安川電機様開発のQMETに搭載の高効率SiCモジュールについて

発表日:2011-01-18


今回、株式会社安川電機(本社:北九州市)様が開発した『SiC-QMET』にローム株式会社(本社:京都市)のSiCパワーモジュールを搭載しました。ロームが開発した高効率SiCパワーモジュールを搭載する事により『SiC-QMET』の高効率化、小型化が実現しました。ロームが開発した高効率SiCパワーモジュールの特長を説明します。
 

① ローム独自構造トレンチMOSFET

SiC MOSFETはSi MOSFETと比較してオン抵抗を10分の1程度に低減する事が可能です。
ロームが世界に先駆けて2010年に量産を開始したプレーナー型のSiC DMOSFETはパワーエレクトロニクス分野において損失を大幅に低減できるデバイスとして注目を集めています。
さらに、ロームは独自構造により、SiC DMOSFETに比べてオン抵抗を3分の1以下に低減する事に成功しています。 
この開発を成功しているのは世界でもロームだけです。
SiCトレンチMOSFETはSiC MOSFETの次世代品として数年後の実用化に向け開発を進めています。

SiC DMOSFETとSiCトレンチMOSFETの構造 SiC トレンチMOSFET
SiC DMOSFETとSiCトレンチMOSFETの構造 SiC トレンチMOSFET


② 高温動作モジュール

既存のSiデバイスは170℃前後が動作限界であるのに対して、SiCデバイスは200℃を超える高温での動作が可能です。
しかし、モジュール構成材料の耐熱性が無いため、モジュールとしての高温動作は困難でした。
ロームは、材料、プロセス、構造を高温動作用に独自に開発し、200℃以上の高温動作モジュールの開発に成功しました。
高温動作モジュールは、高温環境下での動作はもちろん、電力密度が大幅に向上します。

高温動作モジュールの特性の一例 電力密度1桁向上(Si IGBT比較)
高温動作モジュールの特性の一例 電力密度1桁向上
(Si IGBT比較)


③ 世界最大級の大電力モジュール

今回、超低オン抵抗SiCトレンチMOSFETと高温動作モジュール技術を用いる事により、世界最大級の大電力SiCパワーモジュールの開発に成功しました。
今回作製したモジュールは200℃以上の動作が可能で、600V耐圧で1kA以上の電流を流す事ができます。
これは、Siデバイスを用いた場合と比較して、容積3分の1以下、定常損失2分の1以下の超小型、超高効率モジュールです。

モータ内蔵用 巻線切り替えSiCモジュール SiCモジュール内部構造
モータ内蔵用 巻線切り替えSiCモジュール SiCモジュール内部構造


④ EVモータ内蔵可能

Siモジュールは高温動作が不可能な為、モータの発熱に影響され、モータへの内蔵が困難です。
現在は、モータとモジュールを別置きしております。
SiCモジュールを使う事で、高温動作が可能になり、小型でコンパクトにモータへ内蔵が可能となります。

SiCモジュール内蔵のイメージ
SiCモジュール内蔵のイメージ


用語説明

  1. SiC(シリコンカーバイド:炭化珪素)
    バンドギャップがシリコンの約3倍で、絶縁破壊電界が約10倍、熱伝導率が約3倍という優れた物性値を持つ化合物半導体であり、 これらの特性がパワーデバイス応用と高温動作に適している。
  2. MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistorの略)
    金属-酸化物-半導体電界効果トランジスタのことで、FETの中では最も一般的に使用されている構造である。スイッチング素子として使われる。
  3. SBD(ショットキーバリアダイオード Schottky Barrier Diode の略)
    金属と半導体を接触させることでショットキー接合が形成され、整流性(ダイオード特性)が得られることを利用したダイオード。 少数キャリア蓄積効果が無く高速性に優れているという特徴を持つ。
  4. トレンチ型構造
    トレンチは溝を意味する。チップ表面に溝(トレンチ)を形成し、その側壁にMOSFETのゲートを形成した構造。 プレーナー型MOSFETに構造上存在するJFET抵抗が存在せず、プレーナー構造よりも微細化が可能なため、SiC材料本来の性能に近いオン抵抗が期待できる。
  5. オン抵抗
    パワー素子の動作時の抵抗値。パワーMOSFETの性能を左右する最も重要なパラメータで、値が小さいほうが高性能である。
  6. パワーエレクトロニクス
    電力(パワー)を半導体デバイス(エレクトロニクス)を用いて都合の良い形態に変換し、自由に制御する技術。
    家庭用の電気製品から、産業、鉄道、電力などのシステムに適用されており、現代の生活に無くてはならない存在である。
    (正田英介 楠本一幸 「パワーエレクトロニクス」 オーム社)
  7. ハイブリッド車(HEV)
    内燃機関と電動機を組み合わせた動力源を持ち、状況に応じて単独、あるいは複数と、電力源を変えて走行する自動車のこと。 総合効率が電気自動車や燃料電池自動車と同程度であり、環境負荷の低い実用車として注目されている。
  8. 電気自動車(EV)
    電力により推進する自動車。二次電池(稀に一次電池)を動力源とし、外部からの充電または電池交換により走行用の電力を得る自動車。

 

 

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