
ロームでは、従来のシリコン製デバイスに替え、SiC製のMOSFETとSBDを搭載したパワーモジュール(1200V/100Aハーフブリッジ構造、カスタム品)を開発、3月下旬から量産・出荷を開始した。汎用品(1200V/120A ハーフブリッジ構造)の量産も間もなく開始する。
シリコン製デバイスに替えて、SiC-MOSFETとSBDを搭載したことにより、100キロヘルツ以上の高周波駆動が可能となった。IGBTのテール電流とFRDのリカバリ電流によるスイッチング損失を大幅に削減可能となった。これにより、モジュールの冷却機構簡素化(ヒートシンクの小型化、水冷・強制空冷の自然空冷化)や動作周波数の高周波化によるリアクトルやキャパシタ等の小型化が可能となる。
スイッチング損失が低いため、20キロヘルツ程度やそれ以上のスイッチング周波数での駆動に適しており、その場合は定格電流200-400AのIGBTモジュールを定格電流120AのSiCモジュールで置き換えることも可能である。


本格的な普及に向けて

既に多くの採用実績があるSiC-SBDに対して、SiC-MOSFETやフルSiCパワーモジュールの本格的な採用はまさにこれからである。
従来のシリコンデバイスに対する性能差とコスト差のバランスがSiCデバイスの本格的な普及の鍵になるが、ロームでは(1)SiC基板の大口径化等によるSiCデバイスのコストダウン(2)シリコンデバイスに対して、さらに圧倒的な性能差を持つ次世代SiCデバイスの技術開発の両面で技術開発を行っている。今後、SiCデバイスの普及拡大を通して、地球レベルでの省エネやCO2削減に貢献していきたい。

 

この件についてのお問い合わせ