特集:電源用部品技術
携帯機器向けパワーマネジメントIC 小型化・高機能化の動向

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「携帯機器向けパワーマネジメントIC 小型化・高機能化の動向」 2010年6月3日号掲載

はじめに

携帯電話はカメラの高機能化や液晶画面のタッチセンサー化とともに、スマートフォンも普及、また、 音楽プレイヤーは、動画再生機能やカメラ機能の搭載など、従来要素の組み合わせによる高機能化が 進む一方、電子書籍端末のような今までの市場形態を変えてしまう新しいモバイルスタイルも本格的に 普及しようとしている。
このような背景から、携帯機器向けの電源ICに求められる要求も多様化・高機能化しており、ロームでは パッケージの小型・薄型化だけでなく、DC/DCコンバータの効率の向上・待機時電流の削減という電気的特性 の改善や、出力チャネル構成でのラインアップ化、起動/停止シーケンス内蔵などの機能の向上を行い、 市場要求に応えている。
ロームが提供するフレキシブル電源ICシリーズは、「出力電圧を可変できるDC/DCコンバータとLDOレギュレータを 組み合わせた電源IC」の製品群の名称であり、携帯機器向けパワーマネジメントICとして最適なソリューションである。
本稿ではフレキシブル電源ICシリーズラインアップのそれぞれの特徴や主な用途を具体的に挙げて説明し、 最後に今後の展望を述べさせていただく。


フレキシブル電源ICシリーズの共通仕様

  DCDC
コンバータ出力
レギュレータ出力 入力
インタ
フェース
保護機能 パッケージ




品名 電源
電圧
(V)
項目 DCDC1 DCDC2 LDO1 LDO2 LDO3 LDO4 LDO5 LDO6 過電流 温度 低電圧
6
ch
BH6172GU 2.2
to
5.5
出力
電圧
(V)
0.8
to
2.4
- 1.0
to
3.3
1.0
to
3.3
1.2
to
3.3
1.2
to
3.3
1.2
to
3.3
- I2C
パラレル
LDOは
フの字型
DCDCは
垂下型
有り 有り VCSP85H2
(2.6x2.6)
H=1.0mm (max)
出力
電流
(mA)
500 - 150 150 300 300 150 -
4
ch
BH6173GUL 2.2
to
5.2
出力
電圧
(V)
0.8
to
2.4
- 1.0
to
3.3
1.0
to
3.3
1.2
to
3.3
- - - I2C LDOは
フの字型
DCDCは
垂下型
有り 有り VCSP50L2
(2.05x2.05)
H=0.55mm (max)
出力
電流
(mA)
500 - 300 300 300 - - -
7
ch
BH6176GU 2.2
to
5.5
出力
電圧
(V)
0.8
to
2.4
- 1.0
to
3.3
1.0
to
3.3
1.2
to
3.3
1.2
to
3.3
1.2
to
3.3
1.2
to
3.3
I2C
パラレル
LDOは
フの字型
DCDCは
垂下型
有り 有り VCSP85H2
(2.6x2.6)
H=1.0mm (max)
出力
電流
(mA)
500 - 150 150 300 300 150 300
7
ch
BH6178GUL 2.7
to
4.5
出力
電圧
(V)
1.8 1.235 1.8 1.8 1.215 1.2 2.7 - パラレル LDOは
フの字型
DCDCは
垂下型
有り 有り VCSP50L2
(2.8x2.8)
H=0.55mm (max)
出力
電流
(mA)
400 650 50 50 50 50 50 -
7
ch
BH6179GU 2.2
to
5.5
出力
電圧
(V)
0.8
to
2.4
- 1.0
to
3.3
1.0
to
3.3
1.2
to
3.3
1.2
to
3.3
1.2
to
3.3
1.2
to
3.3
I2C
パラレル
LDOは
フの字型
DCDCは
垂下型
有り 有り VCSP85H2
(2.6x2.6)
H=1.0mm (max)
出力
電流
(mA)
500 - 150 150 300 300 150 300

※2010年5月現在のラインアップ

全機種に共通した仕様としては、パッケージは小型・薄型のCSP(Chip Size Package)の採用で、ボールピッチは0.5mm、保護機能として
過電流保護機能・サーマルシャットダウン機能・低電圧保護機能を内蔵している。
チャネル構成のバリエーションは、DC/DCコンバータは1chまたは2ch(降圧タイプ)、LDOレギュレータは3ch/5ch/6chから選択でき、I2C制御に
より各チャネル個別のオン/オフ制御や、出力電圧を可変することができる。
ロームのフレキシブル電源ICを使えば、出力電圧が異なっても同じハードウェア構成で対応できるため、回路及び部品の標準化が可能である。
また、単品で構成された電源回路をIC一つに集約して部品点数の削減を図ることができ、実装面積も最大で75%削減することが可能である。


I2C制御に加え端子制御でもオン/オフできる汎用性の高いBH6172GU

BH6172GUは、DC/DCコンバータ1ch・LDOレギュレータ5ch内蔵の汎用性の高いICである。
その特徴は、レギュレータLDO1~4の起動を、端子制御でもI2C制御でも行えるため、出力電圧の設定をシステムの初期化の段階で行っておけば、その後ソフト的な割り込みを介さずにLDOレギュレータ出力のオン/オフ制御が可能である。
これによる利点は、コントローラ側の待機モードを長く設計できるとともに、割り込み処理負荷を削減でき、システム全体の消費電流の削減や、コントローラのコストを低く抑えることができる。
また、ハード的な端子制御による即時性の保証など、ソフトウェアでは実現が難しい利点もあり、出力電圧プログラマブルなLDOレギュレータアレイとして使うこともできる。もちろんレギュレータLDO1~4個別にレジスタ制御/端子制御を選択できるので、柔軟な電源設計が可能である。
具体的な使用用途として、携帯電話のカメラモジュール電源や、アプリケーションCPU電源などがあるが、携帯電話以外でも汎用的な電源ICとして使用可能である。

シリーズ最小のパッケージでモジュール電源に最適なBH6173GUL

BH6173GULは、DC/DCコンバータ1ch・LDOレギュレータ3ch内蔵のシリーズ最小サイズのICである。
その特徴は、I2C制御に限定して、外形サイズ2mm□を実現したほか、デバイスアドレス選択端子やLDO1用電源端子も備えていることである。
LDO1用電源端子(PVCC)は、電源に接続して使用することも(図1-A参照)、また、DC/DCコンバータ出力を接続することもできる。(図1-B参照)

[図1-A]BH6173GULアプリケーション例(その1)
[図1-B]BH6173GULアプリケーション例(その2)

一般的に、LDOレギュレータは入力電圧と出力電圧の差が大きいと損失も大きくなるため、DC/DCコンバータで入力電圧を下げることにより、電力変換効率を大幅に改善すること ができる。
例えば、電源電圧が3.2V、LDO1出力が1.8V、負荷電流が100mAとした時の電力変換効率を比較すると、DC/DCコンバータ出力をLDO1の電源とした場合は、LDO1単体で構成した場合と比較して、電力変換効率は20%も向上する。(DC/DCコンバータの出力は2.4Vに設定)
デバイスアドレス選択用端子(ADRS)は、この端子をLow/Highすることで2つのI2Cアドレスを切り替えて実装することができ、同じシリアルバス上に2つまでフレキシブル電源ICシリーズICを接続でき、トータルのDC/DCコンバータとLDOレギュレータのチャネル数を増やすことが可能である。
例えば、BH6173GULを2個使用すること(図2-Aを参照)で、DC/DCコンバータ2ch・LDOレギュレータ6chの電源を簡単に構成でき、同様にBH6172GUやBH6179GUとの組み合わせもできる。(図2-BにBH6172GUとの組み合わせ例を示す)

[図2-A]BH6173GULを2個使用する場合
[図2-B]BH6172GUとBH6173GULを使用する場合

そのほかに、ボール配置が4列×4段のため多層基板でなくても搭載でき、外形が小さいためフレキ基盤で厄介な応力も小さく抑えることが可能である。
具体的な用途は、カメラモジュール電源、GPSやタッチセンサー等のアクセサリ用電源に最適である。
図3に電力変換効率を示す。

[図3]BH6173GULの電力変換効率

BH6172GUと同じ外形サイズでチャネル数を増やしたBH6176GU

BH6176GUはBH6172GUと同じ外形サイズのまま、回路最適化によりLDOレギュレータ出力を6chに拡張した上位コンパチブルなICである。
チャネル数の増加により、アプリケーションCPUの周辺アクセサリも含めた電源ICとして使用でき、サブ・パワーマネジメントICとしての用途に適している。

アプリケーションCPU向け電源シーケンス制御を内蔵したBH6178GUL

BH6178GULは、アプリケーションCPUのパワーオン/パワーオフの電源シーケンス制御回路が内蔵されたICである。
そのため、アプリケーションCPUの電源制御信号を直接BH6178GULに接続するだけで使用することができ、 余計な外付け回路無しに簡単に電源を構成でき簡単である。

回路を最適化し動作時回路電流を15%削減したBH6179GU

BH6179GUは、DC/DCコンバータ1ch・LDOレギュレータ6ch内蔵で、回路特性が改善されたICである。
その特徴は、DC/DCコンバータ1ch・LDOレギュレータ5chのBH6172GUと比較して、消費電流は15%削減し(全出力オンで無負荷時)、LDOレギュレータは1ch追加している。
端子配置は追加されたLDO出力を除いてBH6172GUと同じで、機能的に上位互換となっているので、置き換えることで消費電力を削減でき、バッテリ持続時間を延ばすことができる。

評価環境について

フレキシブル電源ICシリーズは、素早く簡単に評価していただけるように、周辺部品が実装済みの評価ボードをICごとに準備している。
評価ボードはUSB⇔I2C変換アダプタを介してPCと接続できるため、 PCに制御ソフトをインストールすれば評価環境を簡単に構築できる。

今後の展望

(1) LDOレギュレータ低消費モードへの自動切り替えをサポート 
今後更なる低消費電力化を実現するため、負荷電流に応じて動作モードを自動的に切り替える機能を追加する。
これにより、コントローラ側のソフトウェアの簡単化と、低消費電力化が両立できる。
(2) DC/DCコンバータの効率改善
DC/DCコンバータの電力変換効率は電源システム全体の効率に大きく関係する。
携帯機器の場合、ピーク負荷時の効率だけではなく軽負荷時の効率も重要で、 待機時の消費電力を削減することで、バッテリ持続時間を長くすることができる。
(3) 外形サイズの小型化・薄型化 
製造プロセスの微細化・回路の最適化・ボールピッチの0.4mm化などにより、携帯機器の小型化に対応する。
(4) 出力電圧の初期値カスタマイズ
コントローラからの電圧初期値設定ができないアプリケーションに使用できるよう、 出力電圧初期値のカスタマイズに対応したラインアップも順次リリースする予定である。

ロームのフレキシブル電源ICシリーズは、今後もチャネル数のバリエーションを増やし、 ラインアップを充実していくとともに、特性面・機能面の改善も行い、 携帯機器の電源設計にベストなソリューションを提供していく。

 

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